政策と提案


熊本県知事への申し入れ   2013年7月31日
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熊本県知事 蒲島郁夫様
            2013年7月31日
  日本共産党熊本県委員会
  委員長 久保山啓介
  県議会議員 松岡徹

 参議院選挙が終わり、県民、熊本県にとっても極めてかかわりの深い国政の重要課題が山積しています。知事が県民の利益と幸福を追求する立場でこうした課題に対して、発言し、行動し、リーダーシップを発揮されることを期待し、要望いたします。

1、知事の県政運営の基本姿勢について
 知事は、県政運営に当たっては、各政党との等距離、1党1派に偏しないとの姿勢を示してこられました。 こうした姿勢を貫くことが、参議院選挙を通じて大きく様変わりした国政、政党間の力関係のもとで、また、消費税増税、原発再稼働など、政権と国民多数の意思、動向との「ねじれ」が厳然としてあるなかで、ますます重要になっていると考えます。 あくまで県民の利益と幸福の立場にたち、主体性のある県政運営を求めるものです。

2、国政の課題と対応について
①環太平洋連携協定(TPP)交渉について
 マレーシアで開かれた環太平洋連携協定(TPP)の第18回交渉会合は、交渉が妥結し、TPPが発効すれば、日本の経済主権、国民生活に重大な影響があるにもかかわらず、その交渉自体を国民は一切知ることができない、交渉にあたる政府を監視することもできないことを浮き彫りにしました。
 日本の交渉代表団は、自ら署名した「守秘契約」によって、交渉文書や交渉内容、日本代表団の主張さえも「秘密」として公表しませんでした。
 日本共産党は、2011年12月以来、「TPP交渉の『守秘合意』」について、「交渉文書や交渉内容を知ることができるのが、ごく一部の関係者に限られ、交渉内容が協定発効後4年間、妥結しなかった場合は交渉の最後の会合から4年間、秘匿される」ことを指摘してきました。
 「秘密主義」のもとで行われるTPP交渉では、政府がいくら「交渉力」や「国益を守る」と言っても、何の保証もありません。「国益を守る」保証がない交渉だからこそ「秘密」にしなければならない。これがTPP交渉の本質です。このような「交渉」に、熊本県の農林水産業、医療、食の安全、雇用などを白紙委任できないことは明らかです。
TPP交渉からの即刻撤退を求めるべきです。

②消費税増税について
 消費税率を5%から、来年4月に8%、再来年10月に10%に引き上げることに国民は同意していません。世論調査も、増税反対が63・1%(時事通信)、増税中止が73%(「毎日」)と反対が多数派です。
参議院選挙でも、消費税増税は争点から回避されました。政府与党関係者のなかでも賛否様々です。
 今回の消費税増税は総額13・5兆円の過去最大規模の負担増であり、くらし、景気に深刻な、破壊的被害をもたらします。今でも大変な高齢者、低所得者、庶民の暮らしを壊します。中小業者は、増税を価格転嫁できず、さらに苦境に追い込まれます。消費が落ち込み、景気が悪化し、ひいては税収減となり、財政再建もますます困難になります。
 「社会保障充実に使う」などの口実が、1昨日(7月29日)政府の「社会保障制度改革国民会議」(総論)が、「社会保障給付の徹底削減」を打ち出したことを見ても全くの虚言であることを示しています。
 増税分をあてにしての巨大公共事業、大企業減税などが推進、企図されています。
 なんの道理もない消費税増税は中止し、消費税増税によらない道を求めるべきです。

③原発再稼働について
 九州電力は、川内原発1・2号機、玄海原発3・4号機の再稼働申請を行っています。
 これに対して、速やかに反対表明をされるよう求めます。
 いまなお15万人が避難生活を余儀なくされており、福島第1原発の事故の原因さえ明らかになっていません。放射性物質を含んだ汚染水の海への流出が問題になっています。「核のゴミ」処理のめども全くありません。こうしたなかでの再稼働などあり得ないことです。
 節電に努めながら再生可能エネルギーの本格的推進に県としてさらに力を入れつつ、国にも強く働きかけるべきです。
 地元紙(「熊日」7月1日付)が、「昨年7月以降、九州電力に太陽光や風力発電などの買い取り・接続の申し込みがあった設備(50kw以上)は九州7県で計1890件、合計出力で約272万kwにのぼり」、「川内原発1号機(89万kw)の3基分に相当する」と報じていますが、こうした角度からの探求と対策強化が求められています。

④憲法改正について
 参議院選挙の終盤、安倍首相は、「(憲法)9条を改正し、(自衛隊の)存在と役割を明記していく」と語っています(15日、長崎国際テレビで)。首相の改憲の意図は明白です。
 憲法改正問題は、国民、県民全体、地方自治にも根底的にかかわる問題であり、知事としての態度表明が不可欠です。
 自民党の「憲法改正草案」は、憲法9条を改定し、自衛隊を「国防軍」にし、「集団的自衛権」を認め、交戦権の否認を取り払って、海外で「戦争する国」にしようとするものです。
 「侵すことのできない永久の権利」として基本的人権を位置づけている憲法97条を廃止し、「公益」「公の秩序」の範囲に限定するとしています。96条改定は、権力を縛る憲法の立憲主義を否定するものです。
 自民党の石破茂幹事長は、4月、自民党改憲案にある軍法会議について「(出動命令に従わないものに対し)従わなければ最高刑に死刑がある国なら死刑、懲役300年なら300年」と発言しています。
 憲法の解釈改憲で、集団的自衛権の行使を認める動きも急速に強まっています。
憲法の明文改悪、解釈改憲も強行させてはならないものです。

3、県政に直接かかわる重要課題について
①道州制について
 道州制については、県議会道州制等調査特別委員会でも、慎重且つ多角的な審議がなされています。熊本県町村会は、反対決議をあげています。
 知事が、こうした状況を踏まえ、道州制については、「平成の大合併の詳細な検証」「都道府県制がなぜだめなのかーについての県庁職員、市町村、県民を交えた検証」をまず実施するなど、慎重な対応をなされるよう求めます。
②水俣病について
 国の認定基準による審査、水俣病特措法による地域・出生年月により区別・切捨て等の従来の水俣病対策では、すべての水俣病被害者の救済、水俣病問題に真の解決ははかれないことが明らかになりました。
 知事が、水俣病被害者の立場に確固として立ち、被害者・団体の意見・提案に耳を傾け、国に対して、日本社会、県民に対して、県としての明確な方向性を示すべきです。
 決断を強く要請します。

③球磨川のダム以外治水、五木村の再生と特措法
 民主党政権が公約し、国会に上程されていた「ダム中止特措法」が前国会で廃案になりました。同法案は、ダム以外治水、五木村再生にとっては必須であり、現政権に対して、法整備を要請することを求めます。

④立野ダムと阿蘇ジオパーク、世界文遺産登録について 先の6月県議会一般質問で、日本共産党・松岡徹県議が指摘したように、立野峡谷における巨大ダム建設は、世界ジオパーク、世界文化遺産登録に決定的に悪影響を及ぼすものです。
ダム以外治水による白川の治水対策をすすめ、「世界の阿蘇」のダメージを与える立野ダム建設は中止を。知事の決断を求めるものです。

⑤国営諫早湾干拓事業潮受け堤防排水門の早期開門について
 12月20日の開門期限まで5カ月を切りました。12月はノリ養殖の最盛期であり、前倒しの開門を、漁業者、漁協、熊本県、佐賀県などが求めてきました。しかし、国はいまだ着手していません。知事として改めて12月20日期限より前倒ししての開門を国に求めるべきです。
以上

ルネサスマイクロシステム九州事業所(益城町)閉鎖についての申し入れ   2013年2月20日
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熊本県知事 蒲島郁夫様
            2013年2月20日
  日本共産党熊本県委員会
  委員長         久保山啓介
  国政対策委員長     山本伸裕
  県議会議員       松岡徹
  益城町議会議員     甲斐康之

 ルネサスマイクロシステム九州事業所(益城町)閉鎖について

1、ルネサスエレクトロニクス株式会社が、100%子会社であるルネサスマイクロシステム株式会社九州事業所(上益城郡益城町、労働者約400人)を本年、10月1日をめどに閉鎖する計画であることが明らかになりました。
8.9割が熊本に居を構えている労働者は、「横浜、川崎への移動か、退職か」を迫られています。
県として、ルネサスマイクロシステム株式会社九州事業所の閉鎖撤回を強く求めること。

2、テクノリサーチパークの現状は、かつて鳴り物入りでオープンしたときの「輝き」と存在感をすでに失っています。これに加えて、主力事業所と働く労働者の約4割を失うことになれば、その衰退は決定的となります。
 「テクノポリス」開発の歴史的な検証と総括は県民に対する責任として不可避です。
「新産業都市」「テクノポリス」「リゾート」「大型公共事業推進」等の政府主導の上位計画、政策に沿って展開してきた県の産業・経済政策全体の検証と総括を行い、「百年の礎」を築く産業・経済政策を策定すること。

3、ルネサスマイクロシステム九州事業所(益城町)の閉鎖は、錦工場、大津工場の「閉鎖」「譲渡」計画に加えての「再編・合理化」計画です。
錦工場「閉鎖」「譲渡」は、知事が掲げる「県南振興」に逆行し、ルネサスマイクロシステム九州工場の閉鎖は、「4ケ年戦略」の「研究開発部門等を中心とした企業誘致の強化」に逆行するもので、知事の経済戦略の2つの柱が直撃された形です。これらは偶然のことではなく、熊本県の産業・経済政策のあり方を鋭く問うものです。
いま、半導体と自動車を軸にした企業誘致を県経済の戦略的課題として推進してきたことの根本的な検証が求められています。
大企業誘致依存型の結果は、県の「経済力」、県民所得の現状が示すように成功しておらず、現状においては、パナソニックの工場閉鎖、ホンダの派遣切り・大量の配置転換、ルネサスの工場閉鎖、売却計画など、雇用と県経済の大きな不安定要素となっています。
従来型の呼び込み型の大企業誘致、大型開発から、中小企業、農林水産業振興、6次産業化等を基本とする内発型の経済政策への転換をはかることが求められています。
また進出企業の一方的な撤退、人員削減などについて、企業の社会的責任を果たさせる立場から条例ないしはガイドラインによる規制措置が必要です。

4、2011年度の日本企業全体の経常利益は、1997年度比で1・6倍、一方、働く人の所得(雇用者報酬)は9割以下に減少。同時期の輸出は1・25倍増、国内需要は約1割減少。「国際競争力のため」のコスト削減で輸出は増えたが、働く人の所得、国内需要が減り、日本経済は、デフレ不況の悪循環に陥っています。
 それぞれの企業だけをみれば、コスト削減、人員削減、非正規雇用への置き換え等で、うまくいくかに見えても、日本中の大企業が同じことをすれば、いわゆる「合成の誤謬(ごびゅう)」となってしまうのです。
   目先の利益優先での「合理化」「統合」「再編」は、企業にとっていちばん大切な人材を失い、需要を失い、企業自体を危うくすることになります。
「優秀な若い人は展望が開けず辞めていく。技術者がたくさん韓国のサムスン電子に移っていった。……それでも会社は引き留めない。当面、人件費を下げる方が大事だからね。寂しいですわ」(パナソニックの元幹部。東京新聞2012年12月21日付)。日本の電機産業の姿です。
 県としてとるべき態度は、電器産業の13万人リストラをはじめ、大企業の身勝手な「事情」を理解することではなく、大企業に雇用、下請け企業、地域経済などへの社会的責任を果たさせることです。そうしてこそ、地域経済を含む日本経済全体の発展がはかられます。
また社会保障の拡充をふくめ、国民の所得を増やし、経済を内需主導で安定した成長の軌道にのせる経済改革を求めることです。
知事のリーダーシップ、提言力、実現力が求められています。

ルネサス錦工場閉鎖、大津工場売却についての申し入れ   2012年8月3日
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熊本県知事 蒲島郁夫様
            2012年8月3日                                 

 ルネサス錦工場閉鎖、大津工場売却について

ルネサスエレクトロニクス株式会社が7月3日発表した「強靭な収益構造に向けた諸施策の方向性について」によると、錦工場は「譲渡または集約」、大津工場は「将来においては譲渡も検討」となっています。
 錦工場が閉鎖になれば、労働者415人が失職し、人吉球磨地域の経済にも大打撃となることはあきらかです。県南では、八代のパナソニック工場閉鎖に続くもので、知事が公約等で掲げる「県南振興」に大きなマイナス要因となります。 ルネサスグループと取引のある県内企業は53社(全国4位)ということであり、県経済にも甚大な影響を及ぼすことは必至であり、2期目を迎えた蒲島県政の真価、とりわけ公約・戦略の実効性、実行力が問われるものです。
以下、要請及び提案をいたします。

1、「幸せ実感くまもと4ケ年戦略」(「4ケ年戦略」)に、早くもついた黄信号。
公約と「4ケ年戦略」実現は、「工場閉鎖・売却」計画の白紙撤回から
 「4ケ年戦略」は、「網羅的な長期計画」ではなく「この4年間に重点的に取り組む」方向性を4つあげ、その第1に「活力をつくる」を掲げています。
 「活力をつくる」では、「県経済の力強い成長」「産業力の強化」「創造的企業誘致」「地域力を高める」「県南を活性化する」等々のことが示されています。
 ルネサスの今回の「企業再建計画」は、県経済、とりわけ「県南の活性化」、人吉球磨地域の「活性化」にとっては、強力な「逆風」となるものであり、これを押し返し、工場存続、雇用と地域経済を守ることは、知事の知事選公約とそれを具体化したとされる「4ケ年戦略」の政策としての「実効性」、知事の県政リーダーとしての実行力が問われるものです。
ルネサスに対して「工場閉鎖、売却」(錦工場、大津工場)の撤回を強く要求し、それを成し遂げることを期待し注視するものです。
 知事の「できないことは言わない。いったことは実行する」とのかねてからの発言に裏打ちされた責任ある対応を強く期待します。またその経過、結果を、9月県議会をはじめしかるべき形で県民と県議会に明らかにされるよう求めます。

2、大企業誘致依存型から循環型地域経済への転換が求められている
半導体と自動車を軸にした企業誘致を県経済の戦略的課題として推進してきたことの検証が求められています。
大企業誘致依存型の結果は、県の「経済力」、県民所得の現状が示すように成功していません。そればかりか、パナソニックの工場閉鎖、ホンダの派遣切り・大量の配置転換、今回のルネサスの工場閉鎖、売却計画など、県経済の先行きに不安定さと暗い影をもたらす要因となっています。
ルネサス錦工場については、ルネサスエレクトロニクスの「6000人削減」が明らかになった5月時点では、「高操業を続けて」おり、「マイコンは当社のコア事業であり、力を入れるのは変わらない(ルネサスエレクトロニクス広報)」(5月23日付「熊日」)と伝えられていました。それが1ケ月後には一転して「工場閉鎖」とされたのでは、労働者の生活設計はもとより、地域経済戦略の構築どころではありません。
県は本年度も、30億円を超える企業誘致予算を組むなど、これまで多額の投資を行ってきましたが、こうした従来型の呼び込み型の大企業誘致、大型開発から、中小企業、農林水産業振興を基本とする内発型の経済政策への転換をはかることが求められています。また進出企業の一方的な撤退、人員削減などについて、企業の社会的責任を果たさせる立場から条例ないしはガイドラインによって規制する措置をとるべきです。

3、国民の所得を増やし、内需主導で健全な成長の軌道にのせる経済改革でこそ、国の経済も、地
域経済も栄える―国の経済政策転換を求めるべき
個々の企業が、非正規雇用を増やしたり、地域の工場を閉鎖したり、下請けや納入業者の単価を引き下げたり、さらには、国内の工場はつぶして海外生産に転じ、雇用もアジアの安い労働力に依存する「企業戦略」を展開すれば、その企業は発展するかもしれません。しかし、日本中の大企業が同じことをやれば、国民所得は大きく減り、経済の約6割を占める家計消費は落ちこみ、日本経済全体が深刻な不況の悪循環に落ちてしまいます。
  こうした事態を防ぐためには、大企業に雇用、下請け企業、地域経済などへの社会的責任を果たさせることが必要であり、そうしてこそ、地域経済を含む経済全体の発展がはかられます。社会保障の拡充をふくめ、国民の所得を増やし、経済を内需主導で安定した成長の軌道にのせる経済改革が必要です。
かつて世界の8割を生産していたDRAM(半導体素子の主製品)メーカー、「エルビーダメモリ」がアメリカの「マイクロン・テクノロジー」に買収され、30年間にわたる日本企業によるDRAM生産が終わりました。システムLSI(超多機能半導体集積回路)生産も、ルネサス、富士通、パナソニック3社が新会社をつくり、新会社では設計だけで、生産は行わない方向が示されています。
日本の電機産業がめざす方向は、「モノづくり」からの撤退であり、生産は海外(韓国、台湾など)中心です。
今回のルネサスの「計画」も、国内生産ラインの縮小であり、「海外生産シフトの加速」のためのものです。
国の政治も、県政(地方政治)も、これまでどおりの大企業の身勝手な要求にいいなりになる立場から抜け出し、大企業に社会的責任を果たさせ、国民の暮らしと権利、地域経済、中小企業経営を守るルールをつくり、持続可能な日本経済を構築するようその役割を果たすことが求められています。
経済政策と言えば、まず国とその時々の政権党が唱える大企業誘致、国が「道州制」「地域主権改革」と言えばそれの率先垂範という県政は、もはや時代に合わないものとなっています。「選挙で決着」とかで糊塗できるものではありません。
かつて「シリコンアイランド」九州と称された九州・山口における工場閉鎖の実施及び計画中の対象労働者は約8000人にものぼります。こうした事態、状況は今後県内でさらに広がることが確実です。
国民の所得を増やし、内需主導で健全な成長の軌道にのせる経済改革でこそ、国の経済も、地域経済も栄えます。国に経済政策の転換を求めていただきたい。
また国民本位の経済改革に逆行し、地域経済に壊滅的な被害をもたらすTPP、消費税の増税には反対することを求めます。