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2022年9月熊本県議会 議案に対する質疑
日本共産党の山本伸裕です。
知事が議案説明の中で触れられた球磨川水系の河川整備計画についてお尋ねします。
策定された河川整備計画は、目標流量を人吉地点では毎秒7,600トン、横石地点では11,200㌧とし、このうちダムなどによる洪水調節で人吉地点では3,700㌧をカットし、毎秒3,900トンを安全に流す、横石地区では毎秒3,000㌧カットし8,200㌧を安全に流す、という計画であります。
しかし、私はこれに疑問を感じます。先日の台風で、市房ダムの緊急放流が行なわれました。緊急放流とは、ダムにためる水が限界に達し、流入してくる水量をそのまま排出する操作のことであります。つまりダムによる洪水調節機能がなくなってしまうのが緊急放流であります。
今日の気候変動のもとでは、ダムの緊急放流という事態はいつでも起こりうるという前提に当然立つ必要があります。ところがこの河川整備計画というのは、あくまでダムの機能が発揮され続けることを前提として護岸や堤防が設計されます。しかしこれでは、ダムの緊急放流が生じれば、護岸や堤防がそれに対応できず氾濫、あるいは決壊という事態が起こりうることになるではありませんか。
令和2年7月豪雨において、球磨川中流域の神瀬地区では、ある地点で3.8メートルの高さまで水が来ました。当然、住民の皆さんからは、少なくとも前回の水害が起こっても耐えられるようなかさ上げをしてほしいという声が上がっているわけであります。ところが行われるかさ上げはわずか80センチ。なんで80cmなんですかと、疑問や怒りの声が噴出しています。「ダムができれば水位が下がるので大丈夫です」などと説明されても、それはあくまでダムの洪水調節機能が失われない範囲に限定した話でしかないではありませんか。
いつダムの緊急放流に至っても不思議ではない、今日の気候変動のもとでは、こうした前提での対策にとどめるのは不十分であります。なぜ知事は、このような整備計画に異存なしとの見解を出せるんでしょうか。もしも真面目に流域住民の生命、安全、財産を守るという考えに立つならば、ダムの洪水調節機能が失われても耐えうる水準の対策を求めるのというのが当然ではないでしょうか。それとも、もしもダムの緊急放流によって洪水被害が発生してしまったら、知事はその責任を負う覚悟がおありなのですか。お答え下さい。
(蒲島知事答弁)
このたびの台風14号に伴う豪雨では、長時間にわたり降雨が続きました。
市房ダムでは、台風接近の3日前から事前放流により容量を確保し、下流域への放流量をギリギリまで抑えることで被害軽減をはかりました。
その間、18日19時40分には、「貯留能力の半分情報」を関係機関とメディアに通知しました。
翌19日2時ころに、緊急放流についての3時間前通知を実施しました。
19日1時に、1時間前通知を実施しました。
2時になり、緊急放流の1時間延期を通知しました。
19日の3時には、総合的に判断し、緊急放流へ移行しました。
緊急放流に際し、放流量を流入量に徐々に近づけるにあたっても、下流への放流量の増加を最小限に抑え、放流量のピークをおよそ3割減らすとともに、ピークの発生時刻を1時間40分遅らせることができました。
今回のように、ダムの貯留能力の限界を理解し、適切に運用することにより、ダムは、緊急放流に移行しても洪水調節機能を発揮します。
気候変動の影響により激化する洪水から、県民の生命、財産を守るためには、あらゆる手段を講じ、流域全体の総合力で河川の水位を低下させ、氾濫を防ぎ、減らしていくことが重要です。
本年8月に策定した河川整備計画では、流水型ダムの整備のみならず、河道掘削や河道拡幅による流下能力の向上、洪水を一時的に貯留する遊水地の整備、市房ダムの再開発といった対策により、河川の水位低下をはかることとしています。
対策後の水位が家屋の高さを上回る区間では、宅地かさ上げをおこない、安全を確保することとしています。
河川での対策に加え、森林整備や田んぼダムの普及拡大によるさらなる水位低下にも取り組んでいきます。
このように今回策定した河川整備計画は、流域のあらゆる関係者と連携し、流域全体の総合力で安全・安心を実現していくものです。
また、「地域の宝」である清流球磨川を次世代に引き継げるよう、河川環境の保全にも、全力を尽くしてまいります。
これらは、令和2年11月に、私がこの議場で表明した「緑の流域治水」の方向性と一致しており、流域市町村長からも計画内容の変更を求めるような意見はありませんでした。そのため、国に対し、異存ない旨を回答したところです。
令和2年7月豪雨災害のような被害を二度と繰り返さないためにも、今後も、河川整備計画に基づいて「緑の流域治水」を確実に推進していくことが私の責任です。
(山本再登壇、切り返し)
知事はいろいろ言われましたが、私の質問にはお答えになっておられません。
私がお聞きしたのは、なぜ洪水調節機能がなくなる可能性があるのに、洪水調節機能があくまで発揮されることしか前提にしていない河川整備計画に異存なしと言えるのか、ということであります。
今回の台風では市房ダムが大きな役割を発揮したといわれました。もちろん雨の降り方、下流の河川の水量など、状況によっては緊急放流が行なわれてもそれが100%災害につながるわけではありません。しかしそれはあくまで、幸運にも災害には至らなかったというだけの話であって、だからと言って緊急放流の事態でもダムは洪水調節能力を発揮できるんだというのは、議論の飛躍であります。緊急放流というのはまさに洪水調節能力がなくなる状態のことを言うわけですよ。
知事、災害対策というのは、常に最悪の事態を想定してそれに備えるということが鉄則中の鉄則ではありませんか。もう一度申し上げますが、ダムの洪水調節機能が失われるという事態が起こりうるのに、それを想定しない河川整備計画になぜ異存なしと言えるのですか。結局、今回の河川整備計画の最大の目的は、新たな流水型ダムを事業化することであるからではないのですか。国や県は、ダムだけで流域を守るのではない、ダムを含む総合的な流域治水だとおっしゃいますが、ダム計画が存在することによって堤防や護岸の高さが抑制されてしまうんです。これは重大な矛盾ではありませんか。あくまでもダムによる洪水調節を前提とした河川整備計画にこだわっていらっしゃるのは、もしも緊急放流にも耐えうる対策までやってしまったら、そもそもダムをつくる理由がなくなってしまうからではないのですか。しかし知事、河川整備計画の策定にあたり、最優先で考えなければならないことは、流域住民の生命、安全、財産を守ることではありませんか。ダムありきの計画を押し通すために最悪の事態から目を背けてしまうのではなく、国に対して堂々とものを言っていただきたい。そのことを訴えて質疑を終わります。
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熊本県議会 2022年6月議会反対討論
日本共産党 山本伸裕 2022年6月21日
日本共産党の山本伸裕です。提出議案に対する反対討論をおこないます。
まず議案1号と18号、一般会計補正予算について申し上げます。
物価の高騰が暮らしと営業に深刻な影響を与えているもとで、政府は、地方創生臨時交付金「コロナ禍における原油価格・物価高騰対応分」を創設しました。今回の補正追号議案で中小事業者への支援、農林水産業者への支援策なども打ち出されておりますが、支援対象や支援額などにおいてまだまだ不十分であり、さらに、予算の中には一部賛同できない内容も含まれていることから反対であります。
まず個人番号カード利用環境整備事業であります。今年度中にほぼ全国民へのマイナンバーカード普及を目指すという、国の意向に沿った事業であります。マイナンバーカードの問題については、昨年6月議会での反対討論で述べましたので繰り返しませんが、ただ、政府はマイナポイント第2弾としてなんと1兆8,134億円もの予算をつぎこんでいることは重大です。急ぐ必要のない事業に血税を投じることをやめ、物価高騰とコロナ不況に苦しむ人たちへの支援こそ強めるべきだということを強調したいと思います。
土地区画整理事業費1億3,810万円、および議案11号、人吉都市計画事業青井被災市街地復興土地区画整理事業施行条例の制定について申し上げます。
県が事業主体となって国道445号の道路改良、および区画整理事業を実施することとなっています。
区画整理事業の場合、全国の事例を見ても非常に長い時間がかかり、とん挫した事例も少なくありません。なぜこうした事態が起こるのかというと、土地区画整理事業は基本構想を策定する段階では全体および個々の情報が十分に住民に知らされず、総論賛成で都市計画決定がおこなわれてしまうからであります。本来ならば区画整理以外の事業手法についても選択肢として住民に示したうえで、住民の主体的な意思でまちづくりの方向が定められるべきであります。そして仮に区画整理で事業を進めることになったとしても、私は施工者が事業計画を定めた段階において速やかに換地計画を策定し、地権者らに説明し、住民の意見を尊重し計画に反映するという形が必要ではないかと考えます。早い段階で分かりやすい、正確な情報を示すことによって住民の方々は新たな街づくりに対して主体的にかかわり、またその意見を積極的に取り入れることによってよりよいまちづくりが進むのではないでしょうか。
事業はすでに都市計画決定がなされ、用地の先行取得が始まろうかという段階でありますが、十分な情報の提供と住民合意を貫かれることを求めるものであります。
次に議案10号、県産アサリを守り育てる条例の制定についてであります。本条例に関しては漁業関係者や沿岸の自治体、議会において、県に再考を求める、といった厳しい声が上がっています。こうしたもとで条例の制定は拙速にならぬよう、慎重であるべきだと考えます。とくに強く出されている意見は畜養の問題であります。条例案では、畜養をやめない漁場については、資源保全、回復に向けた取り組みについて支援しないということが示されています。
もちろん、産地偽装は許される行為ではなく、根絶させるべきことは当然でありますが、違法行為ではない畜養にペナルティをかけるというやり方は、私はどうにも理解できません。長いところルールを使った偽装の可能性については、長期間の畜養はあり得ないとみるのが常識のようでございますので、畜養アサリはすべて外国産と表示することを原則とすればよいのではないでしょうか。
そもそも、なぜ畜養がおこなわれるようになってきたのかと言えば、かつて日本一の漁獲量を誇っていた熊本の海が、アサリが育たない環境に変わってしまったからであります。漁民の数は激減し、豊かだった沿岸地域は疲弊しています。元のようにアサリが取れれば、畜養などやる必要もなかったのであります。いわば地域の存続、関係者の生活を守るための手段の一つとして、畜養がおこなわれてきました。畜養してはだめだというのであれば、違法でもない畜養行為にペナルティをかける前に、そうしたことをしなくても済む豊饒の海を取り戻すことが行政に求められる責任ではないのでしょうか。条例が県産アサリを守り育てるというのであれば、アサリが育たなくなった原因の分析、再生のための取組みをどう進めるのかについて、学者・専門家の研究の成果にも学び、より踏み込んだ方向性を示すべきであるということも指摘したいと思います。
次に請願39号、感染症拡大に強い地域経済にするため、最低賃金の大幅引き上げと全国一律制度を求める請願の不採択に反対します。
私は昨年まとめられたある提言を紹介したいと思います。需要回復と雇用・所得の安定に向けた取り組みの一環として、雇用の正規化や賃上げを中小企業に広げるとともに、最低賃金引き上げの必要性が指摘されている。デフレ経済から脱却するためには雇用者の所得を喚起することが必要であり、それを支える最低賃金の引き上げは死活的に重要である。最低賃金の全国一元化も必要な政策転換である。コロナ後の日本社会の構造変化を見越した政策転換の一環として、大局的な観点に立ちわが国における最低賃金の在り方を政府の中で議論していくことを強く要請する。
これは自民党の議員連盟が昨年5月にまとめた提言の抜粋であります。さらに今年2月、全労連などが主催して開かれた最低賃金全国一律化実現を求めた院内集会には日本共産党、立憲民主党、国民民主党、れいわ新撰組の国会議員に加えて自民党の務台俊介衆院議員、後藤田正純衆院議員も参加して、最低賃金引き上げによる底上げが必要だ、最低でも1,500円に引き上げることが必要だ、と発言されています。
まさに超党派で足並みをそろえて政府に声をあげていくべきテーマであります。議員各位のご賛同を願うものであります。
次に請第40号、国に対し軍事費2倍化・敵基地攻撃能力保有・核兵器共有をやめ、憲法9条を守り抜く意見書の提出を求める請願の不採択に反対します。
敵基地攻撃能力をめぐって歴代政府の見解は、平素から相手国に脅威を与えるような攻撃兵器を保有することは憲法の主旨ではない、という立場でありました。しかし安倍政権のもとで2014年、集団的自衛権行使容認の解釈改憲、それに基づく2015年の安保法制の成立により、敵基地攻撃が集団的自衛権の行使として可能となりました。つまり日本の同盟国であるアメリカが第三国と戦争を起こし、政府が存立危機事態だと認定すれば、日本に対し何の攻撃が発生していなくても、第三国の基地を攻撃することが可能となったであります。しかしこれはそもそも憲法9条の立場と完全に矛盾します。
ロシアによるウクライナ侵略は絶対に許すことのできない蛮行であり、一刻も早くこの悲惨な戦争を終わらせ、戦争犯罪を断罪することが必要であります。この悲惨な戦争を世界が目の当たりにして実感させられたことは、どんなに紛争や対立があったとしても、戦争という最悪の事態だけは絶対に回避しなければならないということではないでしょうか。そのために必要なことは紛争を戦争にしないための外交努力であります。しかし軍事費の増強、核共有論、敵基地攻撃論という考え方は、相手が軍事で来るならこちらも軍事で対抗しようという悪循環に陥ってしまいます。軍事対軍事の緊張の中からは和平はもたらされないのではないでしょうか。しかも今防衛費をGDP 2%に拡大せよという議論が盛んですが、だいたいGDP比2%と言えばこれまでの予算のほぼ2倍であります。そのための財源を、増税や社会保障の削減、あるいは国債発行となると、国民の暮らしや未来に一層の負担を負わせてしまうことになります。
日本が進むべき道は軍事対軍事ではなく、憲法9条を生かした積極的な平和外交をアジアと世界に広げていくことであるということを訴え、請願の採択を訴えるものであります。
請第41号、物価高騰の深刻な影響を受ける学校給食への公的援助を急ぎ、子どもたちの成長の保障を求める請願の不採択に反対します。今回の補正追号予算では、給食費に対する補助3,700万円が追加提案されました。提案を歓迎したいと思いますが、今回の補助はあくまで最初の一歩という印象であり、食材費の高騰はこれからもますます続くであろうことや、そもそも義務教育は無償としなければならない憲法上の要請などから考えますならば、給食費への公的補助はより一層拡充させていかなければならないことは明らかであり、そうした点からも請願は採択されるべきであると考えます。
以上、議員各位のご賛同を願いまして討論を終わります。
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2022年6月定例議会・知事の五木振興計画に関する質疑
日本共産党 山本伸裕 2022年6月13日
日本共産党の山本伸裕です。
知事の議案説明で言われました、五木村の振興計画についてお尋ねします。
私は先日、五木村での説明会に参加された複数の方からお話を伺いました。
村の振興計画について説明があるということで、行ってみると、なんと会場には「新たな流水型ダムを前提とした村の振興策について」と書かれていると。しかも県からの説明を聞いていると、まるで振興策を希望するのならダム計画を認めなさいと言われているようにしか聞こえなかった、とのお話でありました。説明会ののち知事がマスコミの問いに答え、「自分の決断はご理解いただけたのではないかと思う」と発言されたことに関しても、あれだけ批判の意見が会場で出されたのに、と驚いておられました。
知事は不退転の決意で、新たなダムを活用した振興策を進めるといわれたとのことでありますが、それは村民からどんなに反対されようとも、新たな流水型ダムの建設を前提とした振興策という考え方をかえるつもりはないという意味なのでしょうか。お答えください。
知事は議案説明の中で、五木村はこれまでダム問題に翻弄されてきたと言われましたが、翻弄してきたのは熊本県と国ではありませんか。五木村の中心部が完全に水没するという川辺川ダム計画を村民が知らされたのは1966年。議会は直ちに反対を決議し、翌67年には村のダム対策委員会が設置されました。1970年に村民大会が開催され、川辺川ダム建設に伴う五木村立村計画の基本事項、いわゆる55項目要求が決議されました。その中の重要な柱の一つは、ただの一人も村民が村を離れなくて済むように宅地、耕地、山林などの代替地を確保する計画の策定を求めたことでありました。村民が引き続き村に残って暮らしていくためには、きわめてまっとうな最低限度の要求でありました。ところが国が示した代替地造成計画はあまりにも杜撰なものでした。水没する個人の宅地および公共用地面積に対して代替地造成計画の総面積は半分しかなく、水没する農地に対する造成計画は三分の一にも足りませんでした。当時の県議会では、これは明らかに多数の村民の離村を前提とした計画ではないか。村の再建どころか、村民追い出しの計画ではないか。こうした指摘もされています。
しかし造成計画に見るべき前進がないまま、村民の中にはダム対策委員会から離脱して、立ち退き移転補償について当局との交渉を進める人たちも現れるようになりました。ダムや移転補償の話になると村民同士でも、口を閉ざすような状況が生まれました。ダム基本計画に反対する村民らは、計画の取り消しを求めて県庁に大挙押しかけたり、裁判を起こしましたが、次第に混迷と孤立を深めていきました。反対派の子どもにまで「お前の親のおかげでみんな迷惑しとる」といった言葉が投げかけられるようなこともあったそうであります。そして裁判闘争は原告側からの訴訟取り下げという形で終結しました。しかしながら、その後も農耕地の造成は進みませんでした。代替地に移ったとしても生計を営むすべがなくなり、結局離村せざるを得ない方々が後を絶ちませんでした。ダム計画が発表される前の昭和40年当時、4,900人いた村の人口は今年5月現在、1,008人。なんと5分の1にまで減少しています。
平成20年、ダム計画白紙撤回を知事が表明された際の、五木村の方々の憤りは察するに余りあります。それでも村民の方々はこの14年間、「かけがえのない財産である球磨川川辺川を守る、五木村の振興に私自身が先頭に立って取り組む」という知事の言葉を信じて、ダムによらない村づくりと、傷つけられた村民の絆の回復のために懸命に努力されてきたのであります。
私は、こうした五木村の苦難の歴史に思いをはせるとき、新たなダム建設の受け入れを条件にした振興策の提示というのは、またしても五木村民の中に混乱と分断を持ち込むのかとの怒りの声が出て当然ではないかと思うのであります。
知事にお尋ねします。今回の五木村振興策は、ダム建設受け入れ・容認とセットという形で出されていますが、内容を見ると、ダムとは関係のない振興策が多く列挙されており、本来ならばダムに関係なく取り組むのが当然のことであります。五木村の振興策はダム計画とは切り離し、それこそ不退転の決意で進めるべきではありませんか。以上答弁を求めます。
(蒲島知事答弁)
まず、五木村の村民の皆様から反対意見が出ても、新たな流水型ダムを活用した振興策を進めるという考え方は変わらないのか、という点についてお答えします。
私は6月5日に五木村を訪問し、村民の皆様に、流水型ダムを含む緑の流域治水を決断した敬意と、五木村振興にかける決意を直接お話しました。そして私の決断により、五木村の皆様を二度にわたり、翻弄させてしまったことを深くお詫びを申し上げました。
14年前の白紙撤回の決断から、一昨年11月の流水型ダムの決断と、政策が大きく変更されることは、五木村の皆様にとって、直ちには受け入れがたいものだと思います。
一方、緑の流域治水の表明直後、五木村の木下村長や村議会の皆様に、決断した経緯を説明する中で、これ以上五木村の人々を困らせるようなことがあるならば知事の責任は重大、もうふらつかないでほしい、という身が引き締まるご意見をいただきました。
決断を下した私にはその責任があります。責任を持つ私だからこそ、五木村の振興について、責任と覚悟をもって不退転の決意で取り組んで参ります。
次にダムと関係のない振興策は、ダム計画とは切り離して進めるべきではないか、という点についてお答えします。
まず五木村の振興については、本年度も現行の「ふるさと五木村づくり計画」に沿って、村や国と連携して観光・物産振興や林業振興、移住定住の促進などのソフト事業や、国道445号、また林道の整備などのハード事業について、切れ目なく取り組みを進めています。
次に6月5日に、村民の皆様にお示しした新たな五木村振興計画の方向性の案は、決してダム建設受け入れの交換条件でも、振興の引き換えにダム建設の同意を迫っているものでもありません。この点は強く申し上げたいと思います。これまで五木村や村議会と意見交換を重ねる中で、流水型ダムによって村がどのような影響を受けるのか、村の振興再建がどうなるかわからない以上、現時点ではダムを容認できるものではない、というご意見。また一方で、流水型ダムというならば、流水型ダムを前提とした新しい振興策を示してほしい、というご意見もいただきました。
そうしたご意見にお答えするため、流水型ダムができた場合、どのような振興の方向性が考えられるのか、今回はそれを県の案として、村民の皆様にお示ししたものであります。今後五木村の皆様のご意見やご要望を丁寧にお聞きしながら、秋ごろをめざし、県議会のご理解をいただいたうえで、より実効性のある振興計画として取りまとめを進めてまいります。そのうえで、五木村の実情に沿った具体的な取り組みについて、国とともに村と協議を進め、協議が整ったものから順次着手していく考えです。引き続き、流水型ダムを含む緑の流域治水と、それを踏まえた新たな五木村の振興計画について、五木村の皆様に、ご理解とご協力をいただけるよう、丁寧に説明を尽くしてまいります。
(山本再登壇)
五木の村議会では、ダムとセットの振興策ではなくて、単独の振興策を要求すべきだという議会からの発言に対し、いや国はダムとセットでないと振興策などしないんだ、といった議論が交わされていると伺いました。国・県と五木村との信頼回復こそまずは最優先で取り組むべきであります。再び村を翻弄し、村民を分断するようなことは決して繰り返されてはなりませんし、そのためにも知事は五木村の振興策について、新たなダムの了承が前提ということでなく、それこそ不退転の覚悟で進めるという意思を示していただくべきだということを申し上げて質疑を終わります。
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2022年度当初予算への反対討論
日本共産党 山本伸裕 2022年3月15日
日本共産党の山本伸裕です。
まず議案40号、令和4年度一般会計予算案に対し反対致意見を述べます。
知事は議案説明において、令和4年度当初予算は、熊本地震および令和2年7月豪雨からの創造的復興に加え、新型コロナウイルス感染症への対応を最優先に編成したと言われました。しかしながら、県民の命・くらしを守るための予算は極めて不十分であります。
新型コロナウイルス感染症は、私たちの命や暮らしを守る政治の仕組みが極めて脆弱なものであることをまざまざと浮き彫りにしました。患者が急増すればたちまち医療体制がパンクしてしまう、保健所の対応が間に合わない、検査キットが足りない、ワクチン接種が進まない、事業者の倒産、廃業、店じまいが急増し、弱者ほど深刻な生活困窮に直面しました。こうしたことが感染拡大の波が来るたびに繰り返されています。そして今後も、もしまた新たな変異株が出現すれば、同じような危機的状況が繰り返されてしまうのではないでしょうか。熊本県内でも先月、感染患者に対する対応が問われる事態がございました。70歳の男性は人工透析をされているということを保健所も承知していましたが、コロナ感染が確認されたにもかかわらず入院措置が取られず、自宅療養中に容体が急変、ご家族が保健所に救急搬送を求めたけれども、保健所から届いたのはパルスオキシメーター。結局必要な医療措置が間に合わずに男性は亡くなりました。あまりに急速に感染拡大が広がるなかで、対応が追い付かず、取り返しのつかない事態に至ったということではないでしょうか。熊本県は今回の感染拡大に際し、第5波を上回る新規感染者数にも対応する病床数の確保や宿泊療養施設の整備に努めてきたといいます。しかし、いくら器を大きくしても、肝心の医師や保健師、看護師など医療スタッフの増員、体制の拡充が追い付かなければ、現場は疲弊するばかりであります。新型コロナ感染症対応最優先と言われるのならば、長時間過密労働となっている職員の職場環境改善の問題も含め、もっとマンパワー確保のための予算が必要であるということを強調したいと思います。さらに、学校や高齢者、障がい者施設などでのクラスターが依然として県内各地で発生しており、そうした事業所では一週間に一回の検査キットの配布ということでは間に合いません。頻回に実施できる分の検査キットを集中的に供給すべきであります。そして、公的医療機関の縮小・再編統廃合を進めることを前提とした地域医療構想は白紙に戻し、医療、検査、保健所体制の拡充を進める予算編成へと組み換えることを求めます。
当初予算には看護・介護・障がい・児童福祉の現場で働く方々の処遇改善として、収入上乗せ予算が計上されておりますが、あまりにも不十分であります。まず対象者が限定されており、すべてのケア労働者の賃上げには程遠いものであります。看護師の場合は、賃上げの対象になるのは就業している看護師の4割程度ではないでしょうか。訪問看護やケアマネなども対象外であります。保育士の場合も、そもそも国の配置基準があまりに低すぎるうえに、保育スタッフである調理師などは公定価格の対象外になっており、一人当たりの賃上げ幅はますます下がることにならざるを得ません。介護事業所にしても、コロナ禍で利用者が減少した時の報酬額が計算根拠になっております。収入の1%または3%程度の上乗せ分を支給するとされていますが、現状の制度設計のもとでは、到底そうした水準に及ばないのではないでしょうか。そもそも福祉労働者と全産業平均賃金を比較すると、約8万円もの格差があるわけで、ケア労働者の皆さんのコロナ禍のもとでの懸命の献身的な奮闘を考えれば、上乗せ金額が一桁足りないんじゃないかという声が出てくるのも当然ではないかと思います。
反対の第二の理由は、大型開発依存・大企業呼び込み型の経済路線、新自由主義経済の推進が強力に打ち出された予算編成になっているという点であります。
立野ダム及び、新たな流水型ダムの整備として、国直轄事業負担金48億2,400万円が計上されています。立野ダムは令和4年度完成予定とされていますが、昨年の一般質問で指摘しましたように、そもそも立野ダムを含む白川の河川整備基本方針は、国交省自身が示した気候変動による雨量の増加が考慮されていません。令和2年7月豪雨のような大雨が発生すれば、ダムは洪水調節能力を喪失し、逆に大変危険な構造物になります。今年の雨季までに河川流下能力を最大限向上させられるよう、河床掘削や堤防強化などの対策に全力をあげるべきだということを強く申し上げたいと思います。球磨川に関しては、土木学会が、令和2年7月豪雨の際に、人吉市街地において中川原公園の存在が水位を約2メートル上昇させたという検証結果を公表しました。もし仮に中川原公園の撤去、あるいは形状変更をおこなえば人吉市街地の球磨川水位はどうなるのか。国交省や県も積極的に検証に乗り出し、検証結果を住民に知らせるべきであります。10年以上かかる新たな流水型ダムの完成まで、どうやって球磨川の水位を下げて安全度を向上させるのか、いまできる治水対策について住民の理解と合意をはかりながら、早急な具体化をはかるべきであります。
また当初予算では、半導体産業のさらなる集積に向けた取り組みなども強調されています。日本の半導体のシェアはかつて世界の5割を超えていましたが、しかしその後衰退し現在は1割に落ち込み、日本は半導体後進国となっています。なぜそのような道をたどったのか、その検証と反省がなければ、また同じ失敗を繰り返しかねません。振り返れば、熊本の呼び込み型産業政策もまた失敗の連続であります。中長期的にみれば、地域の力を生かす産業振興、地域の活性化につながる地域循環型経済への転換をはかることこそが必要ではないでしょうか。全ての中小企業、地場産業、商店街を視野に入れた支援策を拡充すべきであります。公契約条例を制定し、生活できる人件費が保障されるルールを定めるなど、持続可能な熊本経済の発展と県民生活の向上につながる施策の拡充を求めます。
TSMC進出に伴う企業立地、誘致計画に関連した工場建設、工業団地の造成、区画整理、道路の拡張等の総面積は100haを超えると推測されます。加えて中九州道大津隈本道路、空港アクセス鉄道、シリコンアイランド構想、大空港構想など、地下水涵養域での大規模な開発が進められようとしています。開発面積が500haに及ぶとすると、約5000万㎥の涵養量が失われる、との指摘もございます。地下水涵養域での開発と地下水に与える枯渇や汚染などのリスクの検証は絶対にあいまいにするわけにはまいりません。県として改めて科学的・専門的な検証をおこなうべきであります。
農林水産業分野では、稼げる農林水産業のスローガンのもと、生産力向上、農地集約、省力化、輸出力拡大の取り組みがもろもろ計上されています。けれども政府の農林水産業政策は、これからさらに農地や第一次産業従事者が減少するということを前提とし、それゆえ効率アップや大規模化で生産量の維持をはかろうという考えに立脚しています。そのために小規模経営や中山間地農業への支援が極めて不十分であります。けれども熊本の農業漁業を支えているのは、まさに小規模経営であります。気候危機や食糧危機が地球規模で進行するもとで、いま世界は家族経営を大切にし、地域の環境保全にも貢献しつつ、食糧自給を守ろうという流れが広がっています。日本の農業政策はこうした立場に逆行しているのではないでしょうか。生産性向上だとか規模拡大などを補助の条件とするのでなく、兼業でも、小規模経営でも支援が受けられるような制度を拡充すべきです。コメの価格下落や燃料代の高騰、コロナ禍のもとでの農産物価格、魚価の下落などが深刻であり、経営を支えるうえでも減収補てん、価格保障や所得補償制度のいっそうの拡充が求められます。
反対の第三の理由は、特に熊本県が立ち遅れている早急に改善が求められている問題について、その打開の見通しが見えてこないという問題であります。
全国でダントツに遅れている子どもの医療費助成制度の対象年齢引き上げについては、今回の一般質問でも木戸議員から質問がございましたし、これまでも何度も複数の議員から、対象年齢の拡大をかたくなに拒む県の対応の是正を求める意見が表明されていますが、依然として改善の傾向が見えてこないことは大変残念であります。
さらに男女平等のレベル祖示すジェンダーギャップ指数は、日本は世界の中で149か国中110位と立ち遅れておりますが、さらに熊本県は日本の中で、県議会での構成比で言うと全国45位、市町村37位中学・高校の校長先生の男女比で41位、企業役員、法人・団体管理職の日で46位、家庭、育児の男女格差は最低となっています。不名誉なレベルにとどまっているジェンダーギャップ指数の改善をはかる実効的な取り組みの推進を求めるものであります。
次に、議案60号、熊本県一般職員等の給与に関する条例等の一部改正への反対理由を述べます。
改定内容は、期末手当の支給月数を引き下げ、令和3年度の引き下げ相当額については令和4年6月に支給する期末手当で減額調整するというものであります。特別職の減額については賛成しますが、一般職、再任用職員の引き下げには反対であります。
コロナ禍や原油高騰など厳しい経済情勢が続く中、公務員の賃下げは民間労働者の賃金にもマイナスの影響を与え、暮らしと経済に大きな影響を及ぼします。県職員の皆さんは災害やコロナ、鳥インフルエンザなど次から次に難題が沸き起こる中でも献身的に誠実に県民に奉仕する姿勢で公務を全うしておられるわけで、そうしたことに対する正当な評価がなされてしかるべきであります。
以上のような理由を申し上げ、反対討論を終わります。
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CO2排出削減のための具体的な県の取組みについて質疑
2022年3月8日 日本共産党 県議会議員 山本伸裕
令和4年度主要事業の中に位置付けられております、将来に向けた地方創世の取り組みの第2項、「2050年県内CO2排出実質ぜロの実現」の取り組みについてお尋ねします。
熊本県は昨年7月、「第六次環境基本計画」において、2030年度までの温室効果ガスの削減目標を、2013年度比で50%と定めています。目標の達成は決して容易ではありませんが、未来を守るためにもやり遂げなければならない最低限度の目標であり、それゆえ新年度県政運営においても実効性ある取り組みの強化が極めて重要であります。そこで具体的にお尋ねします。
第一は、「地球温暖化対策の推進に関する法律」に基づき、地方公共団体が策定するものとされている実行計画についてであります。当然熊本県は策定されているわけでありますけれども、全国的には市町村の策定の遅れが指摘されています。また策定はしているものの、その内容はIPCCの「1.5度特別報告」などを踏まえておらず、時代遅れの取り組みになっている場合もあると聞いております。そのような状況となっているのは、市町村に専門的知識を持った職員が不足していることなどが主たる理由だと言われています。しかし都市部ではない自治体ほど再生可能エネルギーを生み出す可能性があり、県全体でCO2削減をはかる取り組み促進の上でも市町村の役割は重要であります。県としても、市町村の実行計画策定や目標達成のための事業の具体化などについて丁寧に援助することが不可欠だと思います。県下市町村の実行計画策定状況や特徴がどのようなものになっているかについてお尋ねします。
第二は、自治体が活用できる制度や財源を最大限活用して取り組みの促進をはかるべきではないかという問題です。県がまとめた令和4年度予算要求基準を見ると、「公共施設等適正管理推進事業債」の活用について十分検討すること、と記述されています。2026年度まで延長された同事業には、脱炭素化事業が今回追加されています。学校などへの太陽光発電設置や省エネ改修などの取り組みに活用できるものであります。また公営企業の脱炭素化事業は2025年までの4年間実施されることとなっています。公共施設の整備に地域木材を利用した場合に地域活性化事業債が活用できます。バイオマス発電など、自治体が中心となった地域エネルギー事業の立ち上げを支援する地域経済循環創造事業交付金、分散型エネルギーインフラプロジェクト、地域脱炭素移行・再エネ推進交付金など、自治体が活用できる支援制度や財源が多々ございます。これらを積極的に活用すべきだと考えますが、具体的に当初予算においてどれくらい活用され、事業化されようとしているのか、また市町村への周知と活用具合はどうか、についてお尋ねしたいと思います。
以上二点、環境生活部長にお尋ねします。
(環境生活部長答弁骨子)
〇市町村の地球温暖化対策に係る実行計画について、本年2月末現在で、40市町村が策定している。
〇市町村の取組みについては、例えば、熊本市・周辺市町村が連携し、連携中枢都市圏として計画を策定。広域での脱炭素化の取組みであり、全国のモデルにもなると期待。
〇また、球磨村では、森林資源を活用した再エネ導入や電動マイクロバスを中山間地のスクールバスとして活用する実証試験が進められている。
〇県としては、市町村における計画の策定や見直し、事業の具体化がさらに進むよう、助言や情報提供等をおこなって参る。
〇令和4年度当初予算では、ゼロカーボン関連事業で51億円を計上。公共施設等適正管理推進事業債の脱炭素化事業は、令和4年度に実施する健聴者等のLED化などに活用できる可能性がある。
〇現時点では、国から詳細な案件が示されておらず、当初予算の段階では、庁舎のLED化などは一般財源で対応することとしている。今後示される具体的な要件を確認したうえで、しっかりと活用したいと考えている。
〇今後、国の脱炭素先行地域で選定された場合は、地域脱炭素以降・再エネ推進交付金についても活用して参る。
〇県としては、有利な財源をしっかりと活用しながらゼロカーボンの取組みを進めるとともに、市町村にも制度等を周知し、市町村の取組みを促進して参る。
(山本県議再登壇)
ご答弁いただきました。市町村の実行計画策定状況は40市町村とのことでありました。それ以上のご答弁がなかったので詳細がよくわかりませんが、実行計画は二種類ございまして、一つはそれぞれの自治体における公共施設から発生する温室効果ガスの排出量を削減するための事務事業編、そしてもう一つは自治体全域の排出抑制をおこなうための施策に関する区域施策編であり、おそらくご答弁がありました40市町村というのは、事務事業編の策定状況ではないかと推察いたします。区域施策編は、文字通り住民、事業者、行政が一体となって取り組みを推進していく必要がありますが、こちらの方が全国的にも計画の策定が遅れているという状況であります。繰り返し強調しますが、都市部でない自治体ほど、再生可能エネルギーを生み出す可能性があります。ぜひ県下市町村や住民あげての取り組み推進へ、県が積極的役割を果たしていただきたいと思います。同時に、改正された地球温暖化対策推進法においては、再生可能エネルギー開発を規制すべき地域に関する規定がありませんので、独自の条例で環境破壊の再エネ乱開発を規制するルールも必要ではないか、ということを申し上げておきたいと思います。
公共施設等適正管理推進事業債の脱炭素化事業については、国から詳細な要件が示されていないとのことでございました。ただ私が入手した情報によると、温暖化対策計画において自治体が取り組むべきとした公共公用施設の四事業、太陽光発電の導入、ゼロカーボン建築物の実現、省エネ改修の実施、LED照明の導入、こうした取り組みに活用できると伺っております。県庁舎等のLED活用のほか、学校や公共施設などへの太陽光発電設置などにも使えるはずであります。ぜひ積極的なご検討をお願いします。
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2021年度一般会計2月補正予算に対する反対討論
日本共産党 山本伸裕 2022年2月28日
日本共産党の山本伸裕です。
議案1号、令和3年度一般会計補正予算案に対する反対討論をおこないます。同予算案には県内宿泊・日帰り旅行キャンペーン、106憶7,600万円が計上されております。内容は県内への宿泊や日帰り旅行に対し、割引助成を実施する、さらに地域限定のクーポン券を配布するというものであります。ただし現在は県内も深刻な感染状況が続いているために、助成は停止されております。財政法上、補正予算の計上は、特に緊急を要するものに限られるべきであります。そういう点では、このキャンペーンにいま急いで予算を計上しなければならない緊急的な必要性はありません。むしろいま緊急に手立てを強めるべき問題はワクチンの迅速で安全な摂取が促進されるよう取り組み促進をはかること、さらにはクラスターが発生している県内各地の施設、事業所において頻回にPCR検査や抗原検査が実施できるよう、検査キットを緊急に集中的に供給するなどの手立てをとること、必要な医療対応が追い付かずに重症化したり命を落としてしまうような事態を生み出さないための保健所体制や医療提供体制の強化であり、こうした手立てを尽くすための予算拡充こそ必要であります。
今回の旅行キャンペーン予算計上の背景に、政府のGoToトラベル事業で計上した予算が使い切れず、国庫に返納することが迫られているという問題があります。そこで国交省は事業主体を国から都道府県に変更し、21年度中に予算を都道府県に配分することで、22年度に事実上繰り越すという窮余の策が講じられているわけであります。しかし、そうまでしてやらなければならない事業だとは私は思えません。
コロナの影響で深刻化ている地域経済や県民生活の回復をはかるためだとされていますが、しかしこのようなキャンペーンで恩恵が届くのはあくまで限定的であります。例えば、旅行に行きたくてもいけない人にとっては無縁な事業であります。クーポン券も、取扱店舗以外にとっては関係ありません。
ある観光地のホテル経営者や、洋食料理店の店長さんなどからお話を伺いしたが、GoToで儲かるのはインターネットなどで人気スポットになっている一部のところだけだ。しかもたとえ一時的に客が来ても後につながらない。感染を早く止めて、元通りにお客さんがたくさん来てくれるようになるのが一番だとのことでありました。
支援を必要としているすべての事業者や住民に恩恵が行き渡るような支援こそ、真に地域経済や県民生活の回復にとって必要ではないでしょうか。
さらに補正予算には、川辺川ダム建設の直轄事業負担金の増額補正が計上されております。17日に行われた学識者懇談会において、新たな流水型ダム建設の事業費が2,700憶円に上ること、ダム完成までには10年以上かかり、20年後までには完了する見通しであること、などが示されました。2008年に国交省は流水型ダム案を提示したことがありますが、その際の事業費は約1200億円。今回の提示はその時の2倍以上となっています。さらにダムの放流孔に開閉式の可動ゲートを設置する方針だということが報じられていますが、ゲート設置に関しては私が昨年2月議会における討論でも申し上げたように、流水型ダム推進の第一人者である角哲也教授自らが、土砂と流木によってダムのゲートが閉塞した長野県裾花ダムの事例を発表されており、安全性に対する重大な懸念が浮かび上がっております。過去最大規模の流水型ダムとなる川辺川ダムに開閉ゲートの設置となると、国交省としても当然初めての試みであり、さらに事業費が今後どれだけ膨張していくかもわからないのではないでしょうか。
さらに、総合的な流域治水というのは、ダム建設が盛り込まれたとたんに総合的でなくなってしまいます。それはダムによる水位低減を前提として堤防のかさ上げが抑制されてしまうからであります。しかもダム完成までかかる10年超もの時間、いつまた再び見舞われるかもしれない豪雨災害からどうやって流域住民の安全を守るのか、有効的なハード対策がまるで示されていないことは重大問題であります。いま急いで行なうべき取り組みは、雨季を迎える前までに、応急的な対策も含め、危険個所への堤防設置やかさ上げ、掘削などに力を尽くすことであります。
こうしたことから第一号議案には反対であることを表明して討論を終わります。