山本伸裕

議会質問・討論・意見書 2023年   山本のぶひろの動画


2023年2月熊本県議会 地下水問題について

印刷用PDFをダウンロードするには、ここをクリック(427kb)
 2023年2月熊本県議会 地下水問題について質疑
 
 日本共産党の山本伸裕です。知事が議案説明で言われました、地下水の保全についてお尋ねします。
 私は昨年12月県議会の一般質問において、地下水の枯渇、および汚染の懸念について指摘をさせていただきました。環境生活部長は、取水量に見合う涵養対策をはじめ様々な対策で地下水への影響が生じないよう取り組むと答弁されました。しかし地下水涵養域における一連の開発によって、いったいどれだけの涵養量が失われることになるのかを明らかにしなければ、地下水保全策と言ってもそれが涵養量の減少に見合った十分な対策になるのかどうか、判断できないのではないでしょうか。TSMC進出に伴う関連企業も含めた企業立地・誘致計画、工業団地造成の計画、道路の延伸・拡幅、くまもと空港アクセス鉄道、大空港構想など一連の開発によって今後どれだけの涵養域が失われ、涵養量が減少するのかについて調査し、明らかにする必要があると私は思います。そして涵養地域においては無制限な企業立地や開発を見直し、一定の規制をおこなうことがどうしても今後必要になってくると思いますがいかがでしょうか。地下水をどう守っていくのか、知事の見解を伺います。
 次に半導体製造に伴う地下水汚染の懸念についてお尋ねします。半導体の製造において、PFASと総称される有機フッ素化合物が使用されております。PFASは自然界や体内で分解されにくく、一度生成されるとそれはなくなることなく蓄積され、極端な温度や腐食にも長期間耐えることから、永遠の化学物質と言われています。さらにPFASは、たとえわずかな量であってもがんや低体重出産、ホルモン機能障害、免疫システムの低下などの重大な健康被害を引き起こすことが指摘されており、欧米諸国ではPFASの使用を規制する動きを加速させています。
 そこで第二の質問ですが、熊本県はこれまでも、経済対策として半導体関連企業の誘致を戦略的に推進してきたことを考えると、既設の半導体関連企業についても、これまでPFASがどれくらいの期間、どれだけの量が使用されてきたのか、その処理はどのように行なわれてきたのかについて明らかにさせるとともに、周辺地域の土壌、地下水、大気の調査を実施すべきではないかと考えますがいかがでしょうか。お答えください。
 第三に、工場からの排水問題についてであります。環境生活部長は12月議会で、私の質問に対し、規制基準を順守した下水道への排出ということを言われました。しかしそもそもPFASについては、排水の規制基準自体が定められていないのではありませんか。つまり極論すれば、どれだけPFASを含んだ排水を流しても、現行ルールではそれを規制することはできないのではないでしょうか。ただちに県独自にでもPFASの排水を規制するルールをつくるべきではないでしょうか。そして関連産業も含め、PFASの使用・排水の規制を定めた協定を取り交わすべきではないでしょうか。
 以上三点、知事にお尋ねします。
 
 (知事答弁)
 
 地下水は熊本都市圏100万人の生活と産業を支える、未来に守り継がなければならないかけがえのない熊本の宝です。この地下水について、正確な需給状況の把握は難しいですが、県では、観測井戸を県内各地に設け、水位を継続的に観測しております。平成16年に、白川中流域等で、人工的な地下水涵養を開始し、その後県の観測井戸の水位は、多くは回復傾向にあります。また先日、県の環境審議会の会長で、地下水の第一人者である熊本大学の島田名誉教授から、熊本の地域の地下水量は、琵琶湖の1.6倍程度にのぼる。莫大な量だが、現状のバランスを確保し、持続的に使うしくみづくりが必要、との研究成果が示されました。私はこの熊本独自の地質によって育まれた地下水を活用した経済発展と、地下水保全の両立を目指し、取り組みを進めてまいります。
 まずJASMにおいては、持続的な取り組みとして、リサイクルによる取水量の抑制と、取水量を超える涵養と自ら発表されています。県ではこの取水量を超える地下水涵養が着実に実現されるよう、白川中流域の関係市町や団体と連携し、しっかりと取り組んで参ります。
 今後、当該地域を中心に、半導体関連の企業集積が期待されます。そのため、JASM周辺の地下水を観測する井戸を新たに設置するとともに、熊本地域の地質、取水量や涵養量をもとに、大学等と連携したシミュレーションを行い、涵養効果や課題等を確認します。
 さらに農地以外における地下水涵養の取り組みとして、工業用地や宅地等への〇〇、また雨水浸透桝の設置を促進いたします。また地下水の使用量を抑制するため、竜門ダムを水源とする有明工業用水の未利用水の活用についても検討を開始したところです。 
 私は熊本の地下水を守るため、これらの取り組みを一つ一つ実現し、持続的に地下水を活用できる体制を構築してまいります。
 次に地下水の汚染、および排水についてお尋ねします。有機フッ素化合物であるPFASは、半導体製造過程以外でも、泡消火剤、撥水剤など幅広く活用されてきました。ただ安定性が高く、分解されにくいため、生物への蓄積性が指摘されています。PFASには多くの種類があります。このうち、健康において懸念されているのがPFOSとPFOAについてです。この二つについては国際条約で輸入や製造が禁止されており、JASMにおいても使用されないことを確認しています。なお県内において過去にPFOS、およびPFOAが使用されたことも考えられることから、毎年度行う有害物質調査の一項目として加え、県内の状況を継続的に把握する方向で検討しています。いっぽうでその他のPFASについては、国際条約の締結国会議において、その取扱いが議論されている状況です。
 県としては今後、条約等による国際的な規制の動きや、国から発信される情報、および全国的な検出状況等踏まえて、適切に対応してまいります。また関係する市町と連携しながら、法律や条例に基づき、適切に監視していくことで、熊本の宝である地下水や豊かな自然を全力で守ってまいります。
 
 (山本再登壇、切り返し)
 
 三点、お尋ねしましたがそれに対するご回答は残念ながらありませんでした。まず一点目、開発によってどれだけ地下水涵養域が失われ、涵養量が減少することになるのか、こうした検証もなしに涵養地域をつぶしていくことは将来に禍根を残すことになりかねないことを私は訴えたいと思います。二点目、PFOSおよびPFOAが使用されていないということは私も承知しております。しかしPFASは国際機関が特定しているだけでも4,700種類以上が存在しているわけであります。半導体の製造工程においては登録商標フロリナートという、PFASの一種であるフッ素系不活性液体が使用されていることは周知の事実であります。既設の半導体企業で一体どれくらいのPFASが使われ、どのような排水処理がなされてきたのか、私が聞いたことにはお答えいただけず、聞いてもいないことをお答えになったのは残念であります。三点目の排水規制については、PFASの取り扱いについて国際的な動き、国の情報を踏まえて対応する、とのことでありますが、環境生活部長の12月答弁では、国の法律よりも厳しい規制基準で、環境汚染の防止を図り、熊本の宝である地下水を守る、と勇ましくお答えになったことと比べ、かなりトーンダウンされているのではないでしょうか。水俣病という公害被害をもたらした熊本県として、国に先駆けて環境汚染対策については強い姿勢で臨むべきではないかと思います。 地下水の汚染の危険性については過去の文献でも警鐘が鳴らされています。熊本県と熊本地域11市町村が策定した熊本地域総合地下水管理計画には次のように書かれています。阿蘇大噴火による火災流堆積物は、浸透性の高い地質であり、有害物質を含むあらゆる物質が侵入しやすい地質となっている。特に地下水プールにあたる白川中流域は、漏出した汚染物質も容易に深層に達する恐れがある。また砥川溶岩は多孔質で極めて透水性が高いため、汚染が短期間に広範囲に拡大する恐れがある―との指摘であります。いったん地下に有害物質が浸透してしまったら、短期間に広範囲に拡大する恐れがあり、そこにPFASが漏出してしまったら、それこそ取り返しがつかない事態になるのではないでしょうか。
 過去には熊本の地下水が汚染の危機に見舞われたことがありました。住宅公団健軍団地建設計画問題と戸島塵芥埋め立て地問題であります。熊本地下水研究会・財団法人熊本開発研究センターが出した熊本地域の地下水研究・対策史によると、これらの問題はいずれも需要が地下水の実態把握より先行したために発生したもので、今後も同じような事態が発生することが懸念される。このことは、施設等の建設に際しては、地下水の状況と土地利用面も含めて、事前の十分な配慮のもとに計画を策定することが必要なことを示している。と強調しています。歴史の教訓に謙虚に学ばなければならないのではないでしょうか。
 地下水の汚染や枯渇の問題は、それが明らかになってからでは遅いのです。それだけに地下水保全条例に基づき、関連企業と協定をしっかり取り交わすべきであるということを再度訴えて質疑を終わります。