山本伸裕

議会質問・討論・意見書 2022年


令和3年度一般会計補正予算、および私学助成の拡充を求める意見書を不採択にすることに対する反対討論

印刷用PDFをダウンロードするには、ここをクリック(296kb)
 令和3年度一般会計補正予算、および私学助成の拡充を求める意見書を不採択にすることに対する反対討論
 
 日本共産党 山本伸裕 2021年12月21日
 日本共産党の山本伸裕です。
 まず知事提出議案第1号、および第34号、令和3年度熊本県一般会計補正予算について反対理由を述べます。まず、マイナンバー取得促進事業費2,140万円余、令和4年度の債務負担行為として7,289万円余が計上されております。政府は2022年度末までにすべての国民にマイナンバーカードをいきわたらせることを目標としており、この事業費はまさに熊本県がそのお先棒を担ぐように、市町村が行なうマイナンバー取得促進のための事業を支援することに乗り出すものであります。私は6月議会において、なぜ政府と財界がマイナンバーカードの普及に躍起になっているのか、それは第一に社会保障給付費の削減と国民への徴税強化のため、第二に個人情報の民間活用のためであることを指摘しました。国民の多くがあえてマイナンバーカード取得の必要性を感じておらず、また個人情報漏洩の危険もあるマイナンバーカードの普及のために、県が前のめりになって市町村の取組みの促進をはかろうとすることには賛成できません。
 また、TSMCとソニーが、新工場建設のための工業団地の造成に着手したことを受け、下水道処理施設の拡充が必要となったことから、菊陽町から下水道施設の整備を受託した事業として5億4,800万円の企業誘致環境整備事業費が計上されています。事業期間は令和3年から5年度にかけ、総事業費約31億円とのことであります。事業費について県の負担はないということですが、しかしそもそも国民全体が負担するという点では莫大なものがございます。国が工場建設のために助成することとした4000億円という金額は、赤ちゃんからお年寄りまですべての日本国民一人当たり3,300円、4人家族で1万3千円という莫大な金額であり、一つの民間企業の工場建設にこれほどの支援をおこなうということ自体が、前代未聞のきわめて異例な事であります。
 これほどの巨額の助成を実現させるために岸田政権は、高速大容量通信規格・5Gに対応できる半導体を製造する工場の建設に、最大で経費の2分の1を助成することができるとするための法改定を、極めて短時間の審議で強行しました。しかも改定法では、助成額の上限は設定されていないため、事業者の設備投資がさらに増えれば、助成額もさらに歯止めなく膨らんでいくことが想定されます。すでに見込まれているTSMCへの助成額4000億円は、それだけで国の中小企業対策費1745億円の2倍以上に当たる金額でありますが、さらにその金額は青天井に膨らむ可能性すら出てまいります。私はこうしたやり方は、TSMC工場の建設が熊本の経済にプラスの影響をもたらす面が仮にあるとしても、そのこと自体にも疑問の声をあげている専門家の方がおられるわけですが、仮にプラス面があったとしても、全国民的な理解は到底得られるやり方ではないと言わざるを得ないと考えます。本来、半導体の確保を必要としている企業があるのならば、その企業自身が自己責任で確保に努めるのが資本主義社会のルールであります。しかも電機、自動車大企業は54兆円もの内部留保を掲げ、半導体確保のために充てることのできる潤沢な資金を十分に蓄えています。いっぽうで、コロナ危機で苦境にある中小企業向けの事業復活支援金は持続化給付金の半分であります。苦境にあえぐ中小企業への支援こそ強化すべきではないでしょうか。半導体製造装置や素材供給では、いまも日本は強みを持っています。こうした分野を支える中小企業へのきめ細かな支援によって、モノづくり技術全体を底上げすることこそ政治の役割であると私は考えるものであります。したがって、今回のTSMC工場建設に際しては、国の莫大な支援のやり方なども含め総合的にみて疑問であるということを表明するものであります。
 また補正予算では、同じくTSMCの進出を踏まえ、セミコンテクノパークへのアクセス向上につながるよう、三里木ルートに加え原水ルートや肥後大津ルートについても調査を実施するとして、阿蘇くまもと空港アクセス整備調査検討事業3,655万円が計上されております。ルートの再検討を進めるとしても、新聞社が11月末から12月にかけておこなった意向調査の結果を見ると、依然としてアクセス鉄道の建設には懐疑的な意見が多数を占めている状況であります。またTSMCにせよアクセス鉄道にせよ、熊本の宝である地下水の涵養域において広大な農地をつぶして開発を進めるものであり、このような開発が将来にわたって地下水への影響を及ぼすことはないのか、持続可能な地産地消の経済発展の芽を壊してしまうことにならないのか、熊本の未来に対する重大な責任を負っていることを自覚したうえでの慎重な検証をおこなうことが県政運営において必要不可欠であることを私は強調したいと思います。
 次に、請第34号、教育費負担の公私間格差をなくし、子どもたちに行き届いた教育を求める私学助成請願についてであります。委員会の採決は不採択でありますが、採択を求めるものであります。
 請願の主旨は、第一に国の就学支援金制度拡充に乗じて削減された県単独予算を復活させ、熊本県における学費補助制度の拡充を求める、第二に、令和2年7月豪雨や、新型コロナウイルス感染症による家計急変家庭への補助制度の拡充を求める、第三に「授業料減免制度」における20%の学校負担分を撤廃し、県の直接事業とすることを求めるというものであります。
 請願に対し県の説明は、国の就学支援金制度拡充に伴い、県単独予算で実施してきた授業料減免分は昨年度から、高等学校専攻科生徒への就学支援制度の創設に活用するなど、すべて私学のための予算に充当しているとのことであります。しかし専攻科への生徒への就学支援は、都道府県が実施する場合にはすでに国が所要額を補助することとなっており、多くの県は国の支援拡充に上乗せして独自の学費補助制度を実施する傍ら、専攻科生徒への就学支援も併せて実施しているのであります。また国の就学支援金の上限額39万6千円は私立高校の平均授業料を勘案した金額であり、実質的に授業料無償化が実現されていると言いますが、この支援金はあくまでも授業料のみを対象としており、それ以外の入学金や施設設備費等に使うことはできません。本県の施設設備費平均は年額12万4233円であり、生活保護世帯や非課税世帯であっても保護者負担は免れません。削減された県単独予算を復活させることは保護者、生徒の切実な願いであります。
 この請願の提出に際しては、毎年先生方と生徒さんたちが署名をもって議会に訴えに来られています。私学の学校に通うことで親や兄弟に負担をかけて申し訳ないと声を詰まらせながら涙ながらに請願の採択を訴える皆さんの話を、まだその場に参加されたことのない議員の皆さんはぜひ聞いていただきたいと思いますし、そして請願に対して不採択の態度をとられるのであれば、それはなぜなのかという理由もきちんと直接、彼らに伝えていただきたいと思うものであります。私学に通う生徒さんや保護者の願いをしっかり後押ししていくという議会の意思を示すものとして、本請願の請願採択に賛同されることを呼びかけて討論を終わります。

「緊急事態に関する国会審議を求める意見書」に対する反対討論

印刷用PDFをダウンロードするには、ここをクリック(300kb)
 「緊急事態に関する国会審議を求める意見書」に対する反対討論
 
 日本共産党 山本伸裕 2021年12月21日
 日本共産党の山本伸裕です。
 議員提出議案2号、「緊急事態に関する国会審議を求める意見書」に対する反対討論をおこないます。意見書案は、緊急事態に対応できる国づくりに向け、関連法規の見直し等による平時からの緊急時のルールの切り替え等について、国会における建設的かつ広範な議論をおこなうとともに、広く国民的な議論を喚起する取り組みを進めるよう強く要望するという内容であります。
 意見書案は、国家の最大の責務は、緊急時において国民の命と生活を守ることにあると強調しています。緊急時に限らず、平時においても、国民の命と生活を守ることは国家の最大の責務であります。逆にもしも平時において国民の命と生活を守ることをないがしろにするような政治がまかり通っているとするならば、それが緊急時になったとたん、国民の命と生活を守る政治に切り替わるとは思えません。要するに普段から国民の命と生活を守る政治の実現こそ常に追求しなければならない大命題であります。
 例えば、意見書案の中に書かれていますが、コロナ感染症の影響に関する問題では、中小企業の経営に深刻な影響が生じるなど、日本経済に大きな打撃を与えていると。また医療従事者や病床の不足により、医療崩壊の危機に直面する事態が生じていると。さらに災害関係では、高い確率で巨大地震の発生が予測されているが、近年の大規模災害で災害廃棄物の撤去、支援物資の輸送の遅れ、被災自治体の行政機能の停止等が問題となったこと、避難所運営やボランティア確保など複合的な困難に直面した、などということが書かれています。
 中小の経営に深刻な影響が生じているとおっしゃるのであれば、だったら具体的に中小経営者が切実に求めている持続化給付金や家賃支援給付金の第二弾の支給を求めて、国に声を上げていこうではありませんか。医療崩壊の危機に直面しているとおっしゃるのであれば、だったら地域医療構想の名のもとに20万床もの病床削減を進めるという政策や公的医療機関の再編統廃合計画を中止するよう、国に声を上げていこうではありませんか。目の前に具体的に明らかになっている改善すべき課題から目をそらさず、しっかりと問題解決のために取り組んでいくことが大事であって、ただ漠然と緊急事態に備えた法体系の整備だなどということを言われても、私は率直に申し上げて違和感を抱くことしかできないのであります。
 意見書では、今後、より重大な緊急事態が発生した場合には、従来の法体系では対応できなくなる恐れがあるといいます。いったいどのような事態を想定しているのでしょうか。法律にどんな不備があり、どう見直しを進めようとするのか、明らかにされていません。現行の災害対策基本法においては、例えば都道府県知事の強制権として、救助のための従事命令、施設管理や物資の保管・収容命令など罰則付きで命令することができます。市長村長の命令権もたくさんあります。設備物件の除去命令、他人の土地・建物・その他の工作物の一時的な使用・収用、現場の工作物または物件を除去させることができます。大規模災害が発生した際の緊急車両の通行等、必要な車両の運行をどう規定するかについては平成26年に出された通達文書、「大規模災害に伴う交通規制の実施要領並びに緊急通行車両等及び交通規制除外車両の事務処理に関する要領の制定について」において細かく緻密に示されています。災害時には緊急事態条項がないと迅速に緊急車両が通れないことになりはしないか、という議論がございますけれども、法律で何か新しいことを付け加えたら救助のスピードが上がるというものではございません。むしろ現行の法体系に問題があるのではなく、住民保護の前線に立つ自治体が、いかに法律を熟知し、災害発生の際を想定して被害を抑え行政機能を維持させることを目的とする訓練を日ごろから積み重ねておくか、こうしたことこそが重要ではないでしょうか。
 感染症対策におきましても、感染症法や検疫法、新型インフルエンザ対策特別措置法などがございます。新型コロナウイルスの防御にとっては水際対策が何よりも重要でありますが、入国管理法5条で入国拒否の措置はいつでもとることができます。また検疫法には質問権や診察・検査権があり、患者隔離も強制できます。感染症法では都道府県知事は検体の採取、健康診断や入院の強制ができます。感染拡大を未然に防止するうえでは世界各国の中でも日本が際立って立ち遅れているPCR検査を抜本的に拡充することが極めて需要であります。無自覚、無症状者も含めた陽性患者を宿泊療養施設などに保護することは現行法の下で実施可能であり、やるべきであります。危機的状況の拡大を食い止めるための対応を怠っておいて、感染を拡大させてしまった後に法体系の強化、権力集中をはかっていったい何をしようというのでしょうか。コロナ対策の遅れや混迷を法律のせいにするのはまったくの筋違いであるとしか、私には思えません。
 意見書案では、緊急事態に対応できる国づくりということが強調されています。関連法の見直しによる平時から緊急時のルールの切り替え等について国会における議論や国民的議論を喚起する取り組みの強化を求めています。これは浜谷英博三重中京大学名誉教授が提唱し、百地章日本大学教授が自身の著書「日本国憲法八つの欠陥」の中で強調されている内容そのものであります、即ち憲法で緊急事態宣言が発せられるように定めておくとともに、関係法律の総則等に、「内閣が緊急事態宣言をおこなったときは、国民の生命と安全を守るため、必要かつ合理的な範囲で本法律に定める規制を緩和し、または適用しないことができると書き込んでおくことだ」と主張しておられます。百地氏は、憲法に緊急事態条項が欠如しているために助かる命も救えないと主張します。
 一方国会では、岸田政権発足後初めて衆院憲法審査会での議論が12月16日、おこなわれました。また自民党の茂木幹事長は、「新型コロナウイルス禍を考えると、緊急事態に対する切迫感は高まっている」と強調したうえで、コロナ危機を口実に緊急事態条項創設を優先して改憲論議を加速させようという考えを明らかにしています。つまり本意見書案は、緊急事態条項を入り口として憲法改定の議論を推し進めようという政府・自民党の動きとまさに軌を一にして提出されているわけであります。
 そもそも現憲法になぜ緊急事態条項が盛り込まれていないかというと、戦前の大日本帝国憲法化において国家緊急権が乱用された反省の上に立っているからであります。大日本帝国憲法下では80回も緊急事態条項が発動されました。関東大震災が発生した際には戒厳令が使われ軍事独裁下となり、暴動が起きるかもしれないという口実で朝鮮人が大量虐殺され、次に青年労働者や社会主義者が虐殺されました。さらに共産党幹部は最高刑を死刑にするという治安維持法の改悪が、緊急事態条項の一つである緊急勅令によって強行され、日本の侵略戦争に反対する共産党員が次々に弾圧され、命を奪われました。こうした暗黒の歴史の反省に立って、日本国憲法では緊急事態条項を盛り込まず、緊急事態に対しては事前に個別の法律を準備して対応するという考えに立っているのであります。
 私たちはこうした歴史の教訓に学び、立憲主義や三権分立、そして人権を尊重する現行法体系の下で、国民の命暮らしを守る政治の実現をはかることこそ重要であるということを強調したいと思います。以上のようなことから本意見書案には反対であります。ぜひ議員各位におかれましても、本意見書案の反対にご賛同いただきますようお願いしまして討論を終わります。

2020年度一般会計決算認定に対する反対討論

印刷用PDFをダウンロードするには、ここをクリック(365kb)
 2020年度一般会計決算認定に対する反対討論
 
 日本共産党 山本伸裕 2021年12月21日
 日本共産党の山本伸裕です。令和2年度一般会計決算に対する反対討論をおこないます。
 令和2年度県政運営は、「熊本地震と令和2年7月豪雨からの創造的復興を両輪に、新型コロナウイルス感染症による社会の変容を見据え、持続可能な新しい熊本を創造する」との基本理念の下、進められました。熊本地震からの創造的復興に向けての重点10項目の中に位置付けられた一つが益城町の復興まちづくりであり、また最重要課題に位置付けられたのが被災された方々の住まいの再建でありました。蒲島知事自身も常々、被災された方々の住まいの再建なくして、熊本地震からの復興なしと強調しておられたわけであります。そうした立場から考えるならば、県道四車線化や区画整理事業のために自宅を再建したくてもそれが許されず、いまだにプレハブの仮設住宅暮らしを余儀なくされている方々が取り残されている事態は看過しがたいものがございます。日本共産党熊本県委員会としても、熊本県に対し要望書を提出しておりますが、例えばみなし仮設への転居であるとか、災害公営住宅への無償入居であるとか、一刻も早く応急仮設暮らしを続けておられる方々の住まい環境改善をはかることを県に求めるものであります。
 令和2年7月豪雨においても創造的復興のスローガンが強調されてきたわけでございますが、こちらのほうでも、被災された方々の住まい再建なくして復興なしという立場を基本に据えるべきであります。しかしながら蒲島知事が、完成がいつになるのかわからない新たな流水型ダムの建設をいち早く決断してしまったがために、堤防、宅地、道路、橋梁などのかさ上げレベルに抑制がかかってしまっております。住み慣れた元の場所に帰りたいが大丈夫なのかと不安を抱えている被災者の方々の悩み、苦しみに対して、ダムが完成したら水位は下がります。それまでは避難してくださいということでは到底安心・安全を被災者に与えることはできないのではないでしょうか。
 また7月豪雨により被害を受けた地域の生業や産業の再生と創出を支援する事業として、生業再建支援事業や商店街災害復旧等事業など241億6124万円余の予算が組まれましたが、決算額は予算額の120分の1の1億9,673万円余にとどまりました。被災地の生業や産業の再建はまだまだ途上であることは明らかでありますから、本来必要とされていたはずの予算が活用されなかったのはなぜなのか、例えば申請手続きの複雑さ、煩雑さに原因があったのか、事業の適用要件のハードルが高かったのか、元の場所で再建をめざそうとしてもできない困難が横たわっているのか、状況をよく分析し、被災者の思いに寄り添い、実効ある支援が行き渡っていくよう一層の努力を求めるものであります。
 知事は熊本地震と球磨川流域の創造的復興を実現していく際に、だれも取り残さないという強い思いを持って臨みたいと強調されてきました。しかし一方では熊本学園大学の高林教授が先日、ご自身のSNSで「取り残された被災者」と題して、熊本地震から5年半もの時間が経過しながら、食器棚は倒れたまま、割れたガラスや食器の破片は床に散乱した状態となったまま、何ら支援を受けることができないまま放置されていた被災者のことを紹介しておられました。行政は誰も取り残さないというけれども、在宅被災者には目が向けられていないのではないか、との先生の訴えを熊本県は真剣に受け止める必要があるのではないでしょうか。
 新型コロナウイルス感染症対策に関してでありますが、令和2年度は、新型コロナ感染症がまん延し始めた時期であります。その後感染拡大の波を繰り返し、とりわけ第5波といわれる感染爆発の際には医療がひっ迫し事業者や県民に深刻な生活苦が広がった事態を考えるならば、結果論から考えて、果たして当初の熊本県の感染症対策が十分であったのか、厳しく検証する必要があると考えます。今後の感染拡大を抑えていくうえでも、しっかりした検証の上に立って検査、医療、補償の拡充が進められるよう求めるものであります。
 熊本地震や豪雨災害、さらにコロナ感染症と三重苦に熊本県が見舞われ、財政運営でも厳しさが増す中で、その一方で熊本空港アクセス鉄道、あるいは防災センターなどが入る新庁舎建設、立野ダム建設などの大型公共事業は、立ち止まることなく推進されました。とくに立野ダム建設に関しては国交省が突如、243億円もの事業費増額を発表し、熊本県はおよそ80億円規模で事業費の負担増が生じることとなりました。蒲島知事はこれに何ら異を唱えることなく容認したことには大きな疑問を感じております。歳入面では税収の確保、未収金の早期解消、効率的な徴収ということが毎度毎度強調されるわけでありますが、私はぜひ歳出面において、巨大プロジェクト、大型開発についてもその必要性や緊急性について真剣に検証し、予算を決して聖域化することなく見直しをはかっていただくことが必要であると思います。また同時に、コロナや災害など複合的な困難に熊本県と県民が直面しているさなかであるだけに、より一層の強力な支援を国に求めることもまた不可欠であります。こうした観点で歳入、歳出の改善をはかっていただくことを求めて討論を終わります。

2021年11月県議会一般質問

印刷用PDFをダウンロードするには、ここをクリック(609kb)
 2021年11月県議会一般質問
 
 日本共産党 山本伸裕 2021年12月9日
 おはようございます。日本共産党の山本伸裕です。昨日の一般質問では、登壇した皆さんが、開戦80年という節目の日にふれてそれぞれの思いを語られました。私としましても、戦争への深い反省の上に立って制定された日本国憲法を後世に受け継いでいく決意を表明し、質問に入りたいと思います。
 
(御船高校問題)
 10月8日、県央の県立高校の創立100周年記念式典と記念講演が同校体育館で開催され、九州国際大学長の西川京子氏が記念講演をおこないました。記念式典、および記念講演は3年生が直接参加、1,2年生は教室にてモニターで視聴しました。
 この中で西川氏は、「先の大戦の正しい呼び名は大東亜戦争。日本はアジア解放のための正しい戦争をやった」という主旨の、教科書で学ぶ内容と異なる話をされました。政府の公式見解となっている村山談話では、第二次大戦について、植民地支配と侵略によって、アジア諸国の人々に多大の損害を与えたと述べたうえで、痛切な反省の意と心からのお詫びの気持ちを表明しています。まさに政府の公式見解とは真逆の立場からの講演が県立高校の現場で、生徒出席のもとでおこなわれたわけであります。記念式典には蒲島知事もお祝いのメッセージを送っておられます。予備知識なく記念講演を聞いた生徒たちは、おそらく話の内容に疑問を持つことなく、それが正しい理解だと思ったことでありましょう。
 校長先生も県教育委員会も、学習指導要領とは違った内容の話があったと認定し、事実関係を確認の上、指導をおこなっていくと表明しておられます。事実関係を確認するというのであれば、講演の内容そのものを正確に把握することを、当然ながら出発点にしなければなりません。教育長にお尋ねします。学校現場において、生徒たちも参加している中で、政府見解や教科書の内容と異なる講演が行われたということをどう考えますか。県教育委員会として事実関係を確認するというのであれば、その講演の記録そのものをちゃんと入手して検証すべきではありませんか。お答えください。
 二点目に、記念講演を聞いた生徒に対して、記念講演のどういった部分が間違いであったのか、正確に理解させていく必要があるのではないでしょうか。アジア諸国の中には日本が過去に行った侵略戦争を美化し正当化することに強く反発する感情が根強く残っています。学校現場において今回のような記念講演が開催されたこと自体が大きな反発を招きかねません。そういう点では、学校と教育委員会のこれからの対応が問われることになるかと存じますが、どのように対応していかれるつもりなのか、教育長にお尋ねします。
 
(教育長答弁骨子)
 〇講演内容は、講演者の思想・信条に関することであり、教育委員会が内容等について申し上げる立場にない。また、実行委員会は、当日の講演内容を公表はしないと聞いている。
 〇学校からの聞き取りをしている中で、政府見解や学習指導要領とは一部異なる内容があったことを把握している。
 〇学校は、記念講演会直後から、教科書を基本として生徒に指導をおこなっている。その際、多面的・多角的に考察し、主体的に判断することが重要であることを伝えている。
 〇県教育委員会は、校長回答を通じて、今回の事実の共有をはかる。その上で、学習指導要領に定められて学習内容等の周知徹底を図り、その指導が適切に行われるように対応する。
 
 (御船高校切り返し)
 講演内容は講演者の思想信条に関することであり、教育委員会が内容について申し上げる立場にないとのことでした。それは当たり前であります。ただ教科書と違う内容が学校現場で全校生徒を対象に語られたという事実が重大であります。西川さんの話を聞きたいと思う人たちが自主的に開催した講演会とは全然違うわけであります。ですから教育委員会にもきちんと対応するよう求めたいと思います。また答弁では、学校は記念講演会直後から教科書を基本として生徒には多面的・多角的に考察し、主体的に判断することが重要であることを伝えている、とのことでありました。ただ、政府見解や学習指導要領の内容とは異なる講演であったということをきちっと生徒たちに伝えないと、生徒は逆に混乱すると思います。そしてあいまいな対応は中国や韓国、あるいは台湾などをはじめアジア諸国との友好関係、文化的、経済的交流に水を差すことにもなりかねません。日本は過去の戦争の反省の上に立ち、二度と過ちを繰り返してはならないという決意のもとに不戦の誓いを立て、戦後の平和の歩みを進めてきたんだということを堂々と伝えることのほうが、私は子どもたちの心に日本人であることの誇りを育てることにもなるし、アジアや世界の人々との友好の輪を広げていくことができる人材が育っていくと思います。ぜひ教育委員会としては今回のことについてあいまいに終わらせるのでなく、きちっとけじめをつけていただくことを求めて次の質問に移ります。
 
 (気候危機問題)
 COP26では、世界の気温上昇を産業革命前に比べ1.5度に抑えるよう追求していくことで合意しました。1.5度目標達成のために、国連IPCCは、CO₂ 排出量を2030年までに2010年比で約45%削減、2050年までに実質ゼロにする必要があり、特に2030年までの削減の取り組みが決定的に重要であると警告しています。2050年にゼロにすればよいのではなく、2030年目標の達成が重要なのです。この10年は未来への分岐点とも表現されています。
 日本政府は今年四月、2030年度までの日本の温室効果ガス削減目標を、従来の2013年度比26%削減から、46%に引き上げると表明しました。しかしこれは2010年度比で言うならば42%程度、世界第5位のCO2排出国である日本としては削減目標が不十分であると、世界各国から批判が高まっています。実際EUは55%、アメリカは50%から52%の削減目標を掲げ、エネルギー政策などの根本的転換を進めています。一方熊本県が掲げている目標は、政府よりも若干積極的ではあります。
 私たち日本共産党は、気候危機を打開する日本共産党の2030戦略を発表しました。(パンフをかざす)このようにパンフレットも発行しております。脱炭素のかなめは石炭火力発電の停止と省エネルギー、再生可能エネルギーへの転換であります。しかもこの方向は、生活水準の悪化や経済の停滞をもたらすものではありません。再生可能エネルギーによる地産地消の発電所は、石炭火力や原発などよりはるかに多い雇用を生み出し地域経済活性につながります。海外に依存してきた化石燃料への支払いは減り、日本のエネルギー自給率は向上し、再エネの普及に伴ってコスト削減が進み、電気料金の値下げにもつながります。住宅などの断熱化は、光熱費が削減され生活支援としても有効なだけでなく、地域の建設業などに仕事と雇用を生み出します。世界的にも今や環境と人権を重視した投資、商品が重視されているように、省エネの推進と再生可能エネルギーへの転換は、新しい雇用を生み出し、地域経済を元気にし、持続可能な成長につながる大きな可能性を持っているのであります。こうしたエネルギー政策の転換により、日本共産党は2030年までのCO2削減は50%から60%の削減が可能になるとの目標を設定しています。ぜひご参考いただきたいと思います。
 さて熊本県としても、県内CO2削減促進のため、球磨川流域をモデル地域として、一定基準以上の断熱仕様とする住宅の新築やリフォームに対する補助制度を創設しました。この事業は大変好評だと伺っております。
 地域の資源を利活用して脱炭素社会につながる循環型地域経済づくりを目指している自治体も広がり始めています。スクリーンを表示します。岡山県西粟倉村は、森林面積95%、人口は産山村と同じくらいの1,400人の過疎の村であります。村長さんがこの村の資源を使って、小さな経済や雇用を作り出していこうと森を整備し、地元の木材加工会社が材木を販売するとともに薪や木質チップは村内温泉施設ボイラーの燃料などに活用。さらに新たに熱エネルギーセンターを整備し、公共施設などに暖房と給湯を提供するとのこと。こうした取り組みの中、過疎の村は若者たちの雇用の場が生まれ、子どもの数が維持され、人口減少率に歯止めがかかっているといいます。大変教訓的な実践であります。
 また群馬県の中之条町では、全国初の自治体系の新電力が誕生、農業用水による小水力発電や木質バイオマスなどの地域資源を活用した電力の地産地消により、地域の活性化を推進しています。公共施設に電力を供給するとともに、一般家庭への電力販売も行われています。このような一つ一つの地域の実践が熊本県内の各市町村においても大いに広がっていくことが必要だし、そのポテンシャルは十分にあると考えます。
 そこで質問ですが、第一に2030年までの熊本県のCO2削減目標をより高いレベルに引き上げるべきではありませんか。第二に、住宅の断熱化促進補助制度の取組みを県下全域に、そして補助対象や補助額も上乗せして広げていくべきではないでしょうか。第三に、学校、病院、工場などの屋根に太陽光設置を促進するために、具体的な数値目標を県として設定し、支援制度なども創設することが必要ではありませんか。第四に、地産地消の再生可能エネルギー開発に取り組む自治体や団体が県内で大きく広がるよう、県としても思い切った支援策を打ち出すべきではありませんか。以上、第一、第二については環境生活部長、第三、第四の質問については商工労働部長に答弁を求めます。
 
 (環境生活部長答弁)
 〇(CO2削減目標について)県では、本年7月に「第六次環境基本計画」を策定。2030年度までの温室効果ガスの削減木曜について、2013年度比で50%と定めた。この目標は、国の目標を上回る極めて高い目標であり、まずは、この目標の達成に向け取り組んでまいる。
 〇(住宅の断熱化について)県では、今年度、球磨川流域をモデル地域に補助制度を創設。想定を上回るペースで申請があっており、今定例会に増額の補正予算を提案している。
 〇国では、本年4月に改正建築物省エネ法が施行され、断熱性能などについて、建築士による建築主への説明が義務化。関係省庁で支援拡充の予算要求もされている。県としては、こうした国の動向等も踏まえながら、住宅の断熱性能の向上に向けた取り組みを進めてまいる。
 
 (商工労働部長答弁)
 〇(太陽光発電設置に係る数値目標と支援制度について)「第二次熊本県総合エネルギー計画」では、2030年度の電力消費量に占める再生可能エネルギーの割合を50%とする目標を設定。その中で2018年度比の住宅用太陽光の発電量を1.2倍、事業用太陽光を1.7倍に増やしていくこととしている。
 〇平成21年度から住宅用太陽光設備設置に係る補助制度を導入し、平成25年までに、約23,000件に助成。本県での、住宅用太陽光普及率は、2019年度で15%、全国第2位。
 〇県としては、「初期投資ゼロモデル」の普及や国の支援制度の活用などにより、さらに導入促進を図ってまいる。
 〇(再生可能エネルギー開発に取り組む市町村等への支援策について)西粟倉村のようなエネルギー地産地消の取組みは、それにより生み出される利益により新たな産業や雇用が生まれ、地域の活性化につながるものであり、災害時にも強靭な地域を作り上げることが期待される。
 〇県においても、「阿蘇くまもと空港周辺地域でのスマートシティ創造」を重点的取り組みに位置付け、マイクログリッド化の検討を進めてまいる。
 〇このような取り組みを、再エネ活用による地方創生のモデルとして、県内の市町村にも導入してもらうよう努めてまいりたい。
 〇県としては、世界的な脱炭素化の流れの中、県内の再エネ供給を増やし、合わせて再エネ需要を創出する、再生可能エネルギーの地産地消をしっかりと進め、「第二次総合エネルギー計画」に掲げる目標の達成を目指してまいる。
 
 (気候危機、エネルギー政策切り返し)
 2030年までのCO2 削減目標は達成できたらいいという程度の目標ではなく、達成しなければならない、達成できなければ地球と人類の未来が危うい子どもや孫の将来が危ういという問題意識で位置づける必要があります。熊本県の2030年削減目標は国よりも積極的な目標で、まずはこれをやるんだというお話でありました。2030年までの削減目標の達成のために逆算で、いま直ちに、何をどれだけ転換する必要があるのか普及する必要があるのか、こうした立場で節目節目の達成具合も検証しながら、進めていただきたいと思います。
 さらに、国の姿勢について熊本県は物申す立場ではないということではいけないと思います。日本政府は石炭火力発電を続けるために、新技術に活路を見出そうとしていますが、ますます国際社会から大きな批判を招くばかりだと思います。新技術の開発そのものは必要かもしれませんが、2030年までに緊急にCO2の削減が求められているもとでは、むしろ既存の技術やすでに実用化のめどが立っている技術を積極的に普及・導入することでただちに削減に踏み出すことが重要であります。熊本県には苓北火力発電が存在し、2017年度実績で全国事業所の中で20番目に多いCO2を排出してます。熊本県からも国や九州電力に対し、少なくとも石炭火力発電を停止する目標年度を設定し、エネルギー政策の転換をはかるよう求めるべきではないか、そのこともぜひご検討いただくことを求めて次の質問に移ります。
 
 (気候変動のもとでの河川整備の在り方について)
 今年8月から9月にかけて、県と国交省は、球磨川流域市町村の住民を対象として住民説明会を開催しました。そこで、今回の流域治水プロジェクトにおけるかさ上げの考え方が示されています。スクリーンに表示します。まず左の図が、河川事業としての基本的な考え方です。水平にひかれているライン、治水対策後の水位とは、流水型ダムの完成を含めすべての対策が講じられれば、昨年7月の洪水はここまで水位が下がりますというラインです。なので、住宅を守るために輪中堤、あるいは宅地かさ上げの高さはこのラインですと。けれどもこの考え方では、ダムが完成しなければ住宅は水没してしまうわけです。次に右の図は、もし左図の高さ以上にかさ上げしたいと思うんだったら、それは河川事業ではなくて市町村のまちづくり事業の中でやってくださいというものであります。
 左図の考え方は、私が昨年11月議会の一般質問で取り上げた、球磨村大坂間のかさ上げの考え方と同じであります。大坂間では、川辺川ダムができれば堤防の高さはこれで大丈夫だということで住宅が建てられましたが、昨年洪水で根こそぎ流されて5人の方が犠牲となってしまいました。今回の緊急対策プロジェクトにおいても流水型ダムの効果を前提にかさ上げしますと。そうすると流水型ダムが未完成のうちは大坂間の悲劇が球磨川流域の各地で起こりかねないということではないのですか。それ以上のかさ上げをやりたいんだったらどうぞ自治体のまちづくり事業でやってくださいというのはあまりにも無責任ではないですか。私は少なくとも昨年豪雨災害時の水位に耐えうるかさ上げをやるという立場を基本に据えるきだと思いますが熊本県としてはいかがお考えでしょうか。
 次に白川の河川整備について取り上げたいと思います。白川は県都熊本市の中心部を流れる一級河川であり、また昭和28年大水害を経験した河川でもあることから、悲劇を繰り返さないための対策を急いで進めなければならないと思います。ところが、昨年、河川整備計画の見直しが行なわれましたが、基本方針は従来のままであります。今後の気候変動に伴って増大すると国交省が指摘している降雨量、洪水流量は想定されておりません。住民参加で新しい基本方針を策定すべきではありませんか。また、いまの整備計画は、立野ダムによる洪水調節を前提としたものでありますが、逆に言えばダムが存在するために堤防の高さに制約が生じ、河川の流量を向上させる事業を邪魔しているということになりはしませんか。またダムは異常豪雨の際には洪水調節機能が失われる可能性、いわゆる緊急放流の可能性があります。少なくとも、ダムに依拠せずとも市街地を守るための対策を講じるべきではありませんか。
 以上、球磨川流域のかさ上げについては復興局理事、白川の河川整備の在り方については土木部長にお尋ねします。
 
 (復興局理事答弁骨子)
 〇球磨村大坂間地区の宅地かさ上げは、「ダムによらない治水を検討する場」の治水の基本的な考え方により、当時、戦後最大の被害が生じた昭和40年7月洪水の水位も踏まえた高さで整備されていると認識。
 〇今回の流域治水プロジェクトは、新たな流水型ダムや河道掘削等の取り組みを集中的に実施し、令和2年7月洪水と同規模の洪水に対して、球磨村等の中流部の区間では家屋の浸水防止などをはかるもの。
 〇県は、これらの取組みが円滑に進むよう、国や市町村と連携して、市町村がおこなう集落再生やまちづくりなどを支援していく。
 〇また、市町村等がおこなう住民の避難行動に関する取り組みや、水害保険の加入促進などの被害への備えに対しても支援していく。
 
 (土木部長答弁骨子)
 〇国土交通省は、気候変動の影響を考慮して、全国の一級河川の河川整備基本方針を見直すこととしている。
 〇白川などその他の一級河川の基本方針についても、順次変更されると聞いている。
 〇新たな河川整備計画は、これまでの進捗状況を踏まえ、最も効果的に目標を達成するための治水対策を定めたもので、堤防、河道掘削、橋梁改築、立野ダム等の整備を位置付けている。
 〇想定を超える規模の洪水に対し、可能な限り被害を軽減できるよう、避難や水防活動の促進なども位置付けて参る。
 
 (気候変動に伴う治水策の見直し切り返し)
 球磨川の問題で言えば、かつてダムによらない治水を究極まで追求すると言いながら、結局12年間、ダムを含めた治水対策という考え方を改めませんでした。そのために大坂間の悲劇が引き起こされてしまったのではないでしょうか。
 今回の流域治水プロジェクトは、令和2年7月洪水と同規模の洪水に対して、家屋の浸水防止などをはかると言いますけれども、それはあくまでダムが完成したらの話であります。それではダムができるまでの間、どう安全を守るのか、昨日の高木議員の質問に対して知事がお答えになりました。第一段階で堆積土砂の撤去や災害復旧工事やります。第二段階で遊水地や掘削や引き堤など工事しますと。第三段階でいよいよダム完成をはかりますと。じゃあ第二段階まで完成してどれだけ水位が下がるのかというと国交省の説明資料によれば、八代市坂本町で35センチですよ。球磨村渡で30センチですよ。しかもそれが実現するのは令和11年度ですと。いま令和二年度ですからあと9年後にようやく30センチですよ。しかもそれからいよいよダム完成を目指していきます、いったいいつになったら被災者は、再びの水害におびえなくて済むようになるんですか。いやいやソフト対策もやりますよ。つまり逃げてくださいと。水害の保険もおすすめしていますと。そういうことも否定はしませんが、それで住民は納得し安心できると思えません。一方で、いま進められている河床掘削で出た土の捨て場がなく、中にはお金を払って捨てているというお話も伺いました。それならば堤防や宅地のかさ上げのために使ったらいいじゃありませんか。お金や時間も短縮できるのではないでしょうか。
 私は何度でも申し上げますが、いくらダムをつくると言っても、ダムが完成しないうちは、もし真面目に住民の安全を守ろうと考えるのであれば、ダムによらない治水をすすめるしかないんですよ。ダム計画が存在するがためにかさ上げを抑制するという考え方は乗り越えるべきだと訴えるものであります。
 白川の問題でも、熊本市ハザードマップでは中心部のかなりの地域が床上浸水、場所によっては2階の屋根まで水が来る5メートルから10メートルの浸水が想定されています。いっぽう立野ダムがあったとしても白川の水位は40センチしか下がらないんです。そもそも立野ダムでは将来の気候変動には対応できないということではないでしょうか。それでも立野ダムの洪水調節機能を前提に河川整備の基本方針や整備計画を立てることはますます危険が増大するということを申し上げておきたいと思います。
 ダム建設を含む総合的な流域治水というのは、これからはダムだけで河川の氾濫が抑えられるとは限りませんということを認めながら、それなのにダム計画があるがために堤防の高さが抑制されてしまうという自己矛盾を抱えております。この考え方を打ち破らなければだめだということを申し上げ、次の質問に移ります。
 
 (川辺川ダム建設の住民合意の問題)
 報道によると知事は11月18日の記者会見において、球磨川のダムによらない治水方針を転換したことについて、「県民に否定されれば辞任するつもりだったが、おおむね受け入れられたと感じている。一方、いまも反対の声があるのは確かなので、理解を得るための努力をしていく」と述べたとされています。新たな流水型ダムの建設について、大半の県民が賛同し、反対は一部の少数意見である、と知事はお考えなのでしょうか。しかし、熊日新聞が豪雨から半年経過した時点で被災地などの住民を対象に行った調査では、新たな流水型ダムの推進を表明した知事の判断に対しては賛否が真っ二つに分かれていると報道しました。民意の把握については、十分だ、またはどちらかといえば十分だとの意見が30%であったのに対し、十分ではない、どちらかといえば十分ではないという意見が45.5%に上りました。また本日の新聞紙面でも、住民の不安は払しょくできるのか疑問視する記事が踊っています。
 スクリーンをご覧ください。今年8月には、被災者・賛同者の会と川辺川現地調査実行委員会が協同し、被災世帯を対象にしたアンケート調査をおこなっています。それによると、要望する水害対策として一番多かったのは堆積土砂の撤去、次いで山林・山を保全する、そして河道掘削、堤防のかさ上げと続きます。流水型ダムを造るというのは選択肢の項目の中では最も少ない8.1%、逆に流域のダムを撤去するとの回答が21.1 %もありました。また、10月の新聞記事では、流水型ダム 割れる賛否 住民の声もっと政策に、との見出しで、ダムに対する反対の声は根強いとして、住民の不安や懸念の声を紹介しています。知事はかつてのダムによらない治水から民意は変わったと言われますが、変わってはいないし流水型ダムの建設に疑問や不安、反対だと感じている方が、少なくとも流域住民におかれては圧倒的多数であるように私は感じています。知事が、県民に受け入れられていると判断している根拠として言われるのが、崇城大学今井教授がおこなった電話調査の結果であります。しかしこの結果は今井教授ご本人も、この調査結果が民意を表しているとは言えないとお認めになったうえで、以下のように述べておられます。知事は今回「いのちと環境の両方を守る」という形で争点を設定したと。そうすると、いのちと環境の両方を守ること自体に反対する人は当然少ないわけで、そのことを前提として「いのちと環境を守るための方策としては流水型ダムの建設だと。このように方針を示せば、ダム建設に反対する人も少なくなる。合意争点化された枠組みで新たな治水対策の方針を示したことで、これまで川辺川ダム建設に否定的であった人も含めて、緑の流域治水支持に回る人が多く出たと考えられる。つまり設問の仕方で誘導するということでしょうか。今井教授の論文の中には、民意を聞くことは重要であるが、一方民意は求め作り出すものともいえるとの言葉が使われています。しかし私はそれは違うと思います。民意は求め作り出すものではなく、潜在的な思いも含めてくみ取るべきものであります。ましてや、治水対策は何よりも被害にあった方々の意向を伺うことが何より基本ではないでしょうか。もしも、流水型ダム賛成の住民の声が作り出された民意であり、それを盾にとって建設を促進するとするならば、私は将来に禍根を残す政策決定とならざるを得ないと思います。
 知事にお尋ねしますが、ダムによらない治水方針の転換はおおむね県民に受け入れられているとお考えなのでしょうか。そして、新たな流水型ダムの建設についてはいったん立ち止まって、あらためて流域住民の皆さんの願いに寄り添った総合的な流域治水策を探求すべきではありませんか、ご見解を伺います。
 
 (蒲島知事答弁骨子)
 〇昨年、30回にわたり、流域の皆様から、直接治水の方向性や復興に向けたご意見を伺う中で、現在の民意は命と環境の両立と受け止め、新たな流水型ダムを含めた緑の流域治水の推進を国に求めることを表明した。
 〇流域の皆様のご意見を伺った時、ダムに対する意向が変わったと受け止めたが、崇城大学今井教授の調査も同様の結果であり、おおむね理解は得られたと受け止めている。
 〇新たな流水型ダムは、安全・安心を最大化するとともに、球磨川の環境に極限まで配慮し、清流を守る必要がある。
 〇そのため、法と同等の環境アセスメントが実施されており、今後、県、流域市町村、流域住民が一体となって確認する仕組みも構築し、ダムの効果やリスクについても説明責任を果たしていく。
 〇これらを通じ、新たな流水型ダムを含む緑の流域治水について、住民の理解をいただきながら、命と環境を守る取り組みを進め、一日も早く安全・安心を確保していく。
 
 (住民合意切り返し)
 ダムに対する民意が変わったと受け止めた、それは今井教授の調査も同様だと言われましたが、先ほども申しましたように、調査結果は民意を表しているとは言えないと今井先生自身がおっしゃっているんですよ。かつて川辺川ダム中止表明に至る過程では、住民討論集会が9回、53時間、12,000名が参加しました。球磨川明日の川づくり報告会は校区ごとの開催を基本に53か所で開かれ、1,481人が参加しました。こうした当時の民意をくみ取るための取り組みと比べると、ダムに対する住民の意向が変わったという知事の受け止めの根拠となるものはあまりにも希薄ではないでしょうか。
 一般新聞の論調や被災者の皆さんらが取り組んだアンケート結果に対しては、これからも理解を得られるよう努めるということで片づけて、その一方でおおむね理解は得られていると言い続けておられることに私は強い違和感を感じます。結局は流水型ダム建設の結論ありきで進められているのではないでしょうか。
 知事は一日も早く命と環境を守る取り組みを進め、安全・安心を確保していくと言われました。それならば先ほども申し上げましたが、完成がいつになるのかわからない流水型ダムの完成まちにならず、急いでダムによらない治水の取り組みを極限まで進めていただきたいということを申し上げるものであります。
 
 (生理用品を公共施設のトイレに設置を)
 次の質問に入ります。いま、私たちの社会は、男女共同参画や多様性の尊重を口先だけでなく、本気でジェンダー平等に取り組む政治が渇望されています。ジェンダー平等の社会とは、だれもが性別にかかわらず個人の尊厳を大切にされ、自分らしく生きられる、すべての人にとって希望に満ちた社会のことを指しています。コロナ禍は女性に様々な犠牲を強いました。低賃金の非正規雇用で働く多くの女性が仕事を失い、ステイホームが強いられるもとでDV被害が急増し、2020年7月から10月における女性の自殺の増加率は男性の5倍にも達しました。子ども、少女たちへの虐待、性被害相談も急増し、民間団体任せは限界に達しています。日本は、各国の男女平等の達成度を示すジェンダーギャップ指数2021で、156か国中120位と、先進国として異常な低位を続けています。日本政府は1985年に女性差別撤廃条約を批准しながら、いま大きな問題になっている男女賃金格差の縮小も、選択的夫婦別姓への法改正も、繰り返し国連の女性差別撤廃委員会から是正勧告を受けてきたにもかかわらず、まともに取り組んできませんでした。ジェンダー後進国日本を改善していく責任はまさに政治にあります。
 コロナ危機を経て、ジェンダー平等を求める国民の声は劇的に高まっています。生理の貧困が話題になる中、これまでタブー視されていた生理の問題にも光が当たりました。任意団体であるハッシュタグみんなの生理が今年春におこなった調査結果によると、過去一年のうち、金銭的理由により生理用品の入手に苦労したことがあるという若者が約二割、生理用品を交換する頻度を減らしたと答えた人が約四割にも上りました。いま私たちの社会は、トイレットペーパーが公共のトイレにあるのがふつうであるように、生理用品がトイレにあるのが普通になるような変化が求められているように思います。そこでうかがいますが、県下における公共施設、および学校のトイレに生理用品を常備する取り組みを進めるべきではないでしょうか。環境生活部長に伺います。
 
 (環境生活部長答弁骨子)
 〇新型コロナウイルス感染症は、様々な面で女性にも深刻な影響を与えており、その背景には「経済的困窮」がある。また、「整理の貧困」については、本県においても潜在化しているものと思われる。
 〇生理用品の設置については、県立学校においては保健室に常備している。また、民間では、設置している飲食店などもあると聞いている。
 〇現在、県では、悩みを聞き必要な支援につなげていく相談会の中で、相談窓口を紹介するカードに併せて、生理用品の配布も行っている。
 〇県としては、このような相談会を通じて、コロナ禍で困窮する女性の声をお聞きし、必要な対応について考えて参る。
 
 (生理用品切り返し)
 すでに熊本県が、学校の保健室に生理用品を先駆けて常備されている取り組みはよく存じております。
 生理用品の配布は、コロナ禍による生活困窮が広がり、生理の貧困が社会問題として取り上げられるようになったことがきっかけでありますけれども、私はこの問題を学ぶ中で、単に生理用品を配布すればよいという問題ではなく、だれもが大切にされ、普通に暮らせる社会づくりが大切なんだということに気づかされました。
 東京・港区では女子児童・生徒2400人余りを対象にアンケート調査を実施したところ、生理用品がなくて困ったという経験は経済的な理由だけではなく、例えば学校に持参するのを忘れた、あるいは急な生理が来て足りなくなって困ったという声がありました。ある学校の校長先生は、学校としては困ったときは保健室に生理用品が準備されているからそこに行くようにと考えていたけれども、行こうと思ってもいけない子がいるのに気が付いたと語っています。そこでトイレに生理用品をおき、困ったときには遠慮しないで使ってください、使ったら保健室に連絡してくださいと張り紙をしました。そうしたら使った生徒たちが保健室に来てくれて、受験や学校行事の時の不安が大きいとか、生理は病気じゃないから我慢しなさいと言われて傷ついたとか、いろんな悩みも聞くことができたと言います。一方、ある生徒さんの事例では、母子家庭でお母さんも留守がち、小学4年生で初潮を迎えたときから生理用品が十分に買ってもらえず、高校生になってアルバイトをして自分で買えるようになるまでの6年間はナプキン一つを一日中使ったり、折りたたんだトイレットペーパーで代用したりしてしのいでいたそうであります。けれども周りからかわいそうだと思われたくなくて、必死で隠そうとしていた。保健室でもらったナプキンは後で返さないといけないが、返せないので先生にはおちゃらけてごまかしていたそうです。普通にナプキンを使える環境に接して初めて、自分は今まで大変だったんだということを認識できたとのことであります。誰にも相談できずに困っている人のためにどんな環境を整備するべきなのか、まさにこうした視点でさらに一歩寄りそった施策を進めていただくことをお願いし、次の質問に移ります。
 
 (横断歩道白線の引き直し)
 横断歩道の道路標示についてお尋ねします。日本事故防止推進機構によると、世界先進主要国の中で歩行者関連事故の件数は日本が最も多いとのことであります。もちろんドライバーに対しての安全運転の徹底は重要でありますが、それとともに各地で目に付くのは、横断歩道などの白線が薄れて見えにくいという問題であります。NHKが行なっている「未来スイッチ」というキャンペーン動画の中に、車の一時停止率向上のため、見えない横断歩道をなくせ。という特集がございました。2019年、信号機のない横断歩道で一時停止する車の割合ランキングが全国最下位となった三重県で、その原因を調査する中で浮き彫りになった問題の一つに、横断歩道の白線が薄くなってドライバーが横断歩道の存在に気が付かないという状況がありました。同県の松坂市で警察が調査したところ、なんと三分の一に当たる箇所で塗りなおす必要があることが判明。緊急性があると判断した横断歩道から塗りなおしを進めているとのことです。また、同市はセンターラインや境界など道路管理者が管理する白線について、前年度比で11倍の予算を計上し、センターラインや境界などの白線も含め、延べ160㎞にも及ぶ白線を塗りなおす対策を講じました。ちなみに一時停止率ランキングで、三重県は最新の順位は全国7位にまで向上しております。もちろん、白線の塗りなおしだけで問題解決とはいかないでしょうが、こうした取り組みに大いに学ぶべきであることは明白ではないでしょうか。
 本年2月議会で議決された「熊本県の交通安全水準のさらなる向上に関する宣言決議」では、歩行者に「横断歩道が付近に設置されている場合には、横断歩道を渡る」ことを求めていますが、見やすく分かりやすく整備・管理された横断歩道が存在することが前提となっており、横断歩道の白線の塗りなおしは極めて重要なことと考えます。
 白線が消えている横断歩道については、私も気が付いた所や住民からご指摘いただいた箇所については県警にご報告申し上げ、その都度大変誠実な対応いただいていることに私も感謝しているところであります。同時に私が感じているのは、必要な予算が慢性的に不足し、ラインの引き直しが追い付いていないという現状があるのではないかということです。さらなる予算の拡充、かつ継続的な予算確保が必要ではないかと考えますが、県警本部長の見解を求めます。
 
 (県警本部長答弁骨子)
 〇横断歩道などの道路標示の補修については、本年3月19日、県議会において議決された「熊本県の交通安全水準のさらなる向上に関する宣言決議」に基づき、歩行者の安全を確保するため、その予算を増額要求するとともに、獲得した予算の中から危険性や摩耗程度の高い個所から補修に取り組んでいるところです。
 〇しかしながら、議員ご指摘の通り、摩耗している横断歩道があることも事実です。県警察では、横断歩道の摩耗状況確認を目的として、本年4月から6月の3カ月間を「横断歩道の点検強化期間」として県内にある横断歩道の点検を実施しました。
 その結果、県内すべての横断歩道の摩耗状況を把握し、全体の約2割については早急に補修をおこなうとしたところです。
 〇また、千葉県八街市での交通事故を受けて実施した通学路緊急点検や住民要望等でも、横断歩道の表示の補修要望等があっています。これらの箇所につきましても、速やかに補修対応を実施していきます。
 〇県警察といたしましては、今後も横断歩道などの道路標示を継続的かつ適切に管理していくため、実態把握をおこないながら、補修の必要がある箇所については、確実に補修ができるよう必要な予算の確保に努めていきます。
 〇今後も交通事故のない安全で安心な交通社会の実現をはかるため、横断歩道を見やすくわかりやすい整備に努めるとともに、横断歩道における歩行者保護を徹底するため、歩行者を認めたドライバーは、必ず停止するという歩行者優先意識の定着を図る「てまえ運動」を推進し、歩行者の安全確保に努めてまいります。
 
 (横断歩道切り返し)
 横断歩道白線の塗りなおしをおこなうための事業費の最近10年間の推移をお尋ねをしたところ、ここ3年ほどは増加しておりますけれどもそれ以前は、平成25年の時からかなり減少していたこともわかりました。白線はどうしても年月が経過すればかすれていきますので、ぜひ今後とも継続的恒常的に予算を確保し、取り組みを進めていただきますようお願いします。
 
 (世界かんがい施設遺産のPRについて)
 世界かんがい施設遺産とは、かんがいの歴史・発展を明らかにし、理解醸成をはかるとともに、かんがい施設の適切な保全に資するために、歴史的なかんがい施設を国際かんがい排水委員会が認定・登録する制度であります。世界で123か所、日本では44か所登録されています。私は、日本で世界かんがい施設遺産に登録されているそれぞれの施設についていろいろと情報収集してみました。すると例えば小中学校の生徒さんたちの現地見学会であるとか、成り立ちの歴史を調べた演劇の創作、施設の紹介DVD作成であるとか、記念碑の建立、博物館・資料館の建設、特設サイトの開設など、それぞれの地域で施設をPRする様々な取り組みが行なわれていることがわかりました。私が住む地域でも白川流域かんがい用水群の一つ、渡鹿堰があるのですが、地域の皆さんが日常的に清掃活動やホタルが飛び交う環境保全のために尽力されています。それだけに世界かんがい施設遺産登録が実現した際の皆さんの喜びはひとしおでありました。ところが地域の皆さんが記念碑の設置やトイレの整備など、世界かんがい施設遺産にふさわしい周辺整備をと求めていますが、残念ながらなかなか行政が動いてくれていないという現実がございます。
 じつは、大阪府と並び日本国内で最もこの世界かんがい施設遺産に登録されている施設が多いのがこの熊本県であります。熊本の豊富な水と豊かな自然、そして卓越した農業土木の技術が先進的に発達していたということを裏付けるものではないでしょうか。子どもらにとってもこれらの施設の歴史を学び、受け継いでいくことは、郷土への愛着と誇りを実感できる教材となるのではないかと思います。来年4月、熊本市で開催される第四回アジア・太平洋水サミットの関連イベントとして、世界かんがい施設遺産サミット㏌熊本が企画されています。全国の関係者などが熊本に結集し、交流が図られるわけであります。県内のそれぞれのかんがい施設を大いにアピールできる機会でありますし、それによって県内の施設に全国からの注目が高まり、観光客の増大、地域経済の浮揚にもつながるのではないでしょうか。ぜひ全国各地の取組に負けないPR活動や施設整備などに、熊本県としても関係自治体と共同して力を入れていただきたいと考えますがいかがでしょうか。農林水産部長にお尋ねします。
 
 (農林水産部長答弁骨子)
 〇本県では、「通潤用水」「幸野溝・百太郎溝水路群」「白川流域かんがい用水群」「菊池のかんがい用水群」の四施設が登録され、大阪府と並んで国内最多となっている。
 〇一方で、施設の認知度向上や、施設を核とした地域活性化が課題であることから、国内外へのPRや関係者との連携強化により、施設の持続的な保全・活用に向けた機運を高めていくことを目的として、今回、関係自治体や土地改良区による実行委員会を立ち上げ、全国初となる「世界かんがい施設遺産サミット㏌Kumamoto」を開催することとした。
 〇サミットには国内44施設すべての関係者に参加いただくとともに、オンライン参加の機会も設けるなど、国内外から幅広い参加を見込んでいる。サミットでは、パネルディスカッションと現地検討会の開催を予定しており、パネルディスカッションでは、施設関係者や学識経験者に加え、地元の高校生にも参加いただくことで、施設の活用につながる幅広いご意見や新たなアイディアが得られるものと期待している。現地検討会では県内4施設の現場を直接見てもらい、参加者に本県のかんがい遺産のすばらしさや地域の熱い思いを直接体感していただくとともに、地域の皆様には施設の重要性を再認識し、誇りを高めることができる絶好の機会としたいと考えている。
 〇また、同時期に開催される第4回アジア・太平洋水サミットの関連イベントにも位置付けられていることから、水サミットの会場でも積極的に情報発信をおこなうなど、県内施設のPRにも取り組んで参る。
 〇さらに、今回のサミットの機会をとらえ、国内施設の関係者による全国組織として「世界かんがい施設遺産地域活性化推進協議会」が設立されることとなっている。今後はこの協議会を通して、国内施設の連携をより強化するとともに、施設の活用や地域活性化に向け、地域が主体となって取り組んでいけるよう、県としてもしっかりと支援して参る。

2021年9月県議会・球磨川水系の河川整備基本方針の見直しに関する質疑

印刷用PDFをダウンロードするには、ここをクリック(244kb)
 球磨川水系の河川整備基本方針の見直しに関する質疑
 
 日本共産党 山本伸裕 2021年9月24日
 日本共産党の山本のぶひろです。球磨川水系の河川整備基本方針の見直しに関して知事にお尋ねします。
 国交省が示した基本方針案は、昨年7月豪雨と同等の雨が降れば、たとえすべての対策を講じたとしても、人吉地点から下流の大部分で計画高水位を超過します。16日の自民党代表質問において坂田議員が「はいそうですかとはなかなか言い難く、不安が募った」と言われましたが、これは流域住民共通の思いでありましょう。知事自身も、昨年11月の全員協議会で「今回のような想定を超える豪雨、さらには、それさえも上回る豪雨は、いつどこで起きても不思議ではありません。」と表明しておられます。ならば、少なくとも基本方針において、昨年7月豪雨を計画対象にしないということはあり得ない話ではないでしょうか。
 知事にまずお尋ねします。知事は、熊本県防災組織のトップであり、基本方針検討小委員会のメンバーに加わっておられます。住民の不安にこたえるためにも、少なくとも昨年7月豪雨災害に耐えうる河川整備基本方針の策定を国に求めるのは当然であると思いますが、これまでの小委員会ではそうした要求はされなかったのですか。端的にお答えください。
 気候変動により、今後ますます増大していく降雨量を考慮すべきだということで、いま国交省は河川整備計画の見直しを進めています。ところが球磨川においては、将来にわたって進められていくべき河川整備の計画が、まさに気候変動の影響で現実に起こってしまった昨年豪雨災害をなぜか計画対象にしないという、前代未聞の計画案が示されました。これは、昨年の豪雨検証委員会の結論につじつまを合わせようとした結果ではないのでしょうか。検証委員会では、昨年豪雨で人吉地点を流れたピーク流量は毎秒7,900トンとしましたが、この数字には住民や専門家から相次いで、実際はもっと流れていたとの指摘がありました。ただそれを認めてしまえば、川辺川ダムがあれば水害を6割減らせたとの根拠・結論が怪しくなってまいります。そこで今回の基本方針案でも人吉における基本高水流量、計画高水流量において、検証委員会の結論と整合性の取れる値が示されましたが、そうすると人吉から下流域では、結果的に昨年豪雨の実績を下回る基本高水流量となってしまったということではないのでしょうか。
 いっぽう、球磨川流域治水協議会は今年はじめ、流域治水対策プロジェクトを取りまとめました。これに基づき、いま八代市坂本町や球磨村では、昨年7月豪雨災害でも対応できる宅地かさ上げ、高台移転などの計画が進められています。さらに加えて、基本方針案では河床掘削により流量を増やすことも明記されました。ところが、人吉市においてはどうでしょうか。昭和40年に設定された計画高水流量毎秒4,000㌧は緊急治水プロジェクトでも基本方針案でも全く変更がありません。そして基本方針案では、ダム等の調節量が川に流す量を上回るという、全国にない異常な治水計画となっていますが、今後将来、降雨量が1.2倍、1.3倍と増えれば、さらにダムに水をためこみ続けるということになります。このこと自体が大変恐ろしい計画であります。しかも、人吉市においては安全の確保は、何年先になるかもわからないダムの完成を待たなければなりません。
 同じ令和2年7月豪雨災害で被害を受けた住民でありながら、かたや危険が軽減・解消される地域と、かたや危険性の解消がいつになるのか見通しが立たない地域が生まれてしまうことになります。人吉の被災者の方々は、「元の場所に住まいを再建してよいのか」、「再び水害に見舞われたらどうしよう」という不安を抱えておられます。何年先になるのかわからないダム建設のために、人吉市民の安全まで先送りにしてしまうような計画は、容認できないのは当然ではないでしょうか。
 知事におかれましては、明確に国・国土交通省に対し、人吉市を危険にさらすこのような方針案は認められないと表明すべきではありませんか。これも端的に答弁を求めます。
 
 ※蒲島知事答弁(要旨)
  ・今月6日に、河川整備基本方針検討小委員会が開催された。
  ・令和2年7月豪雨と同規模の洪水の水位は、計画堤防高を超えないものの、人吉市より下流で、計画高水位を超過する区間があることが示された。
  ・「流域治水」を多層的に進めることなどにより、水位の低下や被害の最小化を図ることが示された。
  ・この内容は、「球磨川水系流域治水プロジェクト」の内容と整合しており、令和2年7月豪雨に対応していると受け止めたため、容認できないとは言わなかった。
  ・国・流域市町村、住民の皆様と連携し、流域の安全の確保に向けて全力を尽くしてまいる。
 
 ※山本切り返し
 令和2年7月豪雨に対応していると受け止めたと知事は言われましたが、それは人吉市においては、ダムができればの話であります。ダムができるまでどうやって安全を守るのかという不安の声には全く答えるものにはなっておりません。ダム完成まで、人吉市の治水安全度は向上しない。これで知事は人吉市民の不安にこたえることができるのですか。しかもダムができたとしても、これからますます進行するかもしれない気候変動のもとで、昨年豪雨災害を上回る雨が降れば、さらにダムにため込む量を増やし続けるというのです。今年8月の長雨で天草の亀川ダムが実施したように、緊急放流という事態に至ることは今後十分に起こりうる話であり、ダム貯水量が増えれば増えるほど、緊急放流の際の下流域住民の危険度は増大するのではありませんか。住民の命を守るためにダムが必要だと国・県は言われますが、実際はダムを作るために住民の安全が犠牲にされているのではないでしょうか。
 こうした計画を容認して、知事は熊本県の防災のトップとして、住民の命を守ることに責任が果たせるのかということを強く申し上げ、質疑を終わります。

2021年6月県議会・マイナンバーカードの普及とマイナンバーの利活用促進等を求める意見書案に対する反対討論

印刷用PDFをダウンロードするには、ここをクリック(262kb)
 2021年6月県議会・マイナンバーカードの普及とマイナンバーの利活用促進等を求める意見書案に対する反対討論
 
 日本共産党 山本伸裕 2021年7月4日
 日本共産党の山本のぶひろです。マイナンバーカードの普及とマイナンバーの利活用の促進等を求める意見書案に対する反対討論を行います。
 マイナンバーカードの取得はあくまで任意であります。ただ、政府はマイナンバーカードの普及促進に相当な力を傾注しています。新型コロナ関連の特別定額給付金の支給に際しては、それに乗じて当初は利用を想定していなかったマイナンバーを無理矢理持ち込み、結果的に逆に給付金の支給に混乱を引き起こしてしまったという事態も、記憶に新しいところであります。なかば強引なやり方を用いてまでカード普及を一気に進めようということではないでしょうか。マイナンバーカードの普及率は5月5日時点で30%に達したとのことでありますが、ただこの数字も、カード普及がなかなか進まないということで政府が公務員等にカードの一斉取得を推奨したり、カードを活用したものにポイントを付与する制度を導入したり、市町村にカード普及促進のために必要な財政支援を行うなど、あれやこれやの施策を短期間のうちに次々打ち出してきたことによるものであります。カード交付開始から5年半が経過しますが、普及率がなかなか進まないのは国民があえてカード取得の必要性を感じておらず、また個人情報漏洩に対する懸念もあるからではないでしょうか。
 政府と財界がマイナンバーカードの全国民取得に躍起になるのは、デジタル政府・デジタル社会構築の大前提と位置付けているからであります。行政手続き、年金や公金の給付、学校教育での活用、各種免許や国家資格証など生活のあらゆる分野でマイナンバーカードを使ったデジタル化を進めようとしています。こうしたデジタル化の推進によって、個人の所得や資産、医療、教育など膨大な個人情報のデータが国家により管理されることとなります。そのねらいは、社会保障の給付を抑制し、国の財政や大企業の負担を減らすところにあるということが明らかになっています。実際、マイナンバー法第一条には、行政運営の効率化及び行政分野におけるより公正な給付と負担の確保、と明記されています。マイナンバーの推進を訴えてきた日本経団連は2004年、一人ひとりの負担と給付を把握するために、社会保障の個人会計化を提言しました。一人ひとりが収めた税や社会保険料の金額と、社会保障として給付された金額とを比較して、自分が収めた税や保険料に見合った分だけの社会保障が提供される、という考え方であります。すなわち国民の権利としての社会保障制度から、一人ひとりの負担に応じた対価としての社会保障制度に変えていこうというところに大きな狙いがあります。その後経団連の会長となった米倉弘昌氏は、マイナンバーを導入するのは、不要あるいは過度の社会保障の給付を回避するためだとあけすけに語っているのであります。
 マイナンバーカード推進のもう一つの狙いは、個人情報の民間活用であります。2010年11月の経団連提言では、行政内部だけで管理されていた情報を民間で利活用する、民間サービスとの融合により新たな産業やサービスの創造が可能になるとうたっています。同年の政府与党社会保障改革検討本部会議で取りまとめた大綱では、将来的には幅広い行政分野、民間のサービス業に活用する場面においても情報連携が可能となるよう制度設計を行なう、と明記しています。
 個人情報の集積を図るために導入されたのがマイナポータルであります。情報は集積されればされるほど攻撃されやすく、そして一度漏れた情報は取り返しがつきません。個人のデータが本人の知らないところでやり取りされ、プロファイリングやスコアリングされ、いつの間にか本人に不利益な使い方をされてしまう危険性が非常に高まります。
 だからこそ、デジタル社会を進めようとするのであれば個人情報保護のルールを強化しなければなりません。そして自分の情報がどう管理され、利活用されているかを知り、意思に反する利用を拒否することができる権利が保障されなければなりません。個人情報の自己コントロール権、プライバシー権の保証が必要不可欠なのであります。ところが今政府が進めているデジタル化は、国民の権利保障に逆行するものだといわざるを得ません。
 公的部門において取得された個人情報は、申請や届け出などのさいに義務的に提出されたものがほとんどでありますから、公的部門の当然の務めとして、より厳格に個人情報を保護しなければなりません。ですからこれまで多くの自治体が、個人情報の目的外利用、外部への提供については、個人情報保護条例によって厳しく制限を設けてきたわけであります。ところが国会で成立したデジタル関連法は、個人情報保護法制を一元化し、自治体独自の個人情報を守る仕組みを緩和させようとしています。またマイナンバーそのものの利用拡大には法改正が必要となりますが、マイナポータルは法改正の必要なく情報連携を進めることが可能となります。
 こうしていま政府は、個人情報保護の規定や考え方を欠落させたまま、マイナンバーの利用拡大によって個人情報を企業の利益にさらすデジタル化を進めようとしているのであります。
 提案されている意見書案は、マイナンバーカードの普及とマイナンバーの利活用の促進等を求めるという内容でありますが、政府からすれば、そんなことわざわざ言われるまでもなく、まさに今前のめりにその方向に突き進んでいるわけであります。むしろいま私たちが声を上げなければならないのは、個人情報の自己コントロール権など、プライバシー権を保障するための法整備を国に求めることではないでしょうか。
 なお参考までに紹介しますと、日本弁護士連合会・日弁連は今年5月、マイナンバーカード普及策の抜本的な見直しを求める意見書を発表しました。
 意見書は、個人番号カードには氏名、住所、マイナンバーなどが表記され、顔写真付きである点を指摘。住基カードや定期券、キャッシュカードなどよりも多くの個人識別情報が載っており、プライバシー保護の観点が著しく後退するものだと批判しています。公務員のカード一斉取得推進策や健康保険証代わりの利用、マイナポイントなど一連の普及策の問題点を指摘したうえで、以下のように訴えています。「政府は、少なくとも現状の仕様のままでの積極的普及には慎重であるべきだ。事実上の強制や一体化する必要性のない他制度機能の取り込み、制度目的と全く関係のない利益誘導などによって、全国民に普及させることを目指すような施策を行なうべきではない」。重く受け止めるべき警鐘ではないかと考えます。
 以上のような観点から本意見書案には反対を表明するものであります。

2021年6月議会での山本伸裕県議の一般質問

印刷用PDFをダウンロードするには、ここをクリック(525kb)
 2021年6月議会での山本伸裕県議の一般質問
 
 おはようございます。日本共産党の山本のぶひろです。長引くコロナ危機による暮らしの疲弊や、事業の存亡の危機が続いています。とりわけ熊本県においては熊本地震、豪雨災害、そしてコロナというトリプルパンチに見舞われ、県民生活に深刻な困難が押し寄せています。県民の暮らしと安全を守る立場での熊本県政のますますの発展を願い、質問に入ります。
 
 ①新型コロナウイルス感染症に関し、医療機関への支援について
 まず、新型コロナウイルス感染症に関し、医療機関への支援についてお尋ねします。人員不足、賃金、労働条件も改善されず、心身ともに疲れ果て、職場を離れる医療従事者が後を絶ちません。さらに、コロナ病床がひっ迫するにつれ、県はこの間、コロナ患者受け入れができないかと、医療機関に打診してきました。また一方で、ワクチン接種の件数を引き上げるため、やはり医療機関への協力要請が強められています。これは北海道釧路市の例ですが、ワクチン接種を行なうために、日当17万5千円で医師を募集し確保したという報道もありました。
 私が危惧するのは、通常でもギリギリ余裕のない体制で運営している医療機関が無理くりコロナ対応のための体制をとろうとすれば、深刻なひずみや軋轢が生じてしまうのではないか、ということです。例えばコロナ患者を受け入れるために、救急病棟やICUの治療が必要な重症患者を一般病棟に移すなどの対応がとられたりしています。一般病棟の労働負荷を高めることによって、どうにかこうにかコロナ対応病棟を確保しているのに、ところが感染症作業手当が支給されるのはコロナ患者の対応スタッフだけであります。不満の声が上がるのは当然ではないでしょうか。
 コロナ患者受け入れのための病床を確保すれば、それ以上に一般の患者の病床を削減しなければなりません。ワクチン接種のために医師やスタッフが手を取られたら、その分それまで見ていた患者さんを見ることができなくなります。私は個々の医療機関がそれぞれの判断で対応していたら、例えば救急患者を受け入れる病床が不足するとか、一般の患者への診療体制が薄くなるとか、医療の空白の部分が生じかねないのではないかと危惧します。
 全国的に見ると、例えば地域の医師会が調整的役割を発揮し、それぞれの医療機関が役割を分担しあって全体として地域住民の命健康を守る体制を崩さないよう、連携を図っているところもあるようです。それぞれの地域においてワクチンの迅速な摂取体制をとりつつも、その中で一般の患者さんも、救急の患者さんも、コロナの患者さんも対応できるという体制に穴をあけず堅持するためには、地域の医療機関同士でどうそれぞれが役割を分担して担っていくのかという調整が必要になるのではないでしょうか。そこでお尋ねします。
 第一に、コロナ対応医療機関に限らず、すべての医療機関に対する減収補填を行い、医療体制を守るべきではないでしょうか。第二に、地域の医療体制全体を守るために熊本県が医師会などとも連携して情報発信や役割分担の調整などに積極的役割を発揮すべきではないでしょうか。以上二点、健康福祉部長にお尋ねします。
 
 (健康福祉部長答弁要旨)
 ・減収補てんについて
 本件の令和2年分の保険給付費は、前年比約1.5%の減少。ただし、月別の内訳をみると、9月以降はおおむね前年と同程度まで回復。
 また、昨年から、医療機関の収入減に対しては、福祉医療機構等を通じた無利子無担保の資金繰り支援、持続化給付金等の直接的な財政支援もなされている。
 これまでも全国知事会を通して、減収が生じた医療機関への支援を国に対して要望しているところ。引き続き、医療費の動向等を踏まえ、必要な支援を求めて参る。
  ・医療体制の調整における県の役割について
  県では各保健所を中心として、医療機関に対し、安定した一般医療の提供を前提に、コロナ病床の確保をお願いしている。
  受け入れ医療機関には、コロナ患者へ適切な医療の提供が行われるよう、症状等に応じた役割をあらかじめ明確にしていただいている。
  また、県調整本部を設け、医療機関と日々の受け入れ状況の共有や広域的な受け入れ調整を行っている。さらに、患者の病態変化に応じた適切な診療提供を行うことを目的に、医療機関との間で定期的なオンライン会議も行っている。
  加えて、コロナから回復したのちも、持病の治療等により引き続き入院が必要な患者の転院を受け入れる後方支援医療機関も確保したところ。これにより、コロナ受け入れ医療機関の病床ひっ迫を防ぎ、稼働率向上を図っている。
  今後も引き続き、県が調整役としての役割をしっかりと果たし、医療機関の負担軽減を図るとともに、より効果的・効率的な医療提供体制の構築を進めて参る。
 
 (山本県議切り返し)
 保険給付費はそんなに減少していないというお話でありました。であるならば、予算的にも大きな額にはならないでしょうから、ぜひ減収補填はすぐに県独自にでも実施していただきたいと思います。コロナ感染を心配する患者さんの受診抑制により、減収に見舞われている病院などへの減収補填が実現すればこれは大きな医療機関への激励になるのではないかと思います。
 それから、国に対し要望もしているとのお話でした。厚生労働省は先週月曜日、各都道府県知事に対し、今年度の新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金の交付について通知を出しています。熊本県は前年度実施した医療機関に対する支援事業を終了したままでありますが、すでに他県の中には国からの通知を待たず、今年度支援事業を開始している県もございます。ぜひ県も早急に支援事業を実施していただきたいと思います。
 医療機関の連携と調整の問題でありますが、これだけワクチン接種に大号令がかかれば、医療体制にどうしてもしわ寄せがかかってしまっておりますので、それぞれの地域地域で、医療機関挙げての連携が必要になっているのではないかということ、こうした問題提起はぜひ今後とも受け止め、積極的な対応をご検討いただきたいと思います。
 次の質問に移ります。
 ②学生への支援について
 学生への支援についてお尋ねします。多くの学生が、コロナ禍で経済面や学校生活において大きな影響を受けています。学生が中心となって結成された熊本学生食糧支援プロジェクト実行委員会の皆さんが、これまで四回にわたって学生向けの食糧支援会を行い、支援を求めて参加した学生さんはなんと延べ1,106人に上っています。今月11日には初めて熊本市が主催し、食糧支援活動を開催。500人を超える学生が集まったとのことであります。
 実行委員会の皆さんは、参加した学生さんにアンケート調査も行っています。その回答を私も見せていただきました。バイトがなくなり食事の回数を減らしている、将来借りた奨学金を返済しなければならないことを考えてこれまでバイトで少しづつお金をためてきたが、今はその貯金を取り崩して生活している。また、ある看護系学生さんからはメールが届き、看護実習に行く前に行動を自粛しないといけないのでバイトもできない、食糧支援会がやられていると聞いたけれども、そこに足を運ぶこともできなかった、との訴えだったそうであります。深刻な声が続々寄せられています。こうした学生さんたちの苦境に対しての最も期待される支援といえば、やはり経済的な支援ではないかと私は思います。生活困窮大学生等のための給付金事業は昨年11月をもって終了しました。その後コロナ感染拡大の第3波、4波が襲来し、学生の方々の困窮もますます深刻さを増していることを考えれば、こうした給付金の交付も再度実施することが必要ではないかと考えますがいかがでしょうか。企画振興部長にお尋ねします。
 
 (企画振興部長答弁要旨)
 国においては昨年度から就学支援制度を開始しており、これは、新型コロナウイルス感染症の影響により家計が急変した学生も申請可能。
 県では昨年5月、「困窮大学生等のための給付金交付事業」を実施し、学生等の就学継続を支援。その後、様々な主体において支援の取組みが行われた。
 就学支援制度の要件緩和などの支援強化について、全国知事会を通じて国に要望したところ。
 今後も、県内学生の置かれている状況を的確に把握し、必要な支援について検討してまいる。
 
 (山本県議切り返し)
 食糧支援を行っている実行委員会の皆さんが、県庁で記者会見をされました。その時の発言原稿を読ませていただきました。学生の声を行政や大学に届けるため、また大学生の現状を世間に広く知ってもらうため、そしてつらい思いをしている学生に、一人で悩まなくてもいいということを伝え、一人でも多くの学生を救うために行動を起こしましたと。その熱い思いに私も胸を撃たれました。こうした若者たちを温かく激励する熊本県であってほしいと強く思います。熊本の大学に入ってよかった、ぜひ熊本の役に立つ人間になりたいと感じてくれるような支援を強めていただきたいと思います。生活困窮学生向けの交付金事業の再開、それから県立大学の授業料免除・減免、延納など支援策の増設や、あるいは県内大学・短大、専門学校などが行なっている独自の学生支援策に対する補助なども積極的に具体化されるよう願うものであります。
 ③ワンストップの相談窓口設置について(要望)
 次に、ワンストップの相談窓口について要望させていただきます。
 私はこの間、ひとり親家庭や外国人労働者、あるいは学生を支援している団体の方からそれぞれお話を伺ってきました。いずれも今、その深刻な生活困窮の実態は大きな社会問題となっています。希望の光が見えずに、絶望の淵に立たされている方々は、決して少なくありません。たまたま支援団体とつながることができた方は救われています。あるシングルマザーの方は、支援を受けた際の感謝の思いを次のようにつづられていました。失業した後どうにか派遣の仕事が見つかったんですが、給料が振り込まれるまでの一か月が無収入。家賃も光熱費も払えなくなり、総合支援資金の貸し付けを申請したけれども不承認。一度は子どもと死ぬことも考えました。けれども応援してくれる方々と出会い、支援物資をいただき、前向きに子どもと笑って生きなくちゃと思いましたとのことであります。支えてくれる存在と出会うことができた方々は幸運ですが、それは苦しんでいる方々のほんの一握りではないでしょうか。
 経済的に行き詰った方々が死ぬことまで考えなければならないような社会であっていいはずはありません。熊本県は、だれ一人取り残さない、と繰り返し強調しています。そうであるならば、ぜひ検討していただきたいのはワンストップの相談窓口であります。
 もちろん、県には様々な相談窓口が存在することもよく存じております。例えば男女共同参画相談室ライフがございます。また外国人向けには国際課のほうで、多言語に対応できるサポートセンターが設置されております。一方県のホームページで「生活相談」と入力して検索すると各市町村の社協の連絡先がずらっと出てきます。また相談窓口としては紹介されてないけれども、もちろんそれぞれの課で住民からの相談があれば丁寧に対応されているわけであります。それぞれあるのですが、私が求めたいのは、もっと思い切って間口を広げるということです。例えば、県のホームページを開けば、そのトップページで、お困りごとはここに相談してくださいと紹介されている。県からの広報誌を開いたら、そこにはお困りごとはここに相談してくださいと書いてある。そこに電話したら、相談員の方が丁寧に寄り添って悩み事、心配事を聞いてくれる。ああここに相談してよかったなと安心感を与えてくれる。その上で適切な対処方法をアドバイスしてくれるし、必要な相談先、あるいは支援制度、あるいは支援団体など紹介してくれるし、ちゃんと問題解決まで寄り添って関わってくれる。そうした文字通りのワンストップ相談窓口であります。そのためにはソーシャルワーカーなど専門的な技術を備えた相談員を複数以上確保することなど、一定の体制確保が必要となるでしょう。こうした相談窓口が実現すれば、本当に熊本県は一人も取り残さないという理念に向かって取り組んでいると、県民からの信頼、期待も高まるのではないかと考えます。ぜひ前向きのご検討を要望しまして、次の質問に移ります。
 
 令和2年7月豪雨災害からの復旧・復興について
 ④堤防、宅地、橋梁、道路、鉄道のかさ上げについて
 昨年7月の豪雨災害からの復旧・復興についてお尋ねします。まずかさ上げの問題であります。
 昨年11月の全員協議会で、蒲島知事は以下のように発言されました。「新たな流水型のダムを含む『緑の流域治水』にただちに取り掛かったとしても、その効果が十分に発揮されるまでには、相当の時間を要します。今回のような想定を超える豪雨、それさえも上回る豪雨は、いつ、どこで起きても不思議ではありません。そのため、支川を含む河床の掘削、堤防や遊水地の整備、宅地のかさ上げ、高台への移転、砂防・治山事業など、今すぐに行なうべき対策を徹底して実行します。」と。おっしゃっていることに私も賛成します。ところが、策定された緊急治水対策プロジェクトが実施されたとしても、ダムが完成するまでは人吉市の水位は45センチしか下がりません。これでは、昨年と同じような洪水が発生すれば同じように甚大な被害が発生してしまいます。
 今年3月には、八代市坂本町の復旧について、有識者検討会がさらに3メートルの宅地かさ上げを提言しました。一方球磨村の松谷村長も、昨年豪雨時の被災水位程度までの宅地、国道、県道のかさ上げを県に要望しました。要望に対し蒲島知事は、「前向きに検討したい」と応じたと報道されています。
 ダムを含む流域治水に取り掛かったとしても、その効果発揮のためには長い時間 がかかるということがはっきりしている今、堤防補強やかさ上げを柱にした越水対策工事に全力をあげ、少なくとも昨年豪雨災害に耐えうる水準で、人吉市街地や中流域の安全を確保するべきではないでしょうか。
 
 6月10日、市民団体の皆さんが、「7・4球磨川豪雨災害はなぜ起こったのか」と 題する本を出版しました。この本であります。(本を掲示)。この中には、かさ上げと高台移転など、ダムによらない治水対策で安全安心を実現しようと提起されております。この本も参考にさせていただいて、私としてもいくつか具体的に提案させていただきます。
 スクリーンをご覧ください(図面①・連続箱型鋼製枠)。
 これは越水した堤防の緊急対策として用いられる連続箱型鋼製枠というもので、本格的な堤防完成までの一時的・緊急的な対策として用いられているものですが、それでも鉄の構成枠を連結して設置されているため、10年以上の耐久性能を有しているとのことであります。高さは一メートルで長さ10メートル分の資材費は14万円。仮に一キロにわたって設置したとしても資材費は1,400万円という低コストで収まるものであります。相良村や人吉市の温泉町付近、球磨村渡地区や山田川、万江川堤防などにおける緊急的越水対策として有効ではないでしょうか。(図面①を消し、図面②・組み立て式洪水防水壁を表示)
 次にご紹介するのは、組み立て式洪水防止壁というものです。これはヨーロッパの水害常襲地などでよく導入されているもので、上の写真はオーストリアの河川で、5メートルほどの高さにまで水位が上昇したと思われる洪水から市街地を守っているときの写真であります。この組み立て式防止壁は、普段は取り外しが可能であります。清流や景観を損ねることなく、また河川から市民を遠ざけてしまうことなく、洪水から守ってほしいという地域の方々の願いにこたえて設置されたというお話を、写真を提供いただいた会社さんから伺いました(図面②消去)。(図面③・人吉市街地の断面イメージ図)。
 次の図面は、人吉市街地での、防水壁設置とかさ上げによって昨年洪水水準の水位に対応できるようになるというイメージ図であります。一番上の図面が昨年の水害の水位を表したもので、堤防から約2メートル高いところまで水位が上がっております。上から2番目の図は、本格的対策までの途中段階の対策として、先行して防水壁を設置するというものであります。3番目の図面は、町づくりの取り組みの中で、防水壁やそこに隣接する宅地をかさ上げし、市街地の安全を確保するというものであります。堤防で市街地を守ろうという考え方は、インターネットで検索していたら国土交通省の資料の中からも出てきました。(図面③消去。図面④・堤防かさ上げのイメージ図)
 この写真は人吉市街地ではありません。ただ、考え方としては、洪水から堤防でまちを守るというこうしたやり方が、まさに人吉でも適用できるのではないか、と思い紹介させていただきました。(図面4消去)
 こうした提案についてもぜひ積極的に検討していただき、必要な対策を急いでいた だきたいと思いますがいかがでしょうか。球磨川流域復興担当理事にお尋ねします。
 
 (球磨川流域復興担当理事答弁要旨)
 堤防かさ上げは、洪水時に河川水位がさらに高くなり、水害時のリスクが増大し、人吉市や中流部で宅地、道路、鉄道等に大きな影響が懸念されるため、堤防かさ上げ等を柱とした越水防止対策を応急的にでも実施していくことは困難。
 流域治水プロジェクトでは、令和2年7月洪水に対して球磨川の河川水位を下げることが基本とされた。今後、確実に推移を下げ、流域の安全を確保するため、新たな流水型ダムや河道掘削、遊水池等の整備を国や市町村と連携し着実に進めて参る。
 宅地かさ上げは、中流部等で、河川事業で治水対策後水位を基本として実施し、その高さを上回る分は市町村のまちづくり等と連携して実施する。
 現在、国が遊水地候補地、宅地かさ上げ予定地等の測量を行っており、県も住民の意見を踏まえた取り組みが着実に進むよう全力で支援している。
 一方で、これらハード対策の効果発揮までには一定期間を要し、想定を超える豪雨はいつどこでも起こりうるため、ソフト対策として、情報伝達や住民の避難行動等に関する取り組みを進めて参る。
 
 (山本県議切り返し)
 堤防かさ上げを柱とした越水防止対策を応急的にでも実施していくことは困難だというお話でありました。しかし、流域治水プロジェクトは、仮にそれを行ったとしても、ダムができるまでは45センチしか水位が下がらないんです。どうやって人吉の水害を、また昨年のような規模の水害が起こった時に守るのか。応急的にでもかさ上げが必要ではないかというようなことを提案しているわけであります。
 堤防をかさ上げすれば、内水被害だとか、あるいは中流域の水量が増えるというようなお話がありました。下流から河川改修は進めていくというようなことを原則としていることくらいは私も存じております。だからと言って、中流域を守るために、人吉市街地は越水を我慢して下さいというわけにはいかないでしょう。どうやって、このいつ起こるかもわからない水害から守っていくのか、その対策をどうやって進めていくのか、応急的にでもできることは何でもやるべきではないかというようなことを提案しているわけであります。
 私は、前回の一般質問で、球磨村の大坂間地区で、ダムがなければ2.5メートルのかさ上げが必要だということを国土交通省自身が認めていたにもかかわらず、必要なかさ上げが行われなかったために犠牲が生じてしまったという事例を紹介して、二度とこうした過ちを繰り返さないために、必要な堤防かさ上げをやるべきではないかというふうに質問しましたが、その時、知事からは、明確な答弁をいただくことができませんでした。
 なぜかさ上げをやらないのか。ダムを前提とした水位低減のところまでしか堤防かさ上げをしないのか。これは、うがった見方をすれば、あまり堤防かさ上げをやりすぎたら、ダムの必要がなくなってしまう。だから、ダムの水位低減効果を発揮できるところまで堤防の高さを抑えていこうというようなやり方をしているんじゃないですか。違うのですか。理事に再答弁を求めます。
 
 (球磨川流域復興担当理事再答弁要旨)
 新たな流水型ダムや河道掘削、遊水池などの整備について実施していくし、宅地のかさ上げも第一段階としてやっていくが、このようなハード対策の効果が十分に発揮されるまでには一定の期間を要するのは十分認識している。
 そのため、ソフト対策も実施していく。まず逃げていただくということ。そのうえで、保険の加入促進など、被害の備えにも取り組んでまいる。これについては、球磨村で今年度から取り組んでいただけるということで伺っている。
 そうしたことで、ハード対策のみならず、ソフト対策についても総合的に取り組みを展開し、安全、安心を早期に実現するように取り組んでまいる。
 
 (山本県議、再度の切り返し)
 最初のお話で、私は、中流域でもかさ上げ、あるいは高台移転など行うべきだというようなことで提案させていただきました。当然、人吉市で堤防かさ上げをすれば、中流域での対策というのも必要になります。県も、だから、例えば中神地区、大垣地区での遊水地、高台移転の話なども検討されているのではないかというふうに思います。そうやって下流から上流に至るまで住民の安全を守ると。そして必要であるならばその対策をちゅうちょせず行っていく、というような姿勢をぜひとっていただきたいというふうに思います。
 私たち日本共産党は、先月5月、国土交通省とオンラインで交渉を行いました。そこで、昨年の豪雨災害時の水位に対応できるかさ上げをやるべきではないかと要望いたしました。その回答文書を水管理・国土保全局治水課の企画専門官からいただきました。被災市町村や地域住民の声をお聞きして更なるかさ上げをやるといっているのですよ。国交省がさらなるかさ上げをやると言っているのに、なぜ県がそこで水を差すようなことをおっしゃるのでしょうか。かさ上げをすると答弁しないのは、かさ上げをすればダム建設の根拠がなくなってしまうからではないのか。なんだ、ダム以外治水もやろうと思えばできるじゃないかと、だったらなんで12年間もダムによらない治水が進まなかったんだと。そんな話になったら困るからあまりかさ上げをやりすぎるわけにはいかないということではないのでしょうか。私は流域治水構想にダムを含む考え方を持ち込むことの最大の問題は、完成までに長い時間がかかるダムとの関係で、どうしても当面のダム以外治水対策に抑制がかかってしまう。これが最大の問題だと考えています。しかしそうなれば、住民の命安全よりもダム建設を優先させてしまうということになるではありませんか。昨年の豪雨災害の痛苦の教訓を再び繰り返すことは絶対にやってはならないと思います。
 
 ⑤緊急放流に関する資料が廃棄されたことについて
 次に、国土交通省による川辺川ダム緊急放流に関する資料の廃棄の問題についてお尋ねします。昨年10月に行われた第2回球磨型治水協議会の出席者に対し、事前に川辺川ダム緊急放流に関する説明資料が配布されました。そこには昨年7月豪雨災害の時の1.3倍以上の雨量があった場合には、異常洪水時防災操作すなわち緊急放流に移行するとの想定が記載されておりました。
 ところが、協議会当日に配布された資料の中にはその資料が含まれておりませんでした。そのため私は国土交通省に対し、文書の公開を求めて開示請求を行ないました。ところが国土交通省からは、該当する文書は存在しないという回答が届いたのであります。その後、新聞報道でも明らかになったように、国土交通省は文書を廃棄していたことが明らかになりました。その後各方面からの批判を受け、国交省は緊急放流に移行する際の想定資料を公表したわけであります。
 一連の経過に対し、「緊急放流は住民が一番知りたい情報なのになぜ公表せず急いで廃棄するんだ」という不信の声が住民から上がったことは当然のことであります。問題は、国交省の対応が極めて不誠実なものであったということだけにとどまらず、果たして法にのっとった文書管理がなされていたのかという問題についても重大な疑惑が生じていると指摘せざるを得ません。
 事前に配布した文書は検証途上の資料であったとはいえ、まぎれもなく国民の税金を使って作成された公文書であります。にも関わらず開示請求に応じず廃棄したという事であれば、これは公文書管理法違反の疑いが出てまいります。
 具体的にお尋ねします。事前に配布されておきながら、協議会当日の資料にはなぜ含めなかったのですか。そして文書の廃棄はいつ、だれの判断で行われたのですか。そしてそのことは事務局や知事の認識として共有されていたのですか、それとも知事に知らされないまま廃棄されたのですか。知事は国交省が文書を廃棄した対応についてどのような見解をお持ちなのですか。
 第二に、原則として一年以上の保存期間が定められているはずの行政文書を、半年もたたずに廃棄したというのは公文書管理法違反ではありませんか。お答えください。
 
 (蒲島知事答弁要旨)
 当該資料は、第2回球磨川流域治水協議会資料の策定過程で国が作成したもの。協議会は、国、県が事務局を担い、資料はそれぞれの役割分担で作成している。
 新たな流水型ダムに関する資料は事業主体の国が作成しており、最終的に協議会の資料に含めなかった理由は、国の判断によるもので、県は承知していない。
 県は、国が当該資料を廃棄したことを今年5月の報道後初めて知った。
 球磨川流域復興局から「国からは、文書管理規定などに基づいて廃棄した旨の説明があった」との報告を受けたが、国の文書管理上の対応については、県として言及する立場にない。
 以上洪水時防災捜査については、流域住民の関心も非常に高いため、今後、新たな流水型ダムの具体的検討の中で、科学的データの下、慎重に検討し、正しく伝えていかなければならない。
 
 (山本県議切り返し)
 文書は国が作ったもので県は関与していない。当日の資料に含めなかったのは国の判断で県は知らない、廃棄されたことは報道されてはじめて知った。県としてとやかく言うことではない。ことごとく他人事のようなご回答でありました。しかしこの球磨川流域治水協議会の冒頭、毎回毎回の会議でまず最初に知事があいさつされています。知事がこの会議の主催者ではないのでしょうか。そして熊本県は協議会の事務局でしょう。主催者、事務局が知らないところで会議資料が準備されたり廃棄されたりしているとすれば問題になるのではありませんか。ただ、第一回の協議会の冒頭あいさつで知事はこうおっしゃっています。本日は、流域治水の概要、球磨川における禍年度の対策検討状況、流域治水のプロジェクトのイメージ、本協議会での検討内容などをお示しし、皆様にご意見を伺いたいと考えていますと。参加者にどんな資料が配られているかちゃんと丁寧に知事自身が説明されているじゃないですか。ところが第2回目の協議会になったら、どんな資料が配布されていたのかは知りませんと。国交省と県で都合がいいように口裏合わせをしていると思われても仕方がないのではないですか。
 それからもう一点、そもそも知事の今の答弁と、5月20日に行われた知事定例記者会見におけるご回答と内容が異なるんですね。それで再答弁を求めたいんですが、知事は記者会見でこうおっしゃっています。この資料については、事務レベルでは提示を受けたと。しかし、協議会の資料とはしないとの連絡を受けたことから、会議資料とするかどうかの意思決定に影響を与えるものではないと判断したという風に聞いていますと。先ほどの答弁と違うんですよ。知事は県は文書が外されたことも廃棄されたことも知らなかったとお答えになりましたが、会見では、提示を受けたと。つまり現物を見たけれども国交省から当日の資料に入れませんよと言われたと。なんで記者会見の時のお話と答弁が違うんですか。再度ご答弁をお願いします。
 
 (蒲島知事再答弁要旨)
 当該資料の廃棄については、国が文書管理の規定などに基づいて判断したと報告を受けている。
 県として、国の文書管理上の是非について、言及する立場にはない。
 
 (山本県議再切り返し)
 知事の答弁と会見の内容とが違うじゃありませんか、とお尋ねしたんです。
 いずれにせよ、非常に不誠実な対応ではないかというふうに思っています。文書は国が作ったものだから県は知らないという立場を貫くという立場で答弁に臨んでおられるんだなということを感じます。
 国交省九地整は、「意思決定の途中段階で作成したもので、意思決定に与える影響がないと判断される文書だから一年以内に廃棄しても問題ない」とおっしゃっています。ところが内閣府の「行政文書の管理に関するガイドライン」では、仮に歴史的公文書に該当しないものであっても、国民に説明する責務が全うされるよう、意思決定過程や事務及び事業の実績の合理的な跡付けや検証に必要となる文書については、原則として一年以上の保存期間を定めるとあります。
 知事は会見で、行政文書というのは県民共有の知的資源だと。だからその適正な管理というのは民主主義の基本だというふうに思ってやってきたとおっしゃっています。
 知事の良心に照らして国交省九地整の対応はどうなんですか。また治水協議会の主催者として九地整が自分の知らないところで資料を抜いたり廃棄したりしているのをよしとされるんですか。
 それは私は参加者に対しても流域住民に対しても非常に不誠実な対応ではないかということを指摘させていただき、時間がありませんので次に進みます。
 
 ⑥人吉市のスーパーシティ構想に関して
 次に、人吉市のスーパーシティ構想についてお尋ねします。
 熊本県は、人吉市と連名で、スーパーシティ型国家戦略特別区域、いわゆるスーパーシティ構想の指定に向け、内閣府に提案書を提出しました。
 スーパーシティ構想とは何か。これは情報技術とビッグデータを連携させることで、西暦2030年ごろに実現される未来社会を先行実現しようというものであります。これまで、行政、学校、病院、企業など様々な組織がそれぞれ固有に保有してきたビッグデータを、連携基盤というところに接続します。個人情報を一元的に管理することにより、医療、交通、金融などの各種サービスを丸ごと提供しようとするものであります。
 このデータ連携基盤を整備・運営するのがデータ連携基盤整備事業者であり、スーパーシティの中心を担うことになります。またスーパーシティでは5つ以上の分野で先端的なサービスを提供するというのが条件となっており、人吉市の場合、約40社がサービス提供事業者として選定されております。
 スーパーシティのもとで、市民の生活はどう変わるのでしょうか。いままでの常識で言えば、市民がそれぞれの企業が提供するサービスのどれを使うのかを選択します。ところがスーパーシティではその関係が逆転します。個人の生活が包括的に企業に掌握され、コントロールされることになります。サービス提供事業者は、データ連携基盤から市民の個人情報を収集し、AIや人工知能によって個人の特徴を識別し、必要なサービスを提供します。例えば運動不足であればどこのフィットネスクラブを使えばいいかとか、バイタルデータに異常があるからどこで検診を受ければいいとか、つまり企業が市民生活と地域づくりを計画しコントロールしていくということになるのです。
 こうしたことを可能にするために、スーパーシティ法では、データ連携基盤事業者が、国や自治体に対し、保有している個人データの提供を求めることができるという規定を盛り込みました。私は、人吉市民の皆さんが自分たちの個人情報を丸ごと企業に提供されるというやり方をはたしてちゃんと理解し、そして賛同されているのか、そうした意向調査を、県や人吉市はきちんと丁寧に行なったのか、きわめて疑問に感じております。最先端のIT技術を活用した便利で快適な暮らしは、国民の多くが望むものであるかもしれません。しかし一方で、個人情報を一元的に管理されると中国のような恐るべき監視社会が出現することにもつながりかねません。
 事実、政府がこのスーパーシティ構想のお手本としてきたのが中国の杭州市であります。杭州市はIT大手企業のアリババの本拠地で、町全体のIT化が世界で一番進んでいますが、裏を返せば町中に監視カメラが数千台も設置され、市民を監視する超監視社会であります。昨年8月に日本政府と中国政府との間で、スーパーシティ構想で連携していくという覚書が交わされました。国会の論戦では、日本共産党の大門みきし参議院議員が、日本のスーパーシティ構想は中国との技術連携を想定しているのかと質問しましたが、内閣府の審議官はその可能性を否定しませんでした。
 人吉市のスーパーシティ構想のパンフレットを私も読みましたが、生命財産を守り安心・安全を確保するとか、球磨川流域の豊かな恵みを享受するとか、素晴らしいスローガンがうたわれています。しかしそんなスローガンとはまるで裏腹の、まちごと監視社会に作り変えてしまおうというのがこのスーパーシティ構想の本質なのではないのでしょうか。
 そこで企画開発部長にお尋ねしますが、第一に、県は人吉市をこうした監視社会に 変質させてしまってよいと考えておられるのでしょうか。
 第二に、仮に指定された場合、住民データの登録に同意する、しないは個々人の自由意思に任せることになると伺いました。しかし参加しない住民は結果的に住民サービスから除外されていくということになるのではありませんか。このような差別・分断を市民の中に生じさせてしまうことは許されないことではないでしょうか。
 以上二点、お尋ねします。
 
 (企画振興部長答弁要旨)
 スーパーシティ構想を実施する際は、国、地方公共団体、構想に参画する事業者には、個人情報保護法令の順守が求められている。
 提案した構想は、災害時に避難情報等を提供するなどの先端的サービスに取り組むもの。個人の行動を監視したりするようなものではない。
 この構想は防災分野を大きな柱としていることから、人吉市として引き続き丁寧な説明を行っていくと聞いている。
 県としても、この構想は被災地の創造的復興に欠かせないものと考えており、構想の実現に取り組んでいく。
 
 (山本県議切り返し)
 個人情報は保護されるといわれましたけれども、スーパーシティ法は、先ほどお話ししましたように、個人の情報を民間企業は自治体に求めることができると。提供を求めることができるとしているんですよ。これまでの個人情報保護のルールを取っ払って進めていこうというのがこのスーパーシティ法なんですよ。
 確かに、人吉のスーパーシティ構想の提案書には、魅力的な構想がうたわれているんです。しかし逆に、なぜスーパーシティでなければならないのか。スーパーシティの本質は申しましたように、官民で市民の個人情報を利活用しようとするものであります。いくら県が、監視社会なんて考えてないんだとおっしゃっても、政府が構想するスーパーシティは、国民を監視しまくっているあの中国という国をお手本にしているんですよ。そんなものをなぜいま一生懸命震災から立ち直ろうとしている人吉市に持ち込もうとするんでしょうか。私は人吉市民の生活再建、地域再建というのは、やはりスーパーシティとは違うのではないかということを強く申し上げまして、最後の質問に移ります。
 
 ⑦流域治水協議会への住民参加について
 流域治水協議会の在り方についてお尋ねします。「球磨川流域治水協議会」も「白川・緑川水系流域治水協議会」も、そのメンバーの中に流域住民や地域の学識者が入っておりません。それどころか白川・緑川の流域治水協議会においては、住民が傍聴することすら認められておらず極めて閉鎖的なものになっているといわなければなりません。これはあらゆる関係者が協議して全体で行うという流域治水の考え方にも背くものではないでしょうか。国会答弁でも赤羽国土相は「協議会のメンバーに地域住民の代表、もう少し言えば地域で防災活動を一生懸命やられていただいている方ですとか、その地域のこれまでの洪水の歴史とかをよくわかっていらっしゃるような方、そうした方々にも協議会に入っていただいて、その知見を発揮していただけるような場にするべきだ」とおっしゃっています。
 流域治水協議会の構成メンバーを改善し、協議をやり直すべきではないかと考えますがいかがでしょうか。知事のご見解を伺います。
 
 (蒲島知事答弁要旨)
 球磨川水系では、私自身が、住民の皆様から直接ご意見を伺った。そのうえで、堆積土砂の掘削等を流域治水プロジェクトに位置付けた。
 今後も、河川整備計画の作成や環境アセスメントの手続きを進める中で、住民の皆様のご意見を伺って参る。
 新たな流水型ダムについては、事業の方向性や進捗を確認していく取り組みの中でも、住民の皆様のご意見を伺って参る。
 白川・緑川水系では、住民の皆様の意見を反映させた河川整備計画に基づく対策をプロジェクトに位置付けている。
 いずれのプロジェクトも、住民を含めた関係者のご意見をお聞きした上で、適切に取りまとめられたものと考えている。
 県としては、プロジェクトを進めるにあたり、その事業内容などを様々な機会をとらえて説明し、住民の皆様のご理解とご協力をいただきながら取り組んで参る。
 なお、白川・緑川水系流域治水協議会については、会議の内容を、広く傍聴できるよう、その手法について、国及び市町村と検討して参る。
 
 (山本県議切り返し)
 丁寧にお答えいただきましたが、私が聞いたことにお答えいただいておりません。私がお尋ねしたのは、流域治水協議会は住民参加であるべきではないかと思うけれども、実際には、球磨川流域治水協議会も、白川・緑川水系流域治水協議会も、住民参加の形になっていないと。だから、この流域治水協議会に住民代表を加えるべきではないか、ということをお尋ねしたのです。
 まだ時間があるようですので、再答弁をよろしくお願いします。
 
 (蒲島知事再答弁要旨)
 白川・緑川水系流域治水協議会については、その会議の内容を、これまでも報道機関を通じて公開していたが、広く傍聴できる。またこれからその手法については国及び市町村と検討して参るということ。いま質問の件に関しても、国及び市町村と検討して参る。
 
 (山本県議再登壇)
 流域治水協議会の在り方については検討していく、というようなことでご答弁いただきました。
 赤羽国土交通大臣がおっしゃられたように、地域住民の代表、もう少し言えば、地域で防災活動を一生懸命やられていた方々ですとか、その地域のこれまでの洪水の歴史とかをよくわかっているような方々、そうした方々にも協議会に入っていただくと。やはり総合的な流域治水というのは住民参加が大前提になっているわけでありますので、ぜひその趣旨をしっかりと受け止めて、検討を九地整とやっていただきたいなと思います。
 それから、質問と関係のない答弁をいただいた中で、白川・緑川水系では、住民の皆さんの意見を反映させた河川整備計画というお話がありましたが、これも全然実態は違います。
 私、住民説明会にも参加させてもらいましたし、パブリックコメントも書きましたけれども、立野ダム賛成の声はほぼ皆無で、大半は立野ダムやめてくださいという意見だったんですよ。こういう形式的な段取りを踏んで、住民不在で、どんどん計画を進めていくというようなやり方は許されないというふうに思います。
 住民参加が大前提というのが、流域治水協議会の在り方であると。そこに住民が入っていないということが大問題ということを強調したいと思います。
 先程、私、国交省とのオンライン交渉の話をさせていただきました。この協議会への住民参加についても、オンライン交渉で国交省に要請させていただきましたが、その時の国交省の回答は、大臣答弁を踏まえて検討、協議してまいります、というようなお話でございました。ぜひそのような立場で進めていただきたいと思います。
 
 今回の質問も、治水対策というテーマが中心となりました。コロナや自然災害をはじめ様々な苦難から住民の安全、暮らしを守るという点で、これからの県政に臨んでいきたいと考えております。
 以上で私の一般質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

2021年2月県議会・2021年度一般会計予算案に対する反対討論

印刷用PDFをダウンロードするには、ここをクリック(332kb)
 2021年2月県議会・2021年度一般会計予算案に対する反対討論
 
 日本共産党 山本伸裕 2021年3月19日
 日本共産党の山本伸裕です。
 議案44号、令和3年度熊本県一般会計予算について反対討論を行います。
 コロナ禍のもとで、これは熊本に限った話ではありませんが、日本社会における公衆衛生と公共部門のあまりに脆弱な体質が浮き彫りになりました。感染症が拡大しても検査を増やす事が出来ない保健所体制、手術や入院の必要があっても患者を受け入れることができない医療機関、一方では中小業者や非正規労働者、若者や女性らが生活や経営、就学を維持することさえ困難になるという状況が広がりました。多くの方々の命と暮らしが危機にさらされるような、こんな脆弱な社会でいいのかという事が問われています。ましてや熊本県はいま熊本地震、新型コロナウイルス感染症、7・4豪雨災害という、それぞれ一つずつの問題をとってみても、これまで経験したことのないような大きな災難が、いわば複合的に重なり合って襲いかかっているような状況であります。こうしたもとで編成される熊本県の予算は、コロナ感染症や自然災害によって浮き彫りになってきた公共部門における脆弱性を改善し、克服し、県民生活に安心をもたらすような熊本県政運営を実現する保障となるものでなければならないと考えます。
 新型コロナウイルス感染症対策の中で、検査の対象を拡大する方針が見られないことは重大であります。これまで、新規感染者数の減少に伴って全国的に検査を減らしてしまったことが、次の感染拡大の波を招く一因となってきました。こうした悪循環を繰り返してはなりません、政府も検査拡充の必要性をようやく認め、高齢者施設に対する社会的検査とともにモニタリング検査など、検査を拡充するよう都道府県に要請しています。ワクチンはコロナ終息に向けた有力な手段ではありますが、順調に進んでも、社会全体で効果が表れるには一定の時間を要すると言われています。いっぽうでは変異株の拡大が新たな脅威を広げています。いまこそ大規模検査の実施で、新型コロナ感染症を封じ込めるための対策に全力をあげるよう強く求めるものであります。
 コロナ禍のもとで親の収入やアルバイトが減少し、苦しい生活を余儀なくされている学生たちを支援しようと、若者たちなどが立ち上がって食糧支援活動に取り組み、大きな支援の輪が広がっています。県からも県産トマトが提供されるなど、大変温かい支援が感謝されているようでございますが、支援グループの青年らが県に提出した要望書をみると、生活困窮大学生等のための給付金交付事業をぜひ継続的に、対象も拡大して実施してほしいとの項目がありました。コロナ禍のもとで社会的弱者ほど深刻な困窮が進んでいます。困っている人を誰も取り残さない、ぜひそうした支援策を積極的に実施していただきたいと思います。
 令和2年7月豪雨からの復興の問題では、緑の流域治水の推進という方向性が打ち出されました。総合的な流域治水を進めるという考え方自体は、私たちも従来から求めてきたところではありますが、しかし問題は流域治水の考え方の中にダム建設が含まれていることであります。河川整備計画の中にダムが入ってくれば、ダムの効果を前提とした河川改修にとどまってしまいます。いつできるかもわからないダムを当てにして河川改修を抑制するようなことは絶対にあってはなりません。八代市坂本町の再建について有識者検討会が、新たなダムや市房ダムの改良がなくとも、浸水しない高さまで用地をかさ上げするよう求めた提言をまとめました。非常に大事な提言であります。基本的には流域全域において、こうした考え方で早急に安全が確保されるよう対策を進めるべきであります。
 将来に向けた地方創生の取り組みの一つとして、デジタル行政の実現に向けた県庁内の取り組み促進がもりこまれています。菅政権の看板政策であるデジタル改革の柱はシステムの標準化、官民の情報連携、マイナンバーの活用であります。国と地方自治体の情報システムの共同化・集約は、自治体の業務内容を国が今後整備するシステムに合わせていくことを進めるもので、自治体独自の施策が抑えられ、住民自治を侵害させかねません。すでに自治体共用の情報サービスを使っている自治体では仕様変更ができないことを口実に個別の住民要求にこたえた施策を行政側が拒否するという事例が各地で起きています。またデジタル化推進のカギに位置付けられているのが、現在、税、社会保障、災害対策に限定されているマイナンバーの利用範囲の拡大であります。利用範囲の拡大によって、膨大な個人データが国に集まることになります。しかも国が示すデジタル社会形成基本理念には、個人情報保護の文言がありません。自治体独自の個人情報保護基準が国の基準に引き下げられるなど、個人情報保護がないがしろにされる危険性が増大します。こうした国の方針に従った行政のデジタル化推進には反対であります。
 重要課題として水俣病問題の解決がうたわれています。議案の説明資料にも、水俣病被害者の救済という事が明記されているわけですが、しかし国やチッソとともに熊本県も被告となっているノーモアミナマタ第2次裁判では、被告の引き延ばしで審理が遅れに遅れています。すでに原告の中で120人以上が亡くなられるという、痛ましい事態となっております。水俣病問題の解決をうたうのであれば、裁判を引き延ばすのではなく、正常な審理を進行させるよう県としても責任を果たすべきであるという事を強調するものであります。
 今回の当初予算では、税収減による厳しい財政運営も懸念されておりましたが、交付税の増額などもあり必要な財源は確保されているとのことであります。ただ、感染症や自然災害、高齢化社会の進行など、懸案材料が今後ますます増大していくであろう状況を考えた時、従来の考え方のもとに進めてきた事業について勇気をもって見直しをはかっていくことも必要であります。昨日おこなわれた熊本空港アクセス鉄道の検討委員会では、利用想定を検証しなおすべきだなど、このまま事業を進める事について慎重に検討すべきとの意見が出たと報道されています。一般的な庶民感覚からしても、そうした意見が出ない方がおかしいという気がいたします。今後も楽観できない県財政運営が当面の間予想されるもとで、見直すべき事業は聖域なくメスを入れる、そして県民の中に広がっている困難にはきめ細かく寄りそって対応する、そうした現在と未来の県民の幸福につながるような政策選択が行われていくよう願いまして討論を終わります。

2021年2月県議会・本会議における不適切なヤジ発言に関する申し入れ

印刷用PDFをダウンロードするには、ここをクリック(252kb)
 2021年2月県議会・本会議における不適切なヤジ発言に関する申し入れ
 
 日本共産党 山本伸裕 2021年3月16日
 日本共産党の山本伸裕です。
 3月11日、県議会本会議において、極めて不適切なヤジが発せられました。
 それは、「スマホでわいせつな動画を女児に見せた」として逮捕されたものの、熊本家裁において不処分とされた男性が、「違法捜査が行なわれた」と熊本県を相手取って起こしている裁判に関する提起に対し、私こと山本伸裕が討論をおこなっている最中に、議員席から発せられたものです。
 男性のスマホは、県警が男性を逮捕した時に押収されましたが、わいせつ動画は見つからず、動画への接続履歴もありませんでした。熊本家裁は、男性について、無罪に当たる「非行事実なし」と結論付けています。
 こうした事実を山本が討論の中で紹介した際、議場から「(動画は)消した、消した」とのヤジが飛ばされたのです。この発言は、「閲覧はなかった」という、認定されている事実を無視し、いかにも男性に犯行事実があったかのように印象付けるもので、男性の人権と名誉を著しく不当に傷つけるものです。
 そればかりでなく、はたして本件が県議会において、事実関係の認識が正確に共有された上で審理がなされたのか、ということさえ疑われざるを得ず、県議会への県民の信頼を揺るがしかねない発言であった、という点でも看過できません。
 したがって、議長におかれましては、今回の不適切なヤジ発言に対し、厳重注意をおこなうとともに、個人を傷つけ、議会の品位を損ねるような不適切な不規則発言が今後行われることのないよう、再発防止を徹底していただくことを求めるものです。
 以上

2021年2月県議会・損害賠償請求訴訟において県が控訴することについて、議会の議決を求める議案に対する反対討論

印刷用PDFをダウンロードするには、ここをクリック(246kb)
 2021年2月県議会・損害賠償請求訴訟において県が控訴することについて、議会の議決を求める議案に対する反対討論
 
 日本共産党 山本伸裕 2021年3月11日
 日本共産党の山本伸裕です。
 議案101号は、損害賠償を求めて、熊本県を相手取り、起こされた裁判の判決を不服として、熊本県側として控訴するという対応について、議会の議決を求めるものであります。委員会の裁決は可決ということでありますが、これに反対致します。
 各新聞・テレビ等でもすでに報道されておりますとおり、本件の原告男性は、熊本地震の避難所で当時小学6年生の女の子に対し、「わいせつな動画を見せた」として県少年保護育成条例違反の容疑で逮捕され、取り調べのため12日間拘束されました。しかし男性のスマホからはわいせつな動画の閲覧履歴がなく、家庭裁判所では非行事実なしと結論づけられました。またこの男性が女の子の母親を相手取り、うその被害を申告したとして起こした裁判では、「母親の供述は信用性が乏しく、一部は虚偽で違法である」との判決が確定しています。本件の裁判は、原告男性が、違法な取り調べをうけたことによって苦痛を受けたとして、熊本県を相手取って損害賠償を求めていたもので、熊本地裁判決は原告男性の主張を一部認め、県に16万5千円の支払いを命じました。
 今回の訴訟における熊本地裁の判決主文を読みました。取り調べにあたった巡査部長は男性に対し、容疑を裏付ける証拠は本件児童及び児童の母親の供述しかない状況であるということを知りながら、原告に対し、黙秘権を改めて告知することなく、「調べるうちにどんどん不利になるものばかり出てきている。本当の事を言ったら周りの評判が下がると思っているんじゃないのか。黙っててそれでいいとや、下ばかり向いてずっと黙っとくんや。都合が悪くなると黙ってばっかり。黙ってても何にも前に進まんぞ。どんどん自分に不利になっている。自分で自分の首絞めてるのと一緒。原告の言葉一つひとつが信用を無くしている。目撃者もおって、保健師、看護師も話を聞いている」などと発言したということが認定されています。判決では、こうした捜査官の発言により、当時未成年であった原告は精神的に圧迫ないし困惑されられたとして、取り調べとして相当性を欠き、原告の黙秘権を実質的に侵害した違法なものであったと結論付けました。また、弁護士と接見した内容を尋ねた巡査部長の発言は、捜査機関としての注意義務違反、原告の接見交通権を侵害した違法なものであったとしています。
 判決に対する熊本県の控訴の理由は、判決内容に一部承服しがたいところがあるというものであります。しかし取り調べにおいて、先ほど述べたような発言を行なったということが事実である以上、そして何よりも、裁判所において既に男性に非行事実なしという、すなわち無罪に当たる結論が出ている以上、熊本県警としておこなうべきことは、控訴することではなくて原告に対し謝罪すること、それが社会的な一般的な市民感覚ではないでしょうか。なお法廷においても捜査官は、現在でも原告の事を疑わしいと思っていると発言したとのことでありますが、こうした発言が原告にさらなる精神的苦痛を与えているであろうことは想像に難くありません。
 この事件は、すでに新聞・テレビ各社が大きく報道し、県民、国民が知るところとなっています。私は捜査に違法性があったのかどうかということを控訴してまで争うことよりも、警察として原告に謝罪し、控訴しないという対応をとることのほうが、よほど県警の信頼を取り戻す道ではないかと考えるものであります。また控訴することになれば、原告男性に対し、今以上の精神的苦痛を与えることにつながりかねません。もはやそうしたことは決して許されることではないと考えます。
 こうした理由により議案101号には反対であることを表明し、討論を終わります。

2021年2月県議会・2020年度一般会計補正予算に対する反対討論

印刷用PDFをダウンロードするには、ここをクリック(351kb)
 2021年2月県議会・2020年度一般会計補正予算に対する反対討論
 
 日本共産党 山本伸裕 2021年2月26日
 日本共産党の山本伸裕です。
 議案1号、令和2年度補正予算案でありますが、1月28日に成立した国の第三次補正予算に関連し、感染症対策や国土強靭化関連を中心に541億円という大型の増額補正が盛り込まれています。新型コロナウイルス感染症の深刻な影響が続くもとで、これ以上の感染の拡大を防止し、県民のいのちとくらしを守り、コロナ禍で受けた様々な苦難を軽減、解消していく施策の推進に熊本県が全力をあげるべきであるということは言うまでもありません。そうした対策を進めるために補正予算の額が膨らんだというのであればだれでも納得できるわけでありますが、ただ541億円の増額補正の内訳をみると、感染症関係分は154億円、豪雨災害関係分が68億円、熊本地震関係分が24億円の一方で、国土強靭化関係が感染症関係分の2倍近くに上る295億円、となっています。国からの予算がついたことで、八代港の水深14メートルバースの浚渫土砂の土捨て場の整備予算11億6700万円を前倒しして計上しているような事業もございますが、現時点においては最大かつ喫緊の課題であるコロナ対策関連予算の2倍にも上る国土強靭化関係予算を、今回の補正で計上しなければならない緊急性、必要性があるのか、慎重な精査が必要であります。私は少なくとも不要不急の事業については先送りし、逆にコロナ禍の元でいま急いで手当てしなければならない施策については県独自にでも緊急の予算を組んで具体化をはかるべきだと思うものであります。
 こうした観点に立って個別具体的に申し上げます。
 病床機能再編支援事業に5億円が計上されています。病床の再編や削減を行う医療機関に対し給付金を支給するというものであります。しかしコロナ感染症の拡大によって医療崩壊の危機に直面する中で、つくづく国民の命・健康を守る上で医療機関への支援を拡充し、医療体制を守ることがいかに大切かということを今更ながら痛感させられている時に、なぜますます病床削減を促すのでしょうか。これは政府の方針に沿った事業でありますけれども、政府はコロナ感染症の拡大が始まる前から計画されている公的医療機関の再編統廃合方針も依然として見直そうとしないわけであります。こうした国の方針にただ追随するのではなく、感染症拡大の元でも安心して必要な医療が提供できる体制の存続・拡充にこそ県は力を入れるべきであり、こうした事業への予算計上は見直すべきであります。
 県内宿泊応援キャンペーンに7億円、九州新幹線誘客の為のPRイベント経費として3千万円が計上されております。いま幸いにして新規感染者は減少しているわけでありますが、感染を封じ込める手立てが不十分なまま人の流れを活発化して再び感染爆発を引き起こすような事態を引き起こしてはなりません。それこそいま急いで計上せずとも、専門家の科学的な判断、意見を踏まえて慎重に判断し、それまではむしろ観光関連産業、あるいは宿泊業の皆さんへの十分な支援、補償策をおこなっていくことこそ重視すべきであると考えます。
 農業関係では、海外輸出拡大対策事業に2,230万円、輸出マーケットイン販路開拓事業に1,670万円が計上されています。農家や産地が輸出に活路を見出そうとすること自体に問題があるわけではありませんが、輸出拡大推進が本当に地域の小規模・家族農業にとってプラスになるのかどうか、地域の自律性が奪われることにならないかを慎重に検証していくべきであります。さらに、これからますます地球規模での食糧不足が懸念され、どの国も食料主権、自国民の食糧確保に躍起になろうとしている時だけに、コロナの影響による価格暴落に対する価格保障や収入減をサポートする持続化給付金の拡充などによって農山漁村の小規模経営を支え、後継者人材を育成する予算の拡充を求めるものであります。
 立野ダム建設に関しては、今回1億7,800万円余の増額補正が計上されております。これで今年度の立野ダム建設のための負担金は予算ベースで約26億6,500万円余という、巨大な額となりました。気候変動が進み従来の想定を超えるような豪雨が頻発する中で、国もダムだけでは洪水を防ぎきれないとして総合的流域治水という考え方に転換してきています。2018年10月に気候変動をふまえた治水計画に係る技術検討会がまとめた提言を見ると、ダムなどの耐用期間の長い施設については、摂氏4度の気温上昇、降雨量1.3倍、流量1.4倍、洪水発生頻度4倍にも備えた設計の工夫をおこなうことと指摘しています。現在建設中の立野ダム計画では、今後の気候変動による降雨量、洪水流量には対応できません。それに加え、流水型ダムつまり穴あきダムにおける危険性も明らかになってまいりました。立野ダムに関する技術委員会で委員長代理をつとめた角哲也氏が2019年に発表された論文では、長野県の裾花ダムのゲートが土砂と流木によって閉塞した可能性を指摘しています。これまで穴あきダムの穴がつまったら危険ではないかという意見に対し、国交省は繰り返し穴づまりが起こることはないと説明してきたのですが、こうした説明とも矛盾する重大な事実が出てきているわけであります。このまま立野ダム建設を進めることは大変危険ではないのかという問題を不問にしたまま、負担金を計上することはとうてい認められません。建設の凍結を表明したうえで、国に対し疑問や不安にこたえるよう求めるべきだと考えます。
 阿蘇くまもと空港創造的復興推進事業として615万円、阿蘇くまもと空港アクセス整備調査検討事業の繰越名許費として4200万円、これらの事業もいま計上しなければならないのか疑問であります。
 マイナンバーカードを活用した消費活性化策の広報等に要する経費として190万円余が計上されております。政府はデジタル化の第一にマイナンバーカードの普及促進を掲げ、カード取得を条件に電子マネーなどに一人5,000円のポイントを付与するマイナポイント事業をおこなっていますが、申込者は政府見込みの3割にも届いていません。普及が進まないのは個人情報の保護などに不安があるからであります。不安を払拭する代わりにポイントで誘導しようというのは問題のすり替えであり、県もそうしたやり方に加担するのは賛同できません。
 
 私は不要不急の財政出動を見直したうえで、新規感染者数が減少しているいまこそ、コロナ感染対策の基本的な取り組みを充実させることが重要であると考えます。ワクチン接種という大事業を控え、いま県や市町村の実務作業も大変でありますが、一方で感染対策がおろそかになってしまえばまた再び感染爆発という危険な事態が再来しかねません。そうした中で全国の自治体では、いまこそPCR検査を強化して感染を封じ込めようという動きが広がっています。高齢者施設などでの社会的検査を実施または実施を計画している都府県は過半数を超えています。熊本県も実施を決断すべきであります。高齢者施設や医療機関での集団感染は重症化や死亡という極めて深刻な事態に直結します。検査の拡充はこれまでも繰り返し要望してきましたが、あらためて高齢者、障害者施設、医療機関等における社会的検査の定期的・複数回実施に踏み出すよう求めるものであります。
 
 次に、議案42号、及び43号、県育英資金貸付金の支払い請求について専決処分された訴えの提起についてであります。コロナ禍の元で凍結されていた支払い督促が今回実施され、合わせて7名の方を相手取って訴えが提起されています。コロナ禍の元で家計急変により生活困窮に陥っている方がもし裁判に訴えられてしまえば、返還猶予という特例的な措置も受けることができなくなってしまいます。滞納者の実情に寄りそった対応がますます求められている時であり、提訴というやり方には賛同できません。
 以上のような理由により議案1号、及び42号、43号に反対するという意見を述べて討論を終わります。