山本伸裕

議会質問・討論・意見書 2012年


ルネサス錦工場閉鎖、大津工場売却についての申し入れ
2012年8月3日

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熊本県知事 蒲島郁夫様
            2012年8月3日                                 

 ルネサス錦工場閉鎖、大津工場売却について

ルネサスエレクトロニクス株式会社が7月3日発表した「強靭な収益構造に向けた諸施策の方向性について」によると、錦工場は「譲渡または集約」、大津工場は「将来においては譲渡も検討」となっています。
 錦工場が閉鎖になれば、労働者415人が失職し、人吉球磨地域の経済にも大打撃となることはあきらかです。県南では、八代のパナソニック工場閉鎖に続くもので、知事が公約等で掲げる「県南振興」に大きなマイナス要因となります。 ルネサスグループと取引のある県内企業は53社(全国4位)ということであり、県経済にも甚大な影響を及ぼすことは必至であり、2期目を迎えた蒲島県政の真価、とりわけ公約・戦略の実効性、実行力が問われるものです。
以下、要請及び提案をいたします。

1、「幸せ実感くまもと4ケ年戦略」(「4ケ年戦略」)に、早くもついた黄信号。
公約と「4ケ年戦略」実現は、「工場閉鎖・売却」計画の白紙撤回から
 「4ケ年戦略」は、「網羅的な長期計画」ではなく「この4年間に重点的に取り組む」方向性を4つあげ、その第1に「活力をつくる」を掲げています。
 「活力をつくる」では、「県経済の力強い成長」「産業力の強化」「創造的企業誘致」「地域力を高める」「県南を活性化する」等々のことが示されています。
 ルネサスの今回の「企業再建計画」は、県経済、とりわけ「県南の活性化」、人吉球磨地域の「活性化」にとっては、強力な「逆風」となるものであり、これを押し返し、工場存続、雇用と地域経済を守ることは、知事の知事選公約とそれを具体化したとされる「4ケ年戦略」の政策としての「実効性」、知事の県政リーダーとしての実行力が問われるものです。
ルネサスに対して「工場閉鎖、売却」(錦工場、大津工場)の撤回を強く要求し、それを成し遂げることを期待し注視するものです。
 知事の「できないことは言わない。いったことは実行する」とのかねてからの発言に裏打ちされた責任ある対応を強く期待します。またその経過、結果を、9月県議会をはじめしかるべき形で県民と県議会に明らかにされるよう求めます。

2、大企業誘致依存型から循環型地域経済への転換が求められている
半導体と自動車を軸にした企業誘致を県経済の戦略的課題として推進してきたことの検証が求められています。
大企業誘致依存型の結果は、県の「経済力」、県民所得の現状が示すように成功していません。そればかりか、パナソニックの工場閉鎖、ホンダの派遣切り・大量の配置転換、今回のルネサスの工場閉鎖、売却計画など、県経済の先行きに不安定さと暗い影をもたらす要因となっています。
ルネサス錦工場については、ルネサスエレクトロニクスの「6000人削減」が明らかになった5月時点では、「高操業を続けて」おり、「マイコンは当社のコア事業であり、力を入れるのは変わらない(ルネサスエレクトロニクス広報)」(5月23日付「熊日」)と伝えられていました。それが1ケ月後には一転して「工場閉鎖」とされたのでは、労働者の生活設計はもとより、地域経済戦略の構築どころではありません。
県は本年度も、30億円を超える企業誘致予算を組むなど、これまで多額の投資を行ってきましたが、こうした従来型の呼び込み型の大企業誘致、大型開発から、中小企業、農林水産業振興を基本とする内発型の経済政策への転換をはかることが求められています。また進出企業の一方的な撤退、人員削減などについて、企業の社会的責任を果たさせる立場から条例ないしはガイドラインによって規制する措置をとるべきです。

3、国民の所得を増やし、内需主導で健全な成長の軌道にのせる経済改革でこそ、国の経済も、地
域経済も栄える―国の経済政策転換を求めるべき
個々の企業が、非正規雇用を増やしたり、地域の工場を閉鎖したり、下請けや納入業者の単価を引き下げたり、さらには、国内の工場はつぶして海外生産に転じ、雇用もアジアの安い労働力に依存する「企業戦略」を展開すれば、その企業は発展するかもしれません。しかし、日本中の大企業が同じことをやれば、国民所得は大きく減り、経済の約6割を占める家計消費は落ちこみ、日本経済全体が深刻な不況の悪循環に落ちてしまいます。
  こうした事態を防ぐためには、大企業に雇用、下請け企業、地域経済などへの社会的責任を果たさせることが必要であり、そうしてこそ、地域経済を含む経済全体の発展がはかられます。社会保障の拡充をふくめ、国民の所得を増やし、経済を内需主導で安定した成長の軌道にのせる経済改革が必要です。
かつて世界の8割を生産していたDRAM(半導体素子の主製品)メーカー、「エルビーダメモリ」がアメリカの「マイクロン・テクノロジー」に買収され、30年間にわたる日本企業によるDRAM生産が終わりました。システムLSI(超多機能半導体集積回路)生産も、ルネサス、富士通、パナソニック3社が新会社をつくり、新会社では設計だけで、生産は行わない方向が示されています。
日本の電機産業がめざす方向は、「モノづくり」からの撤退であり、生産は海外(韓国、台湾など)中心です。
今回のルネサスの「計画」も、国内生産ラインの縮小であり、「海外生産シフトの加速」のためのものです。
国の政治も、県政(地方政治)も、これまでどおりの大企業の身勝手な要求にいいなりになる立場から抜け出し、大企業に社会的責任を果たさせ、国民の暮らしと権利、地域経済、中小企業経営を守るルールをつくり、持続可能な日本経済を構築するようその役割を果たすことが求められています。
経済政策と言えば、まず国とその時々の政権党が唱える大企業誘致、国が「道州制」「地域主権改革」と言えばそれの率先垂範という県政は、もはや時代に合わないものとなっています。「選挙で決着」とかで糊塗できるものではありません。
かつて「シリコンアイランド」九州と称された九州・山口における工場閉鎖の実施及び計画中の対象労働者は約8000人にものぼります。こうした事態、状況は今後県内でさらに広がることが確実です。
国民の所得を増やし、内需主導で健全な成長の軌道にのせる経済改革でこそ、国の経済も、地域経済も栄えます。国に経済政策の転換を求めていただきたい。
また国民本位の経済改革に逆行し、地域経済に壊滅的な被害をもたらすTPP、消費税の増税には反対することを求めます。