国土交通大臣 斎藤 鉄夫 殿
2022年9月30日
日本共産党熊本県委員会
委員長 松岡 勝
日本共産党南部地区委員会
委員長 野中 重男
国の責任で、JR肥薩線の全線再建を
日本共産党熊本県委員会は、2021年7月26日、「JR肥薩線の全線再建についての提言」を発表し、熊本県、JR九州、国土交通省に「提言」を届け、要請を行いました。沿線自治体とも要請・懇談を行いました。また2022年4月2日、人吉市内で、「肥薩線全線再建を考えるつどい」を人吉市内で開くなど、党独自の広報、運動に取り組んできました。
国会では、田村貴昭衆議院議員が、肥薩線の再建について、「被災した鉄道をまずは鉄道として再建するのは当然」「復旧に要する費用の一部を国と地方が補助できる鉄道軌道整備法の対象になるか」と質したのに対して、「鉄道による復旧をまずめざしたい」「鉄道軌道整備法による支援、活用を視野に入れて議論したい」(政府参考人)との答弁がなされています(2022年4月21日衆議院災害対策特別委員会)。
この間の動向、状況を踏まえ、JR肥薩線の全線再建について要請します。
1,自治体と利用者への責任押しつけをあらため、「ローカル線を守る」との国民への約束を果たすこと
国土交通省の「有識者検討会」が、「輸送密度1千人未満」の路線について、国・自治体・鉄道事業者が存廃を協議する仕組みの創設を提言、3年以内に結論を出すとしています。経営赤字、災害による損壊などにより鉄道ローカル線の存続が重大な岐路にある中での「提言」です。
ローカル線をめぐっては、国鉄民営化の際の表明に背いてきたことが問われます。当時の中曽根政権は、「民営分割 ご期待ください」「ローカル線もなくなりません」などと新聞の意見広告等で喧伝しました。橋本龍太郎運輸大臣(当時)は、「廃止に伴う公衆の利便の阻害状況というものを見て許可の当否を判断するわけでありますから、その廃止が地域住民にとって極めて大きな利便の阻害になるという状況であれば、この認可はいたさないと私は考えております」と答弁しています(1986年10月13日国鉄改革特別委員会)。
「提言」の最大の問題は、ローカル線存続についての政府の国民に対する約束を棚上げし、自治体と利用者に問題の解決を求めていることです。
国は、ローカル線存続の課題を自治体と利用者に責任押しつけるのではなく、国鉄民営化の際の「ローカル線を守る」との国民への約束を果たすべきです。
2,鉄道ローカル線問題は、自治体・住民の「自己責任」に求めるべきものではなく、国が財源確保も含めて責任をもって解決(存続)に当たるべき
①憲法に基づく権利保障と鉄道ローカル線問題
憲法は、居住・移転の自由(第22条)、生存権(第25条)、幸福追求権(第13条)などの人権を定めています。人々が安心して生活をおくるうえで、交通・移動の権利を保障する環境整備が不可欠です。
全国各地で甚大な災害が多発し、鉄道ローカル線が被害を受けており、国の責任で被災した鉄道ローカル線を再建するスキームを策定すべきです。
日本共産党は、「鉄道路線廃止に歯止めをかけ、住民の足と地方再生の基盤を守るために――国が全国の鉄道網を維持し、未来に引き継ぐために責任を果たす」(2017年4月28日)のなかで、「鉄道は、大量の人とモノの移動を支える足であり、環境にもやさしい公共交通機関です。クルマ中心・道路偏重行政のもとで、赤字路線が増え、地方ローカル鉄道や都市部の電車など相次いで廃止されてきました。高齢化や人口減、地球環境問題、過疎化など社会経済情勢の変化に伴い、鉄道のもつ重要な役割を改めて位置付け、安全と公共性の確保を前提とした鉄道行政への転換がもとめられています」として、以下を提起しています。
・全国の鉄道網を維持するために国が乗り出すこと。
・公共交通基金を創設し、安定的な財源を確保すること。
・鉄道災害復旧基金をつくり、災害を原因とする鉄路廃止をなくすこと。
・全国の鉄道網を未来に引き継ぐために、知恵と力をあわせること。
鉄道ローカル線問題は、自治体・住民の「自己責任」に求めるべきものではなく、国が財源確保も含めて責任をもって解決(存続)に当たるべきです。
②赤字ローカル線維持へ、鉄道版「新直轄方式」を
日本道路公団の民営化の際、料金収入では採算がとれない(赤字が見込まれる)路線について「新直轄方式」がとられています。建設費用は、国が75%、地方自治体が25%(交付税措置)、維持費は全額国が負担、通行料金は無料とするものです。道路も鉄道も、居住・移転の自由(第22条)の保障、物流という点では同じです。「赤字ローカル線を存続させる新スキーム」を確立すべきです。
③鉄道、鉄道貨物を気候危機対策として
国内のCO2排出量の分野別割合で自動車などの「運輸」が18%を占めています(環境省2019年度温室効果ガス排出量)。国内を含む世界各地での災害の多発など気候危機対策は人類にとって一刻の猶予も許されない課題です。物流輸送の自動車依存から鉄道輸送への転換が必要です。特に貨物については、貨物1トンキロ(鉄道用語・1トンの貨物を1㎞運んだ場合)を輸送する際のCO2排出量が鉄道はトラックに比べて10%以下であり、鉄道貨物をローカル線も含めて強化することを求めます。
3,熊本県、沿線自治体、住民の熱意に応え、肥薩線全線再建の決断を
熊本県と沿線12市町村で構成する「JR肥薩線再生協議会」は、6月20日に、総務大臣・国土交通大臣に対して、「JR肥薩線の全線復旧・復興に関する要望」を提出しています。
「要望」では、「全線復旧・復興」を堅持し、復旧・復興や中長期的な視点での国の財政支援を求めています。
沿線の自治体、団体、有志による集会や署名運動も展開されています。
国・JR九州・熊本県による「JR肥薩線検討会議」の第2回会議で、田島徹熊本県副知事は、「収支が非常に厳しい状況ということは当然承知をしている。しかし、人吉温泉、地域を支える観光産業において鉄道がもつ魅力は非常に大きい。鉄道がなくなれば地域の衰退に拍車がかかる。今後の人口減少はそうだが、一方で地方創生に立ち向かっていくことも必要であり、その大きなツールが鉄道であると認識している。国でもローカル線の在り方について議論しており、肥薩線の検討はその最前線と思う。県としての責任は、肥薩線を残す意義を地元と議論し、JR、国に示すことで共通認識としたい。鉄道の魅力を最大限活かしてあの地域を将来に向かって存続させたいという思いがあり、まずは鉄道復旧を第一に検討していきたい」と述べています。
これに対して政府側も、「輸送密度や収益だけで鉄道の意義を測るべきではなく、多面的な議論を行い、負担をすべて事業者に押し付けるのではなく、公共政策的な意義に応じた関係者の負担の分担をうまく見出していければ答えに近づいていけるのではないか」と応えています。 熊本県、沿線自治体、住民の熱意に応え、肥薩線全線再建を決断し、一日も早い再建を実現するよう尽力されることを強く望みます。
4,安心して、住める沿線の地域づくりを
鉄道の普及は近代日本発展の原動力でした。鉄道が走り、それによって地域の経済が発展し、人口も増えてきました。人口が増え、人々の往来が多くなることによって鉄道も維持され発展してきました。
いま改めて、鉄道と人、地域の相関関係に着目した鉄道政策が求められています。
①堤防・宅地かさ上げ・高台移転などで安全・安心の地域を
肥薩線、特に「川線」の沿線の住民(現在居住している人も、避難している人も)が安心して住める地域づくりが、肥薩線の再建・維持のための大前提です。
そのために、速やかに、「7・4豪雨」の水位にも対応できる堤防・宅地のかさ上げ・高台移転・住宅のピロティ化などを実施することです。これらの自己負担を軽減・解消するために、国として財政支援の充実強化を求めます。
とりわけ人吉市での堤防・宅地のかさ上げ・防水壁の設置・住宅のピロティ化対策を急ぎ、観光人吉の再生・振興をはかるべきです。
②魅力的な「里」づくりを
地方移住のU・I・Jターン等、若者の「地方回帰」を球磨川流域・肥薩線沿線地域に呼び込むような積極的な取り組みが必要です。市町村の子育て支援、若者の雇用創出、定住促進策への財政支援の全面的支援、地域にある力、産業を育て、伸ばし、雇用を増やす振興策をすすめる必要があります。
地域の振興策として林業の振興に力を入れるべきです。皆伐を改め、災害に強い林道・作業道の整備は災害を防ぐうえで急務です。同時に、「川線」沿線地域の活性化策として林業の振興は必須です。
自伐型林業によって、全国的には人口減少が進む中山間地の市町村に都市部からのUターン、Iターン移住する若い世帯が増えています。自伐型林業を担い手として位置づけ、森林・山村多面的機能発揮対策交付金の拡充など支援し林業の再生をはかるべきです。
これらの施策について、国として省庁横断で検討・具体化をはかることを求めます。
九州旅客鉄道株式会社
代表取締役社長執行役員 古宮 洋二 殿
2022年9月30日
日本共産党熊本県委員会
委員長 松岡 勝
日本共産党南部地区委員会
委員長 野中 重男
JR肥薩線全線再建について、早期の決断を
日本共産党熊本県委員会は、2021年7月26日、「JR肥薩線の全線再建についての提言」を発表し、熊本県、JR九州、国土交通省に「提言」を届け、要請を行いました。沿線自治体とも要請・懇談を行いました。また2022年4月2日、人吉市内で、「肥薩線全線再建を考えるつどい」を人吉市内で開くなど、党独自の広報、運動に取り組んできました。
国会では、田村貴昭衆議院議員(日本共産党)が、肥薩線の再建について、「被災した鉄道をまずは鉄道として再建するのは当然」「復旧に要する費用の一部を国と地方が補助できる鉄道軌道整備法の対象になるか」と質したのに対して、「鉄道による復旧をまずめざしたい」「鉄道軌道整備法による支援、活用を視野に入れて議論したい」(政府参考人)との答弁がなされています( 2022年4月21日衆議院災害対策特別委員会)。
この間の動向、状況を踏まえ、JR肥薩線の全線再建へ、御社の一刻も早い決断をあらためて要請します。
1,熊本県、沿線市町村、沿線住民のJR肥薩線全線再建への熱意
沿線12市町村と熊本県で構成する「JR肥薩線再生協議会」が、国に対して、「JR肥薩線の全線復旧・復興に関する要望書」を提出しています。
JR九州・国・熊本県による「JR肥薩線検討会議」の第2回会議で、田島徹熊本県副知事は、「収支が非常に厳しい状況ということは当然承知をしている。しかし、人吉温泉、地域を支える観光産業において鉄道がもつ魅力は非常に大きい。鉄道がなくなれば地域の衰退に拍車がかかる。今後の人口減少はそうだが、一方で地方創生に立ち向かっていくことも必要であり、その大きなツールが鉄道であると認識している。国でもローカル線の在り方について議論しており、肥薩線の検討はその最前線と思う。県としての責任は、肥薩線を残す意義を地元と議論し、JR、国に示すことで共通認識としたい。鉄道の魅力を最大限活かしてあの地域を将来に向かって存続させたいという思いがあり、まずは鉄道復旧を第一に検討していきたい」と述べています。
これに対して政府側も、「輸送密度や収益だけで鉄道の意義を測るべきではなく、多面的な議論を行い、負担をすべて事業者に押し付けるのではなく、公共政策的な意義に応じた関係者の負担の分担をうまく見出していければ答えに近づいていけるのではないか」と応えています。
2,大幅に軽減される再建費用
「JR肥薩線検討会議」の第2回会議において復旧費の検討がなされました。会議議事概要によると「今回の検討会議では、事業間連携に関しては、九州地方整備局から方針が提示され、それをふまえた復旧費の試算がJR九州から示され、当初の235億円から159億円減額した76億円と具体的に示された。鉄道局からは、鉄軌道整備法に基づく補助スキームの紹介があり、その活用可能性について紹介した。条件はあるものの、事業者の負担は2分の1ないし3分の1に低減可能であると説明した」と記されています。会議資料では、概算復旧費として、球磨川第1橋梁2億円、第2橋梁1億円、以外の一般区間73億円、合計76億円と示されています。
3,赤字ローカル線への財政支援強化を国に
日本道路公団の民営化の際、料金収入では採算がとれない(赤字が見込まれる)路線について「新直轄方式」がとられています。建設費用は、国が75%、地方自治体が25%(交付税措置)、維持費は全額国が負担、通行料金は無料とするものです。道路も鉄道も、居住・移転の自由(憲法22条)の保障、物流という点では同じです。「赤字ローカル線は廃止」ではなく、「赤字ローカル線を存続させる新スキーム」の確立を国に求めるべきです。
4,鉄道、鉄道貨物を気候危機対策として
国内のCO2排出量の分野別割合で自動車などの「運輸」が18%を占めています(環境省2019年度温室効果ガス排出量)。国内を含む世界各地での災害の多発など気候危機対策は人類にとって一刻の猶予も許されない課題です。物流輸送の自動車依存から鉄道輸送への転換が必要です。特に貨物については、貨物1トンキロ(鉄道用語1トンの貨物を1㎞運んだ場合)を輸送する際のCO2排出量が鉄道はトラックに比べて10%以下であり、鉄道貨物をローカル線も含めて強化する必要があり、JR九州として国に働きかけることを求めます。
5,観光と住民の足を守る鉄道として肥薩線再建の決断を
御社は、「SL人吉」「かわせみ・やませみ」「いさぶろう・しんぺい」などを走らせ、肥薩線を全国有数の観光鉄路としてグレードアップするために注力してきました。
御社の長年の尽力が、「7.4豪雨」で打ち砕かれました。肥薩線が観光と住民の足を守る鉄道として再建されることは、「7.4豪雨」で、多くの生命、財産を奪われた沿線住民の復旧・復興への営みの「灯台」ともなるものです。
沿線住民・沿線自治体・旅館組合などの諸団体、熊本県と連携し、肥薩線の全線再建を決断し、推進されることを要請するものです。
6,JR九州「倫理行動憲章」「地球環境保全活動の基本理念」」の実践として
「JR九州グループ倫理行動憲章」は、「私たちは、すべての人々の人権を尊重するとともに、人種・民族・宗教・国籍・社会的身分・性別・年齢・障がいの有無などによる差別を排除します{「人権の尊重})「私たちは、地域の活性化に貢献し、地域とともに発展することを目指します(地域社会への貢献)と謳っています。
「地球環境保全活動の基本理念」では、「JR九州グループは、総力をあげて地球環境保全に取り組み、持続可能な社会づくりに貢献します」「地球環境保全に関する技術の導入や創意工夫により、効率的なエネルギーの利用を推進し、地球温暖化の原因となるCO2排出量削減に努めます」とも謳っています。
御社がこれらの理念や憲章の実践として、JR肥薩線の全線再建を決断し、熊本県・流域自治体、利用者・住民と力を合わせて再建事業を推進されることを強く願うものです。
熊本県教育委員会 教育長 白石伸一 様
2022年9月28日
日本共産党熊本県委員会 委員長 松岡勝
県会議員 山本伸裕
旧統一協会関連団体の行事の名義後援をすべて取り消すとともに、今後、一切の関係を持たないことを求める再度の申し入れ
1、旧統一協会が、「家庭教育」を掲げ、地方政治に浸透していることが大問題となる中、日本共産党熊本県委員会は、9月7日、旧統一協会関連団体「熊本ピュアフォーラム」の行事の名義後援の取り消しを求めました。これに対して、古田亮市町村教育長は、「これまでの名義後援についても取り消しを検討したい」と明言されました。
しかし、今なお、県教育委員会は、過去の名義後援の取り消しをしないまま、今日にいたっています。
2、9月7日の申し入れの中で、「国際青少年問題研究所長」の肩書で平成28年10月23日「熊本ピュアフォーラム」の設立記念講演を行った青津和代氏は、東京に本部のある旧統一協会と表裏一体の「国際勝共連合」の幹部であることを指摘しました。
設立記念講演を行った青津和代氏は、「自主憲法をつくる国民会議=自主憲法制定国民会議」評議員名簿の「主な前歴又は現職」欄に「国際勝共連合政策局長」として掲載されている人物です(資料①)しかも、青津和代氏は、全国地方議員研修会を開くなどして、「家庭教育支援条例」の全国展開を図ってきたことも指摘されています。
3、この青津和代氏が、「熊本ピュアフォーラムの設立記念講演」の他に「青木和子」という別の名前で計3回の講演を行なっていることが明らかになりました(「熊本ピュアフォーラム」の「沿革」(資料②)
①平成27年2月22日阿蘇市青少年健全育成推進大会特別参加(於;阿蘇市就業改善センター)第二部講演「子供達を取り巻くネット社会の危険性」の講師として紹介されている「青木和子」氏は、国際勝共連合の幹部である青津和代氏と同一人物であることが明らかになりました。この大会の動画で「国際青少年問題研究所 青津和代所長」の講演であることが字幕で紹介されている(資料③「第9回阿蘇市青少年健全育成推進大会動画」)からです。
②その以前にも、青津和代氏は、平成26年7月6日青少年健全育成熊本セミナー(第一回 於;八代ハーモニーホール)では、第一部講演「熊本家庭教育支援条例のポイント」講師溝口幸治氏(現在熊本県議会議長)といっしょに第二部講演「子供達を取り巻くネット社会の危険性」の講師「青木和子」氏の名前で講演しています。
③平成26年8月24日青少年健全育成熊本セミナー開催(第二回 於;玉名文化センター)でも、青津和代氏は、第一部講演「子供達を取り巻くネット社会の危険性」の講師「青木和子」氏の名前で講演しています。
旧統一協会の関連団体「熊本ピュアフォーラム」は、連絡先を「国際勝共連合熊本県本部」の代表とするだけでなく、「国際勝共連合」幹部の青津和代氏と深いかかわりを持っている団体です。
統一協会は、霊感商法、集団結婚などで甚大な被害を生み出し、人権侵害を犯している反社会的カルト集団です。高額献金の実態、「信者2世」の被害の深刻さも明らかにされています。県教育委員会が、旧統一協会の関連団体「熊本ピュアフォーラム」の行事を名義後援することは、お墨付きを与え、被害拡大に手を貸すことになります。
県教育委員会は、過去の名義後援の取り消しをただちに行うべきです。
4、熊本県の「家庭教育推進条例」は、親学議員推進連盟(会長 松田三郎県議、副会長 溝口幸治県議)が制定の推進力となり、自民党熊本県連あげて、平成24年12月議会で全国に先駆けて成立しました。平成25年4月1日から同条例が施行されました。
同じ家庭観を持つ旧統一協会・国際勝共連合は、翌年26年1月1日熊本フォーラム新聞発行開始、5月9日代表就任 田中力男氏、事務局長就任 稲冨安信氏(国際勝共連合熊本県本部代表)で活動を開始し、「熊本ピュアフォーラム」として、「家庭教育支援条例」を推進し、自らの家庭観を広げる絶好の機会としてきました。国際勝共連合の月刊誌「世界思想」(2018年2月)では、熊本県の家庭教育支援条例を紹介し「条例の意義は極めて大きいといえる」としています(資料④)
現在、県議会議長を務める溝口幸治県議が「熊本ピュアフォーラム」のセミナー、研修会に講師として2回(平成26年7月6日青少年健全育成熊本セミナー、平成30年9月3日青少年法、家庭教育を学ぶ研修会)参加していることは重大です。
しかも、平成30年5月⒕日開催の「家庭教育支援法、家庭教育支援条例の制定実現に向けて」の第3回全国地方議員研修会に溝口幸治県議は、「親学」の提唱者とされる高橋史朗氏とともに講師として出席しています。第3回地方議員研修会を呼びかけた「全国地方議員連絡会議世話人会」は統一協会関連団体であると指摘されています。議員が支払う研修会費の振込先が、「平和大使協議会」スズキ ヒロオ となっており、スズキ氏とは、統一協会関連団体・UPF=平和大使協議会の会長、鈴木博雄氏のことだからです(資料⑤)
旧統一協会の関連団体と指摘される「熊本県平和大使協議会」の議長を務める岩下栄一県議は、「同協議会は毎年数回、会合を開き、旧統一協会の関連団体が関わったイベント「ピースロード」や関連団体とされる「熊本ピュアフォーラム」のイベント内容について議論してきた」(「熊日」9月8日)と報道されています。
以上のように熊本の自民党の地方議員と旧統一協会との関係が明らかになっているのに、自民党熊本県連は自ら調査もせず、「知らなかった」で済ませようとしています。
県教育委員会が、こうした状況の中、率先して、旧統一協会の関連団体の行事の名義後援の取り消しを行うことは、旧統一協会との関係を一切絶つという行政自らの強い決意を県民に示すことになるものです。
日本共産党熊本県委員会は、県教育委員会が、旧統一協会関連団体の行事の名義後援をただちに取り消すこと再度申し入れます。
熊本県教育委員会 教育長 白石伸一 様
2022年9月7日
日本共産党熊本県委員会 委員長 松岡勝
県会議員 山本伸裕
旧統一協会関連団体の行事の名義後援をすべて取り消すとともに、今後、一切の関係を持たないことを求める申し入れ
1、旧統一協会が、「家庭教育」を掲げ、地方政治に浸透していることが大きな問題になっています。旭川市では、「家庭教育支援条例」と統一協会との関係が問題になっています。「家庭教育支援条例」が制定されている静岡県では、統一協会の信者である自民党の県議が、国際勝共連合幹部と会い、「家庭教育支援条例」の全国展開について話しをしたことが報道されています。
2、熊本県では、「教育の原点は家庭にある」を掲げる旧統一協会関連団体の行事を県教育委員会が名義後援していることが明らかになりました。
旧統一協会の関連団体とは、「熊本ピュアフォーラム」です。連絡先となっている稲富安信氏は、統一協会と表裏一体の「国際勝共連合熊本県本部」の代表です。(令和2年度国際勝共連合熊本県本部の政治資金規正報告書)記念講演を行った国際青少年問題研究所の青津和代氏は、国際勝共連合の幹部と指摘されている人物です。
代表理事の田中力男氏は、旧統一協会の関連団体行事である「ピースロード」実行委員会の副実行委員長をつとめています。さらに、文鮮明が創刊にかかわった世界日報の編集員も講演しています。
県教育委員会は、「熊本ピュアフォーラム」の設立記念講演会(平成28年(2016年)10月23日開催)、平成30年(2018年)4月22日「子育ての課題克服と若者の結婚を応援するつどい」、令和元年(2019年)11月10日「青少年の未来と人権を考えるシンポジユウム」を名義後援しています。シンポジュウムでは「熊本県家庭教育支援条例」ついて県教育委員会社会教育課が講師をつとめています。
3、統一協会は、宗教団体ではありません。霊感商法、集団結婚などで甚大な被害を生み出し、人権侵害を犯している反社会的カルト集団です。霊感商法の被害総額は1237億円におよんでいます。最近では、高額献金の実態も明らかにされています。「祝福」と称して、人権無視の集団結婚も相変わらず行われています。「信者2世」の被害の深刻さも明らかにされています。
旧統一協会の関連団体「熊本ピュアフォーラム」の行事を名義後援することは、「反社会的カルト集団」に、県教育委員会がお墨付きを与え、さらに被害を拡大するものです。「反社会的カルト集団から子どもたちを守る」という教育委員会の役割を発揮するためにも、ただちに取り消し、今後一切の関係を持つべきではないと考えます。
4、「熊本ピュアフォーラム」は、「家庭で、男の子には、男の子の自覚と理想を教え、女の子には、女の子としての自覚と理想を教えることが、本来の人の育成の基本」とジェンダー平等を否定する団体です。ところが、LGBTQ・性同一性障害・性自認問題・性的指向問題・ジェンダーフリー問題への初期対応のカウンセリング受付と称して、国際勝共連合県本部代表の電話を問い合わせ先にしています。決して看過できません。
「ジェンダー平等について、子どもたちが学び、理解をすすめていく」役割を担う教育委員会が、ジェンダー平等を否定する統一協会の関連団体「熊本ピュアフォーラム」の行事の名義後援を行ったことは、全く不適切であり、ただちに取り消し、今後一切の関係を持つべきでないと考えます。
5、「熊本ピュアフォーラム」は、「家庭教育支援法」「青少年健全育成基本法」の請願にとりくんでいます。県議会では、溝口幸治、藤川隆夫両県議を紹介議員にした「青少年健全育成基本法」制定求める請願の採択(平成27年6月22日受理)玉名市議会では、城戸淳玉名市議(現県議)を紹介議員にした「家庭教育支援法」制定求める請願(平成30年8月21日受理)などが採択されています。
6、「熊本ピュアフォーラム」設立時の5人の役員名簿をみると、「熊本県平和大使協議会」の役員名簿22人中5人の平和大使と同じ人物であることがわかります。
平和大使の任命機関であるUPFは、2005年9月文鮮明夫妻によって創設されたもので、旧統一協会の関連団体です。熊本県平和大使協議会の議長は、岩下栄一県議 共同議長の柳京永氏は、旧統一協会の熊本県代表です。
「平和大使運動の紹介」では、「家庭を基礎とした地域社会、国づくり運動を展開し、条例制定・法制化運動」を明記し、熊本県平和大使協議会は、「くまもと家庭教育支援条例」を支援しています。
熊本県平和大使協議会のSNSによると「2020年10月24日ホテルメルパルク熊本で「 熊本県の使命と未来・2020フォーラム」が開催された。熊本県は、全国に先駆けて「くまもと家庭教育支援条例」が施行されているが、熊本県平和大使協議会もその条例を支援し、真の家庭運動に連結させるべく幅広い分野の方に呼びかけた」としています。このフォーラムでは、県教育委員会・社会教育課主幹がコメンテーターとして報告しています。
7、「くまもと家庭教育支援条例」の特徴は、2011年11月に「熊本県親学議員推進議員連盟」(会長 松田三郎 副会長 溝口幸治)が結成され、「親学」の提唱者とされる高橋史朗氏が深いかかわりを持っていることです。共通の家庭観をもつ旧統一協会が、いっしょになって同条例を推進してきたことがうかがえます。
日本共産党熊本県委員会は、「くまもと家庭教育支援条例」そのものの問題点についても、県民の中で学習・討論を深め、県民的な討論をよびかけるものです。
熊本県知事 蒲島郁夫様
2022年7月29日
日本共産党熊本県委員会 委員長 松岡勝
県会議員 山本伸裕
世界平和統一家庭連合(旧統一協会)系の団体行事(「ピースロード」)の後援を取り消し、今後は名義後援しないことを求める申し入れ
新型コロナの感染急拡大など県民の命と暮らしを守る県政の役割がますます重要になっています。 こうした中、旧統一協会と政治家、自治体との癒着が今、大きな問題になっています。
7月26日、岸田内閣の閣僚である二之湯国家公安委員長は、2018年に旧統一協会関連団体のイベント「ピースロード」で京都府実行委員長を務めたことを明らかにしました。富山県では、新田知事が「ピースロード」のイベントに出席していたことが明らなっています。「ピースロード」は、「世界平和を推進するUPFの世界的な友好親善プロジエクト」とされていますが、「UPF」とは、統一協会系のNGO団体である「天宙平和連合」のことであり、その創設者は、旧統一協会の文鮮明です。
熊本県のピースロード実行委員会の共同実行委員長は、世界平和統一家庭連合(旧統一協会)の県代表であり、実行委員には、自民党の木原稔衆議院議員、維新の小野泰輔衆議院議員など国会議員、県議、市議、町議が名を連ねています。
熊本県は、旧統一協会関連団体のイベントである「ピースロード」に対して、名義後援しています。
旧統一協会は、単なる宗教団体ではありません。キリスト教会系の宗教を装いながら、実際には、教祖による「祝福」と一体の集団結婚式や、この世の人も財産もすべて神のものであるという「万物復帰」の教えにもとづく霊感商法や高額献金を繰り返してきた反社会的カルト集団です。全国霊感商法対策弁護士連絡会のまとめによれば、昨年末までの35年間で消費生活センターが受け付けた旧統一協会に関する相談は3万4537件、被害総額は約1237億円に上ります。同連絡会が指摘するように、旧統一協会系団体が主催する集会に政治家、地方自治体が参加、関与することは同会へのお墨付きを与え、被害を拡大することにつながるものと考えます。こうした立場から、日本共産党熊本県委員会は、「ピースロード」に関わった政治家の道義的責任をきびしく問うとともに、熊本県に対して以下の点を申し入れます
記
1、熊本県が、名義後援した経過を明らかにし、県民と議会に真摯な説明を行うこと
2、今回の後援を取り消すとともに、今後は、名義後援しないこと
3、霊感商法による被害者救済など反社会的カルト集団から県民の命と暮らしを守るために地方自治体の役割を果たすこと
熊本県知事 蒲島郁夫様
2022年7月28日
日本共産党熊本県委員会
県委員長 松岡 勝
新型コロナウイルス感染急拡大の事態に際し、直ちに県独自の対策強化を求める申し入れ
私たち日本共産党は7月22日、新型コロナウイルス感染の急速な再拡大が続くもと、県の対策本部会議の早急な再開、ワクチン接種の促進、検査の拡充、保健所・医療機関への支援、感染者や家族・濃厚接触者への支援などを求める緊急要請をおこないました(要望書は別紙のとおり)。
その後庁内でどのような検討がなされ、どのように対策強化や事態の改善が図られているのか、残念ながら全く確認することができません。県からは、県民への感染防止対策の徹底が繰り返し呼びかけられるのみで、切迫している保健所・医療体制への緊急的な支援強化や、連絡も届かず置き去りにされている感染者・家族・濃厚接触者に対する連絡・安否確認の改善策がとられているようには見受けられません。医療や保健所が崩壊しかねない現状に対する危機感が共有されていないのではないか、との疑念を抱かざるを得ません。
現在の感染拡大傾向は、現場の医療や保健所の対応能力をはるかに超えている状況です。
既に自宅療養者は2万人、療養先調整中の方は1万人を超えているような状況の中で、現在のシステムのままでは感染者や家族、濃厚接触者への情報提供や毎日の健康観察ができるはずもありません。また、知事は医療機関にコロナ対応病床の確保を要請しましたが、体制強化への支援策が見えない状況のもとで、「知事は医療現場の実態が分かっているのか」と怒りや戸惑いの声が上がっています。どのようにして医療や保健所の崩壊を防ぎ、感染者や家族の不安解消・安否確認の徹底をはかっていくのか、早急な対応策の検討が待ったなしに求められています。
また感染急拡大は、県民生活にも深刻な不安を広げています。事業者からは、「県民の行動自粛で売り上げが減少しているが、何の補償もなくいよいよ経営が行き詰まっている」といった悲鳴が上がっています。また、もしいま大規模災害が発生したら、避難所の感染対策はどうなるのか、感染者の避難はどうすればいいのか、といった不安の声もあります。だからこそ全庁的な危機意識の共有と、様々な分野における緊急事態の想定や対策の具体化が求められています。
県におかれましては、「その場しのぎ」、「県民まかせ」の対応をただちにあらため、全部署横断の対策本部会議で危機感を共有し、これ以上の感染拡大を封じ込めるための手立て、感染者や家族への支援、ひっ迫する医療・保健所への支援、困窮が広がる県民生活や事業者への独自の支援などを直ちに具体化するよう、改めて強く要請するものです。
以上
熊本県知事 蒲島郁夫様
2022年7月22日
日本共産党熊本県委員会
県委員長 松岡 勝
新型コロナウイルス感染急拡大のもと、緊急の対策強化を求める要望書
新型コロナウイルス感染の急速な再拡大が続いています。あまりの爆発的な感染拡大に保健所や医療機関の対応が間に合わず、そのことによってさらに事態の悪化が引き起こされています。BA.2系統からの置き換わりが進んでいるBA.5系統は、重症化率は低いと言われていますが、それでも新規感染者数が爆発的に増加すれば医療体制はひっ迫し、重症患者も増加します。
実際、全国の中でも新規感染者数が人口比で最悪レベルとなっている熊本県においては、保健所対応はすでにパンク状態、医療や介護の現場も極めて厳しい対応に追われています。陽性反応が出ても保健所からの連絡があるまで何日もかかり、感染者の家族や濃厚接触者も含めて「何も連絡がなく、どうしたらいいのかわからない」と途方に暮れる方々が急増しています。感染者を初期の段階で早期に発見し保護することが感染症対策の鉄則であるにもかかわらず、その対応が全く追いついていない状況です。
蒲島知事は今月6日の会見で、「感染力は強いけれども重症化する割合は低い」「病床もひっ迫していない」「経済政策とのベストバランスをはかっていかなきゃいけない」と発言されていますが、既に感染の急拡大が続いていた時点でのこの発言は、県民の危機意識を高めるどころか警戒感を緩ませかねない、誤ったメッセージと指摘せざるを得ません。
いま最も重要なことは、一刻も早く感染拡大を抑え込むことです。そのためには検査の徹底と早期に感染者を保護することが決定的に重要です。こうした観点から、熊本県に対し、下記の内容について緊急に申し入れるものです。
1、県の対策本部会議を早急に再開し、危機意識を共有し独自の対策に万全を
・この間何度も新規感染者数が過去最多を更新し続けているにもかかわらず、新型コロナウイルス感染症対策本部会議が3月18日以降開かれていないことは、県としての危機意識が足りないと指摘されても仕方がない。すでに保健所業務はパンク状態、医療や介護の現場もひっ迫している。こうした現状を県としてしっかり掌握し、危機意識をトップから全職員まで共有すべきである。
・県のリスクレベルは新基準に基づき、レベル2のままとなっているが、爆発的な感染拡大という非常事態のもとで、県独自にリスクレベルも見直し、県として必要な対策を具体化することも検討すべきである。その際、行動制限をともなう対策を講じる場合は、県民への生活支援、事業者への損失補てんもおこなうこと。
2、ワクチンの接種に関して
・ワクチンの3回目未接種の方々への接種呼びかけを徹底するとともに、希望するすべての方が4回目接種できるよう体制を整えること。
3、検査の拡充を
・無料のPCR検査の実施場所を県の責任で広げ、全自治体に設置すること。休止している検査所の再開設を支援すること。
・無料のPCR検査をコロナの収束まで継続すること。また通勤・通学する人が気軽に受けられるよう、設置個所の工夫や検査の重要性を周知する啓発・広報活動を強化すること。
・医療機関、高齢者・障がい者・子どもの福祉施設・事業所、学校等において、一週間に一回程度の定期検査の実施ができるようにすること。
・検査陽性者の同居家族、濃厚接触者の自宅待機期間は7日間だが、4日目、5日目の抗原検査で陰性を確認できれば5日目から解除できる。すべての濃厚接触者、および同居家族に対し、抗原検査キットを配布すること。
・抗原検査キットが品薄となり、購入困難な状況となっている。県の責任で医療機関・薬局などが安定確保できるよう支援すること。
・すべての入国者に対し、到着時のPCR検査をおこなうよう国に求めること。熊本空港到着の国際線乗客に対し、PCR検査をおこなうこと。
・PCR検査料の点数が引き下げられ、医療機関は検査をおこないたくともできない状況となっている。医療機関の発熱外来でも検査が積極的に行えるよう、国に改善を求めること。
4、医療・保健所体制の強化へ支援を
〈保健所体制の強化〉
・自宅療養者を含めたすべての感染者、および自宅待機を余儀なくされている家族や濃厚接触者に対し、一日1~2回の健康観察ができる手立てを直ちに確立すること。それを可能とするための保健所人員の確保(外部委託も含め)、あるいはホームページ等のフォームで観察項目が入力できるようにする、などの手法を確立すること。
・自宅療養者への注意事項・連絡事項については、口頭のみではなくファックス・ショートメッセージでも伝達するようにすること。
・感染者への疫学調査が速やかに行われるよう、体制と人員を確保すること。
〈医療機関等への支援強化〉
・医療機関では、たとえ感染者を受け入れるための病床が確保されていたとしてもスタッフが不足している。体制確保への支援を強力におこなうこと。
・医療従事者や介護従事者、保育従事者に対するワクチンの4回目接種を速やかに進めること。
・病床削減を意図した地域医療構想を撤回し、医師・看護師を増やすこと。
・介護サービス事業所・施設等への支援金を拡充すること。また医療機関においてはコロナ対応スタッフに限定するのでなく全職員を対象に支援手当を支給すること。
・診療報酬、介護報酬の引き上げを国に求めること。
5、感染者や家族に対する支援強化を
・濃厚接触者・同居家族についても、注意事項が確実に伝達されるようにすること。ホームページ閲覧だけでなく、ショートメッセージやファックスで届けるなど、確実に伝わるようにすること。
・すべての自宅療養者および同居家族、濃厚接触者に、食糧や生活用品など必要な物資が提供されるよう体制をとること。
・宿泊療養施設の食事のいっそうの改善につとめること。
・基礎疾患を有する方が、自宅療養中に容態急変で亡くなるという悲劇を繰り返してはならない。そうした方は陽性が確認され次第、原則として速やかに入院措置が取られるよう徹底すること。
・すべての自宅療養者に「療養証明書」を速やかに発行すること。
以上
国土交通大臣 斉藤鉄夫様
2022年4月20日
日本共産党熊本県委員会
ダム前提の河川整備計画ではなく、流域住民主体の治水対策を
国土交通省・熊本県は、「球磨川水系河川整備計画(原案)に関する住民意見の募集について」、パブリックコメントと公聴会を実施することを発表しています。
パブリックコメント、公聴会を前に、改めて住民主体の球磨川治水のあり方について問題提起を行います。
1、住民参加で「河川整備計画」原案(たたき台)は見直しを
1997年(平成9年)に改正された河川法は、第16条(の2)で、「4 河川管理者は、前項に規定する場合において必要があると認めるときは、公聴会の開催等関係住民の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない」と定めています。
法改正の趣旨について国交省(ホームページ)は、「河川環境の整備と保全を求める国民のニーズに的確に応え、また、河川の特性と地域の風土・文化等の実情に応じた河川整備を推進するためには、河川管理者だけによる河川の整備計画ではなく、地域との連携が不可欠である」とし、河川整備計画については、「具体的な川づくりが明らかになるように工事実施基本計画よりもさらに具体化するとともに、地域の意向を反映する手続きを導入することとした」と述べ、手続きとして、「学識経験者や地域住民の意見を聞く」と明記しています。
球磨川水系では、かつて県知事、ダムサイト予定地と受益地の首長が「川辺川ダム中止」表明に至らしめた世論と運動があり、令和2年7月豪雨以後も、川辺川ダム中止は広範な民意であり、住民参加、住民の意見を聞く場はとりわけ重要です。ところが、治水協議では学識経験者の意見を聞く場は設けられ、会合もたびたび開かれていますが住民参加の協議の場は設けられていません。
公共事業はだれのためのものか。それは住民のためのものであり、公共事業の計画は住民参加で協議し、住民の意思で決定されるようにすべきです。
原案はあくまでたたき台であり決定案・修正案ではありません。川辺川ダム建設の是非を含めて、公聴会、パブリックコメントでの発言や提案、令和2年7月豪雨災害後、住民や団体などから寄せられている意見・提案などについて、住民参加で協議する場を設け、住民主体で河川整備計画の策定をはかるべきです。
4月23日から開催される公聴会は、住民参加・意見表明の権利が著しく制約された内容となっています。開催箇所は流域市町村それぞれわずか一か所ずつであり、しかも地元住民以外からの参加は認められません。公聴会で意見を発表できる公述人をあらかじめ限定し、しかも早々と募集が締め切られました。住民の意見表明の場を最小限に押しとどめ、形式的にでも公述会を開催し、あくまで原案通りに計画を推し進めていこうとする意向ではないのかと思われても仕方がありません。公聴会に当該住民以外の参加や意見表明権も認めるべきです。また、公聴会での「意見」の内容を事前に求めるのではなく、会場における発言も自由に行えるよう改めることを求めます。
2、15年も流域を危険にさらす「ダムありき」の治水計画
国交省は、川辺川ダムの完成は、環境影響評価などに5年、本体工事に9年かかり、2035年になると明らかにしました。2月17日の球磨川水系の学識者懇談会では、「10年後には完了しないが、20年後までには完成している」と説明したと報じられています。暗に「20年近くかかるかもしれない」ということでしょうか。
異常気象のもと、線状降水帯の発生と集中豪雨が14,15年間も球磨川水系で起こらないという保証は全くなく、いつ、令和2年7月のような豪雨が流域を襲うかわかりません。
気候変動下の異常洪水に対する安全な治水対策は急務であり、15年も待てません。
3、あらたに2,700億円。総事業費4,900億円に急増。どこまで増えるダム事業費
川辺川ダム建設事業にこれまで2,200億円を費やしています。国交省はこれに加えて今後の事業費として2,700憶円。計4,900億円が完成まで必要と説明しています。国交省は2月17日の球磨川水系の学識者懇談会で、川辺川ダムの建設費用2,700億円を示す一方、代替案の「大規模な河道掘削を中心とする案」の概算事業費約1兆1,500億円、「堤防かさ上げが軸の案」、4,900億円、「球磨川と八代海をつなぐ放水路などの案」、約1兆8,500億円の3案を示し、「河道案」「堤防案」は、30年後も完成しないと説明したと伝えられています。
国交省は20年前の「川辺川ダムを考える住民集会」、「ダム以外の治水」協議会でも同じような主張しています。
国交省は、「ダム以外の治水」協議では、人吉地区の堤防について、「コンクリートと鋼矢板による構造の堤防」では、沿川の家屋や温泉旅館、ホテル、病院等約200戸の移転、用地買収が約24ha必要、約1,100億円かかるから困難と説明しています。
堤防かさ上げには、大規模な住宅等の移転が必要というわけですがその必 要はありません。現に鋼矢板を打ち込むなどして堤防の幅を抑えた工法で堤防かさ上げをしている事例は、東日本震災における陸前高田の防潮堤、白川の熊本市街地など各地で取り組まれています。堤防かさ上げを中心にした治水対策は、約50年かかると説明していますが、熊本市の代継橋から明午橋までの鋼矢板を敷設した堤防強化は5年もかからず短期間に完了しています。
4、五木村について
五木村は、1966年以来56年間、川辺川ダム建設計画に翻弄され、村人口も4分の1に減り、疲弊を余儀なくされてきました。国のダム中止表明後、村づくり、村おこしを国・県・村で推進し、観光客も増え(10年間で12万人から17万人に)、水没予定地に諸施設の建設などが進められています。
五木村が村再生の取り組みに全力で取り組んでいる状況を無視して川辺川ダム建設を復活させたことは断じて容認できません。
加えて、川辺川ダム完成後、五木村の中心部が10年に1回以上の頻度で水没するとのシミュレーション結果が伝えられています。幾重にも許しがたいことです。
五木村の再生のためには、川辺川ダム建設なしの治水対策が求められています。
5、河川整備計画原案の主な問題点
①人吉の河道流量は50年前から同じ。人吉市街の安全は放置
河川整備計画の元となる河川整備基本方針は、人吉の基本高水流量を8,200 ㎥/sとし、洪水調整施設で4,200㎥/sを調節し、河道への配分流量を4,000㎥/sとしています。ダムなどの調節量が川で流す量より多いのは全国に例がない異常な計画です。ちなみに、他の河川におけるダムなどの調節量と河道への配分流量を比較すると、白川では400:3,000、緑川は1,100:4,200、菊池川は700:3,800、川内川は2,000:7,000、筑後川は4,000:6,000です。
人吉の4,000㎥というのは1965年に決まったもので50年間も同じです。50年間も見直さず、これからも見直さないということです。4,000㎥だから人吉の流量を増やすための特別な対策はないのと同じです。なぜこのような異常な計画になっているのか。川辺川ダム建設ありきだからです。
河川整備基本方針を基にした河川整備計画では、人吉の流量は3,900㎥になっています。人吉はほぼ現状の安全度で毎年の梅雨時、台風シーズンを迎えざるを得ないことになります。
川辺川ダムに極端に依存した計画は改め、人吉地区では次の対策に着手すべきです。
・河道の堆積土砂撤去・可能な限りの河床掘削を進めるとともに、堤防かさ上げ・官民連携での宅地のかさ上げ・防水壁の設置を実施し、令和2年7月豪雨時の洪水の水位に対応できる安全度を確保する。
・中川原公園については、令和2年7月豪雨の際、中川原公園付近で洪水がせき止められ、水位が約2m上昇、さらに人吉大橋など3本の橋が水没すると橋がない場合に比べて水位が最大2m高くなるとの専門家の研究結果が示されており、撤去し、市街地の安全度を高める。
・人吉上流域での「地役権型遊水地」の建設。
「地役権型遊水地」は、熊本県では、2012年の九州北部豪雨後、阿蘇地区の小倉、手野で建設され稼働中です。「地役権型遊水地」は、平常時は農地としてそのまま利用し、洪水時は遊水地として利用する。売買価格の約3割が契約時に保障されというもので、小倉地区では、地権者総数102名全員、手野地区では、44名中43名(1名は買収希望)が賛成・同意しています。小倉遊水地は、88㏊で貯水容量265万㎥、手野遊水地は、50haで、貯水容量は138万㎥、併せて403万㎥です。事業費は、小倉遊水地69億円、手野遊水地57億円です。
優良農地でも賛成・同意が得やすい「地役権型遊水地」を人吉地域より上流部に建設することを求めます。
②中流域―ダム前提では「大阪間の惨事」繰り返す危険
川辺川ダムの「治水効果」を前提にした治水対策では、「大坂間の惨事」の危険を流域全体に及ぼすことになります。
令和2年7月豪雨で5名がなくなった球磨村大坂間地区では2008年、蒲島知事の川辺川ダム建設中止宣言後に堤防かさ上げがなされています。ところが嵩上げは、川辺川ダム建設を前提に(「治水効果」を計算に入れて)実施されました。「ダムなし治水案」では、さらに2.5メートルのかさ上げが必要とされていたにもかかわらず、川辺川ダム計画のために低い堤防がつくられ住民が犠牲になったのです。
八代市坂本町の支所再建では、高齢者の多い地域としてダム建設を待ってはおれないとして、令和2年7月豪雨時の水位で安全性を確保するとの「有識者検討会」の答申がなされています。
2021年6月、八代・芦北町・球磨村連名で、「住み慣れた地域に戻り安心して暮らせる環境づくりを進めるために、『令和2年7月豪雨時の被災水位を踏まえた輪中堤・宅地かさ上げが必要不可欠であり、その実施に向けた『自治体のまちづくり事業』への特段の支援をお願いしたい」との要望が国交省あてによせられています。
国交省は、「宅地かさ上げについては、治水対策実施後の水位を基本としますが、被災市町村や地域住民のご意見をお聞きして、必要に応じて、更なるかさ上げを実施する予定です」(2021年5月21日。日本共産党熊本県委員会のオンライン要請への回答)との見解を示しています。
中流域では、以下の対策を実施すべきです。
・道路・橋梁のかさ上げを、令和2年7月豪雨時の水位以上として実施す ること。
・宅地かさ上げを、令和2年7月豪雨時の水位以上として実施すること。高台移転をおこなうこと。
・堆積土砂を撤去すること。
・瀬戸石ダムを撤去すること。
川辺川ダム住民討論集会で、国土交通省側(ダム建設推進側)の論者として参加した小松利文氏(現・九州大学大学名誉教授)は、2012年の九州北部豪雨などの検証を行った国交省も深く関与した研究会、シンポジウムで、「近年の気候変動下の水・土砂災害にどう備えたらよいか」として、「河川横断構造物の危険性」として、「近年、地球温暖化によると思われる災害外力の増大下では,現存する取水ダム、橋梁、堰、頭首工などの河川横断構造物が洪水に対して更に水位を上昇させる等、非常に危険な状態を招くことが近年の洪水災害から明らかになってきた。従ってこれらの河川横断構造物のチェック、改善、撤去などが急務となっている.また土砂だけでなく流木の影響も合わせて考慮した河川計画・管理が不可欠となってきている。治水の根幹は『洪水の水位を下げる。1cmでも10cmでも下げる』ことであり、このことを忘れてはならない」「電力会社管理の河川構造物や橋の点検・見直しが急務である」と指摘しています。
瀬戸石ダムのリスクは明らかであり撤去を求めます。
③ゲートつき川辺川ダムの危険性
国交省は、第2回球磨川流域治水協議会で、洪水調節ができない従来型(立のダムなど)の穴あきダムの欠陥を補うために、川辺川ダムはゲート付きにし、それによって洪水調節もできると説明しています。
ところが、これについては次のような専門家の重大な指摘があります。
「ダム常用洪水吐ゲートの機能低下に伴う洪水リスク評価に関する検討」(京都大学防災研究所年報第62号B・2019)という論文です。
この論文では、米カリフォルニア州のオーロビルダムでの常用洪水吐ゲートの損傷、長野県の裾花ダムでの常用洪水吐きゲート2門のうち1門が4ヵ月間、開閉不能となった事例に基づいて、ダムのゲートの機能低下により洪水リスクが高まることを明らかにしています。裾花ダムのケースでは、緊急放流に至った場合、下流の計画流量を上回る放水量となり、さらに放流量の増大が急激となり被害が出ると想定しています。流水型ダムの欠陥を補うゲートそのものが、経年劣化や土砂・沈木などにより機能不全となり、被害を生じさせる致命的欠陥となりうるということです。
また、「第2回球磨川流域治水協議会」資料では、「『流水型ダム』の場合、流木等により河床部に設置する放流口が閉塞することを防ぐため、放流口の上流側へのスクリーン設置や、貯水池内への流木等捕捉施設等を検討する必要がある」としています。この間、立野ダム計画をめぐり、土砂や流木などによる放流口の閉塞、たとえスクリーンを設置しても、スクリーンの設置部に土砂・流木などが堆積し、放流口が閉塞するとの疑念に対して、国交省は、「つまようじ」を流木に見立てた実験を根拠に「流木は浮くからスクリーン設置部での閉塞はない」と強弁してきました。しかし、上記の論文では、ゲートが機能不全となった裾花ダムの事例では、「土砂と沈木がゲート開口部を閉塞させたことが考えられる」としています。「流木は浮く」という国交省の説明はなりたたない事例が実際にあることが明らかになっているのです。
第2回球磨川流域治水協議会の説明では、「速やかに着手すべき調査・検討について」で、「流水型ダムの放流設備等(流木閉塞対策設備・土砂堆積対策設備)の諸元や構造等」とだけ記されていますが、大量の土砂による放流口の閉塞、さらに重大なのは大量の「沈木」による閉塞ということが課題となっていますが「調査・検討」のレベルです。放流口にゲートをつけることで洪水調整ができるどころか、放流口そのものが土砂や流木でつまり、水位が急上昇し、異常降雨の場合は非常用吐き口から大量の濁流が下流を襲うことになりかねません。開かれた場での検証が必要です。
④緊急放流について
「令和2年7月豪雨では、市房ダムの水位が緊急放流基準貯水位280.7mまでわずか10センチ差となり、緊急放流「危機一髪」という状況でした。かろうじて緊急放流は回避されましたが、もし緊急放流が実施されていたら被害はさらに大きなものとなっていました。
線状降水帯、極端豪雨が頻発する状況でダムは緊急放流により下流域に 重大な被害をもたらす危険を持っています。2018年の西日本豪雨での肱川の野村ダムの緊急放流では下流で9名が死亡しました。
緊急放流により、下流域の住民の命と財産、地域社会を危険にさらします。
2020年10月に開かれた第2回球磨型治水協議会の出席者に対し、事前に川辺川ダム緊急放流に関する説明資料が配布され、令和2年7月豪雨の時の1.3倍以上の雨量があった場合には、異常洪水時防災操作すなわち緊急放流に移行するとの想定が記載されていました。その後、新聞報道でも明らかになったように、国土交通省は文書を廃棄していたことが明らかになりました。緊急放流は住民が一番知りたい情報です。
川辺川ダム、市房ダムの緊急放流について、情報を隠さず具体的な説明が不可決です。
⑤流水型ダムでも環境悪化
流水型ダム環境保全対策検討委員会(第3回、3月9日開催)で、国交省は「ダム下流の水辺や河原などの河川環境が変化する可能性がある」との環境レポート」案の修正を報告しています。
2020年11月19 日、蒲島知事は、「『民意は命と環境の両立』だ。容易ではないが、成し遂げなければならない。球磨川と住民が共生する姿こそが流域の魅力だからだ」とのべ、川辺川ダム中止から「穴あきダム」としての川辺川ダム復活への主要要因として「環境」をあげています。この際の『環境』発言は科学的な検証の裏付けもない発言で、島根県の穴あきダム・益田川ダムでの環境被害などを踏まえない無責任なものでした。国交省の「環境レポート」案の修正は、蒲島知事の無責任な発言を皮肉にも証明するものです。
日本共産党熊本県委員会は、「穴あきダムと環境」について、2020年9月30日、11月18日の知事への申し入れで、
(1)堆砂により下流部への土砂供給を断ち切る。たまった土砂が下流を汚す。
放流口による効果は放流口直近の堆砂に限定。ダムによる堆砂増は、ダムサイトより上流のダム湖の上流端付近。堆積した土砂が、中小降雨のたびに下流に流れ汚染する。
(2)下流の河川環境の悪化をもたらす。
年間を通じて洪水流量が平準化される。河川の流量は、平水、低水、渇水と一定ではなく、日変化、季節変動を繰り返し、河川環境は形成されている。「穴あきダム」は、年間を通じて洪水流量が平準化され河川環境をこわす。
(3)動植物の生存環境への悪影響
通常のダムに比べて水位変動の範囲が大きく、湖水面積がゼロからの急激 な水位上昇を起こし、動植物の生息環境を壊す。
—ことを指摘し検証を求めてきました。
川辺川ダム規模の流水型ダムが全国どこにもなく、「宝の球磨川」を守るために徹底した調査・検証を改めて求めます。
⑥大規模伐採、皆伐を改め、災害に強い林道・作業道へ。自伐型林業への転換を。
令和2年7月豪雨で被害を大きくした原因に、皆伐や幅広い林道・作業道などによる山地崩壊が指摘されています。皆伐を改め、災害に強い林道・作業道の路網整備が急務です。
自伐型林業によって、全国的には人口減少が進む中山間地の市町村に都市部からのUターン、Iターン移住する若い世帯が増えています。自伐型林業を担い手として位置づけ、森林・山村多面的機能発揮対策交付金の拡充など支援し林業の再生をはかるべきです。
⑦ダム事業の費用対効果について
令和2年7月豪雨洪水で球磨川下流八代市内(概ね遙拝堰から下流)については、萩原水位観測所でHWLに達することなく12、000㎥/s以上が流下しています。
このことは、八代市街部については、川辺川ダムの効用は不要であることを示しています。ダムの事業評価にあたっては、費用対効果(B/C)が1.0を上回ることが求められますが、効果の半分以上を占める八代市街部でダムが不要となるため、(B/C)が1.0を下回ることは明らかです。
公共事業の費用対効果という点で事業として成り立たない川辺川ダム建設は中止すべきです。
⑧県管理区間について
球磨川水系河川整備計画原案(県管理区間)は、球磨川支流の県管理河川による洪水について、「特に山田川等では、球磨川本川の水位上昇に伴う背水の影響による浸水が発生し、人吉市紺屋町の浸水深は 3~4m と推定されています」と記述されています。
人吉地区の洪水被害について、球磨川からではなく、支流である山田川、万江川、御溝川などの越水により多数の死者と被害が生じた事が指摘されています。県管理河川ごとの調査と検証をあらためて行い、甚大な被害をもたらした原因を明らかにし、抜本的な対策を具体化すべきです。
川辺川ダムを含む河川整備計画原案は撤回し、堤防強化、河道浚渫・掘削、宅地かさ上げ、高台移転、遊水地、輪中堤、「田んぼダム」、水害防護林(樹木帯)、安全な土地利用計画、治山(皆伐・幅の広い林道、作業道中止、林業振興)など、ダムなし河川整備計画を策定することを、重ねて国交省・熊本県に求めます。
以上
熊本県知事 蒲島郁夫様
2022年4月14日
日本共産党熊本県委員会
TSMC(台湾積体電路製造)の菊陽町進出について
TSMC(台湾積体電路製造)の菊陽町進出について、日本共産党熊本県委員会としての現時点での「見解」を明らかにします。
1,TSMC支援の4、000億円は、電機・自動車などのユーザー企業の自己責任で
一企業、しかも外国企業への4,000億円の支援は公費(税金)ではなく、電機・自動車などのユーザー企業の自己責任で捻出すべきです。電機・自動車大企業の内部留保はコロナ禍でも54兆円にもなっています。その一部(0.74%にすぎない)を半導体事業への投資に充てるよう求めるべきです。
日本の企業数の99.7%、従業員数で7割を占める中小企業への予算は僅か1,745億円です。社会保障予算は自然増分2,200億円が削減され、今年10月からは、75歳以上の高齢者の医療費負担は2倍になります。年金は2年連続の引き下げ。削減幅は0.4%で、2021年度の0.1%を上回る削減幅です。
新型コロナ禍とウクライナ危機で、ガソリン・灯油代、電気・ガス代、食料品などの物価上昇が国民の暮らしを圧迫しています。
新型コロナ対策、中小企業、社会保障予算は削減・抑制される一方で、国民の血税である公費を外国の一企業に4,000億円も支出するのは税金(公費)の使い方としては不公平であり改めるべきです。
2,TSMC及び半導体企業集積と地下水の枯渇と汚染のリスク(危険度)についての科学的検証と保全対策を
熊本地域100人のいのちの水・地下水のメカニズムの解明は、国・県・熊本県・熊本市の専門家、技術者、自然科学の専門家、郷土史、農業水利史を含めた歴史学の専門家などによる調査、研究を重ねて確立されたものです(*)。
(*)「熊本の地下水研究・対策史」(熊本地下水研究会・熊本開発研究センター)が詳しく記している。
100万人のいのちの水を提供する地下水を、10年先、50年先、100年先まで守るために、熊本県・関係市町は、TSMCなど半導体企業の集積と地下水の枯渇、汚染のリスクについて、あらためて科学的総合的検証を行い、地下水保全の万全の対策を講ずるべきです。
(1)台湾の水不足とTSMC
日本経済新聞(2021年4月27日)は、「台湾で水不足深刻 半導体業界直撃の恐れ」と題して「半導体産業が集積する台湾で、水不足が深刻さを増している。半導体は製造工程で大量の水を使うが、昨夏からの少雨で56年ぶりの干ばつが襲っている。蔡英文(ツァイ・インウェン)総統は27日、状況が最も深刻な台中市を視察し、『非常に深刻だ』との認識を示し、節水対策の徹底を呼びかけた。今後、半導体の生産に支障を来す恐れもあり、危機感が強まっている」と報じています。
東洋経済(2021・4・14)は、「半導体メーカーに水奪われた台湾農家の憂鬱」として、「半導体メーカーは工場やウエハーの清掃・洗浄に大量の水を使用する。ウエハーとはシリコンを薄くスライスしたもので、これが半導体の原型となる。世界では電子機器への需要が高まり、半導体不足がただでさえ深刻な問題となっている。そこに台湾の水不足という新たな不安要素が加わったことで、テクノロジー業界の台湾依存、中でも特定の1社に供給を依存している現状に懸念が深まるのは間違いない。その1社とは、台湾積体電路製造(TSMC)だ」と伝えています。
いずれの報道も、台湾での水不足とTSMCの苦境を報じています。半導体産業と「水」は不可分であり、TSMCの菊陽進出は、地下水が豊富な当地への「水」を当てにしたものであることは疑いないことだといえます。そこでいくつかの懸念があげられます
(2)熊本地域(*)の地下水は、水量、水質とも危険信号を示している
(*)熊本地域とは、熊本市・菊池市・宇土市・合志市・大津町・菊陽町・西原村・御船町・嘉島町・益城町・甲佐町。
熊本県と熊本地域市町による「熊本地域地下水総合保全管理計画」は、以下のように、地下水のかけがえのない重要性と現状について述べています。
「阿蘇外輪山西麓から熊本平野およびその周囲の台地に広がる熊本地域は、特有の地質構造により、ひとつの大きな地下水盆を共有している。わたしたちは生活用水のほぼ100%を地下水で賄っているほか、工業、農業などの産業用水として利用するなど、清冽で豊富な地下水の恵みによって発展してきた。
環境の変化や人口の増加、都市化の進展等により、国内外において水資源確保が課題となっているが、全国でも有数のこの地下水の存在は、わたしたちの暮らしの基盤であるだけでなく、熊本地域の潜在能力を高めるための戦略資源とされている。
しかし、その地下水が今、水量、水質とも危険信号を示している。地下水かん養域の減少による地下水位の低下や湧水量の減少が観測されるほか、硝酸性窒素濃度が環境基準を超える井戸が分布するなど、地下水汚染が顕在化しつつある。
地下水は、地下深く帯水層をゆっくり流れており、こうした問題は決して一市町村だけで解決できるものではなく、また、行政だけでなく、住民、事業者等総参加による取り組みが不可欠である」。
「宝の水」「「いのちの水」地下水を枯渇と汚染から守るために、地域住民、とりわけ政策決定を行う行政、事業を展開する企業が、地下水について正しい認識を持ち、50年、100年先への責任を果たすことが求められています。
(3)地下水の「汚染」「枯渇」対策を定めている熊本県地下水保全条例(以下条例)
①地下水は公共水(条例第2条「基本理念」)
条例第1条(目的)は、「地下水が県民の生活にとって欠くことのできない地域共有の貴重な資源であることに鑑み、地下水の汚染の防止、地下水の適正な採取、地下水の合理的な使用及び地下水の涵(かん)養に関し必要な措置を講ずることにより、県民が豊かで良質な地下水の恵みを将来にわたって享受できるよう地下水の保全を図り、もって県民の健康の保護及び生活環境の保全に資することを目的とする」とし、第2条(基本理念)は、「地下水の保全は、地下水の流動が蒸発、降水、地下への浸透並びに河川及び海への流出を繰り返すという水の循環の一部をなすものであり、かつ、地下水が県民生活及び地域経済の共通の基盤となっていることを踏まえ、地下水は公共水(公共性のある水であることをいう)であるとの認識に立ち、事業者、県及び県民が地下水の保全に係るそれぞれの責務を果たすとともに、連携し、及び協働して地下水の保全に取り組むことにより推進されなければならない」と定めています。
条例改正についての熊本県の説明「熊本県地下水保全条例の一部を改正する条例の概要」(2012年 3 月 環境立県推進課・環境保全課 )は、条例改正の背景(地下水の現状・課題) として、「特に熊本地域(人口約 100 万人)においては、生活用水のほぼ100%を地下水に依存し、現状ではこれに代わる水源はない」こと、地下水の水位は、熊本地域で長期的な低下傾向を示していること、全国各地で見られている硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素による汚染が、県内各地で散見される。県では関係市町村や関係機関と連携して削減対策を講じているが、明らかな改善傾向は見られていないこと、等の状況をあげ、熊本地域台地部の地下水位の変化を「市街地の進展や宅地の造成等により、水田、畑地等の『涵養域』が減少し、地下水涵養量が減少しているのがその主な要因と考えられる。涵養量と地下水採取量とのバランスがとれず、地下水収支の赤字状態が続けば、地下水位はさらに下がり続けるものと考えられ、地下水収支の改善が課題となっている」と指摘しています。
条例改正を行った意義として、「現行条例では、地下水の採取は届出制であり、実質的に自由に採取できる⇒ 地下水は『公共水』との認識に立って、管理強化策が必要」「地下水質の悪化を未然に防止する具体策と協働による推進策」をあげています。
②地下水の「水質」「水量」の保全のための総合的対策、「許可の取り消し」「監視」「公表」「罰則」等を定めている条例
条例では、第2章(条例6条~21条)で「地下水の水質の保全」、第3章(条例22条~35条で「地下水の水量の保全」、第4章(条例36条~44条)で、「常時監視」「公表」「土地の立ち入り」など、第5章で、「罰則」を定めています。第2章21条は、「開発行為に伴う有害物質の地下浸透の禁止」「施設の構造又は汚水等の処理の方法の改善命令」、第3章31条では、「勧告」「許可の取り消し」について定めています。
(4)直ちに実施すべきは、TSMC進出をはじめとする地域開発と地下水涵養・汚染リスクの検証と対策
地下水を大量に使用するTSMCの菊陽進出、それに伴う企業立地、開発に当たって、県条例に基づく厳格なチェックと対策、県民への情報の公開と説明が求められます。
1-涵養域の立地企業が地下水保全条例に基づきその責任と義務を厳格に履行するために、県・当該自治体・企業間で「地下水保全協定」の締結を制度化すること。
2-TSMCとそれに伴う工場・道路・宅地等の面積と地下水涵養のリスクについて具体的に検証し明らかにすること。
3-TSMC+蒲島県知事構想と地下水涵養・汚染リスクの検証
TSMCに加え、蒲島知事が構想する「大熊本空港構想」「シリコンア イランド構想」「空港アクセス鉄道」等を含めての推定総面積と地下水涵養・汚染のリスクの検証を。
4-地下水の現況の全面的調査
現在の地下水水位、湧水量、需要と供給についての全面的科学的調査を実施すること。
これらの調査結果を条例の規定に照らしチェックし、その内容を公表すること。
5-住民、地下水・環境の専門家を加えた協議機関を
「地下水管理計画」では、「住民」「事業者」「関係団体」「行政」が個別ばらばらに役割が示されていますが、地下水を量・質ともに守り未来に繋いでいくために、住民、地下水と環境の専門家も参加した協議機関を設置すること。
3,TSMC進出についての丁寧な説明を
蒲島郁夫知事は、2022年(令和4年)2月熊本県議会定例会における議案説明要旨で、「昨年は熊本の未来を明るく照らす希望の光も見えてきました。その一つが、台湾の世界最大手半導体企業TSMCとソニーによる新工場建設です。これは、県内における関連産業の集積はもとより、シリコンアイランド九州の復活につながり、さらには産業の脳と言われる半導体による日本の『経済の安全保障』の一翼を熊本が担う、大きなチャンスです。今月15日には、新工場建設にデンソーも参加されることが発表され、自動車関連産業への半導体の供給にも大きく貢献されるものと期待しています」と述べています。
TSMC進出が「熊本の未来を明るく照らす希望の光」となるのか。吟味が必要です。
(1)将来性
菊陽工場で生産されるのは「22~28nmプロセス」の「ロジック半導体」と呼ばれるとものだと報じられています。
TSMCは2月15日、菊陽工場の設備投資額を2割拡大し、新たに12nmと16nm半導体も生産することを明らかにしました。デンソーなどが係わることなどを考えると、将来的な対応策とも考えられ解明が必要ですが、いずれにしても菊陽工場が28㎚メインの工場であることに変わりはなさそうです。
TSMCが28nmの量産を開始したのは2011年であり、100年前の技術で最先端といえるものではありません。現在、TSMCが生産する半導体の5割は5nm・6nmが占めています。TSMCは、米国のアリゾナに5nmを製造する工場を2024年に生産開始で進めています。
コロナ禍でのサプライチェーンの混乱、ニューノーマル(新しい生活様式)への転換、米中対立による中国系企業からの調達難などで自動車積載用,PC、ルーターなどネットワーク機器に用いるものが不足し、「ロジック半導体」の需要が増しています。ところがTSMCはすでに5nmの大量生産・製造にシフトしており、2022年度には3nmの量産計画という事業があり、28nmの「ロジック半導体」の大量生産は不可能であり、「渡りに船」で、4,000億円の公的補助もある菊陽工場に担わせるというかたちです。
問題は、コロナ禍などの特殊な条件での28nm半導体需要がどこまで続くのか。「10年先はどうなるか」「30年後も需要は続く」「28nm(22nm)の半導体不足は解消された」など諸説があります。
半導体を巡る複雑な状況のなかで、TSMC進出が「熊本の未来を明るく照らす希望の光」と断言する蒲島知事は、その根拠を科学的具体的に県民に示す責任があります。
(2)菊陽工場では「前工程」、「後工程」は、台湾・中国などで
半導体の製造は、前工程と後工程に分けられます。前工程では、「前工程では、シリコンウエハー上にLSIチップを構築します。後工程では、ウェハー上に作成したLSIチップを切り出してパッケージ化し、様々な検査を経て商品化します。
菊陽工場での工程は前工程です。前工程、後工程、商品化の全工程を国内でやってこそ日本の半導体産業、日本経済の立て直しの力になるものであり、希望的観測だけではなく限界も直視すべきではないでしょうか。
(3)技術者の確保
電機関係企業での大規模なリストラが進められ国内の半導体技術者は減少、枯渇化してきています。半導体プロセス技術者、製造装置の調整・管理を行う技術者等の人材確保の課題があります。
これらの懸念、課題についての熊本県としての丁寧な説明が求められています。
以上
2022年4月14日
日本共産党熊本県委員会
大型開発依存、新自由主義経済を転換し、地域の力を生かす産業振興、やさしく強い県経済へ
1,熊本県における大型開発政策の歴史的検証
大企業「よびこみ」の大型開発・産業基盤(インフラ)整備政策は全国各地で失敗し、それへの多額の補助金投入で地方財政を圧迫し、暮らし・福祉、中小企業、農林水産業は犠牲にされ、地域経済の疲弊をもたらしてきました。
熊本県も例外ではなく、国と自民党熊本県政が推進してきた大型開発政策(「新産業都市」「テクノポリス」「リゾート」)は無残な失敗を重ねてきました。
①新産業都市
新産業都市計画は、荒尾市・長洲町、熊本市、八代市を重点地域とし、1960年の工業出荷額525億円を1970年には2,526億円、1975年には3,950億円に引き上げるというものでした。経費総額3,200億円で、県と市町村がそれぞれ5分の1負担とされました。八代では、72億円の造成費で171㏊、長洲町名石浜では67億円で99.8㏊が造成されました。
計画の目玉の一つが有明製鉄の長洲町進出計画でした。1965年7月までにロータリー・キルン4基、電気鉄炉2基を建設し、年間、海綿鉄62万4千トン、銑鉄28万3千トンを生産、2期計画では製鋼、圧延までやり粗鋼年産百万トンの鉄鋼一環工場をつくるというものでした。有明製鉄誘致のために費やした費用は明らかになっただけで、用地造成、漁業補償等、5億188万円でした。長洲町に3千人の来賓を招いて盛大な起工式が行われました。ところが1985年、計画は中止に陥りました。
新産業都市計画は膨大なお金をつぎ込み、有明海、八代海の自然を壊し大失敗に終わりました。長洲町、八代市、熊本市の熊本港の現況はそれを如実に証明しています。
②テクノポリス
パンフレット「熊本テクノポリス 10年後の姿」は、1990年の人口は、1980年より12万1千人増えて85万9千人に、経済は、純生産及び所得が年平均10%台の伸びで推移する。テクノポリス建設による計画圏域の発展と波及効果によって、県産業は総合的に発展する―等と述べています。
ところがテクノポリスは散々な結果となりました。
テクノポリスのシンボル・電子応用機械技術研究所(電応研)の受託研究は、1983年~87年に32件の計画でしたが実際は9件。民間からは立石電機、九電の各1件のみで、地場の中小企業からはゼロでした。そのため1983年から87年までの電応研の収入の90%を県が負担しています。
技術指導・相談では、1985年~87年で僅か29件。一方、県工業技術センターには1986年度だけで2.500件が寄せられています。1件平均3,000万円という高すぎる受託料は地元企業の実情、ニーズとかけ離れたものでした。人材育成事業は、研修生は3年間で僅か14人。公開講座の一般人の受講は104人でした。
テクノポリスの「目玉」としての熊本大学の全学部または一部移転構想は熊本大学が拒否しました。
テクノポリスセンター15億5,600万円、電応研2億4,400万円、テクノリサーチパーク23億8,500万円、テクノポリス財団への出資金10億円。合計約60億円。熊本市の負担金5億円、菊池市1億8,200万円、益城町9,500万円など2市10町2村で8億7,800万円にのぼりました。
莫大な県費、市町村負担金をつぎ込み、県民にバラ色の夢を振りまいたテクノポリスの失敗は、当時華やかに喧伝された「テクノポリス」現地の閑散とした実態が証明しています。
③リゾート開発
1987年に成立した総合保養地整備法に基づく「リゾート」開発計画もひどい結果に終わりました。
計画の概要は、以下のとおりです。
・本渡市・五和町(現天草市)一帯、約150㏊に海洋リゾート計画(18ホールのゴルフ場、50~100室のホテル、人工ビーチ、ヨットハーバー、マリーナなど)。牛深市(現天草市)の大島・法ヶ島、八代市の大築島などの3つの無人島に海洋レジャー施設、リゾートホテルを計画。大矢野町(現上天草市)にマリーナ構想。
・阿蘇町赤水・永草に総合観光レクレーション基地(226㏊)、リゾートホテル(204室)、国際会議場、ゴルフ場(36ホール)、テニスコート(24面)など計画。大和ハウスが、高森に、ゴルフ場、ホテル、テニスコートなど。産交が、阿蘇町・大津町に、国内最大クラスのサーキット場等というものでした。
「リゾート」計画の失敗は、現在の天草・阿蘇を一見すれば明らかです。
「新産業都市」「テクノポリス」「リゾート」いずれも、時の自民党政権が鳴り物入りで推進し、それに自民党熊本県政が追従し、多額の県財政を投入し失敗を重ねてきたものでした。
2,新自由主義で、「もろく、弱い経済」になってしまった日本経済
1980年代にはじまった新自由主義は、“強い経済”をつくるとうたいながら実態は日本経済を“もろく弱い経済”にしてしまっています。
日本は、「賃金が上がらない国」になっています。1人あたりの実質賃金は、ピークだった1997年から2020年までに64万円も減り、OECD加盟で比較可能な22カ国のうち、この30年間の日本の賃金の伸びは世界最低です。
「成長できない国」になっています。2013年から20年で、名目GDP(国内総生産)の伸びは、アメリカは25%、ユーロ圏は14%に対して、日本はわずか6%です。
「競争力の弱い国」になっています。各国の競争力ランキングで、日本は90年代初めの世界1位から、直近では31位にまで落ち込んでいます(スイスのシンクタンク・IMDが発表した各国の競争力ランキング)。
自民党政府と財界の経済戦略の破綻は明白です。
半導体産業を巡る状況も同様です。1980年代の日本の半導体のシェアは世界シェアの5割を超えていました。しかしその後衰退し現在は1割に落ち込み、日本は半導体後進国になってしまっています。
政府・財界・熊本県が進めてきた目玉政策―「新産業都市」「テクノポリス」「リゾート」の結末は、大型開発依存、新自由主義型経済では、熊本の経済の立て直し、発展はのぞめないことを証明しています。
3、一人当たり県民所得、企業所得、賃金など、低水準の県経済
「熊本県の地域経済分析」(経済産業省)は、以下のような県経済の抱える課題を明らかにしています。
1-人口当たりの県民所得は、2001年以降240万円前後で推移しており、全国平均、九州ブロック全体に比して低水準である。
2-住民の生活実感を反映していると考えられる1人あたり雇用者報酬においても、全国平均、九州ブロック全体に比して低水準となっており、また減少傾向も示している。
3-企業の再投資等の事業拡大余力に影響していると考えられる1人あたりの民間法人企業所得においても、全国平均、九州ブロック全体に比して低水準となっているが、上昇トレンドを示している。
4-平均賃金は374万円で、全国439万円と比較して65万円程度低い水準。
産業別の賃金水準格差、就業者構成比に大きな違いはないものの、就業者シェアの大きい卸売・小売業などサービス産業での賃金格差が目立ち、熊本県の平均賃金を押し下げる大きな要因となっている。
5-製造業の平均賃金水準(1人あたり給与総額)は392万円で、全国436万円よりも低い水準。特に、食料品製造業は全国より就業者構成比が大きい上、賃金水準が低く、 全体の賃金水準格差に大きな影響を与えている。
一方、電子部品・デバイス・電子回路製造業では、全国より就業者構成比が大きく、かつ賃金水準が高くなっており、製造業全体の賃金水準を押し上げている産業もある。
6-今後人口減少が進み、2040年で146.7万人(2010年比19%減)となり、老年人口比率は25%から2040年36%まで上昇すると見込まれる。今後の高齢化・生産年齢人口減少を見据えた経済政策が必要。
7-県内全体の所得水準を高めるには、サービス産業を含め、産業全体の生産性を高めていくことが必要。
以上の分析結果は、熊本県の経済、産業が、県民所得、賃金、企業の再投資など重要指標で九州レベルでも低位であることを明らかにしています。
戦後繰り返されてきた大型開発、企業誘致優先型の経済政策・大企業にやさしい経済政策から、県民の暮らし、中小企業、農林水産業、環境・歴史・文化を活かした観光など、人にやさしい熊本型「やさしく強い経済」への転換を求めています。
4,やさしく強い県経済への提案
熊本県として以下の課題を政策化し、計画的に実行する。同時に国に対して、関係予算の拡充、制度の新設・改善を求めます。
(1)新型コロナウイルス感染症の拡大を防止し、県民の生命と暮らしを守る
①新たな感染爆発を引き起こさないためには、感染拡大地域での大規模・集中的検査が実施できる体制を確立することが必要。誰もが必要な時に検査を受けられる体制を確保する。高齢者施設と医療機関などへの頻回の検査を実施し、高齢者の命を守る。地域医療への支援を強化し、感染者や感染の疑いがある人が十分な検査と医療を受けられるようにする。救急医療など「コロナ以外」の医療体制のひっ迫が起こらないようにする。
②3回目のワクチン接種の啓発や自治体への支援強化をはかる。
③医療機関への減収補てん、発熱外来への補助金復活などを国に求める。
医療体制の強化と医療従事者の処遇改善に努める。
(2)コロナ危機から雇用と営業、暮らしを守る
①住民税非課税世帯に限定せず、困窮者に対する給付金を拡大するよう政府に求める。
②事業復活支援金を持続化給付金並みに拡充すること、家賃支援給付金を再支給するよう国に求める。
③雇用調整助成金の特例・休業支援金の減額を中止し、期間延長を国に求める。
④生活福祉資金の特例貸付、生活保護制度など利用しやすい窓口対応に改善する。
⑤学生やシングルマザー、生活困窮者への食糧支援会や生活相談会などを県として主催、開催する。
⑥文化・芸術への支援を拡充する。
(3)消費者物価上昇への対策―くらしを守る対策を
昨年来の原油価格高騰にロシアのウクライナ侵略がくわわり、物価を一段と押しあげ、食料、エネルギーなどの価格が急上昇しています。暮らしと中小企業の営業を守る対策が急務です。
賃金を引き上げるために政治が責任を果たすことが求められています。大企業の内部留保は470兆円を超え過去最高です。安倍政権下の法人税減税で増え続け、2012年から20年にかけて130兆円も増えています。適正な税を課して応分の負担を求めることは待ったなしです。
日本共産党は内部留保課税で得た新たな税収を中小企業、中堅企業の賃上げ支援に使い、最低賃金を全国一律で時給1,500円に引き上げることを提案しています。消費税を5%に減税することとともに、年金給付削減や児童扶養手当の引き下げを中止することを国に求めるべきです。
日銀が9年間続けている大規模な金融緩和政策は、株価をつり上げるとともに、ドルに対する円の相場を引き下げました。物価の安定は日銀法で定められた使命です。輸入物価を押し上げる円安推進政策を改めるよう国に求めるべきです。
(4)産業
①すべての中小企業・地場産業・商店街を視野に入れた振興・支援策を抜本的に強化する。住宅リフォーム助成を全県で実施する。公契約条例を制定し、生活できる人件費を保障する。
②非正規から正規雇用への転換を促進し、安定した雇用を守り、増やす。「官製ワーキングプア」をなくす。ブラック企業規制条例を制定し、ブラック企業・ブラックバイトを厳しく規制する。
③農林水産業を地域経済の柱に位置づけ、食の安全、環境、関連中小企業などを地域社会の基盤として大切にする。
米価下落の不安をなくし、米生産と水田農業の安定をはかる。価格保障・所得補償を再建・充実する。農協・漁協解体推進の「改革」を中止する。家族農業・小規模農業の役割を重視し支援策を拡充する。
沿岸・小型漁業、地域漁業の維持・発展を漁業政策の柱に据えて対策を充実強化する。
有明海・八代海を再生し漁業資源の回復をはかる。
持続可能な森林づくり、地域の活性化に役割を果たしている自伐型林業を支援する。林業就業者の計画的な育成と定着化の促進、就労条件の改善にとりくむ。
農林業に基盤をおいた地域循環型の農村振興をめざす。
④県南観光の目玉である清流川辺川・球磨川を守る。川辺川ダムは中止する。
JR肥薩線の全線再建を国とJRの責任で実現する。
⑤地元の資源を生かした特産品や魅力ある事業を支援する。
(5)社会保障
①すべての年金の土台である基礎年金を、今後20年にわたって減らし続けるマクロ経済スライドなど年金削減の仕組みを撤廃し、「減らない年金、頼れる年金」の実現を国に求める。合わせて、高額所得者優遇の保険料を見直し、1兆円規模で年金財政の収入を増やすこと、巨額の年金積立金を年金給付に活用すること、賃上げと正社員化をすすめて保険料収入と加入者を増やすことを国に求める。
②介護保険料・利用料の減免、保険給付の拡充、特養ホームなど介護施設の増設をはかる。
後期高齢者医療費の窓口負担2倍化の中止を国に求める。
③障害者福祉・医療の「応益負担」を撤廃し、無料にする。
④「人頭税」のような「均等割」「平等割」をなくして国民健康保険料(税)を抜本的に引き下げる。これらの全面的実現のために、公費1兆円の投入を国に求める。
⑤生活保護申請の門前払いや扶養照会をやめる。自動車保有禁止、わずかな預貯金など「資産」を理由に、保護の適用を拒む運用を改める。
生活保護費削減・生活扶助費の15%カットを緊急に復元し、支給水準を生存権保障にふさわしく引き上げることを国に求める。
生活保護を「生活保障制度」に改め、必要な人がすべて利用できる制度に改革することを国に求める。
⑥医師数の抑制、病床削減、病院の統廃合の中止を国に求める。
⑦「住まいは人権」の立場で、家賃補助や公的住宅をはじめ住居へのセーフ ティネットをつくり、困窮者が住居を失わないための施策を拡充する。
⑧フードバンク、子ども食堂など民間の食料支援の取り組みに、助成や場所の提供など公的な支援を行う。
(6)労働
①8時間働けばふつうに暮らせる労働環境実現をめざす。
②中小企業への支援を行い、最低賃金を時給1,500円に引き上げ、全国一律最賃制を確立するよう国に求める。
③男女の賃金格差解消をはかる。
④労働者派遣法を抜本改正し、派遣は一時的・臨時的なものに限定し、常用雇用の代替を防止する、正社員との均等待遇など、派遣労働者の権利を守る。派遣労働者保護法制定を国に求める。
パート・有期雇用労働者均等待遇法の制定など、正社員との均等待遇をはかるとともに、解雇・雇い止めの規制を国に求める。
(7)教育―お金の心配なく、学び、子育てできる社会に
①高い学費の値下げ、大学・短大・専門学校の学費をすみやかに半額に引き下げ、高等教育の無償化を進めるよう国に求める。
②入学金制度をなくす。
③給付制奨学金を拡充する。すべての奨学金を無利子にし、奨学金返済が困難になった場合の減免制度を拡充する。
④私立高校の負担の軽減をすすめ、高校教育の無償化を国に求める。
⑤「義務教育は無償」を定めた憲法26条にそくして、学校給食無償化を実現する。
⑥認可保育所を増設し、保育水準を確保しながら待機児童の解消をはかる。
⑦児童手当の18歳までの支給、児童扶養手当、就学援助の額と対象の拡大など、子育て世帯に向けた継続的・恒常的な現金給付の拡充をすすめる。
(8)気候危機打開と一体に
2030年までの温室効果ガス削減目標は、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、「やれるところまでやればいい」ではなく、「やりきらなければならない」命題であることを熊本県としても明確に位置付け、その実現に向けて責任を持った取り組みの推進をはかるべきです。
①公共施設、公共事業、業務でどれだけCO2を削減できるかなど、熊本県自らの 脱炭素化に向けた「目標と計画」と、区域内の脱炭素化の「目標と計画」をそれぞれ策定し、その実現のために県内企業との独自の協定、省エネ投資への独自の支援、断熱・省エネルギー住宅へのリフォーム、太陽光発電用パネルの設置などへの助成をおこなう。
県内各市町村に、太陽光など再生可能エネルギーによる電力の利用、税金の優遇、補助金の申請、脱炭素に有効な製品・サービスの選択など、住民や地元企業に専門的なアドバイスをおこなえる支援窓口を設置する。
市町村や住民が共同で開発・運営する再生エネルギー事業推進への助成をお こなう。
メガソーラー設置規制区域を設定する。
ハウスなどの農業施設での化石燃料ゼロ、木材・バイオマス素材への転換など、生産プロセスの脱炭素化への取り組みの支援を強化する。
自動車の排ガス減少に向け、公共交通機関の整備拡充と自転車利用拡大のための環境整備を進める。
苓北町の石炭火力発電停止、再生可能エネルギーへの転換、雇用の確保、地域経済の振興を国・九州電力に求める。
②小規模な再生可能エネルギー発電を有効かつ大規模に活用する体制をつくる。再生可能エネルギーで発電した電力を優先的に利用する、優先利用原則を確立する。
③再生可能エネルギーで発電した電力を最大限活用できる送電網などのインフラ整備を進める。
④住宅や小規模工場の屋根への太陽光パネルの設置、自治体主導や住民の共同による事業、屋根貸し太陽光発電事業などの推進をはかる。そのために、再生可能エネルギー電力の固定価格買取制度を地域の多様な取り組みを促進するように改善を求める。
(9)ジェンダー平等
男女平等のレベルを示す「ジェンダーギャップ指数」で、日本は149か国中110位です。
「地域からジェンダー平等研究会」が2022年3月8日の「国際女性デー」に合わせて明らかにした「都道府県版ジェンダーギャップ指数」によると熊本県は、「政治分野」では、県議の男女格差は下から2番目(45位)、市町村37位、「教育分野」では、中学・高校の校長格差41位、「経済分野」では、企業役員、法人・団体管理職格差は46位、「家事・育児」の男女格は最下位となっています。
ジェンダー平等が世界最下位レベルの日本のなかでさらに最下位レベルの熊本県です。ジェンダー平等社会へあらゆる分野・段階で取り組み強化が急務です。
①男女賃金格差の是正をはじめ、働く場でのジェンダー平等を確立する。
男女の賃金格差を企業ごとに公表するよう求める。女性活躍推進法改正を国に求める。男女雇用機会均等法を抜本改正を国に求め、雇用の平等をめざす。
②「間接差別の禁止」をなくす。法律に明記するよう国に求める。
③育児や介護など家族的責任を持つ労働者は、男女を問わず、時間外労働・深夜労働・単身赴任や長時間通勤を伴う転勤を原則禁止し、看護休暇や育児介護休業制の推進をはかる。
④選択的夫婦別姓――同姓にするか、別姓にするか、自分たちで決める――を実現する民法改正を国に求める。
⑤政策・意思決定の場への女性登用の促進をはかる。
国と自治体の幹部職員への女性の登用、審議会等の委員も男女同数をめざす。民間に対しても、企業はもとより、あらゆる分野・団体での意思決定の場に女性の参加を拡大させる努力を求める。
⑥性暴力、DV(ドメスティックバイオレンス)―女性に対する暴力を許さないための施策を進める。法改正を国に求める。「性暴力被害者支援法案」の成立を求める。
⑦生活困窮、DV、社会的孤立、性的搾取など、さまざまな困難を抱える女性たちの支援策を進める。法制定を国に求める。
⑧セクハラ、パワハラ、マタニティーハラスメント被害を防止し、なくすための策の推進。ハラスメントの禁止を明確にした法整備を国に求める。
⑨LGBT/SOGIに関する差別のない社会をめざす。
⑩同性カップルの権利保障をすすめるパートナーシップ条例・制度を推進する。
v「LGBT差別解消法案」の成立を求める。
⑪在日外国人の人権と労働者としての権利を守る。体制と法整備を国に求め る。
以上
熊本県知事 蒲島郁夫様
2022年1月19日
日本共産党熊本県委員会
県委員長 松岡 勝
新型コロナウイルス急拡大から県民の命を守るための緊急要望
新型コロナウイルスのオミクロン株急拡大が全国に広がっています。本県でも一日当たりの感染確認者数が過去最多を更新し、医療機関や高齢者施設では次々クラスターが発生しています。爆発的な感染拡大が止まらない状況にあり、命を守ることを最優先とした対策をとることが求められています。
県内の医療現場では緊迫した対応が迫られ、命を守るとりでとしての保健所や健康観察業務の委託を受けている療養支援センターでも対応する体制がひっ迫しています。
また、感染に対する不安から飲食店等では客が減少し、経営へのさらなる打撃が襲いかかるなど、県民の健康と地域経済に深刻な影響が広がり続けています。
オミクロン株の急拡大に対するこの間の政府の対応は、何もかもが後手に回っていると指摘せざるを得ません。第一に、感染の流入を最小限に抑えたといいますが、在日米軍基地では海外から米軍関係者が入国する際の検疫を免除するなど、水際対策に大穴が開いていました。そもそも検疫自体が米軍任せで日本側が関与できないなど、主権侵害の実態もあらわになりました。
また政府は、昨年のコロナ感染が落ち着いていた時期にやるべき対策を怠ってきました。新しい変異株の感染急拡大を受け、G7の他の国々はすでに昨年の8月末から9月末にかけて追加接種を開始していたにもかかわらず、日本政府は3回目のワクチン接種の間隔を「8か月」に固執。追加接種が始まったのは昨年12月と大きく遅れ、3回目接種の割合は現在0.9%にとどまっており、OECD38カ国中断トツの最下位となっています。
感染拡大地域で予約なしでの無料検査拡充をうたっていますが、受検希望者が殺到して検査が受けられない人も続出しています。また自治体・地域まかせのため、検査が受けられる地域に偏りがあります。医療・保健所体制の強化や病床確保も自治体まかせ、医療関連補助金など支援策は不十分なままです。
感染スピードの速いオミクロン株がエッセンシャルワーカーに広がり、社会機能が維持できなくなることへの具体的な対策も示せていません。
政府の後手後手の対応に対し、熊本県からも強く要望を上げていくことが必要ですが、同時に熊本県としても、今後ますます感染拡大が進行する最悪の事態を想定したうえでの対策に最大限の力を傾注することが求められます。
このような観点から、今回の緊急申し入れをおこなうものです。
1、重症化リスクの高い高齢者などを中心に、3回目のワクチン接種を、最大限、迅速に行なえるよう手立てを尽くすこと。
オミクロン株の感染急拡大を受け、政府は3回目接種の間隔を短縮することを表明しました。ただ2回目の接種から6カ月程度で中和抗体の値が下がると指摘されており、3回目の接種は最大限迅速に行われなければなりません。後藤厚生労働大臣は、「余力がある自治体にはさらに前倒しを要請する」、「各市町村には、接種券の送付の加速化に加え、間に合わない場合には接種券なしでおこなう方法も検討してほしい」、「都道府県には、大規模接種会場の接種などで市町村を支援してほしい」と表明するなど、もっぱら自治体任せの姿勢をあらわにしています。
国に対し、迅速なワクチンの確保や自治体への配分計画の明示、財政的な支援に責任を持って対応することを強く求めるべきです。同時に、接種間隔の突然の前倒しを受けての自治体の困惑も予想されます。市町村においては接種券の発送、スケジュールの調整、会場の確保、市民からの問い合わせへの対応など多くの事務作業の負担が押し寄せてきます。3回目のワクチン接種が最大限迅速に行われるよう、県としても最大限・最善の手立てを尽くされることを求めます。
2、PCR検査については、高齢者施設や医療機関など、リスクが高い方々に対する積極的な定期検査を実施する方針を打ち出すこと。無料で検査が受けられる医療機関、薬局等をすべての市町村に設置すること。
すでに大半の都道府県が無料検査を実施していますが、「いつでも、どこでも、誰でも、何度でも」検査が受けられる体制を整備することが必要です。少なくともすべての市町村に、無料で検査が受けられるスポットを設置すること。
また、とりわけリスクが高い方々への積極的な定期検査が必要です。高齢者施設等従事者への定期PCR検査を、対象となる全施設、全従事者に実施すること。対象を医療機関、学校や保育所、幼稚園、学童保育などにも拡大すること。駅や空港、高速道路ICにおいて無料のPCR検査キットを配布すること。
また、無料検査の実施期間を1月31日までとしているが、期限を設定せず当面継続すること。
現在の無料検査は国が8割財政負担をし、2割は臨時交付金からの拠出ができること、とされています。安心してすべての自治体が検査を実施できる体制を確立させていくうえでも、全額国庫負担で実施するよう国に求めるべきです。
3、有症者を自宅に決して置き去りにせず、重症化を防ぐ医療を提供するために、地域の医療機関の連携と体制強化をはかること。保健所の恒常的な職員増など体制強化に取り組むこと。
感染者の急増とともに、自宅療養者数も増加しています。(1月15日336人、16日457人、17日841人。また宿泊療養調整中が17日206人。療養先調整中が同日 244人)。感染者は入院もしくは宿泊施設での療養を基本とする方針を堅持し、そのためにも病床と医療従事者の確保が進むよう、県としても支援の強化をはかるよう求めます。
また自宅療養患者の健康観察や電話・訪問診療をおこなう体制の緊急の強化が必要です。保健所については、1994年の保健所法の改悪で統廃合や人員削減が進められてきましたが、今後も将来にわたって感染症対策等、県民の健康を守る業務が継続的に重視されるべきことを考えるならば、むしろ恒常的に体制強化を進めていくことが求められます。
また地域医師会や開業医等との連携体制と情報共有をはかり、感染者受け入れと後方支援などの機能分担についての連携を緊密にはかることを求めます。
4、発熱外来の体制支援への補助金の復活、診療報酬の引き上げなど、医療機関への十分な支援を国に求めるとともに、保育・介護従事者などの処遇改善、定数の見直しなど体制の強化がはかられるよう国に求めること。
発熱外来の医師や看護師、職員は通常の業務もおこなっています。発熱外来の仕事が休日や平日午後まで続くと、通常業務に支障が出てきます。家族が感染するなどして濃厚接触者になると自宅待機を余儀なくされ、人手不足に拍車がかかります。またエッセンシャルワーカーの不足で社会機能がまひする事態が危惧されています。政府に対し、濃厚接触者の待機期間短縮の検討のみならず、人員の確保・体制強化が進むよう本腰を入れた支援強化を進めるよう求めるべきです。
5、新型コロナ感染症の、感染症法上の位置づけ見直しなど拙速な議論に与せず、専門的・科学的知見に基づく万全の対策に力を傾注すること
いま十分な根拠もなしに新型コロナウイルスについて、感染症法の位置づけを現在の「2類相当」から、季節性インフルエンザ相当で危険度が最低の「5類」に引き下げる検討をすべきだとの議論があります。しかしこれは極めて危険で拙速な議論です。迅速で安全なワクチン接種、頻回にPCR検査を受けられるようにしていくことが、感染対策と日常生活回復の両立にとって決定的であり、常に「科学的知見」と「現場に学ぶ」という立場で対応にあたられていくことを求めます。
6、長期コロナ禍に苦しむ事業者に対しては、業種を問わず、影響を受けているすべての事業者への支援強化をはかること。イベントの開催制限や「くまもと再発見の旅」停止等により、影響の出る事業者などに対し、補償や支援を早急に具体化すること。
予算化されている事業復活支援金について、要件の緩和と速やかな給付を国に強く求めること、またこれまで実施してきた融資について、返済猶予や追加融資など、資金繰り対策の強化を進めること。
7、生活困窮者への給付金支給を国に求めつつ、すべての生活困窮者に支援の手が届くよう県としても独自の手立てを尽くすこと。
各地で実施されている食料支援会などには、学生、シングルマザー、生活困窮者など幅広い方々が列を作る状況が続いています。緊急小口資金や総合支援金の貸付、生活困窮者自立支援金などの特例措置が実施されてきましたが、さらに今後も影響が長期化することが予想されることから、生活が継続的に守られていくよう公助としての支援策を強化していくこと。
8、生活に困窮している学生が修学を継続できるよう、支援を強めること。県立大学の授業料を引き下げること。
政府は12月、大学等での修学の継続が困難になっている学生等が修学をあきらめることがないよう、10万円の緊急給付金を打ち出しました。必要としているすべての学生に周知徹底が図られ、迅速に支援が手元に届くよう、県も各大学と連携して対応することを求めます。また新年度においても予算が確保され、繰り返し実施されるよう国に求めるべきです。
9、今回の第6波の感染拡大の教訓に基づき、米軍任せの検疫体制の見直しなど日米地位協定の抜本的改正を国に求めること。
以上