山本伸裕

議会質問・討論・意見書 2020年


2020年12月県議会・TPP関連意見書に対する反対討論

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 2020年12月県議会・TPP関連意見書に対する反対討論
 
 日本共産党 山本伸裕 2020年12月15日
 日本共産党の山本伸裕です。
 議員提出議案3号、「総合的なTPP等関連政策大綱」に基づく国内対策の継続および更なる充実に対する意見書に反対致します。
 政府は自由貿易の拡大を成長戦略の柱に掲げています。しかし経済主権、食料主権の基盤が決して安定しているとはいえない日本における自由貿易路線の拡大は、大変危険なリスクを背負うことになるのではないでしょうか。そのことをあらわにしたのが新型コロナウイルス感染拡大によってもたらされた混乱であります。マスクや防護服などが生産国の輸出規制によってたちまちのうちにひっ迫し、海外調達部品の不足に見舞われました。またコロナ禍のもとで、食料の輸出制限がいま世界19カ国で起きています。そんな中で日本の食料自給率は先進国最低の38%、日本の食料供給体制の危うさが誰の目にもうきぼりになりました。外需頼みの政策や、TPP11、日欧EPA、日米貿易協定の推進といった政策が、危機に弱い日本の社会・経済をもたらしてしまったということについての根本的な反省が必要ではないでしょうか。
 日欧EPAが発行されると、その直後からヨーロッパからのチーズ輸入量が激増し、懸命に経営努力を続ける酪農農家を直撃しました。さらに12月4日に国会で承認された日英EPAは日欧EPAを上回る輸入拡大を日本に迫るものであります。日欧EPAは、コメを関税撤廃・削減等の対象から除外していますが、日英EPAでは、すべての農産品を見直し対象としています。主食であるコメまでも際限のない自由化にさらすものであります。
 コロナ禍のもとで、いま日本の農政に求められていることは、国内生産基盤の抜本的強化や食料自給率の向上をはかることではないでしょうか。本意見書案は、TPP11や日米貿易協定をはじめとした国際貿易協定を前提とし、国内対策の継続および更なる充実ということを求めておりますが、際限のない輸入自由化路線を前提としていること自体が重大問題であると言わなければなりません。今後の貿易交渉において日本は、より高い水準の市場開放をますます迫られていくことになります。外国産の輸入を野放しに拡大したまま、国内農産物の増産をはかるというのは、非現実的な空想論ではないでしょうか。
 また、意見書案で表記されている総合的なTPP等関連政策大綱とは、もともと大型機械化や施設規模の拡大、生産コストの削減を推進するという内容であります。こうした立場で進められてきた農政のもとで、大規模経営が生まれる一方、中小の家族経営農家が離農に追いやられ、担い手の減少、耕作放棄が広がる事態も生じてきました。「競争力強化」「大規模化」が強調されてきたこれまでの農政からの転換が必要であり、大綱に基づく国内対策の継続という意見には賛同できません。大小多様な家族経営が維持できて、農村で暮らせる条件づくり、環境整備を政府の責任で整えるべきであります。欧米諸国と比べて貧弱な価格保証制度や所得補償制度を抜本的に拡充させることも必要であります。家族経営を守り、農村で暮らせる基盤をつくることは、食料自給率の向上、国土の保全、地域経済の振興につながります。コロナに強い、災害にも強い日本をつくることにつながります。国連が定めた持続可能な開発目標SDGsの達成にも貢献する道であります。
 
 こうした立場から、二国間・多国間の貿易や経済連携に当たっては、無制限な自由化促進ではなく、各国の食料主権を保障する貿易ルールを確立することを正面から追及すべきであると考えます。各国の多様な農業が共存できる貿易ルールを確立してこそ、自国のみの利益にとらわれず、世界が直面する飢餓や食料、環境問題などの解決に向けても大きな力になるものと考えます。
 ぜひこうした観点に立って国や県の農政の発展がはかられる事を願って討論を終わります。

2020年12月県議会・一般会計決算認定に対する反対討論

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 12月議会 2020年12月県議会・一般会計決算認定に対する反対討論
 
 日本共産党 山本伸裕 2020年12月15日
 日本共産党の山本伸裕です。今年は新型コロナウイルスが猛威を振るい、また7・4豪雨災害という甚大な被害が発生しました。こうした未曾有の事態を経験したからこそ、これまでの県財政運営のあり方に対する問題意識があらたに生じる部分もございます。こうした問題意識をもとに、令和元年度熊本県一般会計決算認定に対する反対討論を行ないます。来年度以降の予算編成に活かされるよう願うものであります。
 まず熊本復旧・復興4ヵ年戦略における施策4、災害に負けない基盤づくりに関してあります。7・4豪雨災害以降、私たち日本共産党は被災地域だけに限らず、あらためて県内の河川整備の状況について調査を行なってきました。老朽化しひび割れた堤防、住宅地の側が対岸よりも低くなっている堤防、橋梁の存在によって川幅が狭められている河川、土砂の堆積が進行している河川等々、早急に整備が必要ではないかと思われるような箇所が各地に多数存在し、大規模な豪雨災害などが発生すれば大きな被害につながってしまうのではないかという危機感を抱いております。令和元年度主要な施策の成果を見ると、河川改修事業費の実績は白川ほか15河川で実施され56億2,016万円余、単県河川改良費は浜戸川ほか27河川で行なわれ4億7,035万円余であります。前田啓介議員の一般質問でもありましたが、407存在する県管理河川の中で河川整備計画が策定されたのは65河川にとどまっています。こうした進捗状況を見るならば、やはり私はこの河川改修事業を相当重視して位置づけ直すべきではないかと考えます。もちろん関係部署の職員の皆さんは限られた予算の中で優先順位も考慮しつつ、最大効果を発揮できるよう予算執行に当たっておられることは十分理解します。ただ、進行する地球温暖化にともなう気候変動、そして大規模自然災害という事態を考慮するならば、整備が必要である箇所について可及的すみやかに対応できるよう、河川改修事業、あるいは海岸堤防、高潮対策事業、砂防関係事業等、災害から県民生活を守る事業のいっそうの推進を求めるものであります。
 治水事業のほか治山事業、あるいは施策7において位置づけられている森林の再生という事業に関しても、防災という観点からなおいっそうの強化をはかるべきではないかと考えます。
 次に、有明海および八代海再生の取り組みについてであります。県計画に基づく関連事業に2019年度投じられた予算は70事業、総額141億円余とのことでありますが、有明海・八代海再生特別委員会の審議におきましては、改善に向けての方向性が見えないという厳しい意見も時折交わされております。環境改善と豊かな漁場の復活に向けてできる事はぜひとも積極的に取り組むべきでありますが、これに関して一点申し上げるならば、委員会でも必要であるとの提言がまとめられた諫早干拓潮受け堤防の開門調査は実行されないまま時間ばかりが経過しております。事態打開へ県としてのもう一歩主体的積極的な動きをぜひ起こしていただきたいと思います。
 つぎに球磨川治水対策協議会に関して申し上げます。2015年3月に協議会が設置され、以来実務者協議9回、首長会議が4回実施されてきました。ダムによらない治水を検討する場が幹事会を含め17回開催されたことと合わせると、30回を超える協議が行なわれてきたわけであります。にもかかわらず河川整備計画は策定されず、ダムによらない治水策の具体化と実行は進みませんでした。ダム以外治水を極限まで追求するとの蒲島知事の発言をうけての、この12年間の熊本県、および国の取り組みをどのように総括されるのでしょうか。この間の取り組みについてしっかり検証し、総括した内容を流域住民及び県民に報告すべきであると考えます。
 次に水俣病認定業務に関して申し上げます。2019年度において認定審査会は5回開催されました。審査件数は250件、そして認定はゼロ、棄却が234件、保留が16件との事であります。2019年度末の時点における未審査の方は419人、今年度11月末までの時点で391人の方が未審査となっております。いっぽう、自らの健康被害について、これは水俣病によるものだと認めてほしいと裁判に立ち上がる方々が1,500名を超えています。公式発見から64年もの年月が経過するというのに、いまだ解決の見通しが見えないことは重大問題です。知事がいくら水俣病の被害にあわれた方々に寄りそい、丁寧に審査を進めていくと言葉の上では強調されても、司法の場で断罪されたはずの昭和52年の判断条件の立場に立つ限りは被害の実態に接近した対応ができないのではないでしょうか。認定基準の運用指針・ガイドラインの見直しと沿岸住民の健康被害調査の実施によって、水俣病の解決に向けて熊本県が責任を果たすよう求めるものであります。
 次に、熊本地震で建設された災害公営住宅の問題であります。町からの委託を受けて県が発注した甲佐町の災害公営住宅で、カビや釘の飛び出しなどの不具合が明らかになりました。県は昨年10月までに全戸の改修工事を完了させるとの発表を行ないましたが、黒カビ発生に対する対応は一部の団地が取り残されたままの状態になっております。県はこのまま様子を見るとの対応のようでございますが、公営住宅法では事業主体に修繕の義務を定めており、早急な対応をとるべきではないかと考えます。
 次に、大蘇ダムの問題です。またしても大量の水漏れを起こしたとのことですが、関係自治体や農家への説明が遅れたということで、事業主体である農水省への不信感が増大しております。大蘇ダムの問題は昨年の決算討論でも取り上げましたが、事業着手して40年超が経過し、この間計画が何度も見直され、予定よりも30年以上遅れてようやく完成しましたが、事業費は当初の5.5倍に膨れ上がりました。そもそも国の計画が甘かったのではないか、地盤がダム建設に不適だったのではないかとの声も起こっております。受益農家から、あるいは自治体から不信の声が出るのは当然であります。こうした大型公共事業は途中で問題点が明らかになっても立ち止まったり後戻りしたりすることが極めて困難であります。やはり事業の正当性について、十分な環境アセスであったり地盤調査であったり、費用対効果であったり、科学的客観的な検証を事前に行ない、住民への丁寧な説明と住民合意を前提に進めていくという立場が、事業主体の側には必要であるということではないでしょうか。今後の教訓とすべきであります。
 最後になりますが、財務省の財政制度等審議会が2019年5月、人口減少を反映して地方公務員の職員数を削減すべきであるという報告書を出しました。けれども今新型コロナウイルス感染症への対応、あるいは災害対応などでとくに県職員、そして自治体職員はいま大変な過重労働を余儀なくされています。むしろ職員を適正に増やし、過重労働を解消することが県民へのサービス向上、県民生活の向上に貢献する道であることを強調して討論を終わります。

2020年12月県議会・中国公船、漁業活動に関する意見書についての質疑

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 12月議会 2020年12月県議会・中国公船、漁業活動に関する意見書についての質疑
 
 日本共産党 山本伸裕 2020年12月15日
 日本共産党の山本伸裕です。委員会提出議案2号、我が国の領海・排他的経済水域内での安全な漁業活動の実現を求める意見書についてお尋ねします。
 意見書の要望項目は、政府は領海・排他的経済水域内において、本県漁業者のみならず、国内の漁業者が将来にわたって、安全かつ安心して漁業活動が営まれるよう、法整備・海上警備の一層の強化をはかり、引き続き責任を持って取り組むこと、となっております。
 こうした意見書を出さなければならなくなったのは、本県漁業者及び国内の漁業者が日本の領海、あるいは排他的経済水域内において、いま安全かつ安心して漁業活動を営むことができなくなってしまっているからであります。なぜ安全安心な漁業活動ができなくなっているのか、その原因を作り出しているのは中国政府であります。
 今年5月、中国公船が、わが国の領土である尖閣諸島の領海、日本が実効支配している領土領域に進入したうえ、日本漁船に接近し追尾するという事件が発生しました。中国公船による尖閣諸島接続海域への入域日数は昨年一年間で282件、今年はすでに300件を超えています。こうした中国政府による危険な、かつ国際条約に反する行為によって日本の漁船が安全な漁業活動ができなくなってしまっているわけであります。したがって意見書としては、当然こうした無法な中国の行動に対して日本政府は強く抗議し、やめさせるよう求めるという内容にすべきではないかと考えます。
 ましてやこの問題で重大なことは、中国の王毅外相が11月24日の茂木外相との共同記者会見の場で、以下のように発言したことであります。「ここで一つの事実を紹介したいと思います。この間一部の真相をよく知らない日本の漁船が絶え間なく釣魚島、これは尖閣諸島最大の島である魚釣島のことであります。釣魚島の周辺の敏感な水域に入っています。これに対して中国側としてはやむを得ず必要な反応をしなければなりません。これが一つの基本的な状況でありますと。このような発言は本当に許しがたい、まさに暴言であります。今日の尖閣諸島周辺の緊張状態がもたらされた原因、漁民が安全に操業できない状況が作り出されてしまっている最大の原因は、日本が実効支配している領土領海に対し、中国が力づくで現状変更しようとしているところに問題があります。にもかかわらず中国政府、王毅外相は、原因は日本側にあるんだと言って開き直っているわけであります。驚くべき傲慢不遜な暴言であり絶対に許してはならない発言であると思います。
 私はこの問題に関していま全国各地の地方議会で上がっている意見書をいくつか読んでみましたが、少なくない議会が中国に対する抗議決議として採択されております。それが当然だと私は思います。いっぽう本意見書案でありますが、私は一番肝心な内容、すなわち日本政府は中国のこの覇権主義的な行動に抗議すべきだということ、そして無法行為を中止するよう強く求めるべきだということ、こうした内容が明確に示されていないように感じます。明記すべきではないかと思いますが、委員会では、どのような審議が行なわれたのでしょうか。以上、田代農林水産常任委員長にお尋ねします。
 
 (切り返しで)
 共同会見の場で茂木解消は何ら反論なし。政府も「注視する」といった立場で極めて腰が引けている。
 
 だいたい中国の最近のあまりの覇権主義的無法ぶりは目に余るものがある。香港の弾圧。
 
 外交問題といいますが、ことは日本の漁船の安全な創業を守るという極めて全うで当然の要求でありますし、中国外相の暴言に抗議すらできないような屈辱的な外交姿勢ではダメだというメッセージを発していくことは大変大事なことではないかと思います。
 
 そもそも中国は、香港でも民主化を求める学生らを逮捕・拘束するなど、極めて危険で野蛮な政治弾圧を続けている。国際社会は中国の無法行為を放置するべきではない。
 
 国際条約に反する行動、国際社会の約束事、誓約に反するような無法行為に対しては、国際社会が共同し、国連憲章と国際法を順守せよと外交的に包囲していく取り組みが必要。これまで比較的中国と良好な関係を持っていたヨーロッパ主要国も中国への批判を強めている。国際的世論の力で中国の無法をやめさせるべきであり、日本政府もこうした外交的努力こそ強めるべきである。

川辺川ダム建設を含む球磨川治水対策を求める意見書への反対討論

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 9月議会 川辺川ダム建設を含む球磨川治水対策を求める意見書への反対討論
 
 日本共産党 山本伸裕 2020年10月8日
 日本共産党の山本伸裕です。委員会提出議案3号、川辺川ダム建設を含む球磨川流域の抜本的治水対策に関する意見書について反対致します。
 
 この意見書は、これまで協議されてきた川辺川ダムによらない治水策という立場を転換し、川辺川ダム建設を含む抜本的な治水対策を講じるよう求める内容であります。
 反対の理由の第一は、もしも川辺川ダムが存在した場合、洪水被害を軽減できた可能性があったと結論付けた球磨川豪雨検証委員会の検証結果そのものに対する疑念であります。川辺川ダムが存在したとしても、それぞれの地点のピーク流量の時間やダムからの影響が及び始める時間などを考慮すると、ダムがあってもほとんど関係なかったと言う専門家の分析もありますし、そもそも検証結果は、住民が本当に知りたいことにこたえておりません。今回の豪雨災害は、球磨川・川辺川流域の各雨量観測所でいずれも過去最大の降雨量を記録していますが、特徴的なのは川辺川ダム建設予定地上流付近では他の地点に比べて相対的に雨量が少なかったという点であります。例えば12時間雨量で比較した場合、多良木観測所では過去最高の雨量を記録した昭和57年洪水の約1.8倍、神瀬観測所で2.1倍、まさにとてつもない雨量を記録しているのに対して、川辺川上流域の久連子観測所はほぼ1倍であります。検証委員会では、今回の豪雨災害では川辺川ダムがあったとして緊急放流という事態には至らなかった、とのことでありますけれども、もしも川辺川流域でほかの地域と同じように、過去最大規模を大幅に上回るような雨が降っていたらどうだったのか、川辺川ダムが洪水調節機能を失って緊急放流という事態になったらどんなことになるのか、こうした心配の声も当然出てくるわけであります。また、今回は7月3日、4日に記録的豪雨が発生した後も、約2週間にわたって断続的に強い雨が続きましたが、これがもし逆のパターンで、長雨が続いた後に記録的豪雨が発生したとしたら、ダムは満水、事前放流もできない状況のもとで大雨が降ったらどういう事態になるのか、こうした心配も当然ながら出てきます。要するに、ダムができれば確かに被害軽減に役に立つことがあるかもしれないけれども、逆にどういう場合に役に立たなくなるのか、あるいはダムがあることによって新たな危険、リスクは生じないのか、こういうことが知りたいわけであります。検証というのは、一つの仮説を立証することだけが役割ではありません。様々な事態を想定してその場合はどうなるのか、メリット、デメリット、限界、リスクは何か、そのことを確かめることが必要であります。説明によると、検証結果に基づいて今後の治水対策のあり方を検討していく、とのことでありますが、しかしこの意見書に見られるように早くも、もはや結論は定まったといわんばかりの勢いで、川辺川ダム建設を含む治水対策という流れが作られていることに強い危惧を抱くものであります。思い起こすべきは、川辺川ダム建設の是非をめぐって地域の中に対立と分断が持ち込まれてしまった歴史的事実であります。1995年に設置された川辺川ダム事業審議委員会は、その構成が今回の検証委員会と同様、流域住民やダムに否定的な意見を持つ有識者が排除された形で構成され、川辺川ダム建設は妥当であるという結論を出しました。ところがその後川辺川ダム建設に反対する農民、漁民、住民の世論と運動が高まり、住民討論集会の開催などを経てダム建設中止が県民、流域住民の圧倒的意見であるということが示されていきました。治水対策にどのような結論を出すのか、その議論の中心には、これからも球磨川、川辺川とともに暮らしていく流域住民が座るべきであり、現段階においてはその判断材料として、今回の豪雨災害について一つの検証結果がまとめられたという段階に過ぎません。そういう点で今回このような意見書を決議するのは拙速であるということを指摘したいと思います。
 
 第二点目の問題として、たとえ仮に川辺川ダムを含む治水対策という方向が定まったとしても、現状はダムが存在しないわけで、これからもいつ怒るか分からない豪雨災害のことを考えるならば、いまできる治水対策、すなわちダムなし治水に最大限の力を傾注しなければならないという点です。ダムを作るからといって河床掘削や堤防強化、遊水地設置などの予算が減らされてしまうなどということがあってはなりません。なぜこうした点を強調するかといえば、12年前にダムによらない治水を追求するという方向性が定まったにもかかわらず、国土交通省は当面の河川整備目標と計画を定める河川整備計画を策定せず、また人吉市などから繰り返し河川管理責任者である国土交通省に対し、人吉市街地を流れる球磨川に堆積した土砂の撤去、あるいは堤防のかさ上げなどの要望が出されていたけれども、ほとんど実施されてこなかった事実があるからであります。例えばかつて人吉水の手橋上流側に、木山の淵という深さ4、5メートルはあろうかという淵があり、以前は子どもたちはそこから飛び込んで遊んでいたそうですが、土砂がたまって淵がなくなってしまった。また以前は質のいい川砂が取れていたことから、市街地に堆積する砂利を採取する業者がいたけれども、河川管理者である国交省が採取を禁止したからとることができなくなった、昔に比べると3メートル以上は川底が浅くなったんじゃないか、カヌーの練習も底がつくようになってできなくなった、などなどのお話もこもごも伺いました。もちろん河床掘削、堤防強化、かさ上げ、遊水地などが実現したからといって、今回の水害が防げたかというとそうではないかもしれません。しかしたとえわずかであっても洪水被害を軽減できる可能性があるのであれば、今できること、やるべき対策を実施する。こうした姿勢を国交省は持つべきではなかったのでしょうか。こうした反省の上に立って国土交通省は、ダムが存在しないうちはダムなし治水を追求する以外にないわけですから、そこに全力をあげていただきたいと思います。また、もし仮に流水型ダムの建設という選択になるならば、測量、設計から始めなければなりません。漁業補償の合意や環境アセスの実施、そして水没予定地の活用も含めて地域振興に頑張っている五木村をまたしても翻弄するのかという問題をどう解決するのかなど、数々の課題難題をクリアしなければなりません。仮にダム建設を含むという方向性はスピード感を持って決定したけれども、治水対策の完了までには結局一番時間がかかりましたということになりかねません。知事は、絶対に今回のような犠牲を生まない治水対策を必ずやり遂げるんだと力をこめておられます。いつ起こるかも分からない災害に向け、いまできる対策を積み上げていくこと。そのための予算を後回しにしないこと、そのことを強く求めるべきであります。
 
 三つ目の問題は、ダムを含む治水は環境に深刻な影響を及ぼしかねないという問題であります。九州大学の島谷教授らによる論文ではこのように強調されています。球磨川・川辺川の清流、美しい渓谷、青井阿蘇神社や城跡としての歴史的な環境、温泉などはこの地域を代表する地域資源であり、その地域資源を活用することにより地域の持続的発展が後押しされる。治水対策によりこれらの魅力が損なわれてはならない。治水対策を進めることによって、地域資源の魅力が却って強化される治水対策とすべきだと。そして川辺川ダムに関しては、貯留型のダムは環境への影響が大きく現実的でない。流水型のダムであっても環境に対する十分な配慮が必要であると指摘されています。もちろん人命最優先に治水対策を考えなければならないのは当然であります。しかし球磨川の成り立ち、地域経済や人々の暮らしとのかかわりの大きさ、深さを知れば知るほど、球磨川・川辺川の清流を守り未来に引き継がねばならないという思いに駆られるのは多くの方々も同様ではないかと思います。球磨川が人吉地域経済に及ぼす影響についての調査報告書というレポートを読みました。就業構造、市民所得、自治体の財政収入、市民生活環境に球磨川がいかに大きな影響を及ぼしているかということが紹介されています。古いレポートですが、基本的な構造の理解は現在においても共有できるのではないかと思います。ダムによって清流川辺川、球磨川の環境が壊されてしまったら、市民生活、地域経済、人口、自治体財政にも影響が及ぶ事は必至であり、これも十分検証されなければならない問題であります。たとえ流水型ダムであっても、流速の低減による土砂堆積の増加、それにともなう生態系の変化や災害リスクの増大など、やはり環境を不可逆的に破壊してしまうことを強調しておきたいと思います。
 
 以上のような点が意見書に反対する理由であります。いずれにせよこれから治水のあり方について検討する場が作られていくわけであります。ぜひ住民の民意というものを十分に汲み取って対策を講じていただくよう求めまして討論を終わります。

少人数学級の実現を求める請願を不採択にすることに対する反対討論

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 9月議会 少人数学級の実現を求める請願を不採択にすることに対する反対討論
 
 日本共産党 山本伸裕 2020年10月8日
 日本共産党の山本伸裕です。議案一号、令和2年度補正予算について意見を申し上げます。当初予算は骨格予算として編成され、今回の補正予算では今後も引き続き実施すべき事業について、国の内示等をふまえ、今年度中に必要となる所要額を計上した、とのことであります。ただ依然として感染拡大が懸念される新型コロナウイルス感染症への対策、検査体制の拡充や県民生活、事業者の経営を支援する施策の拡充を今後ますますはからなければならない問題であるとか、さらには7月豪雨災害への対応に思い切った力を集中しなければならない点などにかんがみて、不要不急の事業等については勇気を持っていったん立ち止まり、県民、被災者の皆さんの生活と生業を支える予算の拡充をはかるべきであることを強調するものであります。そうした観点から、例えば人権施策・啓発の推進として計上されている同和関連予算1億8千万円余は見直し、削減が必要であります。企業誘致関連経費として、合わせて7億3千万円余が計上されております。そのすべてを全否定するわけではありませんが、やはりこれは精査して削減に努め、むしろ地元の雇用を守り、地域で懸命に踏ん張っている地場産業にこそ支援を強めるべきであるということを訴えるものであります。
 
 次に請第20号、国の責任による少人数学級の前進を求める意見書に関する請願についてであります。委員会では不採択という判断でありますが、採択を求めます。
 少人数学級の実現が、子どもの学力向上やいじめなど問題行動の減少、不登校の減少、さらに先生たちの過重負担軽減、子ども一人ひとりに行き届いた授業を行なえること、など多くの効果を発揮しているということは、文部科学省の調査でも明らかになっております。ただでさえ学校現場はいま、コロナによる長期休校にともなうカリキュラムの遅れを取り戻そうとつめこみが強められ、楽しみにしていた学校行事や修学旅行などが延期・縮小されたりする事態が生じています。そのため子ども達にストレスがかかり、クラスが荒れたりいじめや不登校が増加したりする傾向が指摘されています。ところが先生方は、消毒や空気の入れ替えなどコロナ対応の業務が増えた上に、マスク着用のため子どもたちのちょっとした表情の変化も気づきにくくなっているという状況であり、一人ひとりの子ども達に寄りそった対応がますます難しくなっている現状があります。こうした困難を解決する上でも、少人数学級の実現で一人ひとりの子ども達に目が行き届く環境を実現することが求められています。
 
 こうした中で、学校でいま大きな矛盾に直面している大問題が、感染症対策と40人学級の問題であります。新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は、「新しい生活様式」として、身体的距離の確保を呼びかけ、人との感覚はできるだけ2メートル空けることを基本としています。ところが40人学級では、前後左右の友達との距離が60センチから85センチ程度しか取れません。文部科学省から出されている、学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアルが9月3日に改定され、身体的距離確保の目安が感染者急増期において2メートルから1メートルへと変更されましたが、その基準さえも守ることができないほどに、子どもたちが多くの時間を過ごしている教室という空間は、子どもたちが詰め込まれてしまっているのであります。この問題を解決するには、一クラスの子どもの数を減らすしかありません。
 こうした中で、この間全国で様々な分野から、少人数学級の実現を求める声と運動が広がってきました。全国知事会、全国市長会、そして嘉島町の荒木町長が会長さんですが全国町村長会、これら3会長が連名で、「新しい時代の学びの環境整備に向けた緊急提言」を発表しました。現在の40人学級では感染症予防のために児童・生徒間の十分な距離を確保することが困難であるとして、子どもたちの学びを保障するため、少人数学級の実現に向けた教員の確保を文部科学大臣に要請する内容であります。総理大臣の私的諮問機関である教育再生実行会議、この有識者メンバーの中には蒲島知事も名を連ねておられますが、ここでも30人未満の少人数学級を求める意見が出されております。教育再生実行会議は7月20日に会議が開かれておりますが、ここで萩生田光一文科大臣は、「少人数学級を、私はめざすべきだと個人的には思っている。義務教育の普通教室の平均面積が64平方メートル、身体的距離を確保しながら40台の机を並べることはできない。新たな感染症が起きたときに、これはとてもではないけれども、40人学級は無理だ」と語っています。日本教育学会では、この機会に1クラス40人の学級定数を抜本的に見直す議論を急いで進める必要があると提言を出しました。7月には教育研究者らによるインターネット署名が始まったほか、全国の小・中・高、特別支援学校の校長会が、きめ細かな指導が可能になる少人数学級編成の検討を文部科学大臣に求めました。国においても、7月17日に閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針2020において、すべての子どもたちの学びを保障するため、少人数によるきめ細かな指導体制の計画的な整備について検討することが盛り込まれ、8月20日に開催された中央教育審議会の特別部会では、新型コロナウイルスの感染拡大をふまえ、少人数学級編成を可能とするなど、指導体制や施設、設備の整備を図ることを盛り込んだ中間まとめ骨子案が示されました。
 
 こうした中で、ついに文部科学省は、来年度予算案の概算要求に、少人数学級の検討を盛り込んだのであります。義務教育標準法を改正して正規の制度化をめざす意向だと伝えられています。こうした重要な変化がもたらされたのは、少人数学級を求める国民の声や全国の地方議会が決議した意見書などが政府を動かす力となったのは明らかです。ただ、今回の概算要求は規模も進め方も記されない、事項要求といわれるものであり、本当に法改正や予算がつけられるのかは全く未定であります。まさに少人数学級実現はいま、大変重要な局面を迎えています。こうした局面の中で今回、この請願が熊本県議会に出されているということを重く受け止めるべきだと私は考えます。良いものは良い。党利党略関係なし。必要なものは必要。ぜひ議員諸氏に置かれましては、議員としての矜持を発揮していただき、この請願を採択し、子ども達に少人数学級実現という素晴らしいプレゼントを贈ろうではありませんか。そのことを訴えて討論を終わります。

球磨川流域の復旧復興及び球磨川の治水問題に関しての質疑

印刷用PDFをダウンロードするには、ここをクリック(276kb)  9月議会 球磨川流域の復旧復興及び球磨川の治水問題に関しての質疑
 日本共産党 山本伸裕 2020年9月30日
 日本共産党の山本伸裕です。知事の議案説明における、球磨川流域の復旧復興の問題に関し、特に球磨川の治水問題についてお尋ねします。
 2008年9月、知事はダムによらない治水を極限まで追求することを選択し、川辺川ダム計画の白紙撤回を表明されました。なぜそのような決断に至ったのか、知事はそのときこう語っておられます。「そもそも治水とは、流域住民の生命・財産を守ることを目的としています。中略、いろいろな方々からお話を伺ううちに、人吉・球磨地域に生きる人々にとっては、球磨川そのものがかけがえのない財産であり、守るべき宝ではないかと思うに至ったのです。そのような、球磨川という地域の宝を守りたいという思いは、そこで生まれ育ったものでしか理解できない価値観かもしれません。しかしこのローカルとも言うべき価値観は、球磨川流域に生きる人々にとって、心の中にしっかりと刻み込まれているような気がします。またその価値を重んじることが、自分の地域を自らが守り、発展させていこうという気概を起こさせることになります。」云々。以下省略します。治水とは、住民の生命とともに財産を守らなければならないと。人吉・球磨地域に暮らす人々にとっての財産とは、守るべき宝とは、球磨川そのものであると。知事のこの判断、決断は、球磨川流域住民の実に80%が賛同し、ダムか、非ダムかという持ち込まれた対立構図は雲散霧消しました。そしてそれ以来の12年間、これは空白の12年間などと言われるようなものではなく、宝である球磨川の豊かな恵みが守られた12年間であり、流域住民は球磨川の恩恵を享受しながら、暮らしを営んでこられたわけであります。
 今回の水害発災後、私は多くの被災された方から共通してお聞きした事があります。それは、球磨川は悪くない、球磨川を憎む気持ちにはならないというお話であります。大変な苦難に直面されているというのに、それでもなお球磨川とともにこれからも暮らしたいという思いに触れたとき、私は、知事の12年前の決断は民意を見事に汲み取った県政史に残る素晴らしい決断であったし、その功績はいまもなお色あせるものではないと実感したしだいであります。
 ただ、一方で、気候変動のもとでこれまで経験したことのない豪雨が甚大な被害を及ぼすという新たな事態を受けて、これからの治水対策をどう進めていくのかという問題にいま直面しております。
 新たな事態のもとで、知事は川辺川ダムを含め、あらゆる選択肢を排除しないと表明されました。私は、再び住民の中に対立が持ち込まれてはならないという問題意識から、二つの点について知事にお尋ねします。
 第一点、気候変動によりこれまで経験したことのないような豪雨災害がいつどこで発生してもおかしくない状況であります。もし仮にダムを作るという結論に至ったとしても、そのダムができるまでに再び豪雨災害に見舞われたらどうするのかという問題は当然想定しなければなりません。例えば仮に五年後にダムができるから、そうなれば河床掘削も堤防かさ上げも必要ありませんなどといっている場合ではないのです。ダムが存在しないうちは、否が応でもダムなし治水に最大限の力を傾注し、極限まで進める責任が国・県にあります。この12年間、流域自治体から何度も河床掘削、堤防強化などの要請が繰り返し九地整に出されていたにもかかわらず、川辺川ダム建設事業の復活を想定していた国交省は、河川改修の要求を聞き入れませんでした。こうした不作為はもはや絶対に許されないということを強く国に迫るべきであると考えますがいかがでしょうか。
 第二点、球磨川豪雨検証委員会では、「市房ダムにより多良木地区で水位が90㎝低減された」とのことでありますが、それは今回、紙一重のところで緊急放流が回避されたことによるものであります。近年の豪雨災害では、ダムの緊急放流はもはや想定外の事態ではなくなってきています。ましてや今後、どこに線上降水帯が発生し、地域ごとにどのような雨の降り方が発生するのかという事は誰にも分かりません。特定の降雨パターンに当てはめ、一定の条件の下でしか機能しないダムの洪水調節機能が必ず働くということを前提とした河川整備では不十分であります。もしもダムからの放流によって急激に増大した流水で堤防の決壊が引き起こされ、住宅等が押し流されたとしても、ダムのおかげで逃げる時間ができました。ダムがあってよかったですね、などという話にはなりません。もはや今日、貯留型であろうが流水型であろうが、ダムの洪水調節機能喪失という事態を想定した治水対策を講じなければならないのは当然であり、ハード対策においては、ダムによる水位低減を前提としない河川整備を目指すべきである事は、至極当然のことだと考えますがいかがでしょうか。以上二点、知事にお尋ねします。
 
 (蒲島知事答弁)(骨子)
 ○2点のおたずねについて、一括してお答えする。
 ○今回のような洪水被害を二度と生じさせないという強い覚悟で、復旧・復興の取り組みを進めている。同時に、これまでの川辺川ダム問題における地域の対立の歴史を繰り返すことなく、球磨川の治水対策を導き出していくことが重要。
 ○現在、「令和2年7月球磨川豪雨検証委員会」を設置し、国、県および流域市町村で検証を進めている。
 ○河川工学の専門家の方からは、「流域治水」を進めるべきとのご提言を検証委員会にいただいている。
 流域住民の方々からは、ダムを早急に整備すべきとのご意見や、ダムの危険性についても検証すべきとのご意見など、様々なご意見が届けられている。
 ○今後の球磨川流域の治水の方向性については、検証をふまえ、これらのご意見などを参考に、あらゆる選択肢を排除せず検討してまいる。
 そのうえで、将来に向かって球磨川流域の安全・安心を築き上げること、球磨川の豊かな自然の恩恵を引き続き享受できるようにすることを、私に課された使命として全身全霊で取り組んでまいる。
 
 (山本のぶひろ再登壇)
 近年の豪雨災害は、もはやダムだけで洪水を防ぎきれるものではないということは国土交通省も認めています。しかもダムは構造上、緊急放流、あるいは自然放流を想定しているというのに、その下流はあくまでもダムによる水位低減を前提とした河川整備にとどめるというのでは、行政側の瑕疵責任は免れません。ダムによる治水効果は限定的なものであるということを踏まえる必要があります。
 今回の水害を受けて、全国のダムを手がけているスーパーゼネコン大成建設の会長が、蒲島知事を批判する発言をされています。また首相となった菅さんも、そのときは官房長官でありましたが、ダム建設に言及されています。
 国の権限代行による災害復旧が進められる中、かなりあからさまに知事にはプレッシャーがかかっているのではないかと存じますけれども、どうか流域住民の皆さんの思いとともに歩む姿勢をなくさぬよう知事に訴えて質疑を終わります。

豪雨災害における災害ごみの撤去問題に関しての質疑

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 日本共産党 山本伸裕 2020年8月4日
 日本共産党の山本伸裕です。議案第4号、専決処分の報告および承認についての議案のうち、市町村が取り組む宅地内の堆積土砂排除事業について、土木部長にお尋ねします。
 令和2年7月3日からの大雨により発生した災害廃棄物の処理等についての事務連絡が、環境省から県に出されています。その内容は、災害廃棄物の処理等にかかる補助制度が円滑に活用されるよう、国土交通省所管の堆積土砂排除事業と、環境省所管の災害等廃棄物処理事業の連携で、自治体が一括撤去できるという内容について、市町村への周知徹底を求める内容であります。さらに、7月6日付け環境省からの事務連絡では、被災者自身が、すでに事業者に委託してがれき撤去をした場合にも費用償還できる、とあります。さらに、全壊家屋や宅地内土砂混じりがれきの撤去のみが費用の償還対象となるわけではないということ、家電製品などリサイクル法対象品目の廃棄物についても災害廃棄物として一括撤去できることなども示されております。
 要するに、宅地内の堆積土砂も災害廃棄物も、すべて一括して仮置き場までの運搬は行政がおこないますということであり、なおかつそのための費用は、ほぼ全額国が補償しているのであります。
 今回県が専決で計上しております堆積土砂排除事業費5億4千万円は、国庫補助とならない土砂排除費用に対する市町村への補助、広域的な堆積土砂状況の調査及び処分方針決定のための基礎資料作成ということで、国による撤去事業を補完するものとなっております。
 基本的には、宅地内土砂は自宅前に出しておくということになっておりますが、自宅前に出す作業さえも困難であるという人の場合は、申請すれば宅地の中にまで入り込んで、直接排除してもらうこともできる事となりました。7月28日の衆議院災害対策特別委員会集中審査における武田良太防災担当大臣は、搬出が困難な方の家屋からの土砂と廃棄物の迅速な撤去に向け、内閣府、国土交通省、熊本県と連携し、大雨災害、新型コロナウイルス感染症に影響を受けている地元企業の方もお手伝いを、雇用としてやっていただこうということで、土砂や廃棄物の撤去をこうした方々に委託をする。さらに、自衛隊について、国交省と環境省の連携スキームにおいても、支援が必要な場合には協力してもらえる。当該自治体からの要請があれば、地元職員立会いのもとに、自衛隊に家屋内の作業をしてもらうことを要請することも検討していく・・・という答弁をされております。国からの事務連絡に加え、こうした内容が徹底されれば、被災家屋の片付け作業は大きく改善されることは明らかであります。
 一方で7月27日熊日新聞には、次のような記事が掲載されております。「災害ゴミの山 復旧阻む」人吉市中心市街地には、発災から3週間たった今も、道路脇や空き地に家具や家電などの災害ゴミが目立つ。市は「分別した上で、仮置き場まで運搬してもらうのが原則」としているが、被災者には余裕がなく、人手や車両も不足。たまったごみが、復旧作業を阻んでいる。と書かれています。発災当初から国が打ち出している土砂と災害廃棄物の一括撤去という方針が現場では全く活かされていません。私自身も昨日と一昨日、人吉市、球磨村、相良村、八代市坂本町、芦北町の各地を回り、直近の状況を確認しお話を伺ってまいりましたが、発災から一ヶ月もの期間が経過しているというのに、いまだに宅地内の土砂がれきの撤去が全く進んでいない家屋が多数取り残されているという、余りに残酷な現実があちこちに存在するわけであります。県として改めて、堆積土砂や災害廃棄物は一括撤去できるということ、仮置き場までの運搬は行政がおこなうということ、自治体や被災者の負担はないということ、もし撤去作業を業者に頼んだ場合には、それにかかった費用も国が負担しますということ、これらを被災市町村、および被災者に周知徹底し、少なくとも災害ゴミの撤去は迅速に解決させるべきではないでしょうか。以上、土木部長にお尋ねします。
 
 (上野土木部長答弁)
 市町村が取り組む宅地内の堆積土砂排除事業についてお答えをいたします。
 7月豪雨災害で発生した土砂混じりの大型災害ごみや瓦礫等の撤去につきましては、新型コロナウイルスの影響によるボランティア等の人手不足が進捗の妨げとなっております。
 国土交通省の堆積土砂排除事業と環境省の災害等廃棄物処理事業との連携スキームでは、単なる土砂だけでなく、家電等の災害廃棄物を含む瓦礫混じり土砂も一括して、さらに家屋内についても撤去、運搬ができることになっております。
 また、その費用につきましては、最終的に国土交通省と環境省が重量案分により分担されることとなっております。
 引き続き、事業主体である市町村がこうした事業を活用し、円滑に、かつ一日も早く住環境の整備を推進できるよう、土木部と環境生活部で密に連携し、職員を派遣するなど、被災市町村を全面的に支援してまいります。
 
 (山本のぶひろ県議再登壇)
 せっかく国や県がそのような方針を出しておられるわけですから、ぜひ被災市町村、そして被災者に周知徹底をされていただきたいと思います。
 先日私が伺ったところでは、実際に、例えば土砂の除去については、土のう袋に入れないと持っていかない、あるいは逆に、別の自治体では、土のう袋に入れたら持っていかない、そういった対応が取られているということで、これは、今の国の出している一括撤去の方針に全くそぐわないようなやり方が、現実にいまだに残っているというような状況であります。ぜひ現場に周知徹底をして、そして被災者の人たちが早期の、このごみの片づけに対して希望が持てるような方向性をぜひお知らせをしていただきたい。そのことを重ねてお願いをして、質疑を終わります。

『部落差別解消の推進に関する条例』に対する反対討論

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 日本共産党 山本伸裕 2020年6月23日
 日本共産党の山本伸裕です。
 議案1号、今年度一般会計補正予算案についてでありますが、新型コロナウイルス感染症への対応分、および感染症対応下であっても着実な実施が必要な県民の安全・安心に資する事業を中心に計上した、との説明であります。私は一般質問でも申し上げましたが、新たな感染拡大の波に備えて検査や医療支援の抜本的拡充、教職員の増員や県民・事業者への継続的連続的支援が必要であり、そのためにも国の臨時交付金の枠内の対策予算にとどまらず、大幅な増額が必要であると訴えるものであります。そのためにも不要不急の大型事業をストップさせ、予算をコロナ対策にまわすなどの組み換えを求めます。一方、すでに国の第二次補正予算の成立を受けて、早くも追加の補正予算を議会に提案しようという自治体もでております。熊本県は一歩先んじた支援をやっていると、繰り返しアピールしておられるわけですから、本日で6月定例の議会は閉会されますけれども、急いで新たな支援策の拡充を具体化した、追加の補正予算を編成し、提示していただくよう求めるものであります。合わせて、コロナ対策に便乗してマイナンバーの利用を推奨する政府の動きがありますが、今回国からの給付金支給において混乱を拡大した大きな要因の一つは、国民的利用が進んでいないマイナンバーカードをこの機に無理やり普及させようとしたからであります。今回、補正予算の中にもマイナンバーカードを活用した環境整備に要する経費が計上されておりますが、マイナンバーに頼らず、一刻も早く必要な支援を必要としている人に届けるということを最優先にした仕組みこそ考えるべきであります。
 
 次に議案12号、熊本県部落差別の解消の推進に関する条例制定の提案に抗議し、廃案にするよう強く求めるものであります。
 本条例の目的は、2016年に制定された部落差別の解消の推進に関する法律(以下、ここでは解消法と呼びます)をふまえ、部落差別のない社会を実現することである、と強調しています。しかしこの解消法自体が、逆に部落問題の解決を妨げるものである、とまず指摘しなければなりません。
 1969年に同和対策特別措置法が施行されて以降、2002年3月までの33年間に渡り、国と地方あわせて約16兆円という膨大な予算が同和行政に費やされました。それまで同和地区に住む方々が経済的・社会的・文化的に低位に置かれていた状況は、他地区と遜色ないまでに環境改善が進みました。やがて、同和地区に対する必要以上の特別な施策を続けることは、逆に新たな差別意識を生み出すことにつながるとして、いわゆる同和行政は終了し、もし貧困や環境整備についての格差が残っているとすれば、それは一般行政として、それを必要とするすべての住民を対象に行う、という流れへと移行したのであります。
 同和行政の終了が求められることとなったもう一つの側面があります。それは民間運動団体による行き過ぎた言動によって、部落差別の解消が阻害され、固定化されようとしてきた歴史的事実であります。1986年に政府が設置した地域改善対策協議会がまとめた意見具申は、そのことを痛烈に指摘しています。「第1に、国および地方公共団体は、民間運動団体の威圧的な態度に押し切られて、不適切な行政運営をおこなうという傾向が見られる。また周辺地域との一体性や一般対策との均衡を欠いた事業の実施は、新たにねたみ意識を各地で表面化させている。第2、同和関係者を過度に優遇するような施策の実施は、むしろ同和関係者の自立、向上を阻害する面を持っているとともに、国民に不公平感を招来している。第3、民間運動団体の行き過ぎた言動に由来する同和問題は怖い問題であり、避けたほうが良いとの意識を発生させ、この問題に対する新たな差別意識を生む要因となっている。同時にまた、えせ同和行為の横行の背景となっている。第4、同和問題について自由な意見交換ができる環境がない事は、差別意識の解消を妨げている決定的な要因となっている。民間運動団体の行き過ぎた言動が、同和問題に関する自由な意見交換を阻害している」と。
 こうした声が高まるもとで、同和行政は終了しました。ところが歴史的な役割を終えたはずの同和行政の復活を企図し、4年前に解消法が策定されたのであります。国会では賛成多数で成立しましたが、しかしながら衆参それぞれで異例ともいうべき付帯決議が採択されました。それは、過去の民間運動団体の行き過ぎた言動等が、部落差別の解消を阻害していた要因となっていたという事実を認定し、教育および啓発も、あるいは部落差別の実態にかかる調査についても、その運用によっては、新たな差別を生むものになってしまいかねない、という危険性を指摘した内容であります。部落差別の解消をうたった法律であるのに、逆にこの解消法によって新たな部落差別を生み出す危険が生じる、と付帯決議では指摘しているのであります。
 しかしながら今回提案されている条例案は、意見具申や付帯決議で警鐘乱打された危険性についてなんらの検討もありません。そもそもこの条例には、部落差別とは何かという定義が示されておりません。一体何が部落差別に当たるのか、その判断をだれがやるのか、まったく不明瞭であります。先ほどの意見具申では、以下のように指摘しています。「何が差別かということを民間運動団体が主観的な立場から恣意的に判断し、抗議行動の可能性をほのめかしつつ、些細なことにも抗議することは、同和問題の言論について国民に警戒心を植え付け、この問題に対する意見の表明を抑制してしまう」と。この警告を真摯に踏まえるべきではないでしょうか。
 さらに本条例では、具体的に何を行なうのかというと、地域の実情に応じた施策を講じる。相談体制の充実、教育および啓発、とあります。条例の根拠となっている国の解消法は予算措置のない理念法でありますが、しかしこの条例が成立することになれば、地域の実情に応じた施策、相談体制の構築、教育および啓発が予算措置をともなって実行されていく根拠が作られることになります。まさに様々な弊害を生み出す中で廃止されたはずの同和行政・同和対策が息を吹き返すことにつながっていくのではありませんか。
 もちろん、部落差別というものが存在してはならないということは言うまでもありません。こうした認識は、現代において圧倒的多数の県民に共有されているのではないでしょうか。旧同和地区の住民をあからさまに侮蔑したり、忌避するような態度をとることは恥ずべきことであるという認識は、市民社会の常識として、深く根付いていると私は思います。もちろん何らかの偏見や誤解から、差別的な言動を取る人も、時には出てくるかもしれません。インターネット上に心無い書き込みがあったりするかもしれません。しかしそれは、解消法のような法律がなくても、差別解消の条例制定を待たずとも、市民間の相互批判によって解決していけるところまで私達の社会は発展してきているのではないでしょうか。法律や条例の制定は返って逆効果となり、むしろ多くの弊害を生み出しかねない事は、これまでの歴史を振り返って考えても明らかではないでしょうか。全国的にも条例制定は進んでおりませんが、そうした中で熊本県が今回条例案を提案してきたことは、極めて残念であります。廃案にされるよう訴えるものであります。
 
 請第17号、最低賃金の大幅引き上げと全国一律制度を求める請願でありますが、不採択とせず採択すべきであると考えます。
 いまコロナ禍のもとで個人請負の出前配達、ウーバーイーツなど雇用によらない働き方や、労働規制が及びづらい働き方が増えています。雇用調整助成金は賃金に基づき助成されますが、非正規雇用労働者の多くは最賃近傍の実態にあり、コロナ禍のような災害発生時には、休業手当だけでは生活できなくなります。
 健康で文化的な最低限度の生活が営める賃金の仕組みに変えていくことが必要であります。請願の採択を求め、討論を終わります。

6月本会議一般質問(答弁骨子付き)

印刷用PDFをダウンロードするには、ここをクリック(628kb)  6月本会議一般質問(答弁骨子付き)
 日本共産党 山本伸裕 2020年6月15日
 *見出しをクリックすると本文へジャンプします
  ①PCR検査の拡充について
  ②医療・介護への支援強化について
  ③深刻化する県民の暮らしや事業者に対する支援の強化を
  ④コロナ禍のもとでの子どもの教育環境について
  ⑤不要不急の事業ストップしコロナ対策に全力を。立野ダム事業費増について
  ⑥大空港構想について

①PCR検査の拡充について
 日本共産党の山本伸裕です。会派としては一人でありますが、私は日本共産党を代表して質問致します。
 新型コロナウイルスでお亡くなりになった方々への心からの哀悼の意を申し上げますとともに、闘病中の皆様にお見舞いを申し上げます。また医療従事者をはじめ、社会インフラを支えて頑張っておられるすべての方々に感謝申し上げます。
 新型コロナウイルス感染症の広がりは、かつて私たちが経験したことのない、国難ともいうべき新たな脅威をもたらしております。党派・会派を超えて私たちは、住民の命と健康、暮らしを守り、国難を乗り切るという立場で力を尽くしていかなければならないと決意しております。緊急事態宣言が解除されたとはいえ、感染はいつ再燃してもおかしくありません。私は、いまこの時期に本当に真剣に、手だてを打っておかなければならないのではないかと考えている問題について、知事はじめ執行部の皆様方にご見解を伺いたいと思います。どうぞよろしく願い申し上げます。
 
 まず、検査の問題についてお尋ねします。
 いま熊本県は、感染の防止と地域経済の回復という、二つの目標を同時にすすめていくことを強調しています。ただ心配なことは、第二波第三波の感染拡大の波が到来することであります。感染拡大の波が来るたびに緊急事態宣言や自粛要請、いっせい休校が繰り返されるという事態は絶対に避けなければなりません。そのためにも検査体制の強化が決定的に重要であります。日本医師会のCOVID-19有識者会議が5月13日にまとめた「COVID‐19感染対策におけるPCR検査実態調査と利用推進タスクフォース」中間報告書によると、検査体制の拡充は、COVID‐19と共生していく上で、医療と社会経済を維持するための社会基盤であると認識する必要があると強調しています。広島、岩手、愛知など18道県の知事が、感染拡大を防止しながら経済・社会活動を正常化するための緊急提言を発表し、これまでのように強い症状が現れた有症者に限定して受動的に検査をおこなうのではなく、無症状者も含めて検査対象を適切かつ大規模に拡大し、先手を打って感染拡大を防止すべきだと強調し、そのためにPCR検査能力を現在の約2万件から10万件、20万件へと引き上げる事を提言しています。関西経済連合会の松本正義会長も、医療・検査体制拡充が経済回復に寄与するとして、自治体・政府は今こそ、感染状況の検査体制や医療体制を拡充させる必要があると強調しておられます。検査の拡充は医師会だけでなく、全国の首長や経済界からも切実な願いとして声が上がっているわけであります。
 
 そこで蒲島知事にお尋ねします。
 第一に、熊本県としてさらに、PCR検査体制の抜本的な強化が必要ではないでしょうか。今回、PCR検査センター設置費を含む検査体制の強化に約4億5千万円が提案されている事は一歩前進と評価します。しかし、一日あたり全国規模で10万から20万件に引き上げるべきだというレベルから考えれば、当然熊本県としても一日数千件という規模の検査体制が必要になるわけで、全く予算額としても足りません。少なくとも、検査体制の拡充という問題をどう位置付け、いつまでにどれだけ増やすのか、はっきりした目標をすえて取り組むべきではないでしょうか。そのうえで、まず当面の手立てとして、自分が住んでいる市や町や村で検査が受けられるような検査体制を作るべきであり、そのための十分な財政的・体制的支援をはかるべきだと考えますがいかがでしょうか。
 第二に、医師が必要だと判断すれば相談センターを介さず検査が受けられる仕組みがつくられましたが、さらに検査をおこなう対象を広げるべきであります。これまでの受動的検査から、積極的検査への戦略的転換を、熊本県としても宣言していただきたい。症状の有無にかかわらずすべての医療・介護従事者および入所者、入院者など、感染リスクの高い方々を対象として優先的に検査を実施すること。症状がなくてもすべての濃厚接触者が速やかに検査を受けられるようにすることなど、先手を打って感染を防止する積極検査体制をつくるべきであると考えますがいかがでしょうか。
 第三に、検査体制拡充のためには、どうしても国に対して大幅な予算の拡充を強く訴える必要があります。先程紹介した日本医師会有識者会議によると、PCR検査が進まなかった最大の理由は国から財源が全く投下されていないことだと指摘し、数千億円規模の予算を試算しています。ところが安倍政権の第二次補正予算ではPCR検査体制の整備は366億円に過ぎません。桁が一桁足りません。抜本的な予算拡充が必要であります。ぜひ知事に置かれましては、18道県知事の共同声明に全く同感だと明言していただきたいと思いますがいかがでしょうか。
 以上、お尋ねします。
 
 (答弁)①PCR検査体制拡充についての質問に対する知事答弁(骨子)
 ・感染が押さえこまれている今こそ、第2波に備える時期。柱の一つはPCR検査体制強化である。
 ・これまでも、機器・人員増強により必要な検査体制を確保してきた。今後は、医師により検査が必要と判断された県民が、より身近な場所で迅速に検査を受けられるよう整備する必要があると考えている。
 ・当面の目標として、まずは4圏域でのPCR検査センターの整備予算を提案しているが、その他の地域でも関係者と協議中であり、地域の実情に合った検査体制の整備を全圏域で進めていく。
 ・検査対象については、クラスター発生の未然防止等を目的に、独自に症状のない接触者の方などにも拡大してきた。今後も、医療機関において、医師の判断で手術前や転院時の患者などにも検査できる体制整備をはかる。
 ・国からの財政支援についてはこれまで何度も要望を行なってきた。また、18道府県知事の共同声明では検査体制の早急な整備等を提言されているが、同じ思いで取り組んでいる。今後も、全国の知事と連携をはかりながら、新型コロナウイルス感染症対策に全力で取り組んでまいる。
 
 
 ①PCR検査体制拡充についての知事答弁に対する切りかえし
 18道県の知事と同じ思いであるとのことですので、ぜひ賛同者にお名前を連ねていただきたいと思います。日本は諸外国と比較しても圧倒的に検査件数が少なく、誰が感染し、誰が抗体を持っているか、圧倒的多数がまだわかっていません。こんな状況のもとでは、ワクチンが普及するまでの間、感染爆発がもし起きればそのたびごとに全国民に行動の自粛を呼び掛け、経済活動をストップさせなければなりません。こんなことを繰り返していたら、本当に国民の暮らしも経済もつぶれてしまいます。感染爆発を抑え、経済活動もストップさせない、その決定的なカナメは第二波の兆候を的確につかみ、感染拡大を早期に封じ込める。そのためにも検査体制の抜本的強化が必要だということ、大幅に予算を増やすべきだということ、ぜひ危機感をもって対応していただきたいし、国にも強く声をあげていただきたいと思います。
 
②医療・介護への支援強化について
 次に医療・介護への支援強化についてお尋ねします。新型コロナウイルス感染症に立ち向かい奮闘してきた医療機関が今、危機に直面しています。日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会3団体による緊急調査の結果は衝撃的なものでありました。コロナ患者を受け入れた病院は、4月は平均1億円の赤字であります。直接コロナ患者に対応していない病院・診療所でも大規模な受信抑制によって6割以上の病院が赤字であります。私も、まだ一人の感染者も出ていないある町の、開業医さんからお話を伺いましたが、そこでも受診抑制で患者が減っているというお話を聞きました。このままでは職員にボーナスも払えない、この6月にも資金ショートしてしまう。まさに経営難による医療崩壊が引き起こされかねない状況であります。これを防ぐ手立ては、強力な財政支援しかありません。そもそも深刻な受診抑制が引き起こされたのは、PCR検査が抑制されてきたために、コロナ受け入れ医療機関であるか否かにかかわりなく、病院が危険な場所となってしまったからであります。受診抑制と医療崩壊の危機は政治の責任と密接にかかわっております。
 国の2次補正予算案で、コロナ対応の医療機関に1.2兆円規模の財政支援が計上されました。これを速やかに現場に届けるとともに、さらなる支援拡充が必要であります。いっぽう、非コロナ医療機関の経営危機に対する財政支援は全くといっていいほどありません。コロナ対応の医療機関と非コロナ医療機関は役割分担で日本の医療を支えているわけであります。その全体の経営を守り抜く姿勢が必要であります。また、事業活動の制約により経営危機に直面しているのは介護施設も同様であります。
 私が声を大にして申し上げたいことは、住民の命を守る医療機関が存続の危機に直面している状況を放置したままでは、第二波への備えなどできるはずがないということであります。
 
 そこでお尋ねします。第一に、患者を受け入れている医療機関とともに、地域の通常の医療を担っている診療所、病院、歯科、眼科、耳鼻科、小児科などすべての医療機関、そして介護事業所が存続できるよう、前年同月の請求実績に基づいた診療報酬、介護報酬を支払うなど、減収を補填する支援策を実現すべきではないかと考えます。また鍼灸院など保険外診療の事業所についても同様に、前年度収入が確保されるような支援策の具体化が必要であります。このような財政支援は巨額の費用が必要となり、当然ながら国の抜本的な予算拡充なしには実現は不可能でありますが、医療や介護の基盤が崩壊すれば、地域社会も地域住民の生活も成り立たないという観点から、ぜひ熊本県としても強力な財政支援を国に対し要望していただきたいと考えますがいかがでしょうか、
 第二に、医療従事者への危険手当支給をはじめ処遇を改善すること、依然として不足状態が続いている医療用マスクや防護具、医療用材料を国・県の責任で確保し、安定的に支給することを求めます。
 第三に、コロナ感染症病床の圧倒的部分を公的医療機関が担っているように、公的医療体制の確保こそが国民のいのちと健康を守るとりでとなっております。こうした役割を再認識し、公的医療削減から拡充へと転換をはかるべきであります。赤字経営をやり玉にあげるなどして進められようとしてきた公立病院の再編統合計画を白紙撤回するよう、国に求めるべきではないでしょうか。
 第四に、この間エボラ出血熱やエイズ、SARS、MERS、新型コロナウイルスなえど、毎年のように新たな感染症が発見され、感染症への取り組み強化は人類的な課題となっているにもかかわらず、国全体としても、そしてこの熊本県においても、保健・公衆衛生の体制は大きく弱体化してきたといわなければなりません。保健所や地方衛生研究所等の予算や人員を緊急に抜本的に拡充、補強すべきであります。こうした立場で国に対しても財政支援の強化を求めるべきであると考えますがいかがでしょうか。
 以上、健康福祉部長に見解を求めます。
 
 (答弁)②医療・介護への支援強化についての質問に対する健康福祉部長の答弁(骨子)
  ・医療機関等への財政支援について、医療機関や介護事業所の実情把握に努め、国に必要な支援を求める。
  ・医療従事者の処遇改善について、県独自の協力金や国の第二次補正予算の慰労金を速やかに支給できるよう準備を進める。
  ・医療用物資について、国に安定供給の仕組みの維持を要望するとともに、県独自の備蓄を進める。
  ・公立・公的医療機関の役割の再検証について、今回の感染症対応を通して改めて確認された担うべき役割等も踏まえ協議を進める。
  ・保健所や地方衛生研究所について、公衆衛生対策のさらなる強化のため、国に必要な予算の確保を要望する。
 
 ②健康福祉部長答弁に対する切り返し
 
 健康福祉部長が今答弁された診療報酬の概算前払い制度は、のちに生産して差額を国に返さなければならないわけで、一時しのぎにはなるものの、経営を支える根本的な支援とはならないものであります。いま本当に危機に直面している病院の存続を守らなければならない問題は喫緊の課題です。いまさかんに「医療関係者に拍手を送ろう、感謝しよう」と言われておりますが、そうした気持ちが行政に本当にあるのならば、経営の危機で職員に夏のボーナスも出せないという事態こそ改善するために支援を強めるべきであるということを強調したいと思います。
 厚生労働省は、今後国内で新型コロナウイルス感染症患者数が大幅に増えた時に備え、各都道府県ごとに、計算式を用いて、ピーク時の外来受診患者数、入院治療が必要な患者数、重傷者として治療が必要な患者数をそれぞれ推計しています。それによると熊本県では感染ピーク時、外来受診患者数で6081人、一日あたりです。入院が必要な患者数一日あたり3328人、重傷者として治療が必要な患者数111人であります。熊本県は他の県に比べて医療体制が整っています、などと胸を張っている場合ではありません。もし熊本県も含めて第一波を上回る感染拡大の波が押し寄せれば、今のままでは医療体制は深刻な崩壊の危機に直面することは必至であります。公的医療機関の再編統廃合の議論などもってのほかだと言わなければなりません。国と地方自治体がいま総力をあげて、医療介護を守る体制を構築することに総力をあげることを、重ねて求めるものであります。
 受診抑制は医療機関にとっても深刻ですが、患者にとっても命と健康が脅かされる事態となります。医療機関の感染対策の徹底を支援しつつ、同時に患者が安心して病院にかかれるような環境を整備する必要があります。国民健康保険の滞納者に交付される資格証明書を持っている方でも、保険証と同様の負担割合で受診できることがすべての対象者に知らされるよう、市町村を通じての周知徹底をお願いします。また、国保税、介護保険料を減免する市町村への財政支援をぜひ具体化していただきたいと思います。
 
③深刻化する県民の暮らしや事業者に対する支援の強化を
 次に、県民生活、事業者等への引き続く支援についてお尋ねします。仕事や収入を失った労働者、取引をキャンセルされたフリーランサー、廃業の危機に直面する自営業者、生活が困窮するシングルマザー、バイトがなくなり学業継続が困難になっている学生、日本語に不慣れなことから仕事をなくしても再就職や給付の手続きもままならない外国人労働者等々、コロナ禍のもとで生じている生活困窮はあらゆる層に広がり、被害は続いています。この間、日本共産党、立憲民主党、国民民主党、社会民主党、新社会党、そして熊本民主連合の県内野党合同による実態聞き取り活動、また日本共産党独自にも商工団体や農協、観光協会、大学など訪問するとともに市民アンケート、学生アンケート、大衆団体と共同した何でも相談会を実施するなど、私達は各分野から深刻な実態を伺ってきました。ある料理店では、いつも笑顔で接客をしていたご主人の顔は青ざめ、声を震わせながら、キャンセルのバツ印で埋まったスケジュール帳を見せてくださいました。あるイベント関係の事業主さんは、従業員に支払う給料の事を考えると夜眠れなくなると話されました。ある作業所の代表の方は、自分の私財を売却しながら、固定費の支払いを捻出しているというお話をされました。熊本地震から頑張って立ち上がって、少しずつ積み上げてきたものが、あるいは親の代から守ってきた看板が、あっという間に奪われてしまいかねない。こんな無念があるでしょうか。自粛要請は解除されたものの、依然として暮らしや営業を支える支援が切実に求められている状況には変わりありません。国の定額給付金、持続化給付金、雇用調整助成金、あるいは県の休業要請協力金、事業継続支援金。支援策は打ち出されましたが支給までに時間がかかりすぎる、問い合わせても電話がつながらない、支援が届くまで持たないなどの声が後を絶ちません。大事なことは、必要としている皆さんに一刻も早く支援を届けること、そして一回限りの支援で終わらせず、連続的・継続的に第二弾第三弾の支援を打ち出していくことであります。
 政府と熊本県は、住民に新しい生活様式を実践するよう求めています。熊本県がホームページで協力を求めている新しい生活様式というものは、例えば買い物では通販も利用しましょうとか、筋トレやヨガは自宅で動画を活用しましょうとか、イベント開催もいきなり全面解禁ではなく段階的に緩和していきましょうなどと呼びかけられています。これらは新たな自粛要請とでも呼ぶべきものであり、県民がこの要請に答えれば当然商店や事業所へのマイナス影響は続いていくわけであります。県民に新しい生活様式を求めるのであれば、新たな補償も具体化すべきであると思いますが、商工観光労働部長に見解をおたずねします。
 
 (答弁)③県民・事業者への支援強化に対しての商工観光労働部長答弁(骨子)
 ・県では、事業継続を後押しするため、休業要請等に協力された中小企業等に対して、県独自の2つの制度(休業要請協力金、事業継続支援金)を創設。
 ・とくに、事業継続支援金は、休業要請の対象外の飲食店などを含め、感染拡大の影響を受けている多くの事業者を幅広く支援。
 ・さらに、資金繰り対策や雇用調整助成金の活用などを含め、パッケージによる支援をおこなってきた。
 ・今後、感染拡大防止と、県民生活・県経済の回復の2つのベストバランスに向けた取り組みが大事。
 ・そのため、県民には、「新しい生活様式」を実践していただくとともに、事業者にも、生産性向上等新たな取り組みを進めていただく必要がある。
 ・国では、「新しい生活様式」に対応した、前向きなビジネスモデルへの転換など、生産性の向上を目指す中小企業等を支援する持続化補助金などが拡充された。
 ・県でも、飲食店のデリバリーサービス導入や宿泊施設の感染防止対策強化に対する補助金等を新たに実施する。
 ・さらに、国に対して、持続化給付金の複数回の給付などについても要望している。
 ・これからも、事業者の「新しい生活様式」に合わせたビジネス展開の組み合わせを、県として、国の制度も活用しながら、幅広く支援をおこなってまいる。
 
 ③商工観光労働部長答弁に対する切り返し
 国に対し要望していただくことは当然でありますが、熊本県としても自粛要請の期間を延長したわけですから、休業要請協力金の追加支援というものも当然検討されるべきであろうと思います。熊本県商工会連合会の調査で宿泊業、飲食業をはじめ県内中小企業の売り上げ減少が深刻な実態であることが改めてうきぼりになっております。地域経済と県民のくらしを支えてきた中小企業を守る支援、商店の灯を消さない支援、熊本の基幹産業である農業をこれまで支えてきた家族経営の希望の灯を消さない支援、観光地の経済を支えてきた観光産業、宿泊業への支援の拡充を訴えるものであります。
 先日、熊本大学に通う学生さんとお話しする機会がありました。自分の生活費をアルバイトで稼いでいる下宿生の学生さんです。居酒屋のバイトがほとんどなくなり、何とか家庭教師のバイトで収入を得ているけれども食費はひと月1万5千円以内に抑えないとやっていけない。最近肉を食べていません、とのお話でした。5月20日の専決処分で生活困窮学生等への支援2億円余が計上されましたが、支給の対象は生計維持者が住民税非課税となっております。知事、ただでさえ世界一の高学費に苦しめられている多くの学生が、このコロナ禍で追い討ちを受け、就学の継続の危機に直面しているわけであります。子どもたちのためにとご寄附いただいたありがたいご好意に甘えるだけではいけないと思います。さらに上乗せをして、すべての学生を支援すべきです。知事はいつも、夢が大事だと強調されるではありませんか。ぜひ、若者が夢をあきらめないで前に進めるように背中を押していただきたいと思います。合わせて定時制通信制で学ぶ学生を支える支援もぜひお願いしたいと思います。
 また、こんなご相談も先日お聞きしました。県のブライト企業の認定を受け、なおかつよかボス企業に登録している会社で働く派遣社員のご家族であります。派遣社員がどんどん切られている。6月中には会社で働く派遣社員が全員解雇されるのではないかといった内容でありました。ブライト企業の認定は、地域の雇用を大切にしている、従業員とその家族の満足度が高いことなどを要件としております。県が認定しているからにはそれにふさわしい実践が貫かれているのか、この際、改めて実態を調査し、必要に応じて適切な指導を行なうなどの対応が必要ではないかと考えますので申し上げておきたいと思います。
 
④コロナ禍のもとでの子どもの教育環境について
 
 次の質問に移ります。
 約3ヶ月にも及ぶ学校休業は、子どもたちの成長・発達に深刻な影響を及ぼしています。長期に授業がなかったことは、子どもの学習に相当の遅れと格差をもたらしました。また家庭内暴力や児童虐待の増加など、家庭環境によってかつてないような不安やストレスを抱え込まざるを得なかった児童もいます。学校再開で何よりも求められていることは、こうした子どもたちの不安やストレスを受け止め、一人ひとりを大切にする手厚い教育ではないでしょうか。
 県教育庁が示した今後の教育活動を見ると、臨時休校にともなう学習の遅れへの対応として、一日6時間から7時間に増やすなど時間割編成の工夫、学校行事の重点化や準備期間の短縮、夏休みや冬休み期間の短縮などの組み合わせが提示されています。遅れを取り戻そうと過度な詰め込みをおこなえば、子どもたちに新たなストレスをもたらし、子どもたちの成長をゆがめ、学力格差をさらに広げることにもなりかねません。教科書全てを駆け足で消化するやり方では子どもは伸びないとの指摘もあります。子どもたちの実態から出発し、学力だけでなく人間関係の形成、遊びや休息をバランスよく保障する、そうした柔軟な教育をすすめていくためには、何よりも子どもたちを直接知っている学校現場の創意工夫を尊重することこそ必要であります。
 感染防止のための社会的距離を確保しつつ、子どもたちが安心して学べるようにするには、一学級あたり20人程度の生徒数に抑えることが必要です。学校再開後の学級では分散登校に取り組むなど多くの学校で少人数学級が実現しました。しかし20人程度学級を維持するためには、教員数が絶対に足りません。一般社会の中では感染拡大防止のために新たな生活様式が求められ、三密をさけましょうということが繰り返し言われているというのに、学校現場では40人学級に戻さざるを得ない状況になっているのであります。
 また、学校現場における先生方の負担も過重なものがあります。感染症対策として毎日の消毒、清掃、健康チェックなどこれまでになかった多くの業務が生じています。次の感染拡大の波に備え、教員と各家庭とのオンラインの整備を進める業務も増えています。元々異常な長時間労働で働いている教職員にそれらの負担を課すならば、教育活動への注力がそがれかねません。日本共産党のアンケートに寄せられた30代の若い女性の先生からのご意見でも、「すでに先生たちは疲弊気味です。私が一番不安視しているのは、平時でさえブラックを通り越して漆黒状態なのに、コロナを機に働き方改革がさらに脇に追いやられてしまうのではないか。楽をしたいわけではなく、当たり前の労働時間にしてほしいだけです、という切々たる訴えが寄せられています。
 そこで具体的に質問します。
 第一に、子どもたちへの手厚い教育環境を保障するうえでも、また感染症対策のうえでも、20人程度の少人数学級を維持していくことは絶対に必要なことではありませんか。そのためには、小中高校の教員を大幅に増員することが必要であります。もちろん、養護教諭やSC,SSWの増員なども、支援が必要な子どもたちへのきめ細かな把握のためにも重要であります。場合によっては教室確保のためのプレハブ建設や公共施設の利用の促進なども必要となるでしょう。こうした予算措置を直ちに具体化していただきたいと思いますがいかがでしょうか。
 第二に、学校現場の創意工夫を尊重するうえでも、それぞれの条件を無視した一律の方針押し付けはやめるべきであります。具体例として一つ提案しますが、全国一斉学力テストはそれぞれが競争に追い立てられ、過去問対策など独自の学習プランが保証されないなど中止を求める声がこれまでもありましたが、今回のコロナ拡大や休校の影響を考慮して中止されました。熊本県がゆうチャレンジの一環としておこなっている県学力調査もまた中止されるべきではないでしょうか。
 第三に、学校給食は子どもの大事な栄養摂取の機会でありますが、生活苦に直面しているご家庭にとって給食費負担が厳しいところもあります。自治体によっては学校給食費の補助、あるいは無償化に踏み出すところも広がっています。県として給食費補助に対する助成をおこなうべきではないでしょうか。
 以上、教育長にお尋ねします。
 
 (答弁)④子どもの教育環境に関する教育長の答弁(骨子)
   (教員の増員について)
 ・本県では、これまで35人以下学級の実現に向けた学級編成の引き下げや人材確保が必要と考え、教職員の定数改善など、国の財源措置の拡充を求め、毎年施策提案を行なっている。
 ・今回、小中学校においては、夏休み期間中に学習支援員を配置して、補修等の臨時授業をおこなう市町村に対し、支援員の配置にかかる経費助成のための補正予算を今定例会に提案しているところ。
 ・スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーについても、通常の配置に加え、臨時的に派遣する体制を整えている。
 ・今後も引き続き、国に対して必要な教育環境の整備のための予算確保に向けて積極的に働きかけてまいる。
 
 (学校の創意工夫による取り組みの尊重と『ゆうチャレンジ』の中止について)
 ・夏休み期間中に補修等の臨時授業をおこなう市町村に対し、支援員の配置にかかる経費助成のための補正予算を提案中である。
 ・県学力・学習状況調査は、昨年度から民間委託し、個人票や学習プリントを提供するなど、主体的な学びが推進できるよう改善を行なった。
 ・個人票や学習プリントは、臨時休業期間中における家庭学習の際にも効果的な活用が見られた。
 ・臨時休業長期化による学力の定着と学習および生活の状況の懸念については、改善に向けての取り組みを進めている。
 ・子どもたちの実態に応じ、学校が創意工夫した取り組みを講じていくためにも、今年度も県学力・学習状況調査を実施してまいる。
 
 (学校給食費補助に対する助成について)
 ・市町村立学校の学校給食費の保護者負担に対する助成については、学校設置者である市町村で行なうこととなる。県教育委員会としては、国の事業や制度などについて適時、情報提供を行ない、市町村を支援する。
 
 ④教育長答弁に対する切り返し
 20人程度の少人数学級の実現でありますが、おそらく最近の少子化傾向で学校には空き教室もあるだろうし、地域によってはすでに20人以下の学級も実現しています。県としてすべての小中高校で一クラス20人程度の学級を実現するためにはどれだけの先生の増員が必要なのか、直ちに明らかにして先生の加配・臨時採用などすぐにでも先生を増やして国の対応待ちにならず、いち早く全県下の小中高校全クラス20人程度の学級を実現すべきではないでしょうか。熱中症やインフルエンザといった他の疾患と新型コロナ感染の波が重なってしまえば大変なことになるという危機感をもって、直ちに手を打っていただきたいと思います。
 熊本県学力・学習状況調査についてでありますが、その目的を読むと、本県児童生徒の学力や学習状況及び教師の授業改善への取り組み状況等について調査・分析すること、とあります。調査分析であれば全生徒を対象に一斉にやる必要はなく、抽出調査で十分であります。いっせいにやるから現場はよそに負けるなと点数競争が激化するし、過去問対策に追われるなど授業の中身がゆがめられるし、先生方は採点に追われるという状況に陥るわけです。ましてやコロナ休校でただでさえ窮屈なスケジュールになれば、子どもたちや先生方への負担はより一層深刻なものにならざるを得ません。いまからならまだ間に合います。ぜひ慎重に再検討していただくことを訴えるものであります。
 
⑤不要不急の事業ストップしコロナ対策に全力を。立野ダム事業費増について
 次の質問に移ります。
 コロナ危機の元で日本経済は戦後最悪という危機に直面し、国民、県民の暮らしと雇用は大きく脅かされています。さらに今後も国民生活への深刻な影響が続く事態を考えると、コロナ対策のために数十兆円規模の巨額の財源がどうしても必要となります。熊本県としても大きな財源が求められることは避けられません。ただしその多くは一時的な財政出動でありますから、財政調整基金の活用や不要不急の予算を凍結し、コロナ対策にまわすという手立てで乗り切るべきであります。そこで私は、この際熊本空港アクセス鉄道や県央広域本部・防災センター合築庁舎、さらに立野ダムなどの大型公共事業について一時事業の中断、予算を先送りしてコロナ対策に総力を傾注すべきだということを求めるものであります。
 この中で、立野ダムについて具体的にお尋ねします。6月5日突如として、国土交通省立野ダム工事事務所は、現在建設作業を強行中である立野ダムの総事業費が、これまで説明されてきた917億円から243億円増額され、1,160億円に膨らむことを発表したことには驚きました。事業費増加の要因は、公共工事の資材や労務単価の上昇、消費税増税など114億円、熊本地震で被害を受けた工事用道路復旧など108億円などとのことであります。もともと、事業費の増加について私はこれまで繰り返し懸念の声を上げてきました。建設常任委員会における議論や、あるいは国土交通省九州地方整備局への申し入れなどの場において、熊本地震で壊れた建設現場の復旧のため、あるいは資材単価の高騰などにより予算規模が膨らむのではないか、透明性ある説明をおこなうべきではないかと繰り返し求めてきました。国交省はその度ごとに、コスト縮減等につとめてできるだけ全体事業費を膨らませないようにします。917億円の総事業費の変更は今のところ考えておりません、と説明してきたわけであります。それがよりによって、コロナ対策に巨額の財源が必要とされ、国民のいのちを守り日本経済の再生を最優先で取り組もうとしているこの時期に、なぜ突如としてこれまでの事業費の25%を超えるほどの、大規模な増額を打ち出してくるのか。知事、とんでもない話ではないでしょうか。事業費の見直しについて知事は了承されたとのことでありますが、知事は国交省に対して何も物申されなかったのでしょうか。お尋ねします。
 
 (答弁)⑤立野ダム事業費に関しての知事答弁(骨子)
 ・事業費の見直しについては、4月に国から、工事内容の精度が高まったため見直しをおこなうと説明を受けた。
 ・事業費の見直しについては、白川・緑川学識者懇談会の場で事業主体である国が説明し、公表した。
 ・全体事業費を増額されたが、その内訳は、労務単価の上昇などに伴うもの、熊本地震における工事用道路の復旧、現場条件等の変更に伴うものなどである。新技術の活用などによりコスト縮減も図られている。
 ・県で内容を検証し、増額はやむを得ないものと報告を受けた。
 ・このような経緯も踏まえ、学識者懇談会の意見照会に対して、「異存ない」旨を回答した。引き続きコスト縮減や環境保全対策、説明責任を求めてまいる。
 
 ⑤知事答弁に対する切り返し
 増額はやむを得ないと知事は言われますが、負担増は県民に降りかかってくることを真剣にお考えになられたのでしょうか。243億円の増額ということは県民への新たな負担は約80億円にも上ります。2022年度完成予定でありますから、残る事業費などから逆算すれば、これからの熊本県の年間負担額は、約50億円という莫大な額に膨れ上がることが計算上見込まれることになります。国土交通省はこのほど新たな白川の河川整備計画案を提示し、住民からの意見を募集しました。その結果がホームページで公表されておりますが、意見箱、ファックス、インターネット、住民説明会などで寄せられた意見384件中、立野ダム賛成だという意見はわずかに4件であります。圧倒的多数は立野ダム建設に反対なのであります。知事はすでに今回の予算増額を了解したとのことですが、あまりに拙速ではないでしょうか。住民からの意見は国交省のホームページで公開されておりますので、知事もごらんになられることをお勧めします。
 これからもコロナ対策には相当な力とお金を費やしていかなければならないことは避けて通ることができません。ましてや今、白川の流下能力は激特事業により飛躍的に向上しております。立野ダムを急いで作らなければならない理由はありません。逆に、想定外の豪雨が発生すれば、立野ダムはむしろ危険な存在だということもこれまで指摘してた通りであります。私はもちろん立野ダムに反対でありますが、少なくとも今はダム建設そのものについての賛否は脇においてでも、立野ダム建設をいったんストップして、今はコロナ対策に予算を回すべきだという声を上げるべきではないでしょうか。そのことを強く申し上げておきたいと思います。
 
⑥大空港構想について
 次に、大空港構想についてお尋ねします。蒲島知事はコロナ禍にあっても繰り返し大空港構想の推進を強調されてきました。4月17日付熊日インタビューで知事は、「大空港構想を進め、周辺や空港アクセス鉄道の沿線を(先端産業が集積する米国の)シリコンバレーのようにしたい。インフラ整備の効果は100年の単位で見ると必ず生きる」と強調されています。本当にそうなのかという点では、県のこれまでの産業政策の歴史からも検証する必要があります。そもそも大空港構想は、大交流時代への対応、あるいは州都構想をにらんだ九州のハブ空港として周辺地域の基盤整備を一体のものとしてすすめるという目的をかかげ、同時に国の観光立国戦略、すなわち観光で稼ぐためにインバウンド促進とその受け皿づくりのための空港のゲートウェイ機能の強化、という安倍政権の戦略と相まって進められてきたものであります。歴史的に過去を振り返って見れば、熊本県は一貫して積極的に政府の産業政策を取り入れてきました。1962年の新産業都市建設促進法、1972年の工業再配置法、1983年のテクノポリス法などにもとづく国の政策を積極的に推進し、企業誘致をすすめ、熊本テクノリサーチパークを始め県内に多数の工業団地を開発しました。けれども産業構造の変化、空洞化の流れの中で企業の進出中止も相次ぎ、合理化による深刻な労働者の失業問題が生じました。テクノポリス建設は当初、第二の開国、県政浮揚の礎と謳われ、県が設立した電応研は本県産業政策のシンボルと強調され、テクノリサーチパーク関連だけでも約60億円という巨額の県費が投じられました。地域の中小企業の振興を主眼にしているといいながら、実際には地場中小企業のニーズとかみ合わず、疑問の声が高まる中で当時の細川県知事は雑誌のインタビューに対して「テクノポリスも大事なんですが、私はどちらかというとアートポリスだ」などと答え、県民に振りまかれたバラ色の夢は急速にしぼんでいったわけであります。1987年のリゾート法のもとで天草ではホテルやゴルフ場建設などのリゾート開発が掲げられましたが、西部鉄道の撤退等により計画が破綻しました。100年の単位で見れば、と知事はおっしゃいますが、呼び込み型の経済政策がいかに産業構造の変化や景気の動向などに影響を受けやすく、リスクをともなう危ういものであるかということを示しているのではないでしょうか。
 さらにいま日本と世界は、かつて人類が経験したことのない新たな脅威に直面しています。温室効果ガス排出に起因する地球温暖化と気候変動、大災害の発生、新たな感染症の拡大、環境破壊などいずれも人類の未来を脅かすものであります。また日本は人口減少、超少子高齢化社会が心配されますが、逆に地球規模で見ると人口爆発や食糧危機が心配されています。今後の県政政策を考える上では、こうした新たな脅威を乗り越え、持続可能な社会を形成していくことができる展望を示すものでなければなりません。
 そこで知事にお尋ねします。大空港構想は、これからも将来にわたり人と物の流れが飛躍的に増大していくということ、企業立地が進むことを前提とした構想であると思いますが、とりわけコロナ後の社会においては見直しが必要となるのではないでしょうか。ご見解を伺います。
 
 (答弁)⑥大空港構想についての知事答弁(骨子)
 ・大空港構想は、空港の活性化を新たな産業や雇用の創出、安全・安心で利便性が高いまちづくりにつなげ、空港周辺地域の再生・発展を進めるもの。
 ・今後の人やモノの流れについては、現時点で見通しがつきにくい状況であるが、アフターコロナの社会は大きく変容しようとしている。
 ・大都市圏への過度な集中のリスクが顕在化し、地方の重要性が再認識されて来ている。いま、都市部から熊本への人や企業の新たな流れを生み出す大きなチャンスであり、空港周辺地域を核とした県全体のさらなる活性化も期待できる。
 ・新型コロナウイルス対策が最優先である事は言うまでもないが、この逆境をチャンスに変えるという意気込みで、新型コロナウイルスの影響をふまえた、新しい大空港構想を進めていく。
 
 ⑥大空港構想についての知事答弁に対する切り返し
 人口密度の高い都市部から、地方に新たな価値を見出そうという注目すべき動きがあるという点は確かにその通りかもしれません。しかしその中身は、パンデミックによって露呈した現代の社会のもろさ、脆弱さを克服していくものでなければなりません。どんな事態が発生しても国民の食料や命を守るための物資は不足させない、県民の暮らしや命を守る基盤を崩壊させない。一極集中でなく地域分散型、地産地消型、地域循環型経済を作っていく、という視点が不可欠であろうと思います。企業誘致やインバウンド促進も一方的に否定するものではありませんが、国の誘導策に翻弄されるようでは、熊本独自の魅力が損なわれかねません。熊本の地で頑張る地場産業を応援し、熊本ならではの特徴や利点を生かした地域づくりを進めてこそ、未来に生きるし、住んでよし、訪れてよしの熊本が実現するのではないかと思います。阿蘇の雄大な景観や貴重な自然を台無しにする立野ダム建設や熊本の宝・地下水の涵養域への影響が懸念される熊本空港アクセス鉄道やシリコンバレー構想については、これからも私は意見申し上げていくことを表明し、質問を終わります。

議案に対する質疑

印刷用PDFをダウンロードするには、ここをクリック(270kb)  4月臨時議会 議案に対する質疑
 日本共産党 山本伸裕 2020年4月21日
 日本共産党の山本伸裕です。令和2年度一般会計補正予算に対する質疑をおこないます。新型コロナの感染拡大が県民の暮らし、いのち、社会への大変な脅威を広げている非常事態であります。熊本県として必ずや県民の命を守るという、そして事業者が倒産や廃業に追い込まれるような事態を絶対に食い止めるという、強い決意と方策を県民に示すべき出ると考えます。その裏付けとなる大胆な補正予算を組むべきではないでしょうか。
 具体的には第一に、感染爆発と医療崩壊を食い止めるための方策であります。集団感染を追っていく従来の検査方法はもはや限界であり、早急にPCR検査センターを県内複数箇所に設置し、検査が必要だと医師が判断される方を速やかに検査できるようにすべきであります。医療用のマスクや防護服が、いま医療現場でどれだけ必要かを掌握し、県の責任で必要数を確保し、医療現場に供給すること。空き病床確保にともなう減収の穴埋め、コロナ対策に伴う医師・看護師、病院体制構築のための必要経費への補てんを国と県の責任で行うべきであります。
 介護や障がい者施設の現場でも、事業所の倒産・廃業や介護サービス基盤の崩壊の危機に直面しています。医療機関と同様に減収分と、対策に伴う必要経費への補てんが必要であります。
 
 第二に、事業者と県民の生活を支える対策の強化であります。融資制度の拡充を中心とする金融支援策が今回の補正でも計上されております。私は、県融資制度の利率の引き下げや据え置き期間を延長することなど、制度の改善を求めるとともに、返済への不安から新たな借金をためらっている事業者のためにも、他県でも取り組みが始まっている休業補償、損失補償制度の創設が絶対に必要であります。また事業者から要望が多い家賃やリース料などの固定費補助、税金の減免などについても、国と協力して実現を図るべきであります。個人向けの緊急小口資金や社会福祉資金で、熊本県が独自の条件をつけて貸付を認めないやり方は直ちに改めることを強く求めます。
 そして、県が力を傾注してきたインバウンド・外需頼みの振興策は今は期待できません。内需の拡大に力を入れるべきであります。子どもの医療費助成制度の拡充、国民健康保険料の減免、介護保険料・利用料の減免など県独自の社会保障制度の拡充を求めます。解雇や賃金不払い、新卒者内定取り消しなどの事例に対する対策強化、緊急の雇用創出策、全国最低の最低賃金の引き上げに取り組むこと、などを求めます。イベント中止などによるキャンセル料、会場費などの必要経費を補てんするよう求めます。
 
 第三に、女性や子ども、学生への支援強化であります。DVや虐待に対する相談窓口の設置と体制拡充、緊急避難先の確保、子どもを虐待から守るための教育機関と児童相談所との連携強化など求めます。また非正規労働者の不当な解雇・雇止めをやめさせる労働行政の監視と指導強化、学校給食に栄養補給を頼ってきた子どもたちの栄養確保のための支援、放課後デイサービスへの財政支援強化などを求めます。また学生への支援として、アルバイトなどの収入減を埋める補助、休校中の学費返還、奨学金・育英資金の返済猶予などを求めます。
 こうした県独自の各施策の強化をはかるうえでは、大幅なコロナ対策予算の拡充が必要であります。国に対し地方創生交付金の額をせめて2倍に引き上げるよう求めるべきではありませんか。さらに財調の活用や不要不急の巨大事業の凍結・先送りなどを提案します。具体的には当面インバウンド拡大が期待できないことから熊本空港アクセス鉄道建設の検討を凍結すること、ムダで危険な立野ダム建設をストップすることを求めます。
 以上、細かい点も含めていろいろ申し上げましたが、知事に置かれましては、申し上げました具体的要望もぜひ踏まえていただき、県民に希望を与えるような方策を打ち出していただきたいと思いますが、ご見解をお尋ねします。
 
 国民、県民の暮らしは日に日に深刻になっています。にもかかわらずいまだに経済界からは、給付をしても消費につながらないなどと、経済を心配する声が上がっていることに驚かされます。先週末、蒲島知事は県民へのメッセージを出されましたが、残念ながら、県民の命を守りますとか、医療崩壊を絶対にさせませんとか、廃業や倒産を絶対に食い止めますなどといった、今一番県民に届けていただきたい言葉を知事から聞くことはできませんでした。知事のこうした姿勢が、結果として、例えば緊急小口資金の貸し付けに他県以上の厳しい条件が設定されているやり方などにも反映しているのではないでしょうか。県民の皆さんの暮らしは知事である私が守りますから、補償しますから安心して、いまは行動を自粛してください。こういう姿勢こそ打ち出していただきたい。そのことを再度申しまして質疑を終わります。

水俣病に関しての質疑

印刷用PDFをダウンロードするには、ここをクリック(250kb)  2月定例議会 水俣病に関しての質疑
 日本共産党 山本伸裕 2020年2月14日
 日本共産党の山本伸裕です。知事の議案説明の中で、水俣病問題への対応についてお尋ねします。知事は、公健法に基づく認定審査については、申請される方がおられる限り、平成25年の最高裁判決を最大限に尊重し、迅速かつ丁寧に認定審査を進めてまいる、と説明されました。最高裁判決は、昭和52年判断条件を基準とする行政認定制度のもとで水俣病と認定されなかった四肢末梢優位の感覚障害のみの患者について、司法判断として水俣病と認めたものであり、つまり複数の症候の組み合わせを要求する昭和52年判断条件は実質的に否定されたのであります。ところが国は、最高裁判決は昭和52年判断条件を否定したものではないと言い通して認定基準を変更しなかったばかりか、手足の感覚障害のみでも認定を受けようとするならば、患者側に発症当時の毛髪やへその緒などの提出を求めるなど、いっそう申請のハードルを上げ、認定患者を狭めるという、認定基準の新たな運用指針、ガイドラインを通知したわけであります。もし認定審査において、最高裁判決の趣旨がほんとうに生かされ、認定基準が見直されていたならば、水俣病被害者救済の流れが大きく促進されていたに違いありません。ところが残念ながらこのガイドラインによって、認定審査業務は逆に大量の患者切り捨ての場となってしまったというのが実態ではないでしょうか。知事はこのような患者切り捨ての認定基準の運用を続けておいて、本当に水俣病問題の解決につながるとお考えなのでしょうか。平成25年最高裁判決後、ノーモアミナマタ第2時訴訟が起こされ、原告の数は東京、大阪合わせ1,766名に上っています。被害の実態に加害者である国や県が真正面から向き合わない限り、水俣病は終わらないのではないでしょうか。知事は日ごろから、水俣病が原点だとおっしゃいます。そうであるならば、長年苦しんできた水俣病被害者の方に心を寄せ、最後の一人まで水俣病被害者を救済するというお考えはありますか。もしおありならば、52年判断条件に固執した環境省の運用指針に従った認定審査を、迅速かつ丁寧に進めるというだけでは、真の救済につながらないと思いますがいかがですか。
 
  (切り返し)
 知事は、環境省通知は、症候の組み合わせが認められない場合でも、総合的な検討で水俣病に認定しうると明記されている、と言われました。
 しかし通知には、総合的判断をする際には、5点の基準に従うべきだという条件が付けられております。第一に、有機水銀暴露時期やその時期の食生活、魚介類の入手方法を確認したうえで、体内の水銀濃度や居住歴、家族歴、職業歴について総合的に勘案することにより、どの程度有機水銀に暴露したのか、またそれがどの程度確からしいと認められるかを確認する。以下ありますが、時間の都合上省略します。当時の体内の水銀濃度をどうやって測定するのか。通知では、当時の毛髪、へその緒、尿、血液などからの確認を求めていますが、何十年も前の毛髪や尿を保存している人がいらっしゃるでしょうか。また客観的に魚介類の摂取状況を示す資料を出せ、と言われても極めて困難であります。そもそも加害者が勝手に認定基準を決め、被害者に証拠の提出を求めるなど、本末転倒であります。
 結局2014年環境省通知は、総合的判断の名のもとに、より厳しい要件を申請者に求める内容となっており、救済の道は狭められていると言わざるを得ないのであります。知事が言われるように、52年判断条件の症候の組み合わせに合致しない方であっても、水俣病であるかどうかを丁寧に判断すべきだと。それが最高裁判決の主旨だ、と言われるのであれば、この環境省通知は、最高裁判決にてらしておかしいではないかと声をあげるべきではなかったでしょうか。
 水俣病公式確認から63年であります。にもかかわらず、なぜ全国で9件、約2,000名もの被害者が裁判に立ち上がらなければならない状況にあるのでしょうか。裁判で断罪された認定制度に固執して、申請者を大量に切り捨てる認定教務をただ続けるばかりでは水俣病は解決しません。被害の実態を無視した現行認定制度を改めるよう国に求めること、潮谷義子前熊本知事が提唱した不知火海沿岸住民の健康調査を県が今こそ主導し、国とともに実施すること、それが真の解決につながる、県が進むべき方向であります。
 私は、未曽有の公害被害を生み出した水俣病被害の解決のために、患者のもとに足を運び続け、健康被害があっても声をあげることができない人々に寄りそい、不当な患者切り捨てに抗って自らの人生をかけて闘ってこられた方々を存じています。蒲島知事が、水俣が原点だとおっしゃるのであれば、そうした方々に面と向かって恥じない行動をとっていただきたい。そのことを切に願って質疑を終わります。

予算等に対する反対討論

印刷用PDFをダウンロードするには、ここをクリック(359kb)  予算等に対する反対討論
 熊本県議会2020年2月議会 日本共産党 山本伸裕 2020年2月26日
 日本共産党の山本伸裕です。まず議案1号、令和元年度一般会計補正予算に関してでありますが、さる1月30日に成立した国の補正予算に対応するため、防災・減災、国土強靭化対策や、TPP関連などに要する経費として268億円が計上されております。補正後の現計予算額は8,177億円となります。
 看過できないのは、立野ダム建設の直轄事業負担金約1億9千万円の増額が含まれております。今回の補正により今年度の立野ダム事業負担金は約13億2,900万円となりました。
 立野ダム建設に反対する理由は、様々な角度からこれまでも訴えてまいりましたが、私は今この立野ダム建設、本当に立ち止まって再検討すべきではないかと訴えたい、2つの大問題について、ここで述べておきたいと思います。
 一つは、新たな白川の河川整備計画の問題であります。現在国土交通省は、立野ダムなどの洪水調節施設を前提とした、白川の新たな河川整備計画の策定を進めています。しかし近年の気候変動のもとで、しばしばダムの洪水調節機能が失われるほどの豪雨災害が発生していることはご承知の通りであります。にもかかわらず、現在の河川整備計画は、あくまでもダムの洪水調節が必ず機能することを前提としたものとなっています。つまり、ダムありきという大前提の下に河川整備計画が作られているわけであります。しかし、こうした考え方を転換しなければ、今日の気候変動のもとで、住民の安全を守る治水対策とはならない、ということを強く訴えるものであります。
 第二点目の問題として、この新たな河川整備計画が流域住民にほとんど知らされていない、という点であります。住民説明会開催の案内は、国土交通省のホームページで紹介されていたのが一つと、そして新聞広告が小さく掲載されただけで、実態としては大半の流域住民に知らされないまま説明会が開催されたわけであります。その上、説明会の会場で立野ダム建設にかかわる質問が出されても、ダム担当者が出席していないため答えられないという、極めて不誠実な回答でありました。住民への説明責任を果たし、住民の納得と合意を得ることが事業推進の大前提であります。このままなし崩し的に立野ダム建設を推進することには、到底賛成できないということを表明するものであります。
 なお、今日、新型コロナウイルス感染症が深刻な不安をひろげています。不幸にもお亡くなりになった方々は余りにもお気の毒で、心からのお悔やみを申し上げますとともに、患者様方の回復を心から祈念申し上げたいと思います。昨日発表された政府の新型コロナウイルス感染症対策本部の決定では、まさに今が、今後の国内での健康被害を最小限に抑える上で、極めて重要な時期である、ということが強調されております。県議会におきましても昨日、緊急の全員協議会が開催されたわけでございますが、緊急に思い切った対策を講じる上では、当然ながら財政的な裏づけが重要であります。大変かとは存じますが、執行部におかれましては、いま県として対応可能な最大限のとりくみ強化を求めるものであります。感染のリスクが高い学校や病院、高齢者施設などでの消毒アルコールやマスク不足の供給、外国人労働者や無保険状態にある方々などの医療機関受診機会の保障、感染が疑われる患者を診療する体制や医師、スタッフの確保、入院を受け入れる病床の確保、一般の外来診療を中止して発症患者を受け入れた場合の一般外来患者の受け入れ病院の確保など、事態が不幸にして悪い方向に進行したとしても、あらかじめそれを想定した万全の準備をしていただきたいと思います。先日、経産省が事業者への支援策を発表しましたが、売り上げが減少している企業、商店の不安にこたえる上でもさらに、例えば店舗家賃やリース代、従業員給与などの固定費に対する補助制度の創設であるとか、利子補給など、さらなる県独自の支援策についても検討をお願いしたいと思います。
 
 次に、議案20号、令和2年度熊本県一般会計予算であります。骨格予算のため政策的判断を要しない人件費などの義務的経費や熊本地震への対応などの経費を中心に計上しているとのことでありますが、年々情報漏えい事件が増加しているマイナンバー関連の予算計上には賛同できません。さらに阿蘇くまもと空港関連事業として7,455万円余が計上されております。蒲島知事は雑誌のインタビューにこたえ、空港民営化にともない現在の国際線4路線から全国の地方空港で最大となる17路線に拡大する構想を語っておられます。国際線旅客数を将来的には現在の10倍以上に引き上げるという内容でありますが、先行き不透明で不安定な国際情勢や、あるいは航空機が大量の二酸化炭素を排出するという実態を考えた時に、やはりあまりに過大な構想ではないかという思いを抱かざるを得ません。政府の意向を受けて、いま全国の地方自治体がインバウンド獲得競争にまい進していますけれども、住んでよし、訪れてよしという基本軸をしっかりとすえて、県内それぞれの地域にある多様な文化、歴史、県民の生活を尊重したまちづくりや観光政策を進めていただきたいと思います。
 次に、チッソ株式会社に対する貸付に係る県債償還等特別会計、および請第12号、チッソ・JNC子会社サン・エレクトロニクス株式会社の工場閉鎖・全員解雇の中止を求める請願について申し上げます。
 これまで水俣病公害を発生させた加害企業であるチッソに対しては、患者補償を滞らせてはならないということで、1978年の患者県債発行、その後のヘドロ県債発行、2000年からのチッソへの抜本支援策による大胆な企業支援策など、その時々にあらゆる支援策が講じられてきました。平成20年6月の県議会水俣病対策特別委員会で当時の前川副委員長は、我々はチッソ県債を発行しチッソ支援をしてきたが、それは患者補償と地域振興のためであったとのべ、たとえ患者補償問題が確定しても、地域振興の責任は残ると強調されました。全くその通りであります。しかしチッソはその約束を守らず水俣での雇用人数を減らし続け、そして今回は子会社であるサン・エレクトロニクスの工場閉鎖と従業員の全員解雇という決定をまさに一方的に下したわけであります。しかも会社側からは従業員に対し何の説明もありませんでした。時系列で申し上げると、昨年7月25日に全員解雇らしいとのうわさが社内に広がり、7月30日にようやく組合員に通知、しかも一方的な通告という形で工場閉鎖と全員解雇の決定が告げられ、そして8月2日になって、第一回目の会社側と労働組合との団交がやっと行なわれたわけであります。事実の経過を見れば請願にあるとおり、労働組合へ説明すらせず、整理解雇の四要件を満たしていないということから、労働契約法16条に照らし、解雇権の乱用、違法な解雇である疑いが濃厚であると言わなければなりません。
 水俣病の原因企業であるチッソは、国と熊本県から支援を受けている以上、患者補償と地域振興への責任を果たすことが義務付けられていることを肝に銘じるべきであります。今回の一私企業のような経営判断は許されるものではありません。したがって請第12号は採択されるべきであります。以上申し上げて討論を終わります。