熊本県議会議長 前川収様
2014年9月11日
県議会議員(日本共産党) 松岡徹
県議会改革のための申し入れ
県議会改革のための尽力に敬意を表します。
県議会の活性化・改革については、6月19日、民主県民クラブ・公明党・無所属改革クラブ・新社会党・日本共産党・無所属議員(2名)で、8項目の申し入れを行っているところです。
8項目についての検討・具体化をあらためて要請するとともに、以下の2点について、検討・改善を要請します。
1、県議会議員の海外視察については、「凍結」を継続すること
熊本県においては、子ども医療費無料化、少人数学級実施学年が、「全国最低」という実態にみられるように、県財政の事情により、県民のための施策を削減、抑制している現状にあります。財政運用では、こうした状況の改善に優先的に対応することが求められています。
県議が、外国についての知識・見聞を広め、深めることについては、公費の新たな支出によるのではなく、自らの責任・努力によってはかるべきです。
2、請願者が、請願の趣旨を説明する際、請願者の説明席を設けること、説明時間を適切な範囲に延長すること。
県議会に請願をした方々から、「議員(委員)の前に立って、後ろに執行部が大勢いて、まるで裁判所の被告席のようだ」「せめてもう少し、説明の時間が欲しい」との声が寄せられています。
国民の請願権は、憲法第16条に基づくものであり、請願権の行使者である請願者に対して、県議会として、尊重・配慮をはかるべきです。
憲法第16条 【請願権】
何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、 平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。
以上
追
県議の海外視察については、過去に、本会議で繰り返し発言してきましたが、資料として、2005年(平成17年)12月議会での発言を添付します。
生産コストに見合う米価のための緊急対策を求める意見書
今年の早場米の生産者米価は、昨年より下落しています。農林水産省の試算では、米1表(60キログラム)当たりの平均生産費は、約16000円(H23年度生産費)ですが、今年の8月下旬のJAの買い取り価格は、9000円台から8000円台であり、この2年間で、5000円~6000円の大幅下落です。
こうした事態を放置すれば、担い手、後継者は米づくりを見放すことになります。農業者の一層の高齢化、農業人口の減少、過疎化の進行、畑に続く水田の耕作放棄地の拡大、農地、用排水路の荒廃が一層進みます。
米価下落の要因は、政府が過剰米が増えて、米価が下落することを承知で、対策をとらなかったことにあります。政府が5年後に需給調整から撤退する方針を示したことも、米価下落に追い打ちをかけています。
米価下落は、政府がその気になって対策を講じればとめることは可能です。
政府が抱える備蓄米の中の古い米を、飼料用などに売却し、新たに買い入れることです。これまでも政府がやってきたことです。
今こそ、政府として、緊急対策を実施すべきです。
地方自治法 に基づき以下のことを求めます。
記
1、コメの価格と流通の実態調査を実施すること
2、備蓄米を資料米や食糧不足の諸国への支援米として活かすこと
3、価格保障、所得補償で、生産コストに見合う米価制度を確立すること
4、ミニマムアクセス米の輸入の制限、廃止を
5、生産調整の5年後の見直し(廃止)を撤回すること
防衛大臣 小野寺五典様
2014年8月25日
日本共産党熊本県委員会 委員長 日高伸哉
県議会議員 松岡徹
日本共産党宇城委員会 山本伸裕
日本共産党熊本市議団 団長 益田牧子
日本共産党熊本県地方議員団
大矢野原演習場での日米共同演習、オスプレイの参加中止等についての申し入れ
1、オスプレイの飛来・訓練、日米共同訓練中止を
①沖縄県の米軍普天間飛行場のオスプレイ(垂直離着陸輸送機MV22)の訓練分散の対象の一つとして、熊本県内の大矢野原演習場(山都町)があげられていると伝えられています(8月2日「産経」)。
さらに、地元紙「熊日」(8月16日付)は、12月、陸上自衛隊西部方面隊と沖縄駐留米海兵隊が、大矢野原演習場で、日米共同実動訓練を計画していること。それへのオスプレイ参加が検討されていると報じています。
また、防衛省が2014年度に購入する最新式の地対艦誘導弾16台を西部方面隊に集中配備することも明らかになっています。
オスプレイの佐賀空港配備発表に続く、こうした動きは、県民の安心安全にとって重大この上ないことであり、多くの県民から、「これから、日本は、熊本はどうなっていくのか」「集団的自衛権行使がなされるなかでの熊本での軍事力の強化、訓練基地化は、攻撃した相手側から、熊本が報復攻撃の対象になるのでは!心配だ」等々の声が寄せられています。
②オスプレイの分散訓練は、大義も道理もなく、県民の安全を脅かすもの
*貴職は、7月7日の記者会見で、「沖縄の負担軽減のために、本土での訓練移転を検討していきたい」と述べています。しかし、これは沖縄の実態を偽るものです。
政府は沖縄東村高江で、リパッド(着陸帯)建設を進めており、計画の6ケ所中、すでに2ケ所を完成させています。
*米軍嘉手納基地では、在来機のF15などが移転しても、外来機が飛来・訓練し、2013年度の年間騒音発生回数は、前年度比で、約9000回増加しています。
オスプレイは事故を繰り返しており、オスプレイが、大矢野原演習場で訓練し、熊本の上空を飛来することは、県民の安心安全を極度に脅かすものです。
オスプレイ(米海兵隊・MV22)の最近の「クラスA」事故
*クラスA事故 200万ドル以上の損害または死者が発生
2013年6月21日 訓練で着陸時に地表が燃えて胴体に引火、機体炎上
2013年8月26日 訓練中に着陸失敗、機体炎上
2014年5月19日 訓練中に後部ドアが開いて兵士落下、1人死亡
2014年6月27日 普天間基地で落雷により破損
*オスプレイが事故を多発させるのは、「ヘリコプターと固定翼機併せ持つ」構造に起因しています。
「プロペラの向きを変えるときに機体が不安定になる」「主翼の両端に2つのプロペラとエンジンがあり、電気系統が長く複雑で、故障しやすい」「飛行中にエンジンが停止した場合、安全に着陸する『自動回転』(オートローテーション)機能を持っていない」(日本の航空法では、この機能がない回転翼機の飛行はできない)」などの点が問題視されています。
*オスプレイの被害は、事故だけではありません。オスプレイが発する低周波音が、普天間基地周辺では、心理的・物的影響の基準値を超えています。ペースメーカーへの影響なども指摘されています。
また、離着陸時の激しい吹き降ろし(ダウンウオッシュ)による事故、離着陸時に排出する高温の排ガスによる火災も指摘されています。人口密度が高く、森林面積も広い日本での訓練、飛行などとんでもないことです。
*日米両政府は、オスプレイの配備に当たり、「安全」に関する日米合意(2012年9月19日)を交わしています。
「可能な限り学校や病院を含む人口密集地を避ける」「基地外では、プロペラを上方に向けた『ヘリモード』や、プロペラを傾けた『転換モード』では飛行しない」「22時以降の訓練飛行は、『運用上必要と考えられるものに制限』し、『必要最小限』とする」等ですが、これらを乱暴に踏みにじる違反飛行が、沖縄では常態化しています。
③安倍内閣は、憲法9条を内閣の解釈変更によって、180度変えて、日本を「戦争をする国」にしようとしています。そうしたなかでの日米共同訓練は、日本の自衛隊が米軍とともに、海外で戦争をすることの訓練にほかなりません。そんな危険な訓練を大矢野原演習場で実施することなど、断じて容認できません。
熊本県には、約1万人の自衛隊員が居住しており、その家族も、県民として、生活し、働き、学んでいます。熊本県民のなかから「戦争による死者」を1人も出してはなりません。県民と県土が、報復の武力攻撃やテロに見舞われる事態は、絶対あってはなりません。
日本共産党は、県民と県土を戦争に巻き込む、日米共同訓練、オスプレイの飛来と訓練、軍備増・強化に厳しく反対します。
2、日本共産党は、次のことを強く求めます
①日米共同訓練の中止すること。中止すればオスプレイに訓練参加の検討など必要ありません。
②大矢野原演習場をオスプレイの分散訓練場とする「計画」を撤回すること。
③西部方面隊への地対艦誘導弾(SSM)の集中配備など、九州、熊本の軍事化を中止すること。
以上
熊本県知事 蒲島郁夫様
2014年8月1日
日本共産党熊本県委員会 委員長 日高伸哉
県議会議員 松岡徹
日本共産党宇城委員会 山本伸裕
大矢野原演習場でのオスプレイの分散訓練中止を求める表明を
1、沖縄県の米軍普天間飛行場のオスプレイ(垂直離着陸輸送機MV22)の訓練分散と称して、その対象の一つとして、熊本県内の大矢野原演習場があげられていると伝えられています。これが事実であれば、県民の安心安全にとって重大な危険を及ぼすことになります。
オスプレイについては、7月18日、神奈川県厚木基地に飛来、陸上自衛隊東富士(静岡県)・北富士(山梨県)演習場での訓練が計画されています。また11月6日から9日までの東北6県の防災訓練に参加することが明らかになっています。
既成事実を積み重ね、日本本土をオスプレイが自由に飛来し、基地化をすすめようというものです。
知事として、大矢野原演習場でのオスプレイ訓練を認めないとの表明をされることを、強く求めます。
2、オスプレイの分散訓練は、大義も道理もないものです。
①政府は、オスプレイの沖縄県外への飛来・訓練を増やし、名護市辺野古への新基地建設が最大争点となる県知事選(11月)へ向け、「基地負担の軽減」をアピールすることを企図しているとの指摘がなされています。
また、今後5年間で、17機のオスプレイを陸上自衛隊に導入・配備する計画であり、分散訓練によって、オスプレイ訓練に国民を慣れさせる意図もあります。
こうしたことを動機として、熊本の空の安全、県民の安心安全が脅かされるなどということは、断じてあってはなりません。
②小野寺五典防衛大臣は、「沖縄の負担軽減のために、本土での訓練移転を検討していきたい」と、7月6日の記者会見で述べていますが、政府は一方で、東村高江に新たなヘリ着陸帯を建設するなど、沖縄でのオスプレイ訓練場を逆に増強しようとしています。
沖縄の米軍嘉手納基地では、F15戦闘機の訓練が県外へ移転しましたが、別な戦闘機が米本土から飛来し、爆音総量は大幅に増加しています。米軍や日本政府の「沖縄の負担軽減」というのは、「真っ赤なウソだった」と沖縄では批判が高まっています。
③オスプレイは事故を繰り返しており、オスプレイが、大矢野原演習場訓練に伴い県内上空を頻繁に飛行することは、県民の安心安全を極度に脅かすものです。
オスプレイの最近の主な事故
【2012年】
4月11日 アフリカ北部モロッコで訓練中に墜落。2人死亡、2人重傷
6月13日 米南部フロリダ州で空軍仕様機が墜落。5人重傷
9月6日 米南部ノースカロライナ州の市街地で緊急着陸
【2013年】
6月21日 米南部ノースカロライナ州で着陸中に機体炎上
8月26日 米西部ネバダ州で「ハードランディング」、機体炎上
注 昨年8月26日に米ネバダ州で発生したオスプレイ着陸失敗事故は、後になって機体が炎上し、修復不可能な事故だったことが明らかに。
④オスプレイの被害は、事故だけではありません。オスプレイが発する低周波音が基準値を超えることを沖縄防衛局は認めており、琉球大の渡嘉敷健准教授の測定でも、離着陸時の深刻な低周波騒音が確認されています。
また、オスプレイは離着陸時に激しい吹き降ろし(ダウンウオッシュ)を発生させ、周囲の人間を吹き飛ばす事故を起こしています。離着陸時に排出する高温の排ガスにより火災を起こす危険も指摘されています。人口密度が高く、森林面積も広い日本での救援活動に、そもそも適しているのか―との指摘があります。
3、安倍内閣は、憲法9条を内閣の解釈変更によって、180度変えて、日本を「戦争をする国」にしようとしています。
そうしたなかで、佐賀空港へのオスプレイの配備、大矢野原演習場でのオスプレイの訓練、地対艦誘導弾(SSM)の西部方面隊への集中配備など、九州、熊本の軍事化が急速に進行しています。
政治にかかわるものは、今こそ、69年前に終わった戦争と、それに突き進んでいった歴史の教訓を想起し、心に刻み、勇気と決断を示すときです。
大矢野原演習場での危険なオスプレイの分散訓練には、「同意できない」「中止を求める」との知事の勇気ある発信を求めるものです。
以上
熊本県知事 蒲島郁夫様
2014年2月13日 ダムによらない治水・利水を考える県議の会
平野みどり・松岡徹・鬼海洋一・岩中伸司・西聖一・磯田毅
立野ダム建設計画について、県として、県民への説明を
立野ダム建設には、「世界の阿蘇」の自然、環境、観光への影響、白川への影響、穴あきダムの3つの穴(5m)が流木等でふさがったリ、想定外洪水の際の重大な危険性、等々、様々な問題が指摘されています。また「県内の球磨川では『ダムなし治水』が進められているのに、なぜ白川ではダムなのか?」といった疑問もあります。
もとより、国土交通省の説明責任が求められていますが、「県議の会」の「説明」要請に、「ホームページで説明している」「パンフレットを出した」「行政を通じての要請以外は対応しない」という態度です。
国土交通省が説明責任を果たさない現状において、「立野ダム建設推進」に賛成し、多額の負担金を拠出する熊本県の県民への説明責任が求められています。
立野ダムの総事業費は、当初の2倍以上に膨れ上がり917億円となっています。通常、ダム建設の場合約3割が県負担とされることから、熊本県の負担額は約275億円と推定されます。県民一人あたり約1万5000円相当の負担です。
この試算はあくまで現時点でのものであり、川辺川ダム計画の場合、当初は350億円だったのが3300億円にもなったように、さらに総事業費が増え、県負担、県民負担が増えるのではということも懸念されます。
県財政は依然として厳しく、将来的な見通しも不透明、不安定なもので、県民のくらし、福祉、教育などの施策もままならないなか、熊本県は莫大な額の立野ダム建設負担金を支払うことになります。
以上の理由から、「ダムによらない治水・利水を考える県議の会」として、熊本県として、立野ダム建設について、県民に丁寧に説明することを要請します。
あわせて、県民への説明責任が不十分なもとでの立野ダム仮排水路トンネル工事に着工しないよう、国土交通省に求めることを要請します。
以上
熊本県知事 蒲島郁夫様
2014年2月13日 ダムによらない治水・利水を考える県議の会
平野みどり・松岡徹・鬼海洋一・岩中伸司・西聖一・磯田毅
水利使用許可「支障なし」との見解を撤回し、あらためて流域住民などの意見・要望を直接聞き、実情をつかみ、「水利使用許可の判断基準」に照らし「瀬戸石ダムは撤去が妥当」の表明を
1、昨日(2014年2月12日)、瀬戸石ダムについて示された「当該水利使用の更新を許可されることについては、支障はありません」との見解は適切ではなく撤回を求めます。
瀬戸石ダムについては、堆積土砂による水位上昇による浸水被害、ヘドロ悪臭被害、アオコ・赤潮の発生などの水質汚濁、海域への土砂供給阻害、鮎などの移動生息阻害など、様々な被害が指摘されています。
加えて、想定以上の洪水によるダム崩壊の危険性、コンクリート劣化等、構造物の老朽化によるダム崩壊の危険などへの不安も高まり、「重大事故が起きたらだれが責任を負うのか」との声も広がっています。
こうした状況については、知事の「附帯意見」および、その説明会見の際のペーパー「瀬戸石ダム 知事表明」の4、「(電源開発(株)および国に求めること」で、知事自ら認めており、瀬戸石ダムの水利使用は「支障なし」ではなく、「支障あり」とすべきです。
2、単純更新について
①知事の見解は、今回の許可申請が、「期限の更新のみ」の「単純更新」としてなされたもので、国土交通省がそれを認め、河川法第36条の規定に基づき意見照会がなされたことに対して、「支障なし」というものです。
水利使用の許可期間の意味は、期限の到来によって当然に権利が消滅するものではなく、期限前に更新の許可の申請があれば、その権利を消滅させることを必要とする公益上の理由がない限り、これを許可しなければならないと考えられており、一定の期間ごとに許可の条件について、公益上の観点から再検討し、又、権利の遊休化を排除する等の機会を河川管理者に与えるものであると解されています(河川法第75条"河川管理者の監督処分")。
しかし瀬戸石ダムの更新申請に対して国交省は、電源開発の「単純更新」との申請をそのまま受け入れ、"許可が妥当"としています。
こうした対応は、再度更新期間の20年が経過すれば同様に許可されることにもなり、瀬戸石ダムは未来永劫継続することになります。
②解説・河川管理施設等構造令によれば、「洪水、高潮等による災害の発生を未然に防止することは、河川法本来の目的であり、現に存する河川管理施設等の安全性を確保するため、その維持管理に万全を期すとともに、構造令に規定する基準に著しく適合しないものについて改良工事又は応急措置を計画的に推進することによりできるだけ構造令に適合する施設に改築することは、河川行政本来の姿である」としています。この趣旨に照らせば、一旦許可されたものの、設置後の自然的条件や社会状況の変化に伴って著しい支障の恐れが生じた場合、その一つ一つに対して丁寧な検証と必要な是正の指導があってしかるべきです。
しかし、今回の水利権更新申請に際しての国土交通省の対には、は、そうした形跡は全く見られずなく、住民の安全・安心、生命・財産を守るべき河川管理者として、「行政の不作為に等しい」と指摘せざるをえません。
こうした国土交通省の態度に「支障なし」と追従することは、大きな禍根となるもので、直ちにあらためるべきです。
③裁判所が示した事例
*【事件名】水利使用許可処分取消請求事件。【裁判年月日】平成7年1月30日 名古屋地方裁判所
「法は、23条、24条に基づく水利使用許可処分を行う要件、基準については、明示的に定めていない。しかし、法1条は、「河川について、洪水、高潮等による災害の発生が防止され、河川が適正に利用され、及び流水の正常な機能が維持されるようにこれを総合的に管理することにより、国土の保全と開発に寄与し、もって公共の安全を保持し、かつ、公共の福祉を増進することを目的とする」と、法の目的を定めているのであるから、法23条、24条に基づく水利使用許可処分も、この法の目的に準拠して行われなければならない。また、法は、13条1項において、河川に設置される工作物は、安全な構造のものでなければならないと定め、同条2項に基づき河川管理施設等構造令が、その技術的基準を定めている。さらに、法は、44条以下にダムに関する特則を置き、44条1項において、ダムの設置者は、ダムの設置による洪水災害の発生を防止するため、河川管理者の指示に従い、必要な措置をとらなければならない旨を定め、同条2項に基づき河川法施行令24条は、右の河川管理者の指示の基準を定めている。そして、これらの法律、政令等に違反する行為があった場合には、河川管理者は、与えた許可を取り消したり、行為の中止、原状回復等を命ずることができる(法75条)。これらの法の規定からすると、河川管理者が、法23条、24条に基づく水利使用許可処分をするに当たっては、単に流量その他の河川の状況に照らして当該水利利用が成立し得るかどうかということだけではなく、流水や土地を利用し、また、ダムを設置するなどして行われる当該事業がどのようなものであるか、それによって洪水等の災害の発生のおそれがないかということも考慮しなければならないというべきである。」
この判例からも、国交省の「単純更新」申請容認は不当なものです。
*多摩川水害訴訟では、「河川管理者が災害当時、事前に災害発生の危険を予測することが可能であったか」「本件災害を回避するために事前に適切な防災措置を講じることが可能であったか」ということが争点でした。国の管理に「瑕疵があったのかどうか」、堤防決壊は「天災なのか人災なのか」が問われた裁判でした。裁判の結果、一審は原告の住民が勝訴。二審の控訴審では国が勝訴しました。これを不服として原告側が上告した上告審では二審の判決が破棄差戻しとなり、1992年、差戻し控訴審で住民が勝訴して判決が確定し、多摩川水害は、国の瑕疵責任を認めた「人災」ということになりました。
国交省は「ダムの定期検査と水利権更新は法律上関係ない」と主張していますが、ダムの定期検査では、自ら「堆砂により水害の恐れあり」と繰り返し(10年間で6回)指摘していながら、その原因となっている「水利使用」は「単純更新」とは自己矛盾も甚だしいと指摘せざるをえません。
住民の生命と財産を守るべき河川管理者としての責任が厳しく問われており、こうした無責任な国交省への追従は、県政に重大な汚点となるものです。
3、「水利使用許可の判断基準」は、「流水の占用のためのダム、堰、水門等の工作物の新築等が河川法第26条第1項(工作物の新築等の許可)の審査基準を満たしているなど、当該水利使用により治水上その他の公益上の支障を生じるおそれがないこと。水利使用に係る土地の占用及び工作物の新築等は、当該水利使用の目的を達成するために必要な最小限度のものである必要があります」としています。
この「判断基準」に照らして、「治水」「環境」「漁業」などの「公益上の支障」を事実に立脚して検証し、判断されることをあらためて求めます。
熊本県知事 蒲島郁夫様
2014年1月23日 日本共産党熊本県委員会
熊本県議会議員 松岡徹
日本共産党南部地区委員会
八代市議会議員 笹本サエ子
芦北町議会議員 坂本登
「水利使用許可の判断基準」に照らし「瀬戸石ダムは撤去が妥当」の表明を
「水利使用許可の判断基準」は、「流水の占用のためのダム、堰、水門等の工作物の新築等が河川法第26条第1項(工作物の新築等の許可)の審査基準を満たしているなど、当該水利使用により治水上その他の公益上の支障を生じるおそれがないこと。水利使用に係る土地の占用及び工作物の新築等は、当該水利使用の目的を達成するために必要な最小限度のものである必要があります」としています。
この「判断基準」については、「水利使用許可」についてのものであり、知事が、電源開発・瀬戸石ダムの「水利権更新」について判断するうえでも、重く留意すべきものと言えます。
堆積土砂による水位上昇による浸水被害、ダム本体の河積阻害による水位上昇による浸水被害、ヘドロ悪臭被害、アオコ・赤潮の発生など水質汚濁、海域への土砂供給阻害、鮎などの移動生息阻害等々、瀬戸石ダムが「公益上の支障」をもたらしているのは明らかです。
加えて、想定以上の洪水によるダム崩壊の危険性、コンクリート劣化等、構造物の老朽化によるダム崩壊の危険などが懸念されます。
以上の点からして、瀬戸石ダムにより「治水上その他公益上に支障を生じるおそれが」あることは明らかです。
知事が、国土交通省に対して、「瀬戸石ダムについては撤去が妥当」との見解を表明されることを強く求めるものです。
なお、知事が結論を得るプロセスとして、知事自らが現地を視察し、住民との対話等を通じて、「治水上その他の公益上の支障を生じるおそれ」の「有無」について検証されること、県庁各部門の検討の際も、この見地に立って検証し、意見等のまとめにあたるよう指示されることを求めるものです。
瀬戸石ダムは、撤去が”妥当“
国土交通省九州地方整備局長 岩崎泰彦様
2014年1月23日 日本共産党熊本県委員会
熊本県議会議員 松岡徹
日本共産党南部地区委員会
八代市議会議員 笹本サエ子
芦北町議会議員 坂本登
1、球磨川は宝
蒲島郁夫熊本県知事は、2006年(平成20年)9月11日、「球磨川は宝」と位置付け、川辺川ダム中止を表明し、その後、国交省九州地方整備局を含めた「ダム以外の治水を検討する場」が設置され、「ダム以外治水を極限まで追究する努力が積み重ねられています。
瀬戸石ダムより約10キロ下流の荒瀬ダムは撤去工事が進められており、常時開門によって、下流及び八代海の環境の改善、漁業の回復が顕著にみられます。
自然再生推進法は、「自然再生は、健全で恵み豊かな自然が将来の世代にわたって維持されるとともに、生物の多様性の確保を通じて自然と共生する社会の実現を図り、あわせて地球環境の保全に寄与することを旨として適切に行われなければならない」(第3条、基本理念)としています。
瀬戸石ダムを撤去し、球磨川、八代海を再生するために、国交省がその責務を果たすことを強く求めるものです。
参考のために、以下、2008年9月11日の樺島知事発言と蒲島知事が設置した「川辺川ダム事業に関する有識者会議」報告書(平成20年8月)での鷲谷
いづみ東京大学教授は、「意見」を紹介します。
蒲島知事発言
「私にとってこの数ヶ月間は、極めて貴重であったと同時に、苦悩に満ちた時間であったと、いま改めて思います。それは、この問題が、人命の危険や、自然・環境に対してどう向き合うのかという人間社会のあり方を問う、極めて今日的な問題であり、言い換えれば、その選択のいかんによって、これまでの政治や行政のあり方を根本的に変えることになりかねないほど難しい課題であるということを、今、心から感じているからです。」
「そもそも治水とは、流域住民の生命・財産を守ることを目的としています。日本3大急流のひとつ球磨川は、時として猛威をふるい、そこに住む人たちの生命・財産を脅かすことのある川です。だからこそ治水が必要となります。そして、河川管理者である国は、その責任を全うするため、計画的に河川整備に取り組んでいます。このことは、まぎれもなく政治と行政が責任をもって果たすべきものです。
しかし、守るべきものはそれだけでしょうか。私たちは、『生命・財産を守る』というとき、財産を『個人の家や持ち物、公共の建物や設備』と捉えがちです。しかし、いろいろな方々からお話を伺ううちに、人吉・球磨地域に生きる人々にとっては、球磨川そのものが、かけがえのない財産であり、守るべき『宝』なのではないかと思うに至ったのです。」
「そのような『球磨川という地域の宝を守りたい』という思いは、そこで生まれ育った者でしか理解できないような価値観かもしれません。全国一律の価値基準として『生命・財産を守るためのダム建設』という命題とは相反するものです。
しかし、この『ローカル』とも言うべき価値観は、球磨川流域に生きる人々にとって、心の中にしっかりと刻みこまれているような気がします。また、その価値を重んじることが、自分の地域を自らが守り、発展させていこうという気概を起こさせることになります。わが国において真の地方自治を実現するためにも、このような地域独自の価値観を大切にする機運を盛り上げていくことが求められているのではないでしょうか」
「私の判断は、過去、現在、未来という民意の流れの中、現在私たちが生きているこの時点から、私たちの世代が見通せる将来までの期間において、県民の幸福のためにいかなる選択が最善かを考えて行ったものです」
鷲谷いづみ氏「意見」
「地域のこれからの経済的なサステナビリテイ(持続可能性)にとって、特に重要と思われるのは、アユなど淡水魚の恵み、清流ゆえに可能なレクレーション機会の提供、『清流』というイメージが地域外に、この地域自治体をアピールする効果、である。第三次産業が今後どのように発展し、第一次産業を引っ張ることができるかは、ご多聞にもれず、ここでも地域の将来に係る重要な問題だが、これら『清流』にかかわる生態系サービスを失って、この地域が持続可能な経済を築くことができるかどうか、大いに疑問である。ダムのない川は、今では希少な存在となっている。その恵みをうけ、折り合いも付けつつ、豊かに発展する社会が川とともにつくる生態系社会システムは、『世界遺産』にもふさわしい価値を持つ。荒瀬ダムの撤去により自然の回復が進めば、そのこと自体が世界的にも注目され、多くの旅行者や滞在者を確保することにつながるだろう。おそらく荒瀬ダム撤去にかかわる費用は、それがもたらす長期的な経済効果と比べれば、それほど多大とはいえないだろう」
2、河川構造令ではダムゲート幅は40m。
瀬戸石ダムのゲート幅は15m河川構造令第38条は、計画高水量4000㎥以上の河川の「可動堰の可動部の径間長」(隣り合う堰柱の中心線間の距離)を40mと定めています。
瀬戸石ダムの堰柱間隔(ゲート幅)は15mです、河川管理施設等構造令の基準の半分以下です。瀬戸石ダムは、構造令に照らすと「問題あり」のダムです。。
河川管理施設等構造令は、その附則で「構造令が施行された昭和51年に現存する施設については、(改築に莫大な費用がかかることから)規定を適用しないことにしている。」としていますが、解説・河川管理施設等構造令では「遡及適用しないことにしている。・・・しかしながら、洪水、高潮等による災害の発生を未然に防止することは、河川法本来の目的であり、現に存する河川管理施設等の安全性を確保するため、その維持管理に万全を期すとともに、構造令に規定する基準に著しく適合しないものについて改良工事又は応急措置を計画的に推進することによりできるだけ構造令に適合する施設に改築することは、河川行政本来の姿であることを十分認識しておく必要がある。」としています。
前回の瀬戸石ダムの水利権更新は30年前の昭和59年であり、当然、「解説・河川管理施設等構造令」の趣旨で指導がおこなわれたはずです。また、3年ごとの定期検査によっても度々指導が行われてきたはずです。
しかし、電源開発は、抜本的な対策を放置してきました。
国交省もまた、河川管理者としての責任をあいまいにして、治水の観点、構造などの河川管理上の観点からの審査と指導を厳格に行うことなく、現状にいたっています。
「水利権の更新」という大きな節目の機会であり、瀬戸石ダムを現状のまま存続させることは、河川構造令に著しく背くものであり、法令順守の立場に立って、「存続」ではなく、「撤去が妥当」と判断すべきです。
3、球磨川水系治水計画検討業務報告書では、瀬戸石ダム改修や撤去案
「川辺川ダムを考える住民討論集会」の際の国交省の開示文書の一つに「平成13年度球磨川水系治水系治水計画検討業務報告書」があります。
この「報告書」では、荒瀬ダム、瀬戸市ダム上流の堆砂状況調査のうえに立って、両ダムのゲートの改良、撤去について、費用試算も含めて明らかにしています
「報告書」では、瀬戸石ダムについて、「(土砂の)堆積傾向は続いている」として、「ダム上流に堆積している土砂の排砂を目的」に、「河道中央部付近に」排砂ゲートを設置する。排砂ゲートの敷高を現況ゲートより5m切り下げるーとし、それらに伴う費用は26億6400万円と試算しています。
さらにダムを撤去した場合(9億9300万円)、撤去し新たにダムを新設する場合(111億3500万円)、それぞれ費用試算を行っています。
このことは、すでに撤去が決まり、撤去工事が進められている荒瀬ダムとともに、瀬戸石ダムも、ゲート改修、撤去が、国交省の「想定内」であったということを示しています。
荒瀬ダムは撤去、瀬戸石ダムは、すんなり存続ということはありえません。
4、荒瀬ダムも瀬戸石ダムも「総合判定A」
「ダム検査規定」第4条にもとづく定期検査(検査日平成25年5月27日)の結果、瀬戸石ダムは、「総合判定A」となっています。
「総合判定A」は、Bの「一部問題はあるが、全体的には問題ない],Cの「全体的には問題ない」と異なり、「ダムおよび当該河川の安全管理上重要な問題があり、早急な対応を必要とする」というものです。
現在撤去工事が進められている荒瀬ダム(熊本県企業局)も、ダム検査規定による定期検査の結果、「総合判定A」(検査日2002年5月20日)でした。
国交省は判定にもとづき、熊本県知事に対して、対応すべき課題として、「堆砂対策」「水質対策」「洪水被害対策」「護岸補修」について指摘を行っています。
熊本県は、この指摘を真摯に受けとめ、ダム湖内の堆砂の除去、道路側壁の補修、洪水被害補償などのダム管理対策、赤潮対策、泥土の除去、下流への土砂補給、河川環境の向上策、塵芥の除去など9項目を具体化しています、
こうした対策と発電機やダムゲートなどの主要設備の取り換え、メンテナンス等を合わせると、約73億円超の費用を試算しています。
これらをふまえて、荒瀬ダムの存廃を検討した結果、荒瀬ダム存続は、「技術的にも費用的にも困難」ということで「ダム撤去」が選択肢に入り、潮谷知事(当時)の「荒瀬ダム撤去表明にいたっています。
堆積ヘドロ・土砂、護岸の痛み、アオコ、赤潮の発生、悪臭、振動、騒音等々、洪水被害、環境劣化、住民の長年の苦難など、瀬戸石ダムも荒瀬ダムも同じです。荒瀬ダムは撤去、瀬戸石ダムは存続といった、矛盾した選択の余地はありません。
5、ダム管理の資格が問われる電源開発
国交省の文書によるとダム検査規定にもとづく定期検査は、瀬戸石ダムの場合、平成14年から2年に1回(計6回)実施され、そのすべてで判定Aが下され、「ダム湖の堆積土砂により洪水被害が発生する恐れがある」と指摘されています。
にもかかわらず、電源開発は抜本的な対策をとってきませんでした。平成14年から昨年5月の検査まで、連続して判定Aとなっていることが何よりの証拠です。
電源開発は、水利権更新が迫る平成23年になって、判定Aとして「堆積土砂による洪水被害」が指摘されてから10年もたって、「瀬戸石調整池 堆砂処理計画」を明らかにしています。しかもその中身は、水利権延長(申請)期間である20年間の半分である、平成36年までかかるというもので、さらにそれ以降は10年に1回の処理というもので、非常識かつ無責任極まるものです。
「宝」である球磨川に、河川横断構造物を設置、管理する資格も能力も、電源開発にはありません。国交省として毅然たる判断をすべきです。
6、瀬戸石ダムは、危険。重大な災害の要因に
近年の「想定外降雨」による山腹崩壊や洪水から球磨川中流域の安心安全のためには、瀬戸石ダムの撤去が不可欠です。
川辺川ダム住民討論集会で、国土交通省側(ダム建設推進側)の論者として参加した小松利文氏(現・九州大学大学名誉教授)は、1昨年7月の九州北部豪雨などの検証を行った国交省も深く関与した研究会、シンポジウムで、「近年の気候変動下の水・土砂災害にどう備えたらよいか」として、「河川横断構造物の危険性」として、「近年、地球温暖化によると思われる災害外力の増大下では,現存する取水ダム、橋梁、堰、頭首工などの河川横断構造物が洪水に対して更に水位を上昇させる等、非常に危険な状態を招くことが近年の洪水災害から明らかになってきた。従ってこれらの河川横断構造物のチェック、改善、撤去などが急務となっている.また土砂だけでなく流木の影響も合わせて考慮した河川計画・管理が不可欠となってきている。治水の根幹は『洪水の水位を下げる。1cmでも10cmでも下げる』ことであり、このことを忘れてはならない」「電力会社管理の河川構造物や橋の点検・見直しが急務である」と指摘しています。
この指摘は、瀬戸石ダムにも明白に当てはまるものです。
瀬戸石ダムの竣工は1958年であり、やがて60年にもなります。コンクリートの寿命等からしても、「想定外」の洪水、巨大な流木・岩石等の流下に対して耐えられるのか。ひとつ間違えば、甚大な被害を生じることになりかねません。国交省として責任が持てるのでしょうか。
7、水利使用許可の判断基準―治水上その他公益上の支障「有り」
水利使用許可の判断基準は、「公益上の支障の有無」として、「流水の占用のためのダム、堰、水門等の工作物の新築等が河川法第26条第1項(工作物の新築等の許可)の審査基準を満たしているなど、当該水利使用により治水上その他の公益上の支障を生じるおそれがないこと。」「水利使用に係る土地の占用及び工作物の新築等は、当該水利使用の目的を達成するために必要な最小限度のものである必要があります。」(国交省ホームページ)としています。
1から6まで指摘した諸点は、「水利使用により治水上その他の公益上の支障を生じる」ものです。
水害、河川環境・住環境の悪化等の要因である瀬戸石ダムは撤去すべきです。撤去することにより、川辺川から八代海まで、ダムのない一級河川として球磨川は、清流を取り戻し、八代海にも恵みをもたらすことになります。
球磨川の河川管理者である国交省の英断を強く求めるものです。
球磨川における水利使用更新申請の撤回を
電源開発株式会社 取締役社長 北村雅良様
2014年1月23日 日本共産党熊本県委員会
熊本県議会議員 松岡徹
日本共産党南部地区委員会
八代市議会議員 笹本サエ子
芦北町議会議員 坂本登
1、球磨川は宝~電源開発としての地域貢献を
蒲島郁夫熊本県知事は、2006年(平成20年)9月11日、「球磨川は宝」と位置付け、川辺川ダム中止を表明し、その後、国交省九州地方整備局を含めた「ダム以外の治水を検討する場」が設置され、「ダム以外治水を極限まで追究する努力が積み重ねられています。
瀬戸石ダムより約10キロ下流の荒瀬ダムは撤去工事が進められており、常時開門によって、下流及び八代海の環境の改善、漁業の回復が顕著にみられます。
自然再生推進法は、「自然再生は、健全で恵み豊かな自然が将来の世代にわたって維持されるとともに、生物の多様性の確保を通じて自然と共生する社会の実現を図り、あわせて地球環境の保全に寄与することを旨として適切に行われなければならない」(第3条、基本理念)としています。
球磨川においては、清流と漁業の復活の展望が大きく開かれつつあり、自然再生への営みが官民共同で進められています。
貴社は、現在は民間会社ですが、もともと電源開発促進法に基づき設立された国の特殊会社であり、現在、社の使命として、「環境との調和をはかり、地域の信頼に生きる」こと、企業行動規範として、「当社の事業活動が環境問題と深く関わっているとの認識に立ち、環境保全活動に積極的に取り組む」「社会貢献活動に取り組むとともに、地域社会の発展に貢献」することを掲げています。
貴社もぜひ球磨川と八代海再生への共同の営みに参画していただくことを求めます。
具体的には、瀬戸石ダムは、水利権更新による存続ではなく撤去し、「宝の球磨川」と八代海の再生はかるべきです。
以下、参考のために、2008年9月11日の樺島知事発言と蒲島知事が設置した「川辺川ダム事業に関する有識者会議」報告書(平成20年8月)での鷲谷いづみ東京大学教授は、「意見」を紹介します。
蒲島知事発言
「私にとってこの数ヶ月間は、極めて貴重であったと同時に、苦悩に満ちた時間であったと、いま改めて思います。それは、この問題が、人命の危険や、自然・環境に対してどう向き合うのかという人間社会のあり方を問う、極めて今日的な問題であり、言い換えれば、その選択のいかんによって、これまでの政治や行政のあり方を根本的に変えることになりかねないほど難しい課題であるということを、今、心から感じているからです。」
「そもそも治水とは、流域住民の生命・財産を守ることを目的としています。日本3大急流のひとつ球磨川は、時として猛威をふるい、そこに住む人たちの生命・財産を脅かすことのある川です。だからこそ治水が必要となります。そして、河川管理者である国は、その責任を全うするため、計画的に河川整備に取り組んでいます。このことは、まぎれもなく政治と行政が責任をもって果たすべきものです。
しかし、守るべきものはそれだけでしょうか。私たちは、『生命・財産を守る』というとき、財産を『個人の家や持ち物、公共の建物や設備』と捉えがちです。しかし、いろいろな方々からお話を伺ううちに、人吉・球磨地域に生きる人々にとっては、球磨川そのものが、かけがえのない財産であり、守るべき『宝』なのではないかと思うに至ったのです。」
「そのような『球磨川という地域の宝を守りたい』という思いは、そこで生まれ育った者でしか理解できないような価値観かもしれません。全国一律の価値基準として『生命・財産を守るためのダム建設』という命題とは相反するものです。
しかし、この『ローカル』とも言うべき価値観は、球磨川流域に生きる人々にとって、心の中にしっかりと刻みこまれているような気がします。また、その価値を重んじることが、自分の地域を自らが守り、発展させていこうという気概を起こさせることになります。わが国において真の地方自治を実現するためにも、このような地域独自の価値観を大切にする機運を盛り上げていくことが求められているのではないでしょうか」
「私の判断は、過去、現在、未来という民意の流れの中、現在私たちが生きているこの時点から、私たちの世代が見通せる将来までの期間において、県民の幸福のためにいかなる選択が最善かを考えて行ったものです」
鷲谷いづみ氏「意見」
「地域のこれからの経済的なサステナビリテイ(持続可能性)にとって、特に重要と思われるのは、アユなど淡水魚の恵み、清流ゆえに可能なレクレーション機会の提供、『清流』というイメージが地域外に、この地域自治体をアピールする効果、である。第三次産業が今後どのように発展し、第一次産業を引っ張ることができるかは、ご多聞にもれず、ここでも地域の将来に係る重要な問題だが、これら『清流』にかかわる生態系サービスを失って、この地域が持続可能な経済を築くことができるかどうか、大いに疑問である。ダムのない川は、今では希少な存在となっている。その恵みをうけ、折り合いも付けつつ、豊かに発展する社会が川とともにつくる生態系社会システムは、『世界遺産』にもふさわしい価値を持つ。荒瀬ダムの撤去により自然の回復が進めば、そのこと自体が世界的にも注目され、多くの旅行者や滞在者を確保することにつながるだろう。おそらく荒瀬ダム撤去にかかわる費用は、それがもたらす長期的な経済効果と比べれば、それほど多大とはいえないだろう」
2、瀬戸石ダムは、治水、環境などの大きな阻害要因となっている
①河川構造令ではダムゲート幅は40m。瀬戸石ダムのゲート幅は15m
河川構造令第38条は、計画高水量4000㎥以上の河川の「可動堰の可動部の径間長」(隣り合う堰柱の中心線間の距離)を40mと定めています。
瀬戸石ダムの堰柱間隔(ゲート幅)は15mです、河川管理施設等構造令の基準の半分以下です。瀬戸石ダムは、構造令に照らすと「問題あり」のダムです。
河川管理施設等構造令は、その附則で「構造令が施行された昭和51年に現存する施設については、(改築に莫大な費用がかかることから)規定を適用しないことにしている。」としていますが、解説・河川管理施設等構造令では「遡及適用しないことにしている。・・・しかしながら、洪水、高潮等による災害の発生を未然に防止することは、河川法本来の目的であり、現に存する河川管理施設等の安全性を確保するため、その維持管理に万全を期すとともに、構造令に規定する基準に著しく適合しないものについて改良工事又は応急措置を計画的に推進することによりできるだけ構造令に適合する施設に改築することは、河川行政本来の姿であることを十分認識しておく必要がある。」としています。
前回の瀬戸石ダムの水利権更新は30年前の昭和59年であり、当然、「解説・河川管理施設等構造令」の趣旨で指導がおこなわれたはずです。また、3年ごとの定期検査によっても度々指導が行われてきたはずです。
しかし、貴社は、抜本的な対策を放置してきたと言わざるをえません。
国交省もまた、河川管理者としての責任をあいまいにして、治水の観点、構造などの河川管理上の観点からの審査と指導を厳格に行うことなく、現状にいたっています。
「水利権の更新」という大きな節目の機会であり、瀬戸石ダムを現状のまま存続させることは、河川構造令に著しく背くものです。
貴社が、法令順守の立場に立って、「存続」ではなく、別の選択をされるよう求めるものです。
②球磨川水系治水計画検討業務報告書では、瀬戸石ダム改修や撤去案
「川辺川ダムを考える住民討論集会」の際の国交省の開示文書の一つに「平成13年度球磨川水系治水系治水計画検討業務報告書」があります。
この「報告書」では、荒瀬ダム、瀬戸市ダム上流の堆砂状況調査のうえに立って、両ダムのゲートの改良、撤去について、費用試算も含めて明らかにしています
「報告書」では、瀬戸石ダムについて、「(土砂の)堆積傾向は続いている」として、「ダム上流に堆積している土砂の排砂を目的」に、「河道中央部付近に」排砂ゲートを設置する。排砂ゲートの敷高を現況ゲートより5m切り下げるーとし、それらに伴う費用は26億6400万円と試算しています。
さらにダムを撤去した場合(9億9300万円)、撤去し新たにダムを新設する場合(111億3500万円)、それぞれ費用試算を行っています。
このことは、すでに撤去が決まり、撤去工事が進められている荒瀬ダムとともに、瀬戸石ダムも、ゲート改修、撤去が、国交省の「想定内」であったということを示しています。
荒瀬ダムは撤去、瀬戸石ダムは、すんなり存続ということはありえません。
③荒瀬ダムも瀬戸石ダムも「総合判定A」
「ダム検査規定」第4条にもとづく定期検査(検査日平成25年5月27日)の結果、瀬戸石ダムは、「総合判定A」となっています。
「総合判定A」は、Bの「一部問題はあるが、全体的には問題ない],Cの「全体的には問題ない」と異なり、「ダムおよび当該河川の安全管理上重要な問題があり、早急な対応を必要とする」というものです。
現在撤去工事が進められている荒瀬ダム(熊本県企業局)も、ダム検査規定による定期検査の結果、「総合判定A」(検査日2002年5月20日)でした。
国交省は判定にもとづき、熊本県知事に対して、対応すべき課題として、「堆砂対策」「水質対策」「洪水被害対策」「護岸補修」について指摘を行っています。
熊本県は、この指摘を真摯に受けとめ、ダム湖内の堆砂の除去、道路側壁の補修、洪水被害補償などのダム管理対策、赤潮対策、泥土の除去、下流への土砂補給、河川環境の向上策、塵芥の除去など9項目を具体化しています、
こうした対策と発電機やダムゲートなどの主要設備の取り換え、メンテナンス等を合わせると、約73億円超の費用を試算しています。
これらをふまえて、荒瀬ダムの存廃を検討した結果、荒瀬ダム存続は、「技術的にも費用的にも困難」ということで「ダム撤去」が選択肢に入り、潮谷知事(当時)の「荒瀬ダム撤去表明にいたっています。
堆積ヘドロ・土砂、護岸の痛み、アオコ、赤潮の発生、悪臭、振動、騒音等々、洪水被害、環境劣化、住民の長年の苦難など、瀬戸石ダムも荒瀬ダムも同じです。
荒瀬ダムは撤去、瀬戸石ダムは存続といった、矛盾した選択の余地はありません。
④ダム管理の資格を問う
国交省の文書によるとダム検査規定にもとづく定期検査は、瀬戸石ダムの場合、平成14年から2年に1回(計6回)実施され、そのすべてで判定Aが下され、「ダム湖の堆積土砂により洪水被害が発生する恐れがある」と指摘されています。
にもかかわらず、貴社は抜本的な対策をとってきませんでした。平成14年から昨年5月の検査まで、連続して判定Aとなっていることが何よりの証拠です。
貴社は、水利権更新が迫る平成23年になって、判定Aとして「堆積土砂による洪水被害」が指摘されてから10年もたって、「瀬戸石調整池 堆砂処理計画」を明らかにしています。しかもその中身は、水利権延長(申請)期間である20年間の半分である、平成36年までかかるというもので、さらにそれ以降は10年に1回の処理というもので、非常識かつ無責任極まるものです。
「宝」である球磨川に、河川横断構造物を設置、管理する資格も能力も、貴社にはないと断ぜざるをえません。
⑤瀬戸石ダムは、危険。重大な災害の要因に
近年の「想定外降雨」による山腹崩壊や洪水から球磨川中流域の安心安全のためには、瀬戸石ダムの撤去が不可欠です。
川辺川ダム住民討論集会で、国土交通省側(ダム建設推進側)の論者として参加した小松利文氏(現・九州大学大学名誉教授)は、1昨年7月の九州北部豪雨などの検証を行った国交省も深く関与した研究会、シンポジウムで、「近年の気候変動下の水・土砂災害にどう備えたらよいか」として、「河川横断構造物の危険性」として、「近年、地球温暖化によると思われる災害外力の増大下では,現存する取水ダム、橋梁、堰、頭首工などの河川横断構造物が洪水に対して更に水位を上昇させる等、非常に危険な状態を招くことが近年の洪水災害から明らかになってきた。従ってこれらの河川横断構造物のチェック、改善、撤去などが急務となっている.また土砂だけでなく流木の影響も合わせて考慮した河川計画・管理が不可欠となってきている。治水の根幹は『洪水の水位を下げる。1cmでも10cmでも下げる』ことであり、このことを忘れてはならない」「電力会社管理の河川構造物や橋の点検・見直しが急務である」と指摘しています。
この指摘は、瀬戸石ダムにも明白に当てはまるものです。
瀬戸石ダムの竣工は1958年であり、やがて60年にもなります。コンクリートの寿命等からしても、「想定外」の洪水、巨大な流木・岩石等の流下に対して耐えられるのか。ひとつ間違えば、甚大な被害を生じることになりかねません。
貴社は、こうした危惧、危険に責任が持てるのでしょうか。
⑥水利使用許可の判断基準―治水上その他公益上の支障の「有無」に照らしても、存続はありえない
水利使用許可の判断基準は、「公益上の支障の有無」として、「流水の占用のためのダム、堰、水門等の工作物の新築等が河川法第26条第1項(工作物の新築等の許可)の審査基準を満たしているなど、当該水利使用により治水上その他の公益上の支障を生じるおそれがないこと。」「水利使用に係る土地の占用及び工作物の新築等は、当該水利使用の目的を達成するために必要な最小限度のものである必要があります。」(国交省ホームページ)としています。
瀬戸石ダムは、明らかに「水利使用により治水上その他の公益上の支障を生じる」ダムです。
水害、河川環境・住環境の悪化等の要因である瀬戸石ダムは撤去すべきです。撤去することにより、川辺川から八代海まで、ダムのない一級河川として球磨川は、清流を取り戻し、八代海にも恵みをもたらすことになります。
3、人と環境、地球のために、自然ネルギーの開発、発展に寄与を、
電力事業は、国民生活、経済にとって不可欠の事業です。
貴社が、太陽光、風力、地熱、バイオ、小水力等の自然エネルギーの開発・発展に大きく貢献されること、熊本県が進める「県民発電所」など、自然エネルギーへの取り組み等に、積極的に参画、共同されることを願うものです。
“球磨川は宝”ダムによらない治水及び瀬戸石ダム撤去についての提言
2014年1月10日 日本共産党熊本県委員会
日本共産党南部地区委員会
第1部 球磨川は宝
「ダム以外の治水を検討する場」の目的、方針を事実上転換しようとする動きが顕在化しています。
さらには、一方では熊本県による荒瀬ダム撤去工事が進められ、球磨川下流、八代海の回復が顕著になるなか、上流の瀬戸石ダムについては、電源開発が水利権の更新申請(ダム存続手続き)をしています。
複雑・混迷する球磨川をめぐる状況を打開するカギは、蒲島知事の川辺川ダム中止表明、全国初の荒瀬ダム撤去に貫かれる「球磨川は宝」の理念と政策です。
85%の県民が支持した知事の「球磨川は宝」「ダム中止表明」
流域住民、流域市町村、県が、あらためて、平成20年年9月11日の県議会本会議での蒲島知事発言の重要な意味を思い起こし、共有することが求められています。
「私にとってこの数ヶ月間は、極めて貴重であったと同時に、苦悩に満ちた時間であったと、いま改めて思います。それは、この問題が、人命の危険や、自然・環境に対してどう向き合うのかという人間社会のあり方を問う、極めて今日的な問題であり、言い換えれば、その選択のいかんによって、これまでの政治や行政のあり方を根本的に変えることになりかねないほど難しい課題であるということを、今、心から感じているからです。」
「そもそも治水とは、流域住民の生命・財産を守ることを目的としています。日本3大急流のひとつ球磨川は、時として猛威をふるい、そこに住む人たちの生命・財産を脅かすことのある川です。だからこそ治水が必要となります。そして、河川管理者である国は、その責任を全うするため、計画的に河川整備に取り組んでいます。このことは、まぎれもなく政治と行政が責任をもって果たすべきものです。
しかし、守るべきものはそれだけでしょうか。私たちは、『生命・財産を守る』というとき、財産を『個人の家や持ち物、公共の建物や設備』と捉えがちです。しかし、いろいろな方々からお話を伺ううちに、人吉・球磨地域に生きる人々にとっては、球磨川そのものが、かけがえのない財産であり、守るべき『宝』なのではないかと思うに至ったのです。」
「そのような『球磨川という地域の宝を守りたい』という思いは、そこで生まれ育った者でしか理解できないような価値観かもしれません。全国一律の価値基準として『生命・財産を守るためのダム建設』という命題とは相反するものです。
しかし、この『ローカル』とも言うべき価値観は、球磨川流域に生きる人々にとって、心の中にしっかりと刻みこまれているような気がします。また、その価値を重んじることが、自分の地域を自らが守り、発展させていこうという気概を起こさせることになります。わが国において真の地方自治を実現するためにも、このような地域独自の価値観を大切にする機運を盛り上げていくことが求められているのではないでしょうか」
「私の判断は、過去、現在、未来という民意の流れの中、現在私たちが生きているこの時点から、私たちの世代が見通せる将来までの期間において、県民の幸福のためにいかなる選択が最善かを考えて行ったものです」
以上は、知事発言の一部です。「ダム以外治水対策」、瀬戸石ダムを考えるうえで、理念、指針となるものです。
地元紙の県民意識調査では、85%の県民が、知事の理念と「川辺川ダム中止」という政策決定に賛意を示しました。
「球磨川は宝」との価値観を基本に、地域をとらえ、現在から未来を展望し、それら全体のなかで「治水」を位置づけ、対策を着実に、場合によっては大胆に(現時点では、「ダムなし河川整備計画」の策定、瀬戸石ダム撤去など)推進することが求められています。
蒲島知事の「川辺川ダム中止表明」、国交大臣と知事の2者会談と合意、「ダムによらない治水を検討する場」の設置はいずれも、自民党政権時代になされたことであり、政権が自民党に戻ったから「方針転換」といったことが、「世論的、社会的に推進できる」ものでないことは言うまでもありません。
ダムのない川は、「世界遺産」にもふさわしい価値を持つ
蒲島知事が設置した「川辺川ダム事業に関する有識者会議」報告書(平成20年8月)で、鷲谷いづみ東京大学教授は、「ダムのない川は『世界遺産』にふさわしい価値を持つ」と指摘しています。
「ダム以外治水」「瀬戸石ダム」を考えるうえで重要な視点です。
「地域のこれからの経済的なサステナビリテイ(持続可能性)にとって、特に重要と思われるのは、アユなど淡水魚の恵み、清流ゆえに可能なレクレーション機会の提供、『清流』というイメージが地域外に、この地域自治体をアピールする効果、である。第三次産業が今後どのように発展し、第一次産業を引っ張ることができるかは、ご多聞にもれず、ここでも地域の将来に係る重要な問題だが、これら『清流』にかかわる生態系サービスを失って、この地域が持続可能な経済を築くことができるかどうか、大いに疑問である。ダムのない川は、今では希少な存在となっている。その恵みをうけ、折り合いも付けつつ、豊かに発展する社会が川とともにつくる生態系社会システムは、『世界遺産』にもふさわしい価値を持つ。荒瀬ダムの撤去により自然の回復が進めば、そのこと自体が世界的にも注目され、多くの旅行者や滞在者を確保することにつながるだろう。おそらく荒瀬ダム撤去にかかわる費用は、それがもたらす長期的な経済効果と比べれば、それほど多大とはいえないだろう」
第2部 ダムによらない治水
「ダムによらない治水」の現状
-----------人吉新聞(2013.11.25)1面「瀬音」-----------------
「梅雨時期や台風の際には、水害被害に遭わないか心配。一日も早く安心した生活ができるようにしてほしい」とは、被災者の偽らざる声だ。その声を事業主体である国をはじめ、県など行政側がどこまで真摯に受け止めているのか疑問さえ湧く▼それというのも、川辺川ダム以外の治水対策の現実的な手法を極限まで検討する「ダムによらない治水を検討する場」が発足から5年が経過。いまだに結論を出すどころか出口さえも見えない状態が続いているからだ。▼同検討する場では、これまで河底掘削や堤防嵩上げ、堤防引き堤の「河道対策」、既存の市房ダムの再開発、遊水池新設の「洪水調節施設」を組み合わせた複合案を提案。一部を除いては度重なる議論が交わされてきたように記憶する▼それだけ蓄積したデータが国、県にはあるだけにスピード感を持って対策がまとめられるものだと水害常襲地帯の住民らも期待していた。それが現状では、ものの見事に裏切られ、いまだに不安な生活を余儀なくされている。流域住民の生命と財産を守るためにもスピード感を持った協議を望みたい。
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知事や自治体首長の思い。「いつ洪水がくるか分からない」
-----------西日本新聞(2013.12.26)20面「蒲島知事に聞く」---------------
川辺川ダムに代わる治水対策がまとまらない。→「ものすごく上の治水レベルを求め、クリアしないと何も動かないというのは本当の治水ではない。(国が示した代替治水策では)浸水するところは残るが、大幅に減る。個別のかさ上げやソフト対策もある」
国の代替治水策には、流域市町村から不安や反発の声がある。→「時間的緊迫性を持ってやらないと、いつ洪水がくるか分からない。川辺川ダム完成時と同じ治水安全度にしないと代替治水策が動かないとしたら、その危険性はとても大きい。なるべく早く治水対策を始め、少しでも安全面を高めていくことが重要だ」
------------朝日新聞(2013.12.26)31面「知事参加の会議要望へ」--------------
川辺川ダムに代わる球磨川の治水対策について、人吉市と球磨郡の町村長らが25日、今後の対応について協議した。来年1月14日までに各自治体の意見をとりまとめる方針を決め2011年9月を最後に開かれていない知事や首長による親会議の開催を国、県に求める意向という。田中信孝市長は協議の中で、国や県が示している対策案に合意し、一刻も早く進めるために、河川整備計画を策定する必要があると訴え、町村側の意見を盛り込んだ対策案をまとめたいと提案したという。
しかし、国の姿勢はー「本心はダム」?
-----------熊日新聞(2013.11.16)4面「流域首長の合意見通せず」
川辺川ダム建設を前提にした従前の工事実施基本計画について、国交省九州地方整備局の藤本雄介河川計画課長は「廃止されたわけではなく、生きている」と明言。ダムによらない河川整備計画が策定されない限り、存続し続ける。他の首長からは「国は次の知事を見据えている」との声も漏れる。
自民党県連政調会長で球磨郡選出の松田三郎県議は「国交省には、前例のない低い安全度で整備計画をつくっていいのかという思いがあるだろう。本心はダムにあるのでは」と指摘。「県連内にも、ダムがベターとの考えは今もある。ただ世論的、社会的に推進できる状況でないのも分かっている」白紙撤回から5年。国、県、流域市町村の思惑に政治の動向も絡む方程式の"解"が見えぬまま、幹事会は見切り発車する。
-----------「検討する場」第5回幹事会
「ダムによらない治水を検討する場」第5回幹事会の議事録を見る限り、国交省のこうした(ダムによらない治水に)後ろ向きの姿勢に対する批判や見方が、決して的はずれではないことを感じさせます。
幹事会の司会者(国交省九州地方整備局整備局調査官)は、市町村からの意見表明に対して「"安全度"が低いことは容認できないということですね」と念を押し、「安全度が低い」ことを繰り返し、繰り返し述べています。
そこには、「第1回ダムによらない治水を検討する場」(平成21年1月13日)で、委員の一部から治水安全度について、「従来の80年に1度の目標を議論の前提にするように」との趣旨の発言があったのに対して、「安全度を前提に議論するものではない。ダムなし治水を積み上げて安全度を引き上げる」と回答した国交省の立場はみじんも感じられません。
そして、本来なら河川管理者として積極的に進めるべき河川整備計画の策定時期には言及を避け、地域防災に責任を負う自治体代表が、その責任感から当該地域の洪水対策を急ぐように次々に要請しているにもかかわらず、自治体首長を集めた親会議の見通しさえ示そうとしていません。
こうした姿勢、幹事会の運営が、「治水案『懸念』相次ぐ」「決まらない治水計画」などと報じられ、「ダムによらない治水を検討する場」さえ瓦解しかねない状況が作り出さしているといっても過言ではありません。
国交省は、「ダム以外の治水を検討する場」の原点に戻るべきだ
「ダムによらない治水を検討する場」幹事会で明らかになってきている構図は、住民のため洪水対策を一刻も早く実現したい県・市町村と、いつまでもダムにこだわる、「ダムによらない治水を検討する場」の設置目的、原点から逸脱した国交省との不一致と言えます。
とるべき立場は明白であり、住民の立場に立ち、一刻も早いダムによらない洪水対策の推進を実現することです。そのためには、合意していることを着実に実行しながら、不一致点については、住民の安心安全を優先する立場で「時間的緊迫性を持って」、合意を目めざし歩み寄ることが必要です。
安全性を高める-ことを急ぐべき
意見の不一致点を解消するカギは、蒲島知事の先のインタビューで、「川辺川ダム完成時と同じ治水安全度にしないと代替治水策が動かないとしたら、その危険性はとても大きい。なるべく早く治水対策を始め、少しでも安全面を高めていくことが重要だ」と指摘している視点に立つことが肝要です。(国交省が提示した)"安全度"を認めるかどうかで先へ進まないのではなく、できうる対策を「スピード感を持って」実現することによって実質的に安全性を高めていくことを優先すべきです。そのためにも、国交省は、熊本県が要望している河川整備計画の策定を急ぐべきです。
堤防が決壊しないようにすることは河川管理者の責務
人吉市と沿川住民にとって全国基準よりはるかに低い1/5~1/10の"安全度"は容認できることではありませんが、その"安全度"の持つ意味は、幹事会における人吉市と国の質疑によって、双方の主張の内容はすでにクリアーされています。
つまり、国交省が示した1/5~1/10の"安全度"とは、「堤防から1.5m下の計画高水位(けいかくこうずいい)以上に洪水が達した場合には、堤防は決壊する」と想定した場合の"安全度"です。これは国交省が定めた全国統一の基準、評価の手法であり、現時点で、地方レベルで変えることはできません。しかし、これはあくまで評価の手法であって、実際は計画高水位以上に洪水が達したからといって必ず堤防が決壊するわけではなく、人吉でも昭和40年7月洪水も、昭和57年7月洪水も、平成17年洪水も、パラペット内に収まっており、実績としてパラペットは決壊はしていません。
「検討する場」幹事会では、国交省が示した、人吉市の全国基準よりはるかに低い1/5~1/10の"安全度"が問題になっています。
しかし、その"安全度"の持つ意味は、幹事会における人吉市と国の質疑によって、双方の主張の内容ははっきりしています。
-第5回幹事会議事録(人吉市総務部長・質問)
「氾濫シュミーションについてということで、当然、防災対策を検討するにあたりましては、考え得る最悪の状況を想定しなければならないのは当然のことでありますけども、パラペットを含めて堤防が決壊しないようにすることは河川管理者の責務であると思いますので、決壊をしないことを前提としたシミュレーションをしていただいても良かったのではないかなというのが感想でございます。
あと、昭和40年7月の計画高水ですけども、計画高水位を越えても水位はパラペット内、余裕高内ということですので、その状況で堤防が決壊しなければ、資料3の4ページの市街地の氾濫は無いものと理解してよろしいのでしょうか。
それとパラペットにこだわって申し訳ないのですが、点検補修が適正に行われたパラペットが計画高水位を超えた際に破壊されたという全国的な例があるのでしょうか。
あと、もう一つパラペット関係ですいませんが、要望書の3の(6)のところで補強の要望をしておりまして、しっかりと補強していただくということで大変有り難いし心強いんですけども、40年以上経っているということもありまして、工作物で耐用年数ということもあると思いますが、そういった経年劣化という考え方ということもお示しいただければと思います。」
(八代河川国道事務所長・回答)
「まず1点目の計画高水位の更にその上に堤防天端高があって、計画高水位を超えてその
上の余裕高分が壊れなかった場合は、氾濫シミュレーション結果の黄色と青色で塗った部分は完全に無くなるんですかといったご質問に対しては、平成17年の実際の状況を思い出していただければご理解いただけると思いますけども、平成17年は実際に計画高水位を越えたんですね。それで堤防天端高の下で収まっています。あの時に破堤したのかというと破堤は無かった。この絵のように結果的に余裕高内で耐えた事例というものは実際にはあります。」
"安全度"が、国交省が定めた全国統一の基準、評価の手法であり変えることができないのであれば、それはそれとして、そのうえで、住民の安全を守るため、昭和40年7月洪水等によって計画高水位を越える区間については、パラペットを含めて堤防が決壊しないような補強や嵩上げをすることは河川管理者である国交省の責務です。
同時に、県、人吉市や住民は、パラペット堤防の補強や嵩上げによって「全国基準の"安全度"」が達成されたことにはならないことを自覚し、ソフト対策の強化をはかることが必要です。
関連して、こうした"安全度"の考え方やパラペットの補強や嵩上げについては住民合意が大事であり、その内容を住民に十分に説明する必要があります。
日本共産党人吉市委員会が昨年実施した市民アンケート(別紙)の結果、「国交省が、住民アンケートや聞き取り調査、説明会などを開いて、人吉市民の要望を反映した対策を行うべきだと思いますか」に対して、「そう思う」74人、「思わない」3人、「わからない」4人、「無回答」1人。「浸水対策で望むものは」に対して、「堤防の補強」52人、「堤防の嵩上げ」41人、「中川原をスリムにする」16人、「その他」13人、「堤防の嵩上げ賛成の方は、今の堤防の高さよりどのくらいの嵩上げを許容できますか」に対して、「1m以上、必要な高さまで」29人、「1mまでなら」19人、「50㎝までなら」7人、「その他」5人、「無回答」27人―などとなっています。
民不安を取り除くための「直ちに実施する対策」
①人吉市街地で現況氾濫シュミレーションによって氾濫する区域のパラペット護岸の補強及び嵩上げ(老朽護岸のため本格的に改築する)(幹事会「説明資料-3」4ページ)
②中川原公園のスリム化もしくは高さを低くする。
③人吉橋下流左岸の掘削・築堤の先延ばしは重大。用地交渉の進捗状況、見通しを明らかにし、場合によっては土地収用法の手続きに移行すること。(幹事会「説明資料-1」14ページ)
④特に"安全度"の低い人吉市街地については国交省の"緊急対策特定区間"に指定して、予算をつけ事業を促進すること。
⑤人吉市大柿地区で現況氾濫シュミレーションによって氾濫する区域の堤防の補強及び嵩上げ(幹事会「説明資料-3」5ページ)
⑥球磨村渡地区~地下地区で現況氾濫シュミレーションによって氾濫する区域の堤防の補強及び嵩上げ(幹事会「説明資料-3」5ページ)
⑦⑥で支障となる国道とJR線路嵩上げ。不可能な場合は陸閘を設置。
⑧瀬戸石ダム撤去と堆積土砂除去(瀬戸石ダムについては、第2部で詳述する)
⑨川辺川沿川の輪中堤設置と農地の遊水池指定(地役権設定)
⑩あさぎり町深田地区~免田地区で現況氾濫シュミレーションによって氾濫する区域の堤防の補強及び嵩上げ(幹事会「説明資料-3」6ページ)
⑪八代市萩原堤防については、1/100の安全度で川辺川ダムなしの場合の計画高水位(HWL)を算定して補強を行うこと。仮設盛土は存置すること。(第4回球磨川下流域環境デザイン検討委員会資料「萩原堤防のデザイン検討について」2ページ)
⑫住民説明会を開くこと
*「ダムによらない治水を検討する場」で既に提案されているダム以外治水対悪及び各自治体が要望していることは重複するので除く)
⑬これら全体を促進していくうえで河川整備計画の策定を急ぐこと。
第3部 瀬戸石ダム撤去を
瀬戸石ダム本体とダムによる堆積土砂が、上流の水位を上昇させ浸水被害をもたらしています。
瀬戸石ダムの治水上の危険性はそれだけではありません。
一般的な耐用年数50年を越え、60年以上経過した老朽化コンクリート構造物は破壊する危険性があります。また、想定を越える洪水によるダム本体の越流と山腹崩壊。河川管理施設等構造令に違反する狭隘なゲート構造によって流木等が閉塞し、上流水位をさらに押し上げ、ダム崩壊に至る危険があります。
こうした危険性をはらむ、全国的にも例を見ない中流山間狭隘地に位置し、治水目的を持たないダムは、治水上の対策として、ただちに撤去すべきです。
河川構造令ではダムゲート幅は40m。瀬戸石ダムのゲート幅は15m
河川構造令第38条「可動堰の可動部の径間長」
河川構造令第38条は、計画高水量4000㎥以上の河川の「可動堰の可動部の径間長」(隣り合う堰柱の中心線間の距離)を40mと定めています。
瀬戸石ダムの堰柱間隔(ゲート幅)は15mです、河川管理施設等構造令の基準の半分以下です。瀬戸石ダムは、構造令に違反し、著しく洪水の流れを阻害しています。
河川管理施設等構造令は、その附則で「構造令が施行された昭和51年に現存する施設については、(改築に莫大な費用がかかることから)規定を適用しないことにしている。」としていますが、解説・河川管理施設等構造令では「遡及適用しないことにしている。・・・しかしながら、洪水、高潮等による災害の発生を未然に防止することは、河川法本来の目的であり、現に存する河川管理施設等の安全性を確保するため、その維持管理に万全を期すとともに、構造令に規定する基準に著しく適合しないものについて改良工事又は応急措置を計画的に推進することによりできるだけ構造令に適合する施設に改築することは、河川行政本来の姿であることを十分認識しておく必要がある。」としています。
前回の瀬戸石ダムの水利権更新は30年前の昭和59年であり、当然、「解説・河川管理施設等構造令」の趣旨で指導がおこなわれたはずです。また、3年ごとの定期検査によっても度々指導が行われてきたはずです。
しかし、電源開発は、抜本的な対策を放置してきました。そして、今、河川法のどこにも規定のない"単純更新"ということばで、淡々と許可が得られるものとの立場を示しています。 こういう態度は断じて容認できません。
国交省もまた、河川管理者としての責任をあいまいにして、治水の観点、構造などの河川管理上の観点からの審査と指導を厳格に行うことなく、現状にいたっています。
球磨川水系治水計画検討業務報告書では、瀬戸石ダム改修や撤去案
「川辺川ダムを考える住民討論集会」の際の国交省の開示文書の一つに「平成13年度球磨川水系治水系治水計画検討業務報告書」があります。
この「報告書」では、荒瀬ダム、瀬戸市ダム上流の堆砂状況調査のうえに立って、両ダムのゲートの改良、撤去について、費用試算も含めて明らかにしています
「報告書」では、瀬戸石ダムについて、「(土砂の)堆積傾向は続いている」として、「ダム上流に堆積している土砂の排砂を目的」に、「河道中央部付近に」排砂ゲートを設置する。排砂ゲートの敷高を現況ゲートより5m切り下げるーとし、それらに伴う費用は26億6400万円と試算しています。
さらにダムを撤去した場合(9億9300万円)、撤去し新たにダムを新設する場合(111億3500万円)、それぞれ費用試算を行っています。
このことは、すでに撤去が決まり、撤去工事が進められている荒瀬ダムとともに、瀬戸石ダムも、ゲート改修、撤去が、国交省の「想定内」であったということを示しています。
荒瀬ダムは撤去、瀬戸石ダムは、すんなり存続ということはありえません。
荒瀬ダムも瀬戸石ダムも「総合判定A」
荒瀬も瀬戸石も状況は同じ
「ダム検査規定」第4条にもとづく定期検査(検査日平成25年5月27日)の結果、瀬戸石ダムは、「総合判定A」となっています。
「総合判定A」は、Bの「一部問題はあるが、全体的には問題ない],Cの「全体的には問題ない」と異なり、「ダムおよび当該河川の安全管理上重要な問題があり、早急な対応を必要とする」というものです。
現在撤去工事が進められている荒瀬ダム(熊本県企業局)も、ダム検査規定による定期検査の結果、「総合判定A」(検査日2002年5月20日)でした。
国交省は判定にもとづき、熊本県知事に対して、対応すべき課題として、「堆砂対策」「水質対策」「洪水被害対策」「護岸補修」について指摘を行っています。
熊本県は、この指摘を真摯に受けとめ、ダム湖内の堆砂の除去、道路側壁の補修、洪水被害補償などのダム管理対策、赤潮対策、泥土の除去、下流への土砂補給、河川環境の向上策、塵芥の除去など9項目を具体化しています、
こうした対策と発電機やダムゲートなどの主要設備の取り換え、メンテナンス等を合わせると、約73億円超の費用を試算しています。
これらをふまえて、荒瀬ダムの存廃を検討した結果、荒瀬ダム存続は、「技術的にも費用的にも困難」ということで「ダム撤去」が選択肢に入り、潮谷知事(当時)の「荒瀬ダム撤去表明にいたっています。
堆積ヘドロ・土砂、護岸の痛み、アオコ、赤潮の発生、悪臭、振動、騒音等々、洪水被害、環境劣化、住民の長年の苦難など、瀬戸石ダムも荒瀬ダムも同じです。荒瀬ダムは撤去、瀬戸石ダムは存続といった、矛盾した選択の余地はありません。
ダム管理の資格が問われる電源開発
国交省の文書によるとダム検査規定にもとづく定期検査は、瀬戸石ダムの場合、平成14年から2年に1回(計6回)実施され、そのすべてで判定Aが下され、「ダム湖の堆積土砂により洪水被害が発生する恐れがある」と指摘されています。
にもかかわらず、電源開発は抜本的な対策をとってきませんでした。平成14年から昨年5月の検査まで、連続して判定Aとなっていることが何よりの証拠です。
電源開発は、水利権更新が迫る平成23年になって、判定Aとして「堆積土砂による洪水被害」が指摘されてから10年もたって、「瀬戸石調整池 堆砂処理計画」を明らかにしています。しかもその中身は、水利権延長(申請)期間である20年間の半分である、平成36年までかかるというもので、非常識かつ無責任極まるものです。
「宝」である球磨川に、河川横断構造物を設置、管理する資格も能力も、電源開発にはないと断言できます。
瀬戸石ダムは、危険。重大な災害の要因に
近年の「想定外降雨」による山腹崩壊や洪水から球磨川中流域の安心安全のためには、瀬戸石ダムの撤去が不可欠です。
川辺川ダム住民討論集会で、国土交通省側(ダム建設推進側)の論者として参加した小松利文氏(現・九州大学大学名誉教授)は、1昨年7月の九州北部豪雨などの検証を行った国交省も深く関与した研究会、シンポジウムで、「近年の気候変動下の水・土砂災害にどう備えたらよいか」として、「河川横断構造物の危険性」として、「近年、地球温暖化によると思われる災害外力の増大下では,現存する取水ダム、橋梁、堰、頭首工などの河川横断構造物が洪水に対して更に水位を上昇させる等、非常に危険な状態を招くことが近年の洪水災害から明らかになってきた。従ってこれらの河川横断構造物のチェック、改善、撤去などが急務となっている.また土砂だけでなく流木の影響も合わせて考慮した河川計画・管理が不可欠となってきている。治水の根幹は『洪水の水位を下げる。1cmでも10cmでも下げる』ことであり、このことを忘れてはならない」「電力会社管理の河川構造物や橋の点検・見直しが急務である」と指摘しています。
この指摘は、瀬戸石ダムにも明白に当てはまるものです。
瀬戸石ダムの竣工は1958年であり、やがて60年にもなります。コンクリートの寿命等からしても、「想定外」の洪水、巨大な流木・岩石等の流下に対して耐えられるのか。ひとつ間違えば、甚大な被害を生じることになりかねません。電源開発は責任が持てるのでしょうか。
水害、河川環境・住環境の悪化等の要因である瀬戸石ダムは撤去すべきです。撤去することにより、川辺川から八代海まで、ダムのない一級河川として球磨川は、清涼を取り戻し、八代海にも恵みをもたらすことになります。
河川法36条にもとづいて、「瀬戸市ダムは撤去が妥当」との見解を
河川法第36条は、「国土交通大臣は、水利使用に関し、第23条、第24条若しくは第26条第1項の許可又は第34条第1項の承認の申請があつた場合において、その申請に対する処分をしようとするときは、その処分が前条第1項の政令で定める流水の占用に係るものである場合を除き、あらかじめ、関係都道府県知事の意見を聴かなければならない」としています。
これまで、「瀬戸石ダムは撤去すべき」理由について詳述してきました。知事の英断を求めるものです。
なお、水利使用許可の判断基準については、(公益上の支障の有無)~「流水の占用のためのダム、堰、水門等の工作物の新築等が河川法第26条第1項(工作物の新築等の許可)の審査基準を満たしているなど、当該水利使用により治水上その他の公益上の支障を生じるおそれがないこと。水利使用に係る土地の占用及び工作物の新築等は、当該水利使用の目的を達成するために必要な最小限度のものである必要があります(国交省ホームページ)」となっています。
この点にてらしても、「瀬戸石ダムは、『治水上その他の公益上の支障を生じるおそれ』があり」、「撤去が妥当」です。
球磨川中流域に住むAさんは、訴えます。
「流域の集落では、若者がいなくなり、年寄りばかり。あと10年、20年もすれば、集落自体がなくなってしまう。昔のような、清流に球磨川をもどして、人々が寄ってくるような、子どもたちが帰ってくるような、都会の人が移り住むような地域にしてほしい。人生最後の願いです」
この願いに応える選択を求め、期待します。