平成28年熊本県議会 9月議会での質疑 日本共産党 山本伸裕
2016年9月23日
議案1号、平成28年度熊本県一般会計補正予算案について
日本共産党の山本伸裕です。議案1号、平成28年度熊本県一般会計補正予算案についておたずねします。議案には、立野ダム建設事業の負担金が計上されています。熊本地震発災後断続的に続く余震やその後の大雨により、立野ダム建設予定地付近は大規模な土砂崩落が続いており、景観が一変しています。そして今後もさらに崩落が広がることが懸念されます。いまはこれ以上被害が広がらないよう、防災対策に全力を尽くすことが優先であります。県の財政状況も非常に厳しくなるもとで、現実には工事を進められるような状況にない立野ダム建設のために約8億円もの負担金を出すことは適切でないと考えます。
5月24日、衆議院総務委員会で、政府の地震調査委員会の白間竜一郎政府参考人が熊本地震について以下のように答弁しています。「一連の地震活動は、今回活動したと評価される区間の周辺の区間にも及んでおり、こういったことからこれらの断層帯について重点的な再調査を今年度から実施する予定にしているところでございます。」また宮内秀樹国土交通大臣政務官も、「今後有識者を交えました詳細な調査を行なうこととしております」と答弁しています。
ところが国土交通省は、国交省所管の研究機関関係者や穴あきダム建設推進の建設省OBの教授などで構成された技術委員会を組織し、驚くべきことに一回目の会合で早々と、ダム建設に問題はないとする九州地方整備局の説明を了承したのであります。今年度から重点的な再調査、詳細な調査を行なうとの政府答弁をないがしろにするものであります。
また、同じ国会答弁で越智政府参考人は、「亀裂が斜面崩壊によるものか地表に現れた断層ずれによるものかを見極めることは容易ではなく、航空写真や無人航空機の画像などでこれらを区別することは難しいと考えている」と答弁しています。熊本地震発災後、実際に行なわれた調査は文献調査、地形学的調査、現地調査のみであります。政府の地震調査研究推進本部の、活断層の調査方法によれば、はじめに空中写真を用いた地形調査。さらにその断層で過去どのように地震が発生したかをトレンチ調査によって調べる、そしてさらに、地表では活断層が認められない場所でも、地価構造調査により、トレンチ調査ではわからない地下深部の構造、断層に関する情報を得ることができるとしています。そこで知事、第一番目の質問ですが、政府答弁からしても、立野ダム建設の安全性の結論を出すうえでトレンチ調査および地価構造調査を求める必要があると考えますがいかがですか。
9月10日毎日新聞は、九地整が模型実験を行った結果、ダムの放流孔は流木でふさがることはないと結論付けたものを、技術委員会がそのまま承認したことに対し、疑念を表明する専門家の声を紹介しています。さらに、本来はこうした議論をするのが第三者委員会のはずなのに、事業者が選んだメンバーで構成された技術委員会にダム建設に批判的な専門家は含まれず、本質的な議論は行なわれなかったと書いています。洪水時に万が一にでも放流孔がつまれば大惨事につながりかねません。知事、もしこのままダムが作られ、ダムによる被害がもたらされてしまったら誰が責任を取るのでしょうか。
知事は議案説明で、阿蘇くじゅう国立公園が国立公園満喫プロジェクトに選定されたことを報告されました。阿蘇の雄大な景観、自然、歴史と文化の魅力が世界にアピールされ、震災・観光復興の力になることを私も願います。同公園の中で風致景観の維持のため、土地の形状変更、工作物の設置、竹木の伐採など自然環境の改編を制限している特別保護区に設定されているのがダム建設予定地の左岸側に広がる北向谷原始林であります。ダム建設は大きな期待が寄せられている満喫プロジェクト選定結果に水をさしてしまうのではないでしょうか。以上、知事にお尋ねします。
(知事答弁後)
知事は、国はレーザー測量など実施していると言われましたが、地質・活断層に関する詳細な調査は行われておりません。今回の地震で新たな活断層が発見されたこと、そして今後の活断層の動きについて注意し、観測と詳細な調査が必要だと、日本活断層学会の鈴木名古屋大学教授、阿蘇火山博物館学術顧問の須藤靖明さん、清水洋史九州大学教授など、多くの専門家が警鐘を鳴らしています。国交省、技術委員会はこうした専門家の意見に耳をふさいでいるのでしょうか。いっぽう林野庁は確かに航空レーザー計測を実施しました。そこではこう指摘しています。「多くの山腹崩壊等が発生しており、このほかにも地盤が脆弱になっているだけでなく、多くの亀裂や小崩壊が発生している」と。いっぽう国土交通省は、「地層の剥がれ落ちはあるが基礎岩盤は問題ない」と結論付けています。仮にダム自体は壊れないとしても、湛水域の土砂が崩落すれば大量の土砂、巨大な岩石、水分を含んだ枝葉のついた流木がダム湖に流れ込み、ダムの放流孔がつまってしまうことが懸念されます。実際、豪雨と土砂崩れにより工事事務所が流され工事用に取り付けていた橋は跡形もなく流され、重機も流されました。有明海にいたるまで大量の流木が流出しました。ダム湛水域だけで100万トンもの土砂が崩落しました。ところが国交省は、つまようじを流木に見立て、ダムの模型に流しただけで、ダムの穴は洪水時にもつまる事はありませんという結論を出しました。穴がつまるほどの巨大な岩は洪水の時にも動かないから大丈夫と結論付けました。こんな検証結果に誰が納得できるでしょうか。ところが技術委員会はあっさりと納得・了承されたのであります。かつて満水時に発生した地滑りによって大量の土砂がダム湖に流れ込み、ダム津波が発生し、下流で約2,000人の死者を出したイタリア・バイオントダムの大惨事は決して他所事ではありません。人命最優先の立場に立つならば、技術委員会の結論をうのみにすることはできません。まずは科学的で公正な安全性に関する検証を求めること、そしてそれがはっきりするまではダム関連予算を凍結して震災復興に回すことを国に求めるべきだということを求めまして、質疑を終わります。
日本共産党の山本伸裕です。知事提出議案に対する反対討論を行ないます。
まず議案2号、平成28年度一般会計補正予算であります。この中に企業の農業参入促進・定着支援のための予算が盛り込まれております。熊本県は企業の農業参入を総合的に支援するとして農業への参入を検討している企業へのトップセールス、相談窓口の設置、セミナー開催や情報発信、さらには参入初期投資の軽減のための補助金、さらには経営力向上のための補助金や経営講座など手厚い支援事業を進めています。けれども私は、企業参入で地域農業が活性化するのだろうかという大きな疑念を持ちます。企業は利潤を出さないと成り立ちませんから、農業に進出しようと思えば、耕作放棄地は敬遠し平場の優良農地に集中する、そうなるとそこで営農する認定農業者などと競合することになります。水田や畑作は環境保全の役割が大きい一方で収益性が低いということになると、施設園芸など設けが見込める分野に集中することも懸念されます。採算が取れなければ当然撤退することも想定されます。本来ならば農地は地域の共同の財産として、将来にわたっての利用が求められるところでありますが、利潤追求が第一の企業に解放すれば、農地、あるいは農村地域に混乱と障害を持ち込むことになりはしないでしょうか。
熊本県の場合、平成21年度以降の6カ年累計で119件の企業からの参入実績があり、営農面積の28%が耕作放棄地、また撤退企業は今のところないとのことであります。地域農業の活性化と両立させたいという県担当課のご努力は理解しますが、しかし私は、本質的には農業の担い手は、現在も、将来も、自ら耕作に従事する人、家族経営、あるいは地域に基盤を持つ協同組織を基本にすべきであろうと思います。そのためにも、農家戸数を減らさず維持する。担い手を支援する施策が重要であろうと思います。
今回の熊本地震では、農地や牧野、道路や用排水路等の農業施設、また家畜舎や園芸施設等の生産施設、さらには製材所等の加工施設など、農林業関係に甚大な被害が生じ、今後の生産などへの深刻な影響が懸念されています。阿蘇市町村会、市町村議長会などからは被災生産者等への生活維持が可能となる十分な財政的・技術的な支援措置を講ずることなどの要望書が議長あてに提出されています。
条件の不利な地域を含めて大小多様な農家がそこで暮らし続け、安心して農業に励める条件を整えることこそが求められており、そこに混乱と障害を持ち込みかねない企業参入は慎重であるべきであると考え、この予算計上には賛同しかねるものであります。
次に議案9号、熊本県児童福祉施設の設備及び運営の基準に関する条例等の一部を改正する条例案についてであります。
改正の内容は、第一に保育所及び幼保連携型認定子ども園の基準について、4階以上に保育室等を設ける保育所等が設けなくてはならない避難用の屋内階段の構造の基準見直し、第二に、保育所、幼保連携型認定子ども園および幼保連携型認定子ども園以外の認定子ども園の基準について、保育の需要に応ずるに足りる保育所、認定子ども園および家庭的保育事業等が不足している事情に鑑み、一定の範囲内で、幼稚園教諭、小学校教諭、養護教諭の資格を有するものを保育士等とみなすことができるものとする。また、一定の条件の下、知事が保育士等と同等の知識および経験を有すると認めるものを配置することができるものとするというものであります。
これは児童福祉施設の設備および運営に関する基準等の一部改正を踏まえ、関係条例の規定を整備するものであります。
避難用の屋内階段の構造については昨年、福祉施設などの一部に関し、排煙設備の設置義務を緩和する建築基準法の改定がおこなわれました。排煙設備とは、火災が発生した際に人々が煙によって避難が困難になることを排除することが目的で、円滑な避難活動を促し、人命を確保するための重要なものであります。提案されている改定内容は、保育園の避難用階段に設置されている防災設備である付室の排煙設備の設置義務をなくす、つまり排煙設備をつけなくてもよいと規制緩和するものであります。なぜこのような規制緩和を行なうのか、国交省は建築基準法改定の根拠として、廃校や空きビルといった既存ストックから、福祉施設への用途変更を促進することが狙いであると報じられています。
保育園の避難階段についての規制緩和は過去にも行なわれています。従来、保育室が4階以上にある場合は、屋内階段だけでなく避難用の屋外階段の設置が義務付けられておりました。しかしこの基準も緩和され、避難階段は屋内、屋外を問わず一つでよいとされました。火災などの非常時に、屋内階段を使って避難することが困難な場合にどうするのか、幼い子どもをつれて避難する際に安全を守るために規定された基準というものは、規制緩和するのではなくむしろ強化充実させることが、保育者・保護者の願いではないでしょうか。
今政府は待機児童解消のための対策として、保育所を増やす、あるいは定員を増やして多くの子どもを詰め込ませることができるようにする。民間会社が保育所運営に参入しやすいように、従来の設置基準を緩和する、あるいは本条例改定案の二つ目の内容にも関わりますが、保育士の配置基準の緩和なども行なわれています。そういった改革が政府主導の下で進められておりますけれども、子どもの安全を脅かすような基準の緩和は絶対に認めるべきではありません。安心して預けられる保育所へ、保育環境の向上、保育士の労働条件の改善を国や県、自治体の責任で進めることこそが必要であるということを強調し、議案9号には反対するものであります。
議案10号、熊本県立学校条例の一部を改正する条例の制定についてでありますが、これは県立多良木高校、球磨商業高校および南稜高校を廃止し、新たに県立球磨中央高校および南稜高校を新設するというものであります。2013年3月、当時多良木町の人口を大きく上回る3万2千筆もの署名が寄せられるなど、大きく広がった多良木高校の存続を求める世論と運動を強引に抑え込み、県教育委員会は再編整備計画の実施を全会一致で決定しました。今回の条例制定案はその決定に基づくものでありますけれども、当時熊日新聞でも「議論を尽くしたと言えるのか」と疑問を呈する社説が掲載されたように、住民の納得合意が得られたやり方とは到底いえないものであります。住民自治、住民合意をないがしろにする姿勢は地方創生にも逆行するものであります。そういったやり方を追認するわけにはまいりませんので反対します。
以上で討論を終わります。ひ県からの積極的な支援をお願いしたいと思います。
最後に、地域経済の再生についてこれは要望として述べさせていただきます。
大・中・小企業の店舗閉鎖や操業停止に伴う雇用停止等で、多くの方が仕事と収入を失い、深刻な困難に直面しています。生活支援、就労支援、雇用創出のための緊急支援を早急に具体化し打ち出すことを求めます。国に対しても特別予算の編成、ハローワークの体制強化、避難所等での出張相談会の開催など要望します。
農業支援では、施設や機会の復旧への助成、農地、能動、用水路、ため池などの施設復旧への支援、被災農家の収入源に対する支援、技術・営農指導の強化などお願いします。
中小企業支援では、店舗・向上の修復費用、営業再開のための運転資金の直接補助制度の充実、担保・保証人不要の緊急融資制度、利子補給の全額補助。住宅や店舗のリフォーム助成制度の創設などを是非お願いしたいと思います。
先日、熊本城のライトアップが復活しました。一方阿蘇方面を考えた時、思い浮かんだのは南阿蘇鉄道であります。かつて東日本大震災で、復活は難しいのではないかと思われた三陸鉄道が再開し、まさに復興のシンボルとして住民の皆さんに希望の光をともしました。もちろん安全性を前提とすべきでありますが、雄大で美しい南阿蘇を走るトロッコ列車の復活は、地元の皆さんの励ましになるのではないかと思います。県におかれましては、ぜひ県民に希望の光を差し伸べてくれるような温かい血の通った支援の更なる充実をお願いしまして私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
次に立野峡谷に計画されている立野ダムについて伺います。私も地震後、立野地域には何度か訪れました。私の知人が建設予定地付近で撮影した写真を紹介します。
これは仮排水路トンネル付近の写真です。ダムの左岸側北向き山の斜面が崩落し、工事車両が埋まっているのがわかります。もし地震が工事中の時間に起こっていたら犠牲者が出たのではないかと背筋が寒くなる写真です。
次の写真。ダム建設予定地を下流側から上流側に向かって取った写真です。橋のところがちょうどダムサイト予定地です。その上流側に大規模な地すべりが起こっている状況が見て取れます。もしダムが完成して試験湛水中、あるいは雨が降ってダムに水がたまっている状況の時に地震が起きれば、この土砂崩れがダム湖になだれ込み、津波が発生していたと思われます。あるいは最悪の場合ダムが崩壊していたかもしれません。
1963年、イタリアで実際にダム湖の中に土砂が崩れ落ち、ダム堤体そのものは壊れなかったものの、ダム湖で津波が発生し、ダムを超えて大量の水が下流域を襲い、下流のロンガローネという町を直撃。2,000名もの尊い命が奪われました。活断層付近にダムを作ることが、あるいは斜面が崩落しやすい箇所にダムを作ることがいかに恐ろしいことかを物語っているように思います。
平成26年12月県議会で、日本共産党の松岡徹県議がダムと断層の問題で質問しました。立野周辺に第四期断層が分布している。ところが国土交通省の立野ダム第四期断層調査検討業務報告書では、断層に連続性はないつまり途切れているとか、ダム建設予定地近傍に向かわないから大丈夫だと書かれている。本当に国交省の言い分が信用できるのか。これに対し蒲島知事は、国は問題点を理解している。それに対する対応も考えていると答弁されています。
そこで次のパネルです。これは8つの大学、10名の著名な先生方が4月19日発表された2016年熊本地震・地表地震断層に関する緊急速報の中で示された図であります。
ここで出現した布田川断層は、南阿蘇郡立野地区から御船町滝川地区の間、長さ26キロメートルであるとまとめられています。産総研地質調査総合センターが5月13日まとめた緊急現地調査報告によると、従来認定されていた断層東端よりも約4キロメートル東側まで延びていたことが認められたと書かれています。つまり今回の地震で、それまで見つかっていなかった新たな断層が確認されたのであります。知事、国交省の説明を鵜呑みにするわけにはいかないのではないでしょうか。
最後のパネルであります。これは立野ダム建設予定地付近で見つかった地表地震断層であります。この断層の方向まっすぐ伸びたところに立野ダム建設予定地があります。さらにその延長線上にやはり断層の動きによって壊されてしまった大切畑ダムがあります。これを見るならば、まさに断層がダムを横切っているのではないかという印象であります。
立野ダム建設に関わって国交省は活断層についてどのような調査をしたのか、業務報告書によると一次調査、二次調査と二段階に分けて行なうとしています。一次調査は過去の文献調査と空中写真による判定であります。一次判定のみで国交省はダム近傍に第四期断層は分布していないと結論付け、したがって詳細地質調査である二次調査の必要はないと判断してきたのであります。
国土交通省宮内政務官はようやく今になって、今後有識者を交えた詳細な調査を行なうと国会で答弁されました。しかしその一方で、国交省はホームページでこう書いています。地震発生後、これまでの概略的な観察においては、立野ダム本体の建設予定地付近には、表層土などのごく小規模な崩落以外に大きな崩落は認められず、ダム建設の支障となるような情報はありませんと。何が小規模な崩落でしょうか。専門家の先生はここで地滑りが起きていますとはっきり認めておられます。しかも地滑りを起こした斜面からさらに亀裂が奥に向かって延びていることも確認されています。大変危険な状態なんです。
そこで知事におたずねしますが、国交省がやると認めた詳細な調査とは、つまり二次調査である直接掘って活断層の状況を調査するということだとはっきり求めるべきではないでしょうか。お答えください。
<切り返し>
ですから知事、私の質問は、詳細な調査とはつまり第二次調査である直接掘って断層確認をすべきだとはっきり求めることが必要ではないかということであります。これまでの経過を見ても、国交省の言い分を鵜呑みにせず、専門家というのも公平な第三者を入れること、住民に開かれたものにすることなどが必要であります。知事、是非県民の生命安全を守る立場から毅然とした態度をとっていただきたいと思います。
地震によって白川などの堤防等の応急修理は完了したということであります。また河川巡回の頻度を増やす、水防警報や洪水予報の基準を引き下げて運用するなど梅雨の到来に向けての対策を講じてきているとのお話を伺っています。一方で国交省が行なった土砂災害緊急点検箇所は、今すぐ手を打つ必要のある危険度Aから危険度Cまで千数箇所にも上っています。大量の崩落土砂流出の危険性がある中で、大惨事を招かないための地質、河川等の調査、防災対策の工事を急いで進める必要があります。先日は南阿蘇村で大雨時の早期非難についての住民説明会が開かれたとのことでありますが、2012年の九州北部豪雨災害のような惨事の再来を県民は心配しています。万全の対策をお願いするとともに、阿蘇付近でこれだけの崩落、土砂崩れ、地滑りが起こったその地域に立野ダムを建設するなどという恐ろしい計画は、熊本地震の現実を踏まえてきっぱり中止すべきであるということを申し上げて次に移ります。
次に仮設住宅の問題についてお尋ねします。先日、甲佐町で仮設住宅への入居が始まりました。一刻も早く被災者のためにと地元自治体がいち早く取り組んでこられた成果であろうと思います。私も完成した仮設住宅を見てまいりました。思ったよりといえば失礼かもしれませんが、造りも立派でバリアフリーの配慮や集会所、ベンチを置いただんらんのスペースなどがありいろいろ配慮されているなと感心しました。
これから各自治体で仮設住宅の建設が急ピッチで進んでいくことになります。用地の確保は各自治体の判断でありますが、しかし仮設がどこに作られるのかは非常に大事な問題だと思います。子どもや高齢者の通学、病院通いは大丈夫か。公共交通機関、買い物の利便性はどうか、地域のコミュニティーは保たれるのか、元いた住まいから遠いのか近いのか等々、入居者にとっては切実であろうかと思います。ですから自治体任せにせず、過去の仮設建設事例から学ぶべき教訓がありますからぜひ県からも適切な助言が求められるところであろうと思います。
みなし仮設住宅についてであります。民間賃貸住宅が多い熊本市ではみなし仮設住宅を多く活用したい考えのようであります。しかしなかなか利用が進まないという報道もあります。できれば子どもを転校させたくない、高齢者がいるから二階から上は無理とかバリアフリーでないと難しいとか、利用したくても実際に希望条件に合うものが簡単に見つかるものではありません。仮設入居者の希望をよく聞き、ミスマッチが起こらないようにするなどの配慮も必要であります。
立て方の問題ですが、仮設は原則2年で解体となっております。しかし2年後に出て行ってくださいといっても簡単な話ではありません。希望すれば住み続けることができるような配慮が必要ではないでしょうか。西原村の木造仮設住宅建設地も訪ねました。コンクリートのベタ基礎、県産財の活用。費用、工期もプレハブ建設と大きく変わらないとうかがいました。将来的には災害復興住宅としての活用も検討しておられるようであります。一方、今避難生活を余儀なくされている方々の中には、修理できれば元の家に住みたいのだが、修理の見通しが立たない。そういった方々も切実に仮の住まいを求めています。私は、仮設住宅の建設は地域の実情、住民の要望など様々な角度から検討し最善の立て方が求められていると思います。
そこで健康福祉部長にお尋ねします。
第一に、今回の地震により家に住み続けることが困難となり、入居を希望される方はすべて入居できるよう入居要件の緩和とそれに見合った建設をすべきと考えますがいかがでしょうか。
第二に、応急仮設の建設に際しては木造戸建てを積極的に導入し、将来的には払い下げや災害公営住宅として二年経過以後も住み続けられるようにすべきと考えるがいかがでしょうか。
<切り返し>
5月30日、私たちは上京し政府交渉を行なってきました。この中で、仮設住宅の入居要件に関して5月24日に内閣府が出した応急仮設住宅についての連絡文書の解釈について確認しました。
内閣府担当官からは、入居要件に関し、半壊と判定されたところについても、解体・撤去を要件とせず認めるとの回答をいただきました。その後内閣府からその趣旨の連絡が県に届いているということも確認をさせていただきました。先週健康福祉部におたずねしましたが、政府の考え方と熊本県の考え方にちがいはありませんとの回答をいただいております。半壊認定でも柔軟に入居用件について運用していく、解体・撤去を要件としない。これはこれまでの要件からさらに被災者の立場に立って踏み込んだ画期的な決断であろうかと思います。いっぽう新聞などでは、半壊家屋は解体撤去を条件として仮設入居を認めるとの報道がなされております。また市町村では、家を解体するという誓約書を持ってきてくださいという自治体もあれば、誓約書でも認めない、解体した証明書をもってこないと認めないという自治体すらあるとうかがっております。そうではないということをメディアにも、そして市町村にも是非県として徹底していただきたいと思います。
また、応急仮設から災害公営住宅へと継承していく、あるいは払い下げて住み続けられるようにするという点では、制度上クリアしなければならない課題もあるとうかがっておりますが、住民の立場に立てば二年で取り壊すとなればその時に多くの方が深刻な困難に直面することは目に見えています。数百万円もかけて二年後に撤去する建物を数百万円もかけて建設するというのはもったいないです。もちろん、迅速に応急的に建設が求められている場合もありますから一概には言えないと思いますが、是非被災者の立場に立った弾力的、長期的視野に立った建設のあり方を探求していただきたいと思います。
次に被災された方々への支援制度のあり方についてお尋ねします。被災者の住宅再建、生活再建なくして被災地の復興はありえません。被災者生活再建支援法は、改正されてきたとはいえ被災者への支援金額も、適用範囲もまだまだ不十分であると言わなければなりません。
具体的な事例を紹介したいと思います。益城町にお住まいのAさんは地震で地盤が壊れ、家が傾きました。ところが一部損壊と判定されましたので被災者生活再建支援金はもらえません。もし宅地被害が認定され、家に住めないと判定されれば支援金がもらえる可能性はありますが、宅地判定がはっきりしません。建設業者に家を診てもらったところ、ジャッキアップをすれば住めるようになりますとのことでした。ただ500万円から700万円かかりますと。修理すればすめるようになるんだけれども、修理するならば解体家屋ではなくなるので生活支援金は受けられません。一部損壊ですから応急修理制度も使えません。もし仮に膨大な費用をかけて家を解体したとしても仮設入居資格さえありません。まさに八方ふさがりの状況であります。深刻な被害を受けながらも現行制度の元では救済対象とならない。しかしこのような被害は今回の地震の中で特別な事例というものではありません。制度そのものの早急な改善が必要ではないでしょうか。
熊本県におかれましては5月9日、国に対し要望書を提出し、家屋被害を受けたすべての方に対して救済制度が適用できるよう求めておられます。ぜひ引き続き救済制度の改善と拡充を強く要望していただきたいと思います。
同時に、いま全国32の都道府県が、国の制度に上乗せ、あるいは横出しして独自の生活再建支援制度をつくっています。中越地震を経験した新潟県の事例を紹介します。全壊、大規模半壊に対し100万円の上乗せを行ない、さらに国の制度にはない半壊に50万円を県独自に支給しました。その結果、国制度の利用者5,883世帯に対し、県事業の利用者は17,405世帯と3.4倍に達しました。住宅応急修理制度に付いては、全壊であっても修理すれば住める家もあるとして全壊家屋にも適用範囲を拡大した上、国制度に大規模半壊100万円、半壊50万円を上乗せしました。新潟県では半壊・大規模半壊世帯の7割から8割がこの制度を活用。そのことによって公営住宅の建設戸数を減らし、建設経費の節約にもつながったとのことであります。さらに、自然斜面の復旧に限定されていた災害関連緊急急傾斜地崩壊対策事業の特例措置として宅地用壁などの人口斜面についても適用可能とするとともに、県単独の小規模急傾斜地崩壊防止事業により、人家一戸の場合でも県の補助事業を認めることとしました。その結果、174件、約10億円の県補助事業が実施され、これによって宅地擁壁等斜面崩壊の大半が復旧できたとのことであります。
私は例えば一部損壊の世帯に対しても応急修理制度を使えるようにするなど、熊本県独自に支援制度の充実を図ることは喫緊の課題であろうかと思います。
また、県内自治体が独自に行なう支援事業に対して県としても積極的に支援すべきではないかと考えます。玉名市では国の災害救助法、被災者生活再建支援法の支援対象とならない半壊、および一部損壊の住宅復旧工事に対して補助金の支給制度を創設しました。また他県の事例でありますが、宮城県仙台市では民間宅地擁壁の復旧工事助成制度として、100万円を超えた金額の90%、上限1,000万円の助成を行ないました。また所有者の申請に基づき、損壊したブロック壁の解体・撤去を市が行いました。
こうした市町村独自の支援事業に、県として積極的に補助していく姿勢を打ち出すならば、独自の支援制度が広がっていくのではないでしょうか。
そこで質問ですが、
第一に、国の被災者生活再建支援制度に対し、支援金の増額と適用範囲の拡大をはかる県独自の支援制度の創設を求めます。
第二に、市町村が独自に作る被災者支援制度に対して、県としても財政的支援を行なっていただきたいと思います。
第三に、義援金の支給についてであります。被害程度に応じた金額の差を設けるとしても、基本的には今回の熊本地震で被災したすべての方を対象に義援金の配分を検討すべきではないかと考えますがいかがでしょうか。
以上、健康福祉部長にお尋ねします。
<切り返し>
今回の熊本地震が過去の大震災と大きく違う点は、膨大な住宅被害、宅地被害が発生しているという点であります。阪神淡路大震災は多くの家屋が火災によって消失しました。東日本大震災では、津波によって家屋が根こそぎ流されました。熊本地震は、家は大きな被害を受けたけれどもそれでも残りました。修理さえすれば何とか住める、そんな家屋がおそらくは過去の災害と比べても非常に多く存在しているのではないかと思います。ただし、家屋や宅地に対する現行の修理制度は極めて貧弱であります。私は、これまで経験したことのない未曾有の住宅・宅地被害を生んだ熊本地震だからこそ、住宅・宅地の修理、補修に対する支援制度を過去の大災害の水準にとどまらず改善させる、あるいは新たに創設させる、そんな姿勢が求められるのではないかと考えます。
なんといっても一番多い要望は、一部損壊にも支援制度をという声だと思います。一部損壊といってもその大半は補修に数十万円、数百万円とかかるわけであります。現行の応急修理制度を一部損壊にも適用できるようにする、あるいは支援金額の上乗せをしていく。是非そんな改善を進めていただきたいと思います。
そして、独自に新たな救済制度を実現しようと思えばどうしても財源の問題にぶつからざるを得ません。西議員も質問されましたが、災害復興基金の創設が必要ではないでしょうか。
そして代表質問の中でも神社など歴史的文化的建造物の再建にも支援をとのお話もありましたし、公立学校に比べ私学への支援が少ないとのご指摘もありました。さらにお寺、あるいは有料老人ホームや認可外保育園などにしても、それらが地域に果たしてきた公共的役割は大きいと思いますが被害に対する支援制度はありません。それこそ復興基金を、地域の実情に応じて住民生活の再生、コミュニティの再生、地域経済の振興、雇用維持などについて、弾力的かつきめ細かに対応できるものとして活用していくべきであろうと思います。国からの財源措置なども求めて復興基金の創設をはかるようご提案し、次の質問に移ります。せず、ぜひ県からの積極的な支援をお願いしたいと思います。
避難所の問題についてお尋ねします。現在なお、約7,000人の方が避難生活を余儀なくされています。東日本大震災では、多くの被災者が長期にわたる避難所生活を強いられる中で、被災者の心身の機能低下や様々な疾患の発生、悪化という事態が生じました。このような教訓を踏まえ、政府は平成25年、避難所における生活環境の確保に向けた取り組みの指針を策定しました。ここでは、避難所運営の基本方針、食事に関する配慮、衛生・保険・巡回診療、被災者への情報提供、相談窓口等についてかなり丁寧、詳細な指針が示されています。
そして熊本地震発災直後の4月15日、政府は「避難所の生活環境の整備等について」という連絡文書を熊本県あてに出しました。避難所の設置に関しては、簡易ベッド、畳、マット、カーペット等の整備。間仕切り用パーテーションの設置。冷暖房機器、テレビ、ラジオの設置。洗濯機、乾燥機、簡易シャワー仮設風呂等の設置。高齢者、障がい者等の要配慮者が使いやすい洋式を含む仮設トイレの設置など求めています。食品の供与については、長期化に対応してメニューの多様化、適温食の提供、高齢者や病弱者に対する配慮を行なうこととしています。
16日の本震発災後、被災地は、一時食料も水も手に入らない状況となりました。食料の備蓄は底をつき、お店も開いていない。避難所は人であふれました。政府はプッシュ型支援を決断しましたが17日に準備できた食料は4万1,000食。当日の推計避難者18万3,000人に必要な一日の食料55万食には到底不足していました。食料の配給時には長蛇の列ができ、お世話する方々には行き渡らない状況でした。その後ボランティアの皆さんからの食料提供、各地からの支援物資が届くようになりましたが、いっぽうで自主避難所や車中泊、自宅避難の方には全く提供されないという状況でありました。
このような事態であったにもかかわらず、農水省幹部が「食料の供給はそれなりにうまくいった」とか、知事が「国からの食料提供は成功した」と述べたという新聞報道を見ると、これは認識が違うのではないかという印象をもたざるを得ません。今回の教訓を今後の県の防災行動計画に活かしていくためにも、いずれかの機会においてしっかりとした検証をおこなうことが必要であると思います。
問題は、発災から二ヶ月近くたとうとしている現在においてなお、避難所の生活環境改善が進まない状況があることです。
私はおとといから昨日にかけて、改めて市、あるいは町のいくつか避難所を訪問しました。だいたい食事はどこでも朝と昼はおにぎりかパン、よくて缶詰やソーセージつき。夜は弁当という状況であります。毎日これが続いています。健康な人でも病気になってしまうのではないでしょうか。私たちはこの間、各市町村、そして県に対しても、さらに政府に対しても繰り返し避難所の食事改善を要請してきました。そのたびに、4月15日連絡文所の通りやりますとの回答をいただいてきました。しかし現状はなかなか改善が進みません。先日伺った避難所である女性からは、地震が起きる直前までの生活と、地震が起きて直後からの生活がまるっきり変わってしまった。なぜこんなことになってしまったのかと疲れた表情を浮かべておられました。辛い避難所生活の中で心身ともにつかれきっている中、栄養に配慮した多様なメニュー、あるいは温かい汁物など適温食の提供は最低限の配慮ではないでしょうか。やりますやりますといいながらなぜ改善できないのでしょうか。5月20日には、熊本県あてに再度内閣府から避難所の食生活の改善を求める連絡文書が出されました。二度も改善を求める文書が出されるのはきわめて異例のことであります。しかしその文書が出てからもさらに半月以上経過しています。
地震によって住む家を奪われた方々が避難所生活によって健康悪化が進むようなことにならないよう、一刻も早く環境改善を進めるべきであるとともに、元の生活を取り戻すための手助けが必要だと考えます。そこで質問ですが、
第一に、改善されていない避難所の食事の改善をはかるとともに、地震被害により食事の提供を求めなければならなくなった避難所以外の被災者にも食事の提供がなされるよう、市町村に周知徹底を図るとともに改善に努めていただきたい。そして内閣府連絡文書に基づいた避難所の生活環境の改善が実現しているか、すべての避難所の状況掌握と改善に努めていただきたいと思いますがいかがでしょうか。
第二に、避難所に生活支援の情報を伝える資料がおいてあっても、それを避難している人が読み、理解し、利用することは簡単ではありません。避難者一人ひとりがどんな事情で避難生活を余儀なくされているのか、元の生活を取り戻すためにはどのような対策をとって行ったらいいのか、役所に対してどんな申し込みをすればいいのか、そんなことを被災者と一緒に考えてあげられるし、必要な情報も教えてあげられるし、場合によっては手続きのお手伝いもしてあげられる。その様ないわば生活再建アドバイザーのような役割を果たす人が必要ではないでしょうか。避難所に常駐できなくても、せめて巡回し避難者の生活再建をお手伝いできるよう人の配置を、市町村と連携して実現させていただきたいと思いますがいかがでしょうか。
以上、健康福祉部長におたずねします。
<切り返し>
食事もそうなんですが、避難所は本当に深刻な状況がたくさんあります。昨日ある避難所で私は、肺気腫を患って酸素吸入している方とお話しました。巡回してきた看護師さんからは、床の上にマットではほこりが舞いやすいからベッドの上で休んだほうがいいとアドバイスをもらったそうです。なのになぜダンボールベッドが入っていないのですかとたずねたら、そんなものがあるとは知りませんでしたとおっしゃいました。必要なものは避難所から要望リストが上がってくるとの話ですが、被災者みずから声をあげなければ要求が反映されないというのでは、改善は進まないと思います。避難所においてもらっているだけでありがたい、そんな方が多いんです。だけども、脳梗塞をわずらっておられる方が固いマットで寝ているなかで朝なかなか起き上がれなくなったとか、避難所から登校している小中学生にとって宿題をするための机がないとか、携帯を持っていない高齢者は公衆電話がないから連絡取れないとか、10日以上着替えてないとか、洋式トイレがないとか、何とかなりませんかという課題が山積しています。ぜひ避難しておられる方の立場にたっての解決が求められています。避難所は、地震によって住む家を奪われた方々にとって命とくらしを守る場所であります。繰り返しになりますが、避難所の生活環境の改善についての連絡文書は県に出されています。
日本共産党の山本伸裕です。熊本地震による犠牲者、被災者の皆様方に心からのお悔やみとお見舞いを申し上げます。また知事を先頭に、日々不眠不休で地震対応に当たっておられる県、市町村職員の皆さんの多大なるご労苦に心から敬意申し上げます。また被災者救済のために尽力されている地域の皆様、全国から物心両面のご支援を寄せていただいている皆様に感謝申し上げたいと思います。熊本地震対応のために議会日程が短縮される中で、一般質問の希望を認めていただきましたことに感謝申し上げます。ぜひ被災者救済や震災からの復興に貢献できるような機会となるよう精一杯質問させていただきますのでよろしくお願いいたします。
震度7の大地震が2回も発生し、震度6や震度5を含む1,500回を超える連続的な余震という、かつて経験したことがない地震による甚大な被害が発生しています。震度6以上の激震に、実に県人口の85%の方々が見舞われました。これは阪神淡路地震42%、新潟地震16%と比較しても突出しています。住家被害は12万8千棟、被災者救済の拠点となるべき庁舎が損壊するなど29の市町村で約250棟の公的施設が被害を受け、いまだに復旧の見通しの立たない施設も少なくありません。また南阿蘇村をはじめ大規模な斜面崩壊、土砂災害、河川や堤防、農地、住宅地の損壊が発生。農業、経済や観光への打撃も甚大であります。
前例のない巨大地震による甚大な被害に直面している今、県民を主役に、行政や議会、各分野の団体、地域、個人、政党が共同し、力を合わせて苦難を乗り越え、生活と生業の再建や地域の復興を進めていかなければなりません。
その際、議案説明で知事も強調されたとおり、国の絶大な支援がなければ被災者救済も復旧・復興も成し遂げることはできません。激甚災害制度の下では、地元負担が補助率のかさ上げで10分の1もしくは10分の2となりますが、被災自治体からは町や村の年間予算全部をつぎ込んでも足りないという声が上がっています。財政上の困難から、被災者への支援や復旧・復興に自治体が積極的に取り組むことができない状況に陥ってしまうことは絶対に避けなければなりません。知事は5月9日、東日本大震災の経験を踏まえて特別法を制定するなどの法的措置を念頭に、補助率のかさ上げ、特別交付税の創設などにより地元負担ゼロとなるよう政府に要請されました。私は、復興は全額国庫負担で行なうこととし、自治体は被災者支援に力を注ぐことができるよう政府の更なる積極対応を求めるべきであると考えますが、知事の見解をお尋ねします。
<切り返し>
例えば庁舎の損壊にしても、宇土市や八代市など解体を余儀なくされている自治体では、解体撤去、仮庁舎、本庁者の建設と莫大な費用がかかります。宇土市は耐震上の問題から、立て替える計画はあったものの、厳しい財政状況から庁舎立て替えを後回しにし、今回の被災に見舞われてしまいました。国は交付税措置の高い地方債の充当が可能であるとおっしゃっていますが、結局地方債ということは借金でありますし、交付税措置の条件は85.5%ということでいくとなお15%近くは被災自治体の負担となってしまいます。また現状復旧が原則となると、耐震強化は自前でということになりかねません。
自治体の役割は、地方自治法に定められている通り、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施するということであります。被災住民のいのちと健康、生活を守ることを第一義的な任務として責務を果たすことが県、市町村に求められており、そのためにも復旧・復興の事業は全額国庫負担、そして国に対し、人的支援、制度的支援などを積極的に要請すべきであろうと思います。
安倍首相自身も「復興において必要となる財源によって、地方自治体が立ち行かなくなる、財政上非常に大きなダメージをこうむるということは絶対にないようにしていきたい」と国会で答弁されていらっしゃるわけですから、この立場を強く求めて次の質問に移ります。
日本共産党の山本伸裕です。TPP協定に対する意見書に反対する討論を行ないます。
意見書では、関税の撤廃や引き下げ等による農林水産業への影響が懸念されること、また農家所得の確保や生産量の維持がなされるのか、生産現場等から疑問の声が上がっていること、また輸入食品の安全性は確保されるのかについて県民はいまだ大きな不安を抱いていることなどが指摘されています。このような疑問、不安については私も認識を共有するものであります。意見書の要望項目として第一に国会において審議を十分に尽くすこと、第二に農林水産業への影響が及ばないように万全の対策を講じること、第三に消費者の不安を解消するための万全の対策を講じることとなっているわけでありますが、ただ問題は、すでに政府の説明は、万全の対策を取りますから国会決議は守られますという立場に立ってしまっているわけであります。安倍首相はTPPの交渉参加に当たって、アメリカから「聖域なき関税撤廃は原則ではない」との約束を取り付けたとし、合意によっても国会決議は守られたと強調しています。衆議院予算委員会において安倍首相は、「我々としては、国会決議の趣旨に沿う合意を達成できた」と答弁されました。一連の言動を見るならば、国民の多くの不安、懸念の声に真摯に耳を傾けようという姿勢はみられず、もはや国会での批准と関連法の成立に向けまっしぐらに突き進むという姿勢がはっきりと表れています。現時点において政府に対し、県議会として急いでたださなければならないポイントは、国会決議が守られていないではないかという点の指摘と追及ではないでしょうか。
国会決議では、農産物の重要5項目、コメ、麦、牛肉、豚肉、乳製品、砂糖は、関税撤廃を認めない。聖域にするとしています。ところが大筋合意では、重要5品目のうち30%の品目で関税が撤廃され、コメでも関税ゼロの特別輸入枠を新たに作っています。これは明白な国会決議違反であります。農林水産物全体では8割をこす品目の関税が撤廃され、残りの品目もTPP発効から7年後はアメリカなどが要求すれば関税撤廃の協議などが義務付けられています。JA熊本中央会の梅田穣会長が、国会決議違反は明確であり、きわめて遺憾だと批判されたのはごもっともであります。さらに梅田会長は、大筋合意に至ったことに関して「農業者が将来に希望を持って営農に従事できるような環境は崩壊し、将来に禍根を残したといわざるを得ない」と指摘し、国民の食と暮らし、命を守るため、最後の最後まで断固反対に向けた運動を徹底的に展開していくと昨年10月新聞取材にこたえておられます。こういった強い決意にこたえて奮闘することこそが私たちに求められているのではないでしょうか。
そして第二に、TPP参加に明らかに前のめりとなっている政府の姿勢を厳しく批判し、是正を求めることが必要であります。アメリカではTPPの影響試算をまず出して、それに基づいて議会で議論する手続きと日程が明示されています。ところがわが国の場合、TPP協定の詳細も明らかにされないまま、そして影響試算が出される前から国内対策だけが先行して示され、今回の補正予算でもTPP関連政策大綱実現に向けた施策として、農地集積、大規模化、法人化、「強い農業」への補正予算が計上されております。TPP前提でことを進め、そして対策をとるから大丈夫だとの理由が後付けされる。こうした姿勢に国民が大きな疑問と懸念を表明していることは当然のことです。共同通信が今年1月に実施した世論調査によると、TPPの承認案や関連法案の問題について、今国会にこだわらず慎重に審議すべきだが69.2%、成立させる必要がないとの回答と合わせると75%をこえています。今国会で成立させるべきだというのは21%にとどまっています。また農協組合長を対象に日本農業新聞が行なった調査によると、国会決議が守られていないと答えたのは91.6%にも上っています。JA熊本が今年1月末から2月にかけて、熊本市の下通りアーケードや合志市の県農業公園カントリーパークなどで実施した県民アンケートでも、TPP賛成は14.7%にとどまり、反対30.1%の半分以下であります。こんな状況で批准や関連法の提案を強引に進めることは許されません。
以上のような理由から、本意見書案ではたしかに、TPP協定に対する大きな懸念と万全の対策への要望が表明されておりますけれども、結果的には政府のTPP推進姿勢を追認するものにしかならないと判断せざるを得ません。よって本意見書案には賛同しかねるという立場を表明するものであります。県内農林水産業と農家経営、消費者の食の安全を確保するためにも、TPP批准はなんとしても中止させなければならないと考えます。議員各位のご賛同をお願いいたしまして反対討論といたします。
日本の学費はあまりに高い。大学入学した年に納める初年度納付金は国立大学で82万円にも上っている。児童のいる世帯の平均所得は1996年に比べて2013年には約100万円も減少しているのに、大学の初年度納付金は逆に10万円も増えている。経済協力開発機構(OECD)は、高等教育の授業料水準と公的補助水準の高低を四つのモデルに分類し、日本、韓国、チリを「高授業料・低補助」に該当するとした。しかし韓国は2008年から給付制奨学金制度を生活保護受給者殻低所得層、中所得層へと拡充。チリは昨年、低所得層の授業料を国立・私立とも無償化することを決定した。もはや日本の高学費・低補助の実態は世界の中でも異常なものとなっている。
学費高騰の原因は国の交付金削減である。国立大学の収入の中心を占める運営費交付金は、国立大学の法人化以降、12年間で12%、1,470億円も大幅削減されている。
重大なことは、財務省は昨年10月の財政制度等審議会においてさらに「運営費交付金を毎年1%減少させ、自己収入を毎年1・6%増加させることが必要」との提案をおこなったことである。これに対し、例えば安倍首相の地元山口県では、経済同友会、中小企業団体中央会など県内経済団体が「運営費交付金の削減による地域の基幹大学の衰退は、地域経済の衰退に直結する重大事」と予算の拡充を求める声明を出すなど、反対の声がわき起こっている。
しかしながら国会の議論の中で安倍政権は、運営費交付金の削減と自主財源の目標設定、経営力の強化と自立性の確保という方向性を強調した。文部科学省自身が示した試算によると、財政新での財務省提案に基づき、自己収入増をすべて授業料でまかなうとすれば15年間で約40万円の負担増、約93万円の授業料になるとのことである。すでに多くの家庭で自助努力の限界を超える負担となっている高学費に、さらに拍車をかけることになる。
2013年、国会では、教育の機会均等を図ること等を目標に掲げ、「子どもの貧困対策法」が全会一致で成立した。安倍首相自身も「生まれ育った環境で子どもの将来を左右させてはならない」というが、そうであるならば異常な高学費の是正と給付型奨学金制度の導入の決断こそが急いで求められるところである。
よって、国におかれては、下記の事項を実行していただくことを強く要望する。
1、国立大学運営費交付金の削減方針をやめ、削減してきた交付金を元に戻すこと。
2、OECD諸国の中でも最低水準となっている日本の教育予算を抜本的に増額し、学費負担の軽減を進めること。
以上、地方自治法99条の規定により意見書を提出する
日本共産党の山本伸裕です。学費値上げにつながる国立大学運営費交付金の削減をやめるよう求める意見書についての提案説明をおこないます。本意見書は新社会党の岩中議員との共同提案であります。
安倍政権による国立大学の学費値上げ計画は、昨年十月、政府の財政制度等審議会で、国からの運営費交付金に依存する割合と、自己収入割合とを同じ割合にするという財務省の方針が了承されたのが発端であります。この財務省方針は、国からの交付金を今後15年間、毎年1%ずつ削減して計1,948億円も削減するというものであります。その一方、大学の自己収入は毎年1.6%ずつ増加させ、合計2437億円も増やせというものであります。国立大学の自己収入は寄付金、産学連携の研究費、三つ目に学費・授業料があります。このうち寄付金については現在頭打ちの状況にあること、そして産学連携の教育費については今後も継続的に増加するということは必ずしも見込めない状況にあることを、文部科学省は参院文部科学委員会で明らかにしています。結局自己収入を増やすとなると、学費値上げせざるを得ないのです。そして財務省はいまなおこの方針を撤回しておりません。
また、同審議会が取りまとめた昨年11月の建議では、国立大学に対し、運営費交付金の削減を通じた財政への貢献を求め、「授業料の値上げについても議論が必要だ」、「国費に頼らずに自らの収益で経営を強化していくことが必要だ」と打ち出しています。もし、自己収入増を授業料だけでまかなうとするならば、昨年12月の国会における文科省試算によると、授業料は40万円増えて年間93万円になるとのことであります。
いま、日本の教育予算に対する公的負担はOECD諸国の中で最低水準。多くの学生が多額な教育費負担に苦しみ、奨学金の返済に困っています。この現状は高等教育の段階的な無償化を求める国際人権規約や、憲法が定める教育機会の均等にも反するものでありますが、この間の一連の授業料値上げを示唆する政府の議論というものは、このような深刻な状況に目を背け、さらに事態を悪化させる暴論であるといわざるを得ません。
運営費交付金の削減に対しては大学関係者や学生、保護者からも反対の声が広がっています。国立大学協会は、昨年10月27日、「授業料の引き上げと合わせて運営費交付金の減額をおこなうことは、経済格差による教育格差の拡大につながる。国立大学の役割を十分に果たすことができなくなることを危惧する」との会長声明を発表しました。こういった多くの皆さんからの危惧、不安、懸念の声が出される中で、来年度予算案においては交付金は前年度と同額になりました。しかし、交付金と一体に配分されていた補助金は半減され、各大学に配分される予算は88億円ものマイナスとなっています。さらに重大なことは、最も基盤的な経費である基幹運営費交付金は毎年1%、100億円も削減する新たなルールが導入されたことであります。文科省は、この100億円を使って各大学の「機能強化」を支援するとしていますが、これはそのままでは人、物、施設には使えません。前述しました国立大学協会の里見進会長も「機能強化促進分は使途が限定されているので、教育研究活動に必要な基盤的予算(基盤経費)はこれまで以上に減らさざるを得ない」「高等教育局の予算もかなり減額されたので、補助金として大学に配分される予算も少なくなる」と指摘しています。
結局、民間企業からの資金獲得が困難な大学は、学費値上げに踏み込まざるを得なくなります。国立大学への予算削減による学費値上げの危険が現実にあることは明らかではないでしょうか。
ちなみに、国会では与党の側からも授業料値上げ反対の意見が出されています。昨年12月の参院文教科学委員会で公明党の新妻秀規議員は、「授業料の値上げによって教育の格差が拡大してしまう」と批判し、「わが党として到底容認できません」と明言されています。
国立大学の学費値上げは私立大学にも波及します。学費値上げの悪循環を招くことは必至です。学費値上げにつながる、国の大学予算削減方針を撤回させるという一点で、与野党超えて声をあげようではありませんか。
提案いたしました意見書案では、日本の高い学費と低い補助の水準はOECD諸国の中でも異常なものとなっていること、そしてその原因は国立大学の収入の中心を占める運営費交付金をこの12年間で1,470億円も削減してきたことにあることを指摘しています。国民の所得は減少しているのに大学授業料の値上げが続いている異常事態にストップをかけるためには、運営費交付金の削減方針をやめ、削減してきた交付金を元に戻すことが不可欠であります。また、返還が求められる奨学金や貸付制度は存在しますが、大学卒業後の就職リスクや返還リスクなどを背景に、貸付制度を利用できないといった声が多く、給付型奨学金に強い要望があります。このような状況の中長野県では2014年に全国で初めて、入学一時金に相当する給付型の奨学金、上限30万円を創設しました。来年度からは、これに加え最大4年間で100万円の給付型奨学金を盛り込んでいます。国に給付型奨学金制度の創設を求めるとともに、熊本県としても独自に制度の創設をはかられるよう求めるものであります。若者の未来や夢を閉ざす社会であってはなりません。ぜひ意見書へのご賛同をお願い申し上げまして、提案説明とさせていただきます。
日本共産党の山本伸裕です。平成27年度熊本県一般会計補正予算には、一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策として国の補正予算に盛り込まれた施策関連として65億4,300万円余が計上されています。この中で、地域医療介護総合確保基金積立金27億3000万円が計上されています。平成26年6月に成立した医療介護総合確保推進法に基づき、各都道府県に設置された財政支援制度でありますが、そこでの国の役割は方針策定や基金の支援だけに後退し、サービス提供や体制整備は市町村に押し付けるなど法律そのものに本質的な問題点があるということを指摘しておきたいとおもいます。介護福祉士を目指す学生への就学資金貸し付けの拡充3億2900万円余は前向きの施策ですが、もっとも必要なのは抜本的な基本報酬の引き上げであり、国費の直接投入による賃金引上げの仕組みを創設することであります。ぜひ国に対し県としても要望すべきだと考えます。
次に28年度一般会計当初予算に関してであります。いわゆる骨格予算として人件費などの義務的経費や継続事業に要する経費を中心に編成したとのことでありますが、問題点も含まれています。国保関係では、運営を都道府県に移管する制度変更に向けて、財政安定化基金の創設や国保運営協議会に要する関係予算などが計上されています。国民健康保険は、他の協会けんぽなど公的医療保険に比べ高齢者や低所得者層が多く加入しているという構造的な問題を抱え、それゆえ高すぎる保険料や財政悪化につながっています。政府は、公費を投入して保険料負担の軽減や伸び幅の抑制をはかっていくと説明しますが、国費投入が長期的に続く保障はありません。国からの公費投入と引き換えに市町村の法定外繰り入れが減らされ、そして国費も減らされてしまったら、ますます国保財政が窮迫する事態となりうることも想定されるわけであります。しかも高齢化や医療技術の進歩などにより、今後も医療費の増大が予測されています。国庫負担を大幅に増やして国保の財政構造を抜本的に変えない限り、更なる保険料高騰は避けられません。県は国に対し国庫負担の抜本的な引き上げを求めるべきであります。
また、当初予算に計上されております職員給与費でありますが、これは地方公務員法の改定に伴い、一般職職員の給料表が改定されております。地方公務員法の改定は、それまでの勤務評定を廃止して、能力評価と業績評価を二本柱とする人事評価制度を地方公務員に適用するというものであります。
人事評価制度を導入する公務員改革というのは2001年に閣議決定された公務員制度改革大綱から始まります。これは1990年代に民間企業で急速に広がった成果主義賃金体系に追随したこと、新自由主義が接見したイギリスなどの例なども参考にしたと言われています。しかし、その政府が参考にした民間企業での成果主義賃金体系はその後どうなったでしょうか。日本能率協会が2009年に行った調査では、成果主義を導入しても何らかの不具合があって見直しを行なったという企業は38・8%にのぼり、導入予定がないところは15.9%でした。日経ビジネスが同年行なった調査では、あなたの会社が導入した成果主義は成功したかという問いに、成功したという企業は31・1%、失敗だったと答えた企業はなんと68.5%に達しました。イギリスではおよそ十年前から成果主義賃金体系の廃止が始まっていますが、その理由は職員全体を対象とするためにコストがかかりすぎる、評価基準を一貫させることが非常に困難であった、成果主義賃金が職員のやる気につながらず、むしろやる気を失わせたことなどが紹介されています。こうした人事評価制度を導入した賃金改定というのはいかがなものかと感じます。私は公務労働、とりわけ地方公務員の仕事には成果主義というのはなじまないと考えます。ある研究機関が公務員に向けて行なった、最もやる気が出たのはどんな時かというアンケート調査では、懸命に仕事をしたら市民から感謝された、仕事ぶりを褒められたなどの答えが半数を超したと報告されています。憲法にうたわれている全体の奉仕者である公務員の道を選択した人たちにとってみれば、市民からの感謝が最大のモチベーションにつながるのは当然のことではないでしょうか。市民の相談に丁寧に耳を傾け、時間はかかっても一つ一つその問題を解決していくことを成果とみるか、それとも、数はこなすが市民からは冷たい窓口といわれる人が良いのか。もちろん、県職員の皆さんは能力も人柄もえりすぐりの方々ばかりであるというのはよく存じておりますが、人事評価が給与や処遇に結びつくということになると、やはり市民の感謝が最大のモチベーションというところから転換してしまうことにつながりかねないのではないか、公務員の給与に評価制度を導入することはなじまないと考えるものであります。
また、日本共産党としてこれまでも指摘してきたことでありますが、法的根拠がない同和関係団体への補助金が28年度予算においても計上されております。こういった予算はもう削除すべきであります。
1月から運用開始したマイナンバー制度に伴う関係予算も計上されております。個人情報保護のまともな対策もないまま、地方自治体は税や保険料の徴収強化と社会保障費抑制に駆り立てられることになり、権力による国民監視とプライバシー漏洩などの恐れが生じます。
つぎに76号、県育英資金貸付金の支払い請求についての訴えの提起でありますが、裁判に訴えて滞納者に対し滞納返還金および延滞利息の全額を一括して支払うよう求めるようなやり方には賛同できません。相手の実情をよくつかみ、解決策を親身になって相談に乗り、分納や減免など柔軟な返済計画を一緒になって考えるなど、県の姿勢の転換を求めるものであります。
以上、常任委員長報告に対する反対討論を終わります。
日本共産党の山本伸裕です。議案19号、平成27年度熊本県一般会計補正予算に対する質疑を行ないます。
本予算は国の平成27年度補正予算に対応し、TPP関連政策大綱実現に向けた施策として85億6,800万円余の補正が計上されております。内容は認定農業者、集落営農組織に対する経営発展に向けた助成、収益力向上に計画的に取り組む産地への施設整備に対する助成、高収益作物を中心とした営農体系への転換を促進するための施設整備、農地集積促進のための基盤整備、木材競争力強化のための施設整備であります。
もちろん生産者からの要望の反映という部分もあり、私も単純に反対するものではありません。ただ私が疑問に思うのは、そもそもまだ国会で批准もしていないという段階なのに、知事が議案説明の際に「国難の中にもチャンスが見いだせないか」と強調しておられますように、すでにTPP参加を当然の前提のように受け入れているのではないかという点であります。まずやるべきことは、2013年国会決議との整合性をただすことであります。重要5品目の3割の関税が撤廃されるというのは、明らかに国会決議違反であります。国会決議との整合性が取れなければ、同じ国会で批准などできるはずはありません。他のTPP参加国でもアメリカを筆頭に国内の反対論が強く、簡単に批准できるような状況ではないというのに、日本だけが政府の参加前のめり姿勢を追認するようなことでよいのでしょうか。質問の第一ですが、ぜひ熊本県におかれましては国会決議との整合性をまず政府に厳しくただしていただきたいと思いますがいかがでしょうか。
政府はTPPによる国内への影響試算を発表しましたが、2年前に3兆円減少するとしていた農林水産物の生産額は1300億から2100億円の減少と、前回試算よりも大幅にマイナス幅が縮小しました。農林水産物の生産金額は減少するが、国内対策を講じるので生産量の減少も食料自給率の低下もないとのことであります。しかし東大大学院の鈴木宜弘教授は、TPPによってGDPはほとんど増えず、農林水産物では1兆円を超える被害が出るとの試算をされています。政府の試算となぜこんなに大きな開きが出ているのでしょうか。そこで2点目の質問ですが、熊本県としては鈴木教授に問い合わせ、政府との影響額の計算方法とどういう点が異なるのか、その計算式で行くならば熊本県の影響額はどうなるのか、問い合わせたうえ、科学的客観的に影響予測をたてることが必要ではないでしょうか。以上2点、農林水産部長にお尋ねします。
鈴木教授による影響試算は農業協同組合新聞で紹介されています。一例として養豚経営について、飼養頭数の規模ごとに影響額を試算されています。それによると、TPP発効後は2,000頭以上の大規模農場も含め、すべて赤字経営に陥ると。さらにTPP対策として赤字の補てん割合を9割に引き上げる対策が実施されたとしても、黒字経営に転換するのは飼養頭数2,000頭以上の階層だけだとのことです。この試算をあてはめるならば、県内養豚農家で経営が成り立つのはわずか35軒、85%の養豚農家は赤字となります。文字通り県内の養豚農家は壊滅的被害を受ける状況となります。もしこの試算が正確だということになると恐ろしいことです。ぜひ県としても早急な検証をお願いしたいと思います。
いま国も県も、攻めの農業という旗印の下、農地集積だ規模拡大だ法人化だということを進めておられます。従来の家族経営は淘汰されていかざるを得ません。一方企業が手を出さないような非効率な中山間地は原野に戻していく。それがTPP参加を前提とした今の農業政策の方向であります。たとえ零細規模の家族経営が壊滅しても、条件のよい農地で大手の流通企業などが参入をして農業経営をおこなって、その所得が倍になったら所得倍増の目標達成だとなるわけであります。しかし家族が代々大切に守ってきた田畑も、地域の伝統も、文化も、コミュニティーも壊して、それで地域の繁栄といえるでしょうか。
わたしはTPPが日本と熊本の農業に及ぼす影響というものをいま本当に真剣に考え、食と地域の暮らしを守る取り組みを進めるべきだということを申し上げたいと思います。
さらに、TPPは工業製品やサービス、食の安全、投資や金融、政府調達、著作権、労働などあらゆる分野を対象にしています。多国籍企業の都合に合わせ、国の在り方そのものが大きく変えられてしまうことになります。地域経済においても、農林水産業はもとより、地域の疲弊を決定的に進めることにつながりかねません。地方自治体業務にかかわるものとして公契約、公共調達の市場開放問題があります。学校給食、地元からの原材料調達、地元雇用採用などにも大きな影響が及ぶことが懸念されます。熊本県は平成25年3月にTPP協定に係る情報連絡本部を設置。昨年10月には大筋合意を受けて同対策本部を設置しました。本部長である知事が必要に応じて招集するとなっていますが、立ち上げ会議以降一度も開催されておりません。北海道では同じく知事を本部長とする対策本部会議が既に7回にわたって開催されております。TPP問題を国難という強い表現で取り上げておられる蒲島知事であります。国難といってもこれは人災であり、自然災害と違い未然に食い止めることもできるわけでありますから、さらなる対応の強化をお願いして質疑とします。
日本共産党の山本伸裕です。北朝鮮のミサイル発射に対する抗議と、国に毅然とした対応を求める意見書について反対討論を行ないます。
まず最初に、私は日本共産党を代表し、今回の北朝鮮の行為を厳しく非難し、抗議するものであります。2009年5月、北朝鮮は当時2度目の核実験を強行しました。翌6月には、国連安保理が北朝鮮に対しいかなる核実験又は弾道ミサイル技術を使用した発射もこれ以上実施しないことを求める、との決議を採択しました。これは軍事用の弾道ミサイルだけでなく、その技術を使った平和利用の衛星打ち上げも含めた禁止であります。ところが北朝鮮は、この安保理決議に挑戦するかのように、1月6日には核実験を強行、そして今度は事実上の長距離弾道ミサイルを発射しました。国連安保理決議に背き、国際社会の平和と安全に深刻な脅威を及ぼす暴挙だと言わなければなりません。北朝鮮自らが合意した2005年の6か国協議の共同声明、2002年の日朝平壌宣言にも違反する行為であります。
北朝鮮側は「平和的な宇宙利用権の行使だ」などと主張しているようでありますが、そもそもなぜ北朝鮮の宇宙利用の権利に制限がかけられ、衛星打ち上げが禁止されたのか。それは、北朝鮮がこの間、平和とは正反対の暴挙を繰り返してきたからにほかなりません。そして今回も、北朝鮮は核実験と衛星打ち上げをほぼ同時期に実施しました。核兵器開発とミサイル技術の開発が不可分に結びついた軍事行動であることはだれの目にも明らかではないでしょうか。平和的な宇宙利用権の行使などという言い分はおよそ通用するものではありません。事実北朝鮮の政府自身も今回のミサイル打ち上げに関し、北朝鮮の科学技術、経済とともに国防力を発展させていくうえで画期的な事変だと強調しているではありませんか。こういった自己中心的な態度を国際社会が容認しないことは当然であります。
いま必要なことは、国際社会が一致して政治的外交的努力を強め、北朝鮮に核兵器、およびミサイルを放棄させるための実効ある措置をとることであります。
さて、意見書案では弾道ミサイル防衛体制のさらなる整備という要求が盛り込まれています。この一点において私は賛成できません。なぜなら過剰な軍事対応は何ら問題解決の役に立たないばかりか、際限のない軍事費の膨張と緊張の激化という悪循環に陥るばかりだからであります。
政府がいま開発を進めているミサイル防衛〈MD〉体制は、専門家からもその実効性について疑問の声が出ています。今回のミサイル発射に関して言うならば、防衛省は北朝鮮の通告を受けて7日未明までに迎撃体制を構築しました。海上自衛隊はスタンダードミサイル〈SM3〉装備のイージス艦を東シナ海に2隻、日本海に1隻展開。航空自衛隊はパトリオットミサイル〈PAC3〉を首都圏3か所、沖縄本島2か所、先島諸島2か所の計7か所に配備しました。北朝鮮が国際海事機関〈IMO〉に対し、飛行経路を通告したのは今月2日のことであります。この時点で日本の上空を横切るのは沖縄県・先島諸島の多良間島付近であることが判明していました。しかし日本政府はそれでも首都圏3か所のPAC3配備を変更することもせず、すすめました。これはMD体制の宣伝意外には意味のない過剰反応であったとの声もあります。
さらに、先島諸島を通過したミサイルの高度は上空約500キロメートルだったと言われておりますが、ちなみにPAC3の迎撃高度は防衛省の資料によると数十キロメートルであります。また予想軌道から外れた破片などの迎撃は極めて困難だと言われています。政府は本気で迎撃することを目的として配備したのでしょうか。私はこういう話を聞くと、本当にまじめに国土と国民を守るという意思を抱いて任務についていらっしゃる自衛隊員の皆さんが政治利用され、右往左往させられているのではないかとさえ思えて気の毒でなりません。通告された経路にない首都圏に、わかっていながら迎撃体制を配備する。また性能上迎撃できないと分かっているのに配備する。こういうことでよいのでしょうか。さらに政府は今回、通告経路の先島諸島だけでなく、経路から20キロから150キロも離れている宮古島、石垣島、与那国島にも陸上自衛隊の化学防護部隊などを派遣し、被害が生じた場合の対処にあたらせました。これら3島はいずれも中国に対抗するための新たな自衛隊部隊の配備が狙われており、今回のPAC3や陸自部隊の展開は、住民をそういった配備に慣れさせるための地ならしであるとも言われています。政府は2004年から2015年までにMD関連で約1兆3500億円の予算を投じていますが、こういったミサイル防衛体制のさらなる整備をすすめても国民の安全・安心につながるものではありません。今後政府は、大気圏再突入時のミサイルを迎撃するための終末高高度防衛〈THAAD〉システムの導入を検討していますが、北朝鮮のミサイル開発とイタチごっことなり、際限のない軍事費の膨張と緊張の激化という悪循環に陥るばかりではないでしょうか。
以上の点から、弾道ミサイル防衛体制のさらなる整備には反対であります。
国会においてもミサイル発射に抗議する決議が昨日、衆参両院でともに全会一致で採択されておりますが、ミサイル防衛体制の問題はふれられておりません。私は、国と国との関係にかかわってくる大きな問題であるだけに、全会一致の国会決議採択は非常に大事であったと思います。つまり国会を構成するすべての政党会派がオールジャパンとなって、国権の最高機関である国会をあげて北朝鮮のミサイル発射に抗議の意思を表明したのであります。私は、全会一致で国会決議をあげるために、意見が分かれる政策については決議文に盛り込まず、全会一致採択という方向でとりまとめをなさった衆参両院の関係各位のご見識に心から敬意を申し上げたいと思います。国会決議を後押しするためにも、熊本県議会もぜひ全会一致で意見書を採択すべきであろうと私は考え、昨日から意見書文案の修正、すなわち国会決議には盛り込まれていない弾道ミサイル防衛体制の整備という文言の削除を求めてまいりましたが、原案通りの意見書提案となったことは残念であります。
私は、北朝鮮による今回のミサイル発射は地域の平和と安定に対するきわめて危険な行為であり、厳しく糾弾されるべきであると考えますが、軍事でことを構える方向では解決につながらず賛成できません。以上の理由により、本意見書案には反対であります。
なお、この問題の解決のためには、私は第一に、6か国協議の場で北朝鮮に核開発政策の放棄を約束させること、第二に核兵器のない世界をつくるという大きな国際世論と運動を世界の大勢にしていくことが必要ではないかと考えます。
私たち日本共産党はアジアと世界の平和と安定のために今後とも提案し、行動するという決意を表明して討論を終わります。