立野ダム建設の再検証を求める意見書についての提出者説明
2013年10月4日 熊本県議会議員 松岡徹
松岡徹です。平野議員、岩中議員と共同で提出しております議員提出議案第9号「立野ダム建設についての再検証を求める意見書」について、提出者の説明を行います。
「空港」も「阿蘇熊本空港」と銘打っているように「世界の阿蘇」は熊本の「宝」です。その入り口に高さ90m、参考までに、県庁62m、熊本城37mです。長さ200mのコンクリートダムができれば景観や環境は一変します。
ところが、「立野ダム建設事業検証」報告書では、218ページにもなるものですが、立野ダム建設と「熊本の宝」である「世界の阿蘇」の環境保全、観光振興についての検証が行われていません。
財団法人日本交通公社の「日本の観光資源の選定」によると「阿蘇山と外輪山」は、九州では屋久島とともに「特A級」となっています。「特A級」とは、わが国を代表する資源で、かつ世界にも誇示しうるもの。わが国のイメージ構成の基調となりうるものということです。こうした評価がなされるほどの貴重な、素晴らしい自然、環境、文化に満ち溢れているのが阿蘇です。
阿蘇外輪山の重要なポイントであり、阿蘇の入り口にあたる立野に巨大ダムをつくることは、知事が強調される「百年の礎」のそむき、「熊本の百年の計」を誤らせるものです。
ダムサイト予定地には柱状節理も広く存在し、鮎返りの滝は、立野溶岩、赤瀬溶岩より以前の溶岩(「鮎返り溶岩」)であり、阿蘇のなかで最古の溶岩でできています。数鹿流ケの滝は、浸食により黒川、白川の合流点より1750m後退し現在地にあるもので、「世界の阿蘇」のスケールの大きさと自然の神秘を彷彿させます。
立野峡谷一帯は、「阿蘇の成り立ちを知るうえでも貴重な場所」「地学の教科書のような場所」と専門家が指摘しています。立野峡谷は、地質の分野に携わる大学などの研究者、学生などが数多く視察と調査に訪れるメッカとなっています。
阿蘇ジオパーク推進協議会の「世界ジオパークネットワーク加盟申請書」には、「地球の息吹を感じるジオサイトの一つとして、外輪山周辺があげられ、関連ジオサイトとして立野峡谷が示されています。
日本ジオパーク委員会が阿蘇を、世界ジオパークネットワーク(GGN)加盟推薦を決めたことは大変喜ばしいことです。同時に阿蘇が、ジオパークとしても文化遺産としても、世界から認められるためには、最大の障害となる立野ダム建設を取り除かなければなりません。また、阿蘇が登録、認定されたとしても、そののち、コンクリートの異様なダム建設が問題になり、ドイツのドレスデン・エルベ渓谷のように、登録が取り消されることにもなりかねません。
ジオパークは、科学的に見て特別に重要で貴重な、あるいは美しい地質遺産を複数含む一種の自然公園です。ジオパークでは、その地質遺産を保全し、地球科学の普及に利用し、さらに地質遺産を観光の対象とするジオツーリズムを通じて地域社会の活性化を目指すものです。地層、地形、断層などを保護し研究にいかし、科学教育や防災教育の場、観光資源として地域振興に活かすことを目的にしています。「ダムの地域を申請しない選択肢も」との説もありますが、ダムでかけがえのない保全すべき資源をこわしてのジオパーク認定は本末転倒です。
2013年度の「県民アンケート」の結果は、県民の多くが「観光に大きな期待を持っていることを際立たせました。
「活力をつくる」では、「最も力を入れてほしい」こととして「観光客を呼び込む施策」77・2%、「アジアとつながる」では、「観光客を増やす」が60・3%と、いずれもトップを占めています。
熊本県は、「ようこそ熊本観光立憲条例」を定め、「魅力ある観光地の形成」などをうたっています。さらに「ようこそ熊本観光立県推進計画」では、第1に「世界的観光資源『阿蘇』を活用したブランドイメージの形成」をあげています。
立野峡谷 北向谷原始林、柱状節理、鮎帰りの滝、数鹿流ケの滝、人気を呼んでいる渓流トレッキング、観光資源としても、鉄道遺産としても貴重なトロッコ列車で知られる南阿蘇鉄道の立野橋梁、第1白川橋梁等々、ダムによって壊され、汚される環境、資源、文化は、「世界の阿蘇」を構成する地域であり、観光資源としても、貴重なサイトとなりうる価値を持ったものです。
「世界の阿蘇」は、熊本が将来にわたって発展するうえで決定的な役割を持っています。「世界の阿蘇」と立野ダム建設について検証していない「立野ダム検証」はやり直すべきです。
「立野ダム建設事業検証」報告書は、「立野ダムの目的」について、「想定氾濫区域」を熊本市の小碩橋下流とし、「熊本市など下流域における洪水被害を軽減することを目的に、黒川の遊水地群による効果と合わせて、代継橋地点における最大流量毎秒2300tを2000tに流量調節を行う」と明記しています。報告書が発表されたのは9月11日でした。当時は、「7・12」洪水で被害を受けた、熊本市の龍田陳内、龍田1丁目、弓削、吉原、石原地区など、さらに菊陽、大津などの被災者は、どうやって暮らしていくか、復旧、復興をどうするかと、苦悩、苦闘の日々を送っていた時期です。まぎれもなく、大きな被害に2ケ月前みまわれた小碩橋上流のこうした地域を「想定氾濫区域」から除くという、初歩的な事実認識の誤りに立っているのが検証報告書です。
「立野ダムありき」の国土交通省には、白川水害の現実、被災住民の姿は眼中にないのです。
安全、安心の白川をつくるためには、立野ダムではなく、小碩橋下流、小碩橋から立野ダムまでの中流域、それぞれについて、ダム以外の治水対策をどうするか、という再検証が必要です。
知事は、昨年10月、流域市町村の意向を聞いたとして、立野ダム建設「異存なし」と国交省に伝えました。ところが流域の自治体では、熊本市の担当部・課が立野ダムを現地視察したのは今年の8月末でした。左岸側が、ダムサイト予定地でもある大津町では、今年、9月に入って議員と執行部が現地を視察しています。菊陽町では、町議会のやり取りで、町長は、柱状節理について「見たか」と聞かれて、「見ておりません」と答えています。ダム担当課の職員が現地を見ていないことも明らかになっています。
流域の首長やダム担当職員さえも、現地がどうなっているか。どんなに価値のあるところか、ダムができればどうなるか、知らないで、「立野ダム推進」と言っているのが実態です。
肝心要の点での「検証なし」、事実と現状を無視してのダムの目的の設定、流域自治体としてのきちんとした検証抜きのダム推進―こうした点を踏まえるならば、立野ダムについては、県としても、あらためて検証をすべきです。
とりわけ事業主体である国交省において、再検証すべきであり、県としてそのことを求めるべきです。
以上で、議員提出議案第9号「立野ダム建設についての再検証を求める意見書」について、提出者の説明を終わります。
熊本県知事 蒲島郁夫様
2013年9月30日
日本共産党熊本県委員会
委員長 久保山啓介
熊本県議会議員 松岡徹
球磨川のダム以外治水対策について
「ダムによらない治水を検討する場」(以下「検討する場」)幹事会が昨年11月開催されて以来、「検討する場」も幹事会も開催されず、球磨川の治水工事も中だるみ状態にあり、ダムなし河川整備計画策定も延び延びになっています。
一方で、「『ダムなし治水』対策を検討してきたが、人吉などでは安全度が低く、これ以上の対策は困難」との見解が国交省から示され、ダムなし治水の先が見えないという雰囲気が広がっています。
県議会でも、「球磨川の治水対策」について、自民党が代表質問、一般質問で、知事を追及するという場面が見られました。
こうした状況は、「ダムなし治水は限界がある。やはり川辺川ダムが必要だ」との極論に飛躍する危険があり、看過できません。
田中信孝人吉市長は、国土交通省あてに、「ダムによらない治水対策に係る要望書」を提出しています。3課題15項目にのぼるものです。回答期限は、10月30日となっています。知事が国交省に求めた「ダム以外治水の極限までの検討」に内容的に合致するものであり、また「人吉は安全度が低い」との国交省見解に対して。地元から再検証を求めたものです。
以上のような状況を踏まえて、「ダムによらない治水」対策の推進をはかるうえで、留意すべき点、具体的な対応等について、提案します。
Ⅰ、今、あらためて、2008年9月11日の県議会本会議での知事発言の重要な意味を思い起こし、共有することが求められています。
①「球磨川は宝」
長くなりますが、知事発言を引用します。
「私にとってこの数ヶ月間は、極めて貴重であったと同時に、苦悩に満ちた時間であったと、いま改めて思います。それは、この問題が、人命の危険や、自然・環境に対してどう向き合うのかという人間社会のあり方を問う、極めて今日的な問題であり、言い換えれば、その選択のいかんによって、これまでの政治や行政のあり方を根本的に変えることになりかねないほど難しい課題であるということを、今、心から感じているからです。」
「そもそも治水とは、流域住民の生命・財産を守ることを目的としています。日本3大急流のひとつ球磨川は、時として猛威をふるい、そこに住む人たちの生命・財産を脅かすことのある川です。だからこそ治水が必要となります。そして、河川管理者である国は、その責任を全うするため、計画的に河川整備に取り組んでいます。このことは、まぎれもなく政治と行政が責任をもって果たすべきものです。
しかし、守るべきものはそれだけでしょうか。私たちは、『生命・財産を守る』というとき、財産を『個人の家や持ち物、公共の建物や設備』と捉えがちです。しかし、いろいろな方々からお話を伺ううちに、人吉・球磨地域に生きる人々にとっては、球磨川そのものが、かけがえのない財産であり、守るべき『宝』なのではないかと思うに至ったのです。
「そのような『球磨川という地域の宝を守りたい』という思いは、そこで生まれ育った者でしか理解できないような価値観かもしれません。全国一律の価値基準として『生命・財産を守るためのダム建設』という命題とは相反するものです。
しかし、この『ローカル』とも言うべき価値観は、球磨川流域に生きる人々にとって、心の中にしっかりと刻みこまれているような気がします。また、その価値を重んじることが、自分の地域を自らが守り、発展させていこうという気概を起こさせることになります。わが国において真の地方自治を実現するためにも、このような地域独自の価値観を大切にする機運を盛り上げていくことが求められているのではないでしょうか」
「私の判断は、過去、現在、未来という民意の流れの中、現在私たちが生きているこの時点から、私たちの世代が見通せる将来までの期間において、県民の幸福のためにいかなる選択が最善かを考えて行ったものです。」
「球磨川は宝」との価値観を基本に、地域をとらえ、現在から未来を展望し、それら全体のなかで「治水」を位置づけるという知事の考え方は、田中信孝人吉市長の「ダム中止」見解にも共通し、下流の日本初の荒瀬ダム撤去事業にもつながるものです。
川辺川ダム中止を表明した知事発言の価値観、理念、ビジョンを、今こそ、流域住民、流域自治体、県民が共有することが重要であり、県としての努力が必要です。
②「ダム以外治水」の極限までの追求
知事は、「川辺川ダム中止」発言のなかで、「住民のニーズに応えうる『ダムによらない治水』のための検討を極限まで追求される姿勢で臨むよう、国土交通省に対し強く求めていきたい」と述べています。
しかし、国土交通省は、極限まで追求していません。具体化していません。
端的な事例が「検討する場」で熊本県が提案した堤防対策です。県は、第2回「検討する場」で、「治水対策の検討の対象として」、「大きく分けて河川の流下流量を増やす河道対策と洪水量を抑える調節施設の2つと考えられます。河道対策の具体的なメニューといたしましては、河床の掘削、堤防の嵩上げ、堤防の引き堤」を提案しています(土木部長)。
第3回「検討する場」では、「堤防嵩上げ以外のメニューの組み合わせによりまして治水効果を計算した結果として、どうしても溢水する箇所が出てくると推定されます。その場合に溢水する箇所や不足する高さを特定した上で堤防嵩上げで対応したい」(河川課長)と述べています。
「人吉地区の安全度が低い」とする国交省の対策は、県の提案を無視したものです。
Ⅱ、提案
①ダム以外治水を極限まで検討するよう国に求めること
1―人吉市内の堤防嵩上げ・補強など
*堤防(パラペット含む)嵩上げ・補強を、実現可能で、効果的な治水対策として積極的に位置づけるべきです。景観などに留意しての嵩上げ、補強を国に求めること。
*堤防嵩上げを後回しにする国交省の「基準」を押し付けないこと。
注 第2回「検討する場」
知事「堤防が決壊する場合というところに、計画高水位ですか、ここまでいくと決壊するという仮定の下ですけども、それはどのくらいの確率なんですか」
八代河川国道事務所長「どの位の確率かといわれると、なかなか私どもも申し上げにくいこともあるんですが 考えとして決して押し付ける場ではございませんが 」
*人吉地区で、70㎝の堤防嵩上げをやれば、毎秒500トンから1000トンの流下能力を増やせます。市房ダムの洪水調節実績と比すと2個分の洪水調節量です。自然環境をこわすことなく僅かな高さを足すことで巨額のダムに匹敵する治水効果をあげます。
宮崎県の大淀川などで景観に考慮した嵩上げがやられています。こうした例も示しながら、人吉市民に対して、今の堤防の高さに、どれぐらいのかさ上げなら許容できますか?
「50cmまでなら」「1mまでなら」「1m以上必要な高さまで」など意向調査を、国・県・市で実施すること。
2―中川原公園を撤去することによる水位低下を検討し、明らかにするよう求めること。そのうえで人吉市民の意向把握を国・県・市で実施すること。
3―瀬戸石ダム撤去による水位低下を検証するよう求めること。
4―田中人吉市長の要望書(8月27日)をはじめ、川をよく知る人吉市民からの意見、提案をくみ上げ、ダム以外治水の安全度向上策に活かすこと。
5―防災、減災のためのソフト対策については、河川管理者である国が、ハード対策と合わせて具体化すべきであり、国のソフト面での対策の整備を求めること。合わせて、県としての対策(流域市町村が取り組むソフト対策に対する財政支援など)の具体化を進めること。
6―ダムなしの河川整備計画の早期の策定を国に求めること。
②やるべき河川改修はスピード感をもって
2008年10月の金子国土交通大臣(当時)と知事の合意に沿って、やるべき治水対策(人吉橋左岸下流部分など)について、国が積極的に予算を組み、スピーデイに進めるよう求めること。
③「ダム中止特措法」の早期制定を国に求めること。
以上
熊本県知事 蒲島郁夫様
2013年9月9日
日本共産党熊本県委員会
委員長 久保山啓介
熊本県議会議員 松岡徹
日本共産党熊本地区委員会
委員長 重松孝文
熊本市議会議員 益田牧子
上野美恵子
那須円
日本共産党北部地区委員会
委員長 松岡勝
阿蘇市議会議員 川端忠義
菊陽町議会議員 小林久美子
大津町議会議員 荒木俊彦
立野ダム建設は中止を
1、立野ダム建設については、日本共産党熊本県委員会として、知事が建設中止の決断をすること、熊本県として、国土交通省(以下、国交省)に対して、流域住民・県民への説明責任、住民参加による立野ダムについての公正・公開の検証を行うよう、働きかけるよう求めてきました。
知事および熊本県も、国交省に対して、再三、県民への説明責任を求めてきました。
ところが、国土交通省は、こうした要請には誠実に対応せず、立野ダム建設準備を進め、37億9千万円の来年度予算の概算要求をしています。
日本共産党熊本市議団が実施している「市民アンケート」の結果は、「賛成」49、「反対」183、「わからない」182、「無回答」93となっています。「理由」では、「必要性・目的が伝わっていない」「自然破壊・税金のムダづかい」「説明が足りないので判断できない」などが多くあげられています。
聞き取りなどの調査の結果、立野ダム建設推進を要望している流域自治体の担当部・課さえも、「立野ダム建設現地を見たことがない」「ごく最近(8月末)、国交省の案内で現地を見た」という実態にあることが明らかになりました。
①熊本県としては、国交省の「自分たちがやる公共事業に、文句は言うな」とばかりの態度に対して、厳しく抗議すべきであるにもかかわらず、流域市町村と共に,立野ダムの本体着工促進要望(8月22日、白川改修・立野ダム建設促進期成会の要望書)に名を連ねたことは容認しがたいことです。
②流域住民、県民はおろか、「ダム推進」自治体の首長、担当者までが、立野ダムのことを「知らない」「現地を見たこともない」中で、国交省だけが躍起になって進めているのが実情です。
あらためて熊本県として、県民への説明責任(川辺川ダムの関する「球磨川・川づくり報告会」は、流域で51回、熊本市・山鹿市で各1回、計53回開催された)を国に求めるべきです。「治水」「安全」「環境」「財政」等について、賛否両方の代表による公開・公正な住民討論集会を開催するよう国に求めるよう要請します。
2、「阿蘇と立野ダム」についての「検証委員会」を設置し検証を
「空港」も「阿蘇熊本空港」と銘打っているように「世界の阿蘇」は熊本の「宝」です。その入り口に高さ90m(県庁62m、熊本城37m)のコンクリートダムができれば景観は一変します。
ところが、「立野ダム建設事業の検証」では、住民の安心安全と並んで重要な「熊本の宝」である「世界の阿蘇」の環境保全、観光振興についての検証が行われていません。検証のやり直しが必要です。
①財団法人日本交通公社の「日本の観光資源の選定」によると「阿蘇山と外輪山」は、九州では屋久島とともに「特A級」(わが国を代表する資源で、かつ世界にも誇示しうるもの。わが国のイメージ構成の基調となりうるもの)となっています。こうした評価がなされるほどの貴重な、素晴らしい自然、環境、文化に満ち溢れているのが阿蘇です。
北向谷原始林は、阿蘇くじゅう国立公園の特別保護地区であり、国指定の天然記念物です。立野峡谷、鮎がえりの滝、数鹿流ケの滝など多くの自然と文化遺産があります。巨大ダムができれば世界文化遺産登録、世界ジオパーク(大地の公園)認定も危うくなり、観光にも大きく影響します。
熊本県の「世界遺産暫定一覧表追加資源に関わる提案書」では、「資産と一体をなす周辺環境については、『国立公園法』に基づいて今後とも指定範囲内全体の保全に努めていく」としています。立野一帯が「保全に努めていく」べき所であることは明らかです。
世界文化遺産として登録されるためには、「顕著な普遍的価値」を有しなければなりません。世界文化遺産にコンクリートの巨大構造物はあいいれません。
ドイツのドレスデン・エルベ渓谷は、2004年世界遺産に登録されました。ところがここに橋をつくる計画がすすめられることになり、ユネスコの世界遺産委員会は、橋ができれば世界遺産としての「顕著で、普遍的な価値」はないとして、2009年、世界遺産リストから抹消しました。 阿蘇につくられるのは、ドレスデンの橋どころではない巨大なコンクリートダムであり、世界文化遺産登録の重大な障害になります。
②「ASO GEOPARK 世界ジオパークネットワーク加盟申請書」(阿蘇ジオパーク推進協議会)には、「地球の息吹を感じるジオサイトの一つとして、外輪山周辺があげられ、関連ジオサイトとして立野峡谷が示されています。柱状節理も広く存在する立野峡谷一帯は、「阿蘇の成り立ちを知るうえでも貴重な場所」「地学の教科書のような場所」との専門家の指摘もあります(「熊日」考・白川第1部検証立野ダム)。
立野峡谷にある柱状節理は、香港ジオパークなどでは、観光面でも貴重な資源となっています。
ジオパークは、地層、地形、断層などを保護し研究にいかし、科学教育や防災教育の場、観光資源として地域振興に活かすことを目的にしています。「ダムの地域を申請しない選択肢も」との説もありますが、かけがえのない保全すべき資源をこわしてのジオパーク認定は本末転倒の類です。島原半島世界ジオパーク説明書では、「ジオパーク内で絶対してはならないこと」として、「自然環境をこわす行為」をあげています。
③北向谷原始林は国立公園内の特別保護地区です。特別保護地区においては、自然景観の維持にとどまらず生態系の維持がもとめられ、現状変更行為は原則として認められないものとされています。
北向山はスダジイ・ウラジロガシなどからなる照葉樹林であり、手つかずの原生林としてのまま残っている数少ない森林の一つです。だから国の天然記念物にも指定されているのです。
特別保護地区、天然記念物が、ダム堤によって直接壊され、試験湛水(半年から1年間)などによって壊せれます。益田川ダム視察で、試験湛水により樹木の枯渇を直接確認してきました。
貴重な自然、環境を守り、未来に手渡すのは、今を生きるものの責任です。
④2013年度の「県民アンケート」の結果は、県民の多くが「観光に大きな期待を持っていることを際立たせました。
「活力をつくる」では、「最も力を入れてほしい」こととして「観光客を呼び込む施策」77・2%、「アジアとつながる」では、「観光客を増やす」が603%と、いずれもトップを占めています。
熊本県は、「ようこそ熊本観光立憲条例」を定め、「魅力ある観光地の形成」などをうたっています。さらに「ようこそ熊本観光立県推進計画」では、第1に「世界的観光資源『阿蘇』を活用したブランドイメージの形成」をあげています。
北向谷原始林、柱状節理、鮎帰りの滝、数鹿流ケの滝、立野橋梁、トレッキングなど、立野峡谷は、阿蘇観光の重要なサイトとなりうる価値を持ったものです。
トロッコ列車で知られる南阿蘇鉄道の立野橋梁、第1白川橋梁は、観光資源としても、鉄道遺産としても貴重なものです。
川辺川ダム建設中止を決めた球磨川では、ラフテングが盛況で、人吉球磨観光を牽引しています。立野峡谷一帯で盛んになってきているキャニオニングは、全国有数のキャニオニングスポットにもなりうる大きな可能性を持っています。
「世界の阿蘇」は、熊本が将来にわたって発展するうえで決定的な役割を担っています。立野ダム建設は熊本の「百年の計」をこわすものです。
3、白川を、アユが上り下りする、県民に愛される川に
白川はダムがない貴重な1級河川です。黒川と合流した白川は、中流部では、瀬と淵が多くあり、オイカワ、カワムツ、モズクガニなどが生息し、砂礫地にはツルヨシなどが生息しています。熊本平野にはいると緩やかな流れとなり、コイ、ギンブナ、ガマカツ、アユが生息し、河口付近ではムツゴロウ、サッパ、マゴチなどが見られます。白川は様々な動植物の生息・生育の場であり、県民の憩いの空間です。
同時に白川は、阿蘇の火山灰が大量に流入し、堆積し、流下するという特性を持っています。学識者による阿蘇火山の噴火による火山灰と白川の水害の関連も指摘されており、土砂の堆積については特別な検証が必要です。
「立野ダムの検証報告」では、「一時的に堆積した土砂はダム下流へ流下する」となっていますが、これは机上の結論であり実証ではなく、「堆積土砂で、雨のたびに白川が濁水化する」との懸念は払しょくされていません。内部検証ではなく、部外者も入れて改めての検証を国交省に求めるべきです。
白川の河口から大津まで7つの堰があります(井桶山、十八口、三本松、渡鹿、馬場楠、津久礼、迫玉岡、瀬田(下井手)、上井手)。これらの堰を鮎、ウナギなどが上下流出るようにし、豊かな白川再生をはかるよう国交省に求めるよう要請します。
4、県民の安全と貴重な環境を、穴あきダムに託すことはできません。
「穴あきダムは環境にやさしい」ということが言われますが、実証されたものではありません。島根県の益田川ダムの視察の際、明らかになったのは、モニタリングは運用開始直後に行ったものだけで、その比較対象となるダム運用以前のデータは、ダム工事実施中の4~5年間のものだけで、期間が短かすぎて、環境への影響の検証に値するものではありませんでした。
立野ダムの場合、5メートルの放流口が3つ設けられるようになっていますが、流木、土石礫等でつまり、「穴あきダム」機能の喪失による被害の拡大、水位の上下動による護岸の崩落、動植物生息環境の破壊、中小洪水カットによる下流環境の破壊など様々な問題が懸念されています。これらについても内部検証だけで、開かれた公正な検証はなされていません。
地質の専門家からは、公聴会で、左岸側は断層系があるということ。「系」がつくというのは1本ではないということ。断層というのは非常に複雑な構造をしていて、図上で一本線を引いて、そこに一本あるだけではなく、様々な枝の断層があること。破砕帯もあり、200m、300mと離れただけで、ただの亀裂から破砕帯と、非常にめまぐるしく変わること。右岸側は、立野溶岩で、柱状節理が発達したものがある。溶岩というのは地層のように1枚でどこまでも続くものでなく、しかも立野はカルデラの切れ目であって、過去に洪水が起きて谷が出来て、その中を溶岩が埋めたという非常に複雑な履歴を持っていること。溶岩と溶岩の間、溶岩と基盤の間は、不連続面であり力学的に脆弱になることなどが指摘され、精密に調査されているのか―との疑問が投げかけられています。ことは安全にかかわる問題であり、内部の検証だけではなく、地質の専門家間での公正な検証が必要です。
5、中流域を、立野ダムによる洪水防御対象から除いた国の責任が問われている
「立野ダム建設計画検証報告」中、「立野ダムの目的」を説明する図表では、想定氾濫区域を熊本市の小碩橋下流としています。立野ダムは、小碩橋下流の氾濫を防ぐことを目的につくられるということです。ここに根本の問題があります。龍田陳内をはじめとする小碩橋から上流の熊本市域、菊陽・大津地域の2012年「7・12」水害は、国によって「想定氾濫区域」から除かれてきたことによる人災と言えるものです。立野ダムの目的から外されている中流域では、ダム建設はそもそもあてにできないということです。
中流域の河川改修等が遅れたもう一つの理由は、「上下流バランス」「河川改修は下流から」ということで放置されてきたからです。
国交省九州地方整備局「床上浸水対策特別緊急事業」概要は、「水害とひとくちにいってもいろいろな被害がありますが、床上以上の浸水被害を受けると家具や電化製品などの家財道具のほとんどが使用不能となり、経済的、精神的に大きなダメージを受けます。このため、このような大出水の被害を受けた区域を一日も早く減らすため、5年という短期間に予算を集中投資し、事業を行うことで、水害対策の効果を早期に発揮させようとするものです」と記しています。この「床上浸水対策特別緊急事業」として、各地で、河道掘削、護岸の整備、橋の架け替え、調整池整備などがなされています。こうした制度、事業があるにもかかわらず、「上下流バランス」ということで、白川中流域では「床上浸水対策特別緊急事業」がなされてきませんでした。この点でも、白川中流域での「7・12」水害は人災と言えるものです。
白川中流域(菊陽、大津)を河川整備計画に組み入れ、河道の拡幅、河床掘削、堤防、調整池・地整備などを5年間で実施することを国に求めるよう要請します。
6、昨年の「7・12」大災害で、阿蘇は甚大な被害にあいました。今なお復旧・復興の過程の中にあり、多くの困難が立ちはだかっています。その中から立ち上がり、阿蘇の未来を拓こうと、様々な努力がなされています。世界ジオパーク認定で阿蘇の元気を取り戻そう。阿蘇の振興をはかろうというのもその一つです。阿蘇の市町村の真剣な取り組みを国、県妨害するに等しい役割をしているのが立野ダム建設計画であることを厳しく指摘します。
7、2012年「7・12」災害による熊本県内の死者(23人)・行方不明者(2人)は、すべて土石流・崖崩れによるものです。
国土交通省が真剣に、正面から取り組むべき課題は、「治山」の抜本策です。立野ダム建設は中止し、立野ダムに費やす人とカネの一定部分を「治山」に充て、土石流・崖崩れ対策の抜本的強化をはかることこそ、国民と国土の安全のため省である国土交通省のやるべきことです。「治山」対策について、国としての取り組み強化を要請するよう求めます。
以上
国土交通大臣 太田昭宏様
国土交通省九州地方整備局長 吉崎収様
2013年9月4日
日本共産党熊本県委員会
委員長 久保山啓介
熊本県議会議員 松岡徹
日本共産党熊本地区委員会
委員長 重松孝文
熊本市議会議員 益田牧子
上野美恵子
那須円
日本共産党北部地区委員会
委員長 松岡勝
阿蘇市議会議員 川端忠義
菊陽町議会議員 小林久美子
大津町議会議員 荒木俊彦
立野ダム建設は中止を
1、立野ダム建設については、昨年8月10日、9月20日、日本共産党熊本県委員会として、建設中止を申し入れ、流域住民・県民への説明責任、住民参加による立野ダムについての公正・公開の検証を求めてきました。
熊本県も、再三、県民への説明責任を求めてきました。
日本共産党熊本市議団が実施している「市民アンケート」の結果は、「賛成」49、「反対」183、「わからない」182、「無回答」93となっています。「理由」では、「必要性・目的が伝わっていない」「自然破壊・税金のムダづかい」「説明が足りないので判断できない」などが多くあげられています。
にもかかわらず、国土交通省は、説明責任を果たさず、住民参加の検証機会も設定せず、立野ダム建設準備を進め、37億円余の来年度予算の概算要求をしています。
日本共産党は、国土交通省の「自分たちがやる公共事業に、文句は言うな」とばかりの態度に対して、厳しく抗議するものです。
2、「空港」も「阿蘇熊本空港」と銘打っているように「世界の阿蘇」は熊本の「宝」です。その入り口に高さ90m(県庁62m、熊本城37m)のコンクリートダムができれば景観は一変します。北向谷原始林は、阿蘇くじゅう国立公園の特別保護地区であり、国指定の天然記念物です。立野峡谷、鮎がえりの滝、数鹿流ケの滝など多くの自然と文化遺産があります。巨大ダムができれば世界文化遺産登録、世界ジオパーク(大地の公園)認定も危うくなり、観光にも大きく影響します。
ところが、「立野ダム建設事業の検証」では、住民の安心安全と並んで重要な「熊本の宝」である「世界の阿蘇」の環境保全、観光振興についての検証が行われていません。検証のやり直しが必要です。
①財団法人日本交通公社の「日本の観光資源の選定」によると「阿蘇山と外輪山」は、九州では屋久島とともに「特A級」(わが国を代表する資源で、かつ世界にも誇示しうるもの。わが国のイメージ構成の基調となりうるもの)となっています。こうした評価がなされるほどの貴重な、素晴らしい自然、環境、文化に満ち溢れているのが阿蘇です。
熊本県の「世界遺産暫定一覧表追加資源に関わる提案書」では、「資産と一体をなす周辺環境については、『国立公園法』に基づいて今後とも指定範囲内全体の保全に努めていく」としています。立野一帯が「保全に努めていく」べき所であることは明らかです。
世界文化遺産として登録されるためには、「顕著な普遍的価値」を有しなければなりません。世界文化遺産にコンクリートの巨大構造物はあいいれません。
ドイツのドレスデン・エルベ渓谷は、2004年世界遺産に登録されました。ところがここに橋をつくる計画がすすめられることになり、ユネスコの世界遺産委員会は、橋ができれば世界遺産としての「顕著で、普遍的な価値」はないとして、2009年、世界遺産リストから抹消しました。 阿蘇につくられるのは、ドレスデンの橋どころではない巨大なコンクリートダムであり、世界文化遺産登録の重大な障害になります。
②「ASO GEOPARK 世界ジオパークネットワーク加盟申請書」(阿蘇ジオパーク推進協議会)には、「地球の息吹を感じるジオサイトの一つとして、外輪山周辺があげられ、関連ジオサイトとして立野峡谷が示されています。柱状節理も広く存在する立野峡谷一帯は、「阿蘇の成り立ちを知るうえでも貴重な場所」「地学の教科書のような場所」との専門家の指摘もあります(「熊日」考・白川第1部検証立野ダム)。
立野峡谷にある柱状節理は、香港ジオパークなどでは、観光面でも貴重な資源となっています。
ジオパークは、地層、地形、断層などを保護し研究にいかし、科学教育や防災教育の場、観光資源として地域振興に活かすことを目的にしています。
立野峡谷にある柱状節理は、地質研究、教育のうえでも、香港ジオパーク、済州島ジオパークのように観光面でも貴重な資源となるものです。
鮎返りの滝は、立野溶岩、赤瀬溶岩より以前の溶岩(「鮎返り溶岩」)であり、阿蘇のなかで最古の溶岩でできています。数鹿流ケの滝は、浸食により黒川、白川の合流点より1750m後退し現在地にあるもので、「世界の阿蘇」のスケールを彷彿させるものです。
「ダムの地域を申請しない選択肢も」との説もありますが、かけがえのない保全すべき環境、資源をこわしてのジオパーク認定は本末転倒の類です。島原半島世界ジオパーク説明書では、「ジオパーク内で絶対してはならないこと」として、「自然環境をこわす行為」をあげています。
③北向谷原始林は国立公園内の特別保護地区です。特別保護地区においては、自然景観の維持にとどまらず生態系の維持がもとめられ、現状変更行為は原則として認められないものとされています。
北向山はスダジイ・ウラジロガシなどからなる照葉樹林であり、手つかずの原生林としてのまま残っている数少ない森林の一つです。だから国の天然記念物にも指定されているのです。
特別保護地区、天然記念物が、ダム堤によって直接壊され、試験湛水(半年から1年間)などによって壊せれます。益田川ダム視察で、試験湛水により樹木の枯渇を直接確認してきました。
貴重な自然、環境を守り、未来に手渡すすのは、今を生きるものの責任です。
④2013年度の「県民アンケート」の結果は、県民の多くが「観光に大きな期待を持っていることを際立たせました。
「活力をつくる」では、「最も力を入れてほしい」こととして「観光客を呼び込む施策」77・2%、「アジアとつながる」では、「観光客を増やす」が60・3%と、いずれもトップを占めています。
熊本県は、「ようこそ熊本観光立憲条例」を定め、「魅力ある観光地の形成」などをうたっています。さらに「ようこそ熊本観光立県推進計画」では、第1に「世界的観光資源『阿蘇』を活用したブランドイメージの形成」をあげています。
北向谷原始林、柱状節理、鮎帰りの滝、数鹿流ケの滝、立野橋梁、トレッキングなど、立野峡谷は、阿蘇観光の重要なサイトとなりうる価値を持ったものです。
南阿蘇鉄道のトロッコ列車は阿蘇観光の人気スポットの一つです。立野橋梁、第1白川橋梁は、観光資源としても、鉄道遺産としても貴重なものです。
川辺川ダム建設中止を決めた球磨川では、ラフテングが盛況で、人吉球磨観光を牽引しています。立野峡谷一帯で盛んになってきているキャニオニングは大きな可能性を持っています。
「世界の阿蘇」は、熊本が将来にわたって発展するうえで決定的な役割を担っています。立野ダム建設は熊本の「百年の計」をこわすものです。
3、白川を、アユが上り下りする、県民に愛される川に
白川はダムがない貴重な1級河川です。黒川と合流した白川は、中流部では、瀬と淵が多くあり、オイカワ、カワムツ、モズクガニなどが生息し、砂礫地にはツルヨシなどが生息しています。熊本平野にはいると緩やかな流れとなり、コイ、ギンブナ、ガマカツ、アユが生息し、河口付近ではムツゴロウ、サッパ、マゴチなどが見られます。白川は様々な動植物の生息・生育の場であり、県民の憩いの空間です。
同時に白川は、阿蘇の火山灰が大量に流入し、堆積し、流下するという特性を持っています。学識者による阿蘇火山の噴火による火山灰と白川の水害の関連も指摘されており、土砂の堆積については特別な検証が必要です。
「立野ダムの検証報告」では、「一時的に堆積した土砂はダム下流へ流下する」となっていますが、これは机上の結論であり実証ではなく、「堆積土砂で、雨のたびに白川が濁水化する」との懸念は払しょくされていません。内部検証ではなく、部外者も入れた改めての検証が必要です。
白川の河口から大津まで7つの堰があります(井桶山、十八口、三本松、渡鹿、馬場楠、津久礼、迫玉岡、瀬田(下井手)、上井手)。これらの堰を鮎、ウナギなどが上下流出るようにし、豊かな白川再生をはかるよう求めます。
立野ダム建設は、白川の再生を妨げるものです。
4、県民の安全と貴重な環境を、穴あきダムに託すことはできません。
「穴あきダムは環境にやさしい」ということが言われますが、実証されたものではありません。島根県の益田川ダムの視察の際、明らかになったのは、モニタリングは運用開始直後に行ったものだけで、その比較対象となるダム運用以前のデータは、ダム工事実施中の4~5年間のものだけで、期間が短かすぎて、環境への影響の検証に値するものではありませんでした。
想定外の洪水には、立野ダムは役割を果たせません。立野ダムの場合、5メートルの放流口が3つ設けられるようになっていますが、流木、土石礫等でつまり、「穴あきダム」機能の喪失による被害の拡大、水位の上下動による護岸の崩落、動植物生息環境の破壊、中小洪水カットによる下流環境の破壊など様々な問題が懸念されています。これらについても内部検証だけで、開かれた公正な検証はなされていません。
地質の専門家からは、公聴会で、左岸側は断層系があるということ。「系」がつくというのは1本ではないということ。断層というのは非常に複雑な構造をしていて、図上で一本線を引いて、そこに一本あるだけではなく、様々な枝の断層があること。破砕帯もあり、200m、300mと離れただけで、ただの亀裂から破砕帯と、非常にめまぐるしく変わること。右岸側は、立野溶岩で、柱状節理が発達したものがある。溶岩というのは地層のように1枚でどこまでも続くものでなく、しかも立野はカルデラの切れ目であって、過去に洪水が起きて谷が出来て、その中を溶岩が埋めたという非常に複雑な履歴を持っていること。溶岩と溶岩の間、溶岩と基盤の間は、不連続面であり力学的に脆弱になることなどが指摘され、精密に調査されているのか―との疑問が投げかけられています。ことは安全にかかわる問題であり、内部の検証だけではなく、地質の専門家間での公正な検証が必要です。
5、中流域を、立野ダムによる洪水防御対象から除いた国の責任が問われている
「立野ダム建設計画検証報告」中、「立野ダムの目的」を説明する図表では、想定氾濫区域を熊本市の小碩橋下流としています。立野ダムは、小碩橋下流の氾濫を防ぐことを目的につくられるということです。ここに根本の問題があります。龍田陳内をはじめとする小碩橋から上流の熊本市域、菊陽・大津地域の2012年「7・12」水害は、国によって「想定氾濫区域」から除かれてきたことによる人災と言えるものです。立野ダムの目的から外されている中流域では、ダム建設はそもそもあてにできないということです。
中流域の河川改修等が遅れたもう一つの理由は、「上下流バランス」「河川改修は下流から」ということで放置されてきたからです。
国交省九州地方整備局「床上浸水対策特別緊急事業」概要は、「水害とひとくちにいってもいろいろな被害がありますが、床上以上の浸水被害を受けると家具や電化製品などの家財道具のほとんどが使用不能となり、経済的、精神的に大きなダメージを受けます。このため、このような大出水の被害を受けた区域を一日も早く減らすため、5年という短期間に予算を集中投資し、事業を行うことで、水害対策の効果を早期に発揮させようとするものです」と記しています。この「床上浸水対策特別緊急事業」として、各地で、河道掘削、護岸の整備、橋の架け替え、調整池整備などがなされています。こうした制度、事業があるにもかかわらず、「上下流バランス」ということで、白川中流域では「床上浸水対策特別緊急事業」がなされてきませんでした。この点でも、白川中流域での「7・12」水害は人災と言えるものです。
白川中流域を河川整備計画に組み入れ、河道の拡幅、河床掘削、堤防、調整池・地整備などを5年間で実施することを求めます。
6、昨年の「7・12」大災害で、阿蘇は甚大な被害にあいました。今なお復旧・復興の過程の中にあり、多くの困難が立ちはだかっています。その中から立ち上がり、阿蘇の未来を拓こうと、様々な努力がなされています。世界ジオパーク認定で阿蘇の元気を取り戻そう。阿蘇の振興をはかろうというのもその一つです。阿蘇の市町村の真剣な取り組みを国が妨害するに等しい役割をしているのが立野ダム建設計画であることを厳しく指摘しておきます。
7、立野ダム計画は中止し、説明責任の履行、公開・公正な住民討論集会での検証を
2~5、にわたって述べたように、立野ダム建設については、公開・公正な全面的な検証が必要です。
①「阿蘇と観光」については、関係自治体、環境・経済・観光などの有識者、観光関係者などをいれた検証委員会を設置し、検証を進めることを提案します。
②立野ダム問題についての説明責任の履行(川辺川ダムの関する「球磨川・川づくり報告会」は、流域で51回、熊本市・山鹿市で各1回、計53回開催された)を求めます。
当該県である熊本県および知事の再三の要請に背を向けるとは断じて容認できません。
③「治水」「安全」「環境」「財政」等について、賛否両方の代表による公開・公正な住民討論集会を開催するよう求めます。
④立野ダムの洪水調整は、毎秒3400トンに対して400トン(11・76%)、2300トンに対して200トン(8・69%)です。ダム以外治水を具体化している川辺川ダム(7000トンに対して3000トン、42・85%)に比べるとはるかに低いものです。
国土交通省として、環境、景観、観光・経済、安全等々、幾重にも問題がある立野ダム計画については、あらためて再検討することを求めます。そのためにも、開かれた、公平公正な検証が必要です。
8、2012年「7・12」災害による熊本県内の死者(23人)・行方不明者(2人)は、すべて土石流・崖崩れによるものです。
国土交通省が真剣に、正面から取り組むべき課題は、「治山」の抜本策です。立野ダム建設は中止し、立野ダムに費やす人とカネの一定部分を「治山」に充て、土石流・崖崩れ対策の抜本的強化をはかることこそ、国民と国土の安全のため省である国土交通省のやるべきことです。
以上
熊本県議会議長 藤川隆夫様
2013年4月26日
日本共産党熊本県委員会
委員長 久保山啓介
県議会議員 松岡徹
最高裁水俣病判決を受けて、臨時県議会を開き審議することについての申し入れ
1、2013年4月16日、最高裁第3小法廷は、水俣市の女性を水俣病患者と認定するように県に命じた福岡高裁判決を支持し、県の上告を棄却しました。
熊本県が行ってきた1977年認定基準にもとづく水俣病審査が根底から問われています。
この問題については、県議会としても、早急かつ十分な審議が必要です。
24日、経済環境常任委員会が開かれましたが、2人の委員からの発言で合わせてわずか6分間程度のものでした。これでは県民から負託された県議会の役割を果たしているとは言えません。
2、地方自治法第101条2項は、「議長は、議会運営委員会の議決を経て、当該普通地方公共団体の長に対し、会議に付議すべき事件を示して臨時会の招集を請求することができる」と定めています。
議長におかれては、この規定にもとづき臨時県議会開会の手続きを進められるよう要請するものです。
熊本県知事 蒲島郁夫様
2013年4月23日
日本共産党熊本県委員会
委員長 久保山啓介
国政対策委員長 山本伸裕
県議会議員 松岡徹
不知火海沿岸地方議員団
水俣病 最高裁判決を受けての対応について
1、2013年4月16日、最高裁第3小法廷は、水俣市の女性を水俣病患者と認定するように県に命じた福岡高裁判決を支持し、県の上告を棄却しました。
また、水俣市出身の大阪府の女性を患者認定しなかった大阪高裁判決を破棄し、審理を高裁に差し戻す判決を言い渡しました。
最高裁は、1977年の国の認定基準について「複数症状の組み合わせがなく、手足の感覚障害のみの水俣病が存在しないという科学的な証拠はない」とし、「症状の組み合わせが認められない場合でも、証拠を総合検討した上で、個別の判断で水俣病と認定する余地」を認めました。
今回の最高裁判決は、40年にわたってなされてきた水俣病認定のあり方を厳しくただしたものであり、国・県は、水俣病審査のあり方を根本的に見直すべきです。
水俣病の真の解決のためには、不知火海沿岸に居住歴のあるすべての住民の健康調査を、国と県の責任で行うこと、認定判断条件をあらため、司法による救済を含め、すべての水俣病被害者を救済する恒久的枠組みをつくること国に求め、国とともにとりくむことを求めます。
2、最高裁判決を受けて、蒲島知事は、国の判断基準については、「法律解釈の権限を有する国に判断を求める」と述べていますが、処分権者として無責任極まりないものです。
知事は会見で、「ご本人(溝口さん)とご遺族に謝罪し、速やかに認定しなければと思った」「申し訳ない気持ちでいっぱいだ」とも発言しています。
個々の対応は当然です。同時に、熊本県は、現行の認定基準による審査で多数の水俣病患者を切り捨ててきたのであり、その反省にうえにたって、認定のあり方の見直しについて、主体的に方針をもって国に求めていくべきです。
2004年10月15日の関西訴訟最高裁判決を受けて、熊本県は、「今後の水俣病対策について」と題する見解・方針を明らかにし、小池百合子環境大臣(当時)に対して、「去る10月15日、最高裁判所において水俣病関西訴訟の判決が言い渡され、水俣病の被害拡大を防ぐことができなかったことについて、国及び熊本県の国家賠償上の責任が確定しました。国と県は、この判決を真摯に受け止め、今後の水俣病対策を行っていく必要があります。
本県としましては、このような認識を踏まえ、今後の水俣病対策について、取りまとめを行いました。今後、県としてはこの対策実現に向けて誠心誠意取組んでまいります。
また、県と同じく責任が認められた国においても、国としての責任を積極的に果たされるとともに、本件の対策の実現に向けて、お取り組み頂くようお願い申し上げます。
なお、水俣病の判断条件については国の所管事項でありますが、今回の判決によって公害健康被害補償法による判断基準とは別個に司法上の救済の考え方が存在することになり、直接、公害健康被害補償法による水俣病の認定業務に携わる本県としまして、従来と同様の形で事務を処理することは困難な状況になっており、このような実情を踏まえ国としての対応をお願いします」と求めています。
潮谷知事(当時)は、県議会に対する説明で、「県といたしましては、この判決(最高裁判決」を真摯に受けとめ、その責任を果たすために、地元の県として何ができるか、また、国と共同して何ができるかなどを十分考慮して、県として実現に向けて努力していきたいと考え、水俣病対策案を策定いたしました」と述べています。
蒲島知事は、水俣病特措法にもとづく申請締め切り、「非該当者」の異議申し立てについて、「国の判断」「国の解釈」を盾に、水俣病患者、被害者団体などの要求・要望をかたくなに退けてきました。そこには「地元の県」としての重い責任の自覚と主体性、すべての水俣病被害者救済への熱意、決意が見られません。
今回の歴史的な最高裁判決に際しても変わらぬ知事の姿勢に対して、厳しく批判し、即刻、態度を改めることを強く求めるものです。
3、最高裁判決を受けての県の対応・方針について、県議会での審議が必要であり、臨時県議会を招集すべきです。
2004年の最高裁判決の際は、特別委員会とは別に「全員協議会」が開かれ、知事・環境生活部長の説明、自民党、県民クラブ、公明党、日本共産党、新社会党の質疑がなされています。本来臨時議会を招集すべきですが、少なくとも2004年レベルの県議会との協議の場を持つべきだと考えます。速やかな対応を求めます。
熊本県知事 蒲島郁夫様
2013年3月5日
日本共産党熊本県委員会
委員長 久保山啓介
国政対策委員長 山本伸裕
県議会議員 松岡徹
オスプレイの低空飛行訓練との中止を求めていただきたい
在日米軍は28日、日本政府に対し、3月6~8日に米海兵隊普天間基地(沖縄県宜野湾市)所属の垂直離着陸機MV22オスプレイ3機を岩国基地(山口県岩国市)に移し、低空飛行訓練を行うことを明らかにしました。
訓練場所は「未定」としていますが、岩国基地を拠点とした場合、熊本県を含む「イエロールート」での訓練が予想されます。
オスプレイは、危険な欠陥機であるうえに、その訓練は、沖縄配備後、日米合意に背き、市街地上空でなされるなど、住民の安全を無視したものでした。
低空飛行訓練だけでなく、夜間飛行訓練や兵員・物資の輸送訓練など様々な訓練が実施される可能性が指摘されています。
しかも訓練ルートは明らかにされていません。
知事に対して、以下の点を要請します。
(1)2重、3重に危険な、オスプレイの訓練に対して、知事として、中止を求めていただきたい。米軍、政府に要請するとともに、知事会、県内市町村に対して、連携を呼びかけていただきたい。
(2)不当にも、訓練が強行されたら
①直ちに「抗議声明」をだし、中止を求める発信をしていただきたい。
②全県的な監視体制を強化し、ルート、高度、騒音等を把握、計測し、明らかにしていただきたい。
第2回県議会活性化検討会(1月28日)で、県議会改革について、10項目の提案を行いました。
深く、活発に審議する議会へ
①一般質問の機会と時間を増やす。
4年間で6回、一回1時間(質問、答弁あわせて)は、少なすぎる。短すぎる。
②常任委員会審議の充実。
定例会中の常任委員会―ほぼ半日、1日以内という現状を改め、執行部の説明、質疑後の審議時間を充実させ日程(2日間)をフルに活用する。
閉会中―月一回開き、閉会中審査、情勢への対応責任を果たす。
県民に開かれた県議会へ
①「県議会だより」の発行と配布、インターネット掲載
②議会傍聴者への資料配布。
③常任委員会・特別委員会の傍聴席を増やす。
④一般質問の際のパネル等のスクリーンでの映写
⑤採決に対する賛否の会派・議員ごとの公開
少数会派の配慮
①常任委員会の分割開催(一日3委員会)。所属委員会以外の傍聴可能に
②議会運営員会へのオブザーバー参加(現在は「傍聴」)
議会経費の倹約
①応招費については、交通費実費とする。なお熊本市内は廃止とする。
②海外視察の凍結の継続。